メルマガ:少女の性シリーズ
タイトル:少女の性 509  2022/04/03


少女の性 第五百九部

「そうですか。このわたなんて、居酒屋で出す値段じゃないですものね。頼んでいただけて本当に助かりました。実はもう一人前あるんですけど、それは私が注文して持って帰るんですよ」
「そうですか。このわたがお好きだなんて、きっと酒がお好きなんですね」
「そのために板前になったようなもんですから。女だてらに板前なんて、好きじゃ無きゃやってられません」
「そうですか。それじゃ、ここのお酒の品揃えも店長さんが?」
「チェーンで揃えてるのもあるんですけど、私が揃えたのが3割くらいかな?」
「どっちがよく出ますか?店長さんの揃えた酒とチェーンが揃えたのと?」
「半々くらいですかね・・・・・。私の揃えた方が値段が高いので、好きな人には纏めて出たりしますけど、普通のお客さんにはチェーンのお酒の方が良く出ますね、やっぱり。お酒を飲む目的もいろいろですから」
「そう言うもんかぁ。確かに安く酔えれば良いって人も居るからなぁ。でもこんなに美味しいのに。そう言えば、店長さんはここに来てまだそんなに経ってないですよね?」

「そうですね。これで3ヶ月くらいです」
「やっぱり、前に来たときはこんなお酒無かったと思って。それに海鮮ものも」
「店長の責任で仕入れてますから」
「美味しかったですよ。それに、アジフライ、あれは絶品でした」
「あ、さっきのあれ、召し上がっていただいたんですね。私が作ったんです」
「よくあんなにジューシーにできますね。あの値段じゃ合わないくらいですよ。ほくほくで良い香りで、とにかく絶品でした」
「ちゃんと刺身にもできる新鮮なのを捌いてフライにしてますから。冷凍は好きじゃなくて。・・・・使わなくちゃいけないことも多いけど」
「でも生からだと手間が掛かるでしょうに・・・・・」
「慣れればそんなに手間じゃないですよ。それより美味しい方が、と思って」
「きっと、俺だけじゃなくて店長さんのファンがどんどん増えていきますね。このお店は繁盛しますね」
「そうなると良いんですけど・・・・。ま、その話はまた今度。それではまたお越し下さい」
「はい、ごちそうさまでした。美味しかった。また来ますよ。近いうちに」
「あ、お勘定ですか?これですね。それじゃ、またお話しさせて下さい。失礼します」

そう言うと店長はホール担当のアルバイトに渡して、再度礼を言って去って行った。
宏一が席を立って会計に行くと、アルバイトが既に計算を終えていた。勘定を済ませると時計を見る。少し早めだが、これから一つ買い物をして待ち合わせの店に歩いて向かえばちょうどくらいだろう。

やがて買い物を終えて舞の指定のバーに着いた宏一は、まだ舞が来ていないことに少しがっかりしてソルティドッグを注文した。メールをチェックしてみると、舞は飲み会が少し長引いているらしい。会社の飲み会が長引くときは、たいてい良いことがあった時なので、宏一は仕方ないと思ってゆっくりソルティドッグを飲んでいた。

その時、ふと思い出した。さっき居酒屋の店長は『またお話しさせて下さい』と言った。もちろん営業トークなのは分かっているが、気のない相手の場合、そう言うときには『またお話聞かせて下さい』というものだ。それに比べれば、まだ少し好意を持っているのかも知れないと思った。小柄な北陸美人の店長にまた会えるのが楽しみだ。ただ、客商売の店長ともなれば自分のことより店が第一なのは当然なので、期待しても宝くじを引くようなものなのだと思うことにした。

結局、舞が来たのは1時間も経ってからだった。

「ごめんなさい。こんなに遅くなって。会議が終わって直ぐに行ったから5時前から始めたのに、こんなに延びちゃって」

舞は相変わらずピシッと決めたスーツ姿だったが、少しだけ服装が緩んでいるところを見ると、だいぶ飲んできたらしい。

「仕事の飲み会だから仕方ないよ。いっぱい飲まされたの?」
「そう、一生懸命防御したんだけど、とにかく今日は多くて」

そう言うと舞はバイオレットフィズを注文すると言った。

「ねぇ、これから食事に連れてって。お肉が食べたい。きっちりセーブしてたから空きっ腹にお酒がぶがぶで大変だったの。ねぇ、お願い」
いつもの舞に比べると、今日は既にかなり飲まされて少し回っているからか、舞は甘えん坊モードだった。
「え?でも、これからだと・・・・・俺は良いけど・・・・・どうなんだろう?」
既に8時半を回っている。これから移動してレストランに行くと、スタートは9時になるだろう。そんな時間にやっているステーキレストランを宏一は知らなかった。
「だめ?・・・・・ねぇ、だめ?」

