メルマガ:少女の性シリーズ
タイトル:少女の性 563  2023/05/07


少女の性 第五百六十三部

更に大変なのは、なんと言っても、これから新しく相手を見つけなければいけないということだ。当然、今は別れ話を勢いで進めているが、どうせ直ぐに後悔したくなることだって絶対起きる。そんな時に宏一が近くにいてくれれば元気になれるという自信というか確信のようなものをさとみは持っていた。

だから職場では近づくことなどあり得ないが、もともと宏一は正社員ではないプロジェクトの間だけの契約社員で、いずれ去って行く身だと言う事もあり、今は同じ職場でも、冷静に考えればプライベートでは放したくない男性なのだ。

さとみは金曜日に宏一に会う時間が作れるかどうか考えながら、本当は会いたいと思っている自分に気が付いていた。そして、午後の時間にトイレに行ったとき、宏一とは何も話をしていなかったのにパンツが少し濡れていた事に驚いた。『私は理性で宏一さんを抑えこんでいたのに、身体は求めていたって事?』と思った。そして、福岡で如何に強烈に愛されたのか、濡れてしまったパンツから思い知らされた。もちろん予備は自分の机に確保してあったから問題は無かったが、仕事をしているときに濡れたことなど無かったので、改めて会社の相手との恋愛は難しいと気が付いた。

定時になるとさとみはダッシュで出ていった。宏一はまださとみが引っ越しをすることは知らないので急いでいる理由は分からなかったが、少なくとも金曜日の午後みたいにお通夜のような顔をしているわけでは無く、どちらかと言うとサバサバした感じなので、何かさとみのプライベートに進展があったのだろうとは予測できた。

その宏一は、少し残った仕事を片付けると、結衣の家に向かった。その途中、宏一はラインで由美に今日の様子を確認した。

「今日はどうだった?授業中に寝ちゃった?」
『ううん、忙しくて寝てる時間なかったです』
「疲れたでしょ?」
『はい、ちょっと。でも、結構元気ですよ』
『宏一さん、気にしてくれたんですね。嬉しい』
「由美ちゃんだもの」
『帰ったら一眠りして、それから勉強します』
「うん、無理はしないでね」
『宏一さんが心配してくれて嬉しいです』
「木曜日だね。楽しみにしてるね」
『リクエストに応えられるかどうか分からないけど、楽しみにしていてくださいね』
「うん、シースルーだよね」
『もう、いつも見てるクセに』

由美はそこでラインを切った。これ以上話していたら、宏一に会いたくて我慢できなくなりそうだったからだ。

宏一が由美とラインをしていた頃、結衣は宏一が来る前にと思って、シャワーを浴びてから部屋に戻った。すると奈緒子が来た。

「結衣ちゃん、三谷さんがもうすぐ来るんでしょ?」
「う・・うん」

結衣はこの前の約束を破って今日宏一を呼んだことを怒られるのかと思った。しかし、奈緒子は怒るわけでもなく、結衣の隣まで来ると静かに言った。

「三谷さんに会いたいわよね。それはそう、私だって会いたいもの」
「ママも会いたいの?」
「もちろん。結衣ちゃんはこの前でもう3回目?4回目だけど、私は初めてだったんだから。私だって女だもの。優しく愛されたら忘れられなくなるわよ」
「ママもそうなんだ・・・・・・」

結衣は伊豆で奈緒子が宏一に抱かれたことに気付いていた。あの朝、奈緒子は明らかに明るい表情で快活に話していた。それはまるで少女のようだった。結衣は少し複雑な気持ちもあったが、奈緒子が若々しく明るく振る舞うようになって本心から嬉しかったし、宏一と奈緒子を一緒にして良かったと思った。自分の気持ちを抑えて、宏一を奈緒子のベッドに送って良かったのだと改めて思った。

「そう、だから今朝、結衣ちゃんが三谷さんを呼びたいって言っても反対しなかったの。私だって楽しみだもの」
「・・・・・・」

結衣は何も言わずに奈緒子の言葉を聞いていた。ただ、伊豆の時は奈緒子に元気になって欲しいという一心で自分の一番大切な宏一を奈緒子に分けてあげたのだが、それが今になって再び結衣の前に現実となって現れた。結衣はなんと言って良いのか分からなかった。すると奈緒子が続けた。

「だからね。お願いがあるの。結衣ちゃんが宏一さんに会った後、私が会っても良い?」

結衣は宏一と会うことを禁止されなかったことにホッとした。

「う・・ん・・・・」
「少しだけ、三谷さんと一緒に居ても良い?」
「うん・・・・・」
「私が三谷さんと会うの、結衣ちゃんは嫌じゃ無い?」

結衣は、自分と同じように宏一に愛されても、なお自分のことを第一に考えてくれる奈緒子の気持ちが嬉しかった。そして、そんな奈緒子に自分も応えなくてはいけないと思った。

「嫌じゃ無い。だいじょうぶ。ママ、私は宏一さんとここで会うだけだから。一緒に居ればそれで良いの。ママ、宏一さんと一緒に居て良いよ。なるべく早めに終わって三谷さんに降りて貰うから」

その言い方は微妙だったが、奈緒子ははっきりとさせようと思った。

「本当にいいの?」
「うん、私は一緒に居るだけだし」
「本当?結衣ちゃん、我慢できる?」
「うん、だいじょうぶ。ママ、宏一さんと一緒に居て」
「結衣ちゃん、ありがとう」
「ううん、ママだって独身なんだもの」
「それじゃ、三谷さんには私が簡単に食事を用意して待ってるって言ってね」
「うん、分かった。まま、がんばってね」
「まぁ、生意気に。・・・・でも、ありがとう」

奈緒子はそう言うと部屋を出て行った。結衣は、今の会話で奈緒子のために自分は我慢しなければいけないと思った。もともと、このまま宏一とずっと会っていて良いとは結衣自身も思っていなかった。どこかで宏一とは離れなくてはいけないのだ。ただ、今回はそれができずに宏一を呼んでしまった。しかし、奈緒子のためなら自分は我慢できるのでは無いかと思う。大好きな奈緒子のためなら。

奈緒子は結衣の部屋から出て階段を降りながら、予定通りに会話が進んで良かったと思った。結衣は奈緒子の思い通りに宏一を譲ってくれたからだ。奈緒子は、ああ言えば結衣が譲ってくれるだろうとは思っていたからそれほど心配はしていなかったが、やはり結衣の口から出た言葉は安心できる。

しかし、問題は結衣が宏一と会っても本当に我慢できるかどうかだ。会って話をすれば、きっと結衣の中の女が動き始める。奈緒子は結衣の中の女の部分がとても強いと言うことに気が付いていた。

そんな結衣だからこそ、初恋の相手の望むままに肉棒を口で扱いたし、更にバージンが苦手と言われれば直ぐに宏一に身体を投げ出したのだ。それに結衣は独占欲も強い。宏一のような誰にでも優しく接するタイプは、結衣には結局、辛い思いをさせるだけだ。だから、自分に譲らせることで結衣から少しでも宏一を離したいと思ったのだ。

奈緒子自身は宏一と一緒に居ても、宏一に夢中になることなど無いと言う自信があった。それは奈緒子がもともと夜の接客業をしていたからと言うのもあるが、本気になるのと身体の関係には明確な線を引いていたからだった。もちろん、身体の関係になるのだって相手をきっちりと選ぶが、それと本気になるのとは本質的に条件がぜんぜん違うと思っていたからだ。

もちろん、結衣に会うのを禁止することも考えたが、想いさえあればどこにでも結衣は行くだろうし、自分に隠れて宏一に会うことなど簡単なのだから、会うことを禁止しても意味は無い。やはり自分の気持ちに整理を付ける必要があるのだ。奈緒子は結衣が果たして目の前に宏一が居ても我慢できるか不安になりながら、キッチンで支度を始めた。

そして、宏一に会えるのは奈緒子にとっても嬉しいことだった。自分を大切に扱ってくれる男を嫌いな女などいないが、奈緒子は宏一と居ることで離婚した寂しさが安らぐことを知っていた。それに、自分が宏一と一緒に居ても、宏一が自分に本気にならないことも知っていた。

その結衣は、部屋で宏一を待ちながら、今日の学校での出来事を思い出していた。もともと結衣は学校では休み時間ごとに話をする仲の良い子を持っていないのだが、珍しくクラスの子が来ると話しかけてきた。

「香坂さん、ねぇ、ちょっと聞いても良い?」
「うん、どうしたの?」
「最近、何か変わったこと、あった?」
「なにもないけど・・・・・どうして?」
「ううん、ちょっと気になって・・・・」

結衣は警戒した。この話は、何か結衣の知らないところで勝手に結衣の話が進んでいることを示しているからだ。結衣は思いきって聞いた。

「私がどうしたって、誰か話してたの?」
「そう・・・・名前は言えないけど。それで、回りくどいのは嫌いだから、香坂さんのことが気になったから直接聞いてみたの」
「私は、その話には入れて貰えないの?」
「香坂さんには関係ないから」
「関係ないのに私の話が出て、それが気になって私に聞きに来るっておかしくない?」
「そうだけど、関係ないものは無いの。ねぇ、私が聞きたいこと、分かってる?」
「なんのこと?聞きたいこと?どうしてそんなこと私に分かるの?」
「良いわ、また今度聞く」