舞は相変わらずニコニコしながら甘えん坊モードだ。

「分かった。ちょっとまって。調べてみる」

宏一の言葉に舞はニッコリと笑ってバイオレットフィズをゴクリと飲んだ。スラリとした美人の舞がカクテルを飲む姿は絵になる。宏一がネットで探し、何件かヒットしたレストランの中から肉居酒屋では無さそうなきちんとしたところをピックアップし、直ぐに予約した。

「見つかったよ。予約もできた。それじゃ、行こうか」
「良かったぁ。よぉし、行っちゃおう」

舞は上機嫌で立ち上がると、宏一の分も含めてお会計した。

「どうしたの?ご機嫌だね。俺が払うのに」
「私に出させて。待たせたお詫び」
「そう?それじゃ、ごちそうさま。ありがとう」
「う〜ん、人に奢るのは気持ちいいわね」

二人は直ぐにタクシーを拾うと、レストランに向かった。

「ねぇ、聞いても良い?どんなお店なの?」
「俺も行ったことは無いんだけど、結構まともなお店みたいだよ」
「どれくらいかかるの?」
「新橋の駅の近くだから、ここからだと15分くらいかな?」
「なあんだ。それっぽっち。残念」

そう言うと舞は隣の宏一の腕を取って頭を肩に寄りかからせてきた。

「今日はご機嫌だね。良いことがあったの?」
「良いこと?う〜ん、有ったというか、無かったというか。まだ内緒。着いてから」
「それじゃぁ、悪いことは?」
「う〜ん、無かったと言えばそうだし・・・・・・どっちにしようかな?」
「そんなぁ、それじゃ、どうして良いかわかんないよ。せめてもう少し教えてよ」
「そうねぇ、それじゃぁね、一つ教えてあ・げ・る。窓付きは増産増産で大人気よ。本当によく売れてる。惣菜材料としては最近無いくらい」
「それなら良かったじゃないの。良いことばっかりじゃない。凄いよ。おめでとう」
「ありがと。やっと軌道に乗ったので、今日は報告会に戻って来たの。それで、さっきまで飲み会があって・・・・。ちょっとあちこちに引っかかっちゃって、ごめんなさいね」
「ううん、そんなおめでたい飲み会なら大歓迎さ。きっと二次会とかにも誘われたんだろう?会えただけでうれしいよ」
「またまた、そんなこと言うから本気にしちゃうのよ。だあめ、そんなこと言っちゃ」
「だって、本当に俺、嬉しいよ。それじゃ、今日は舞さんのお祝いだね」
「はい、お願いします。嬉しい。どんなお店かなぁ?楽しみ」
「期待に応えられると良いんだけど」
タクシーは大通りから枝道に入り、新橋の駅に近づいたころ、舞が聞いた。
「ところで、ねぇ、宏一さん、今夜のご都合は?」
「久しぶりに会えたんだもの。お姫様のご都合に合わせて。いかようにも」

宏一がそう答えると舞は安心したように、息をふっと吐いた。タクシーを降りてエレベーターで上がる時、舞は宏一の横に並んだまま、宏一の腕をぎゅっと組んできた。

「一緒に居てね」

それだけ言うとエレベーターを降りた。入った店はとても小さくて僅か5席しかない店でL字のカウンターになっていた。先客がひと組だけ居て、そちらはほぼ終わりかけている雰囲気だった。どうやらマスターが客の前で肉を切り分けて焼いて出すようだが、鉄板焼きの店のような大きな鉄板ではない。後ろの大きなガラス張りの冷蔵庫の中にはいろいろな肉が入っている。

「あら、素敵なお店」
と言って舞は席に着いた。

コース料理を頼むと、それから二人は一気に話し始めた。

「ねぇ、それで、窓付きのさつま揚げは、どんな感じで仕上がったの?」
「そうか、そこからよね。あのね、油で揚げたときに透明な窓が濁るのが問題で、そこの解決に手間取ったの」
「そうだよね。こんにゃくで窓を作ると、油の中でこんにゃくも揚がっちゃうものね」
「でもね、意外なところに突破口があったの」
「へぇ、なんだったの?」
「それはね、油」
「へ?油?・・・・そうか、油を塗るんだ」
「さすが発案者ね。そう、窓に油を塗って窓に馴染ませてから揚げると窓が濁りにくいの。もちろん限度はあるだけど、でもさつま揚げが揚がれば良いんだからそんなに長い時間じゃない」
「そうだよ。よく思いついたね」
「思いついたって言うか、いろいろみんなで試して試して、やっと見つけたの」
「それで、問題が解決したから売り出したの?」
「そう、最初は一日百個でスタートしたんだけど、特に子供に評判が良くて、あ、鹿児島では子供が大好きなの、試食する分を揃えるのが大変なくらいだった」
「それは凄いね。おめでとう」
「ありがとう。なんだけど、それからが結構大変だったの」
「うんうん」