そう言うとその子は去ってしまった。どうやら、結衣について誰かが何か言っているらしい。結衣は、どんなことを言われているのか気になったが、今は何もできないのが気になった。しかし、全く心当たりがないのだ。漠然とした不安が心に染み付いていくのが嫌だった。

やがて宏一が来た。結衣はチャイムを聞くと降りていって玄関を開けた。

「こんにちは」
「どうぞ、入って」

結衣は宏一を入れると2階の部屋に通した。相変わらず綺麗に整頓された女の子にしてはスッキリした感じの部屋だ。結衣はそのまま椅子に座って数学の問題集を出した。宏一は結衣の背中に浮き上がったブラジャーのバックストラップの形に留め具が見当たらないことに気が付いた。

「今日は数学の勉強をするの?」
「そう、テストがあるから」
「範囲は?」
「いろいろな事象と関数」
「ふぅーん、今はそういう風に呼ぶんだ。でも、結衣ちゃんは数学だって成績良いでしょ?わかんないところ、あるの?」
「それがわかんないから、いろんなのをやってるの」
「そうか、そうだね。うん、順調に解けてる?」
「まぁ・・・・・なんとか・・・・・」
そう言って結衣は解きかけの問題を宏一に見せた。
「えっと、y=2xの2乗とy=2x+4のグラフの交点を求めるの?丁寧に問題文にグラフまで書いてくれてるんだね」
「そう」
「解き方は知ってるよね?」
「知ってる」
「それで、何かわかんないことはあるの?」
「解き方は分かってるけど、スッキリしないの」
「スッキリしない?解き方の意味がわかんないって事かな?」
「かも知れないけど、どうして両方の式をくっつけると解けるの?」

結衣はそう言って、二つの式をくっつけて見せた。

「答えはもう出てるの?」
「出てる。xは-1と2」
「そうか、答は分かったけど、でもわかんないんだね。了解」
「宏一さん、分かるの?」
「もちろん、大人だからね」
「ママはこう言うの、全然だめだけど・・・・・大人なのに」
「俺は理系だし、数学も仕事で使うからね。ご両親のように人と会って話をするのが仕事の人は忘れちゃったかも知れないけど」
「『人と会って話をする?』・・・・そう言う言い方もあるんだ」

結衣は少し軽蔑するような言い方をした。

「そうだよ。市会議員さんてそう言う仕事だし、お母さんだってそうだろ?」
「そう・・・なの・・・かな・・・・。でも宏一さんがそう言うなら」
「それで、式の意味をもう一度考えてみようか。このくっつけた式の意味を教えて」
「式の意味ってなあに?」
「例えば、1+1=2なら、1に1を加えると2になるって事だよね。この数式は、何が何だって言ってるの?」

結衣は宏一が丁寧に教えてくれているのが嬉しかった。やはり宏一以外に勉強を教えてくれる人など居ない。一人では無いという思いに、結衣は心が温かくなって数式の意味を考え始めた。

「えっと・・・・・Y=xの2乗のグラフはもう書いてあって、そこにy=2x+4のグラフを書いてあるの。この交点を求めなさいって」
「この交点では、y=xの2乗のグラフのyの値と、y=2x+4のyの値は違うの?」
「ううん、交点なんだからyの値は同じ」
「うん、そうだね。それじゃ、二つのグラフのxの値は?」
「それも、同じ」
「うん、そうだよね」
「宏一さん、交点なんだから、どっちのグラフでも同じ事でしょう?」
「そうだよ。まさに、そこなんだ」
「・・・・わかんない」
「それじゃ、今結衣ちゃんが言ったことを、式に表してみよう」
「言ったことを式に?どうやって?」
「あれ?だって、1+1は2の式は理解できてたし、ちゃんと最初に結衣ちゃんは式の意味を言ったよね。それじゃ、今度は式の意味が先にあって、それを式に書いてみる問題だよ」
「そう言うことか・・・・・・・」

結衣は考え始めた。もともと勉強はできる方なので、問題の解き方を丸暗記してしまえば、今まで式の意味など考えなくても良かったのだが、今初めて結衣は式の意味を考え始めた。

「結衣ちゃん、ポイントは、なあに?」
「二つのグラフのxとyの値が同じだって事」
「そうだよね。そこまで分かってれば、後は、それを書くだけだね」
「書くだけって・・・・・・・」

結衣は頭を全開にして考え始めた。そして、しばらくするとペンを置いた。


つづく

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