「普通は開発が終われば商社は引き上げるんだけど、今回は窓付きって言うのが商品のポイントで、それが生産を引き上げるネックになったから、生産体制を整えるまで残ることになっちゃって。だから長引いたの」
「そうか、窓付きだと手間が掛かってるからね。値段だってそんなには上げられないだろうし」
「そう、窓が付いただけで倍の値段だから。それでも手間を考えると利益はほとんど出なくて」
「そうか、ビジネスモデルとして確立できるまで残ることになっちゃったんだ。作るだけじゃなくて利益が出ないといけないから。大変だね」
「そうなの。でも、工程を改良して何とか少しずつ生産も上がってね」
「良かったね」
「そう、本当に良かった。現場の人達がいろいろ工夫してくれてね」

「販売は順調だったの?」
「そう、今回は売れるかどうかより、作れるかどうかってところがポイントだった」
「でも、それなら業者さんは喜んだろう?作れば売れるんだから」
「そう、それは良かった。だからみんな一生懸命に作ってくれて。残業までしてくれて。このご時世に作れば売れるなんてなかなか無いから」
「そうだよね。でも品質を保ちながら生産を上げるのって、とっても難しいだろう?」

「よく分かるわね。本当にそう。ちょっと生産を上げだだけで窓が外れちゃったり、中に入れたものが端っこに行ったりして、なかなか手作りから抜け出せなくて」
「そうだよね。それで、今はどれくらい作ってるの?」
「一日で一人300個。目一杯がんばってそれくらい。最も窓付きだけじゃないけど」
「何人で?」
「5人。二ヶ所に分かれてるけど」
「千5百個かぁ。それじゃ、人件費だけで一個百円くらいかかるだろうしなぁ。高くなるはずだ」
「そう、さつま揚げって何十円のものでしょう?それが百円近くも高くなるんだから、よっぽどきちんとしたものを作らないと」

そこまで言ってから舞はふと気が付いた。

「宏一さん、良く一個あたりの人件費が百円て分かったわね」
「え、だって、5人て言ったから、一日あたりの賃金が一人一万五千円として、経費を入れて倍になって5人で十五万円だろ?千五百個で割り返せばだいたい百円だろうって思っただけさ」
「そうか、最初の一人一日あたりの人件費をきちんと抑えてたのね」
「世の中だいたいそんなものだろ?それだと諸経費を引いた手取りがひと月あたり二十万ちょっとだって思ったから」
「そんなのまで知ってるんだ」
「フリーで仕事してると、一緒に仕事する人の分の給料とかも合わせて請求したりするから、だいたいの所は分かるようになるんだよ」
「やっぱり宏一さんは凄いのね」
「そんなことないよ。フリーって気楽に見えるかも知れないけど、1人で全部やらなきゃいけないから、会社のいろんな部署の人がやってくれるもの1人でやることになるってだけ」
「そうか・・・・・」

「舞さんは会社勤めだから、青色申告とか知らないだろ?」
「そうね」
「フリーだと、納税申告の計算は必須なんだよ。ま、それはそう言うことにして、続きを聞かせてよ」
「そうね。それでね、今はスーパーだけでなくて百貨店とかにも卸してるし、東京のお店からも引き合いが来てね。次々にいろんなのを開発してるところ」
「凄いね。それってまだまだ伸びるってことだろう?」
「そうかもね。だから、今回の報告会は今までで一番気が楽だった」
「凱旋報告会って所か」
「そう、それで、窓の部分を大きくしたり、中に入れるものをきれいな物にして可愛らしくしたり」
「可愛らしく?それは俺のアイデアには無かったなぁ」
「作ってるのが女性ばっかりだから。みんなそう言うのなら燃えるし」

「可愛らしいってどんなの?」
「魚の形をした赤い生麩とか、紅葉の形や桜や手鞠とか、いろいろなの。それに、お店のマークって言うか、家紋なんかも開発中。これは料亭向けね」
「家紋?そんな細かいの、できるの?」
「実は苦戦中。簡単なのなら何とかなるんだけど、結構限られる感じかな?」
「ずいぶんがんばってるんだね」
「そうなの。それにね、宏一さんにヒントを貰ったときは窓を作って中が見えるって感じだったでしょ?でもね、今は違うの。窓の中に最初から入れちゃうの。そうすると中に隙間ができないから揚げ上がりもきれいだし」
「窓の中にか、それは良いアイデアだね。窓が透明にならないって困ってた頃がウソみたいだ」
「そうね、本当に最初から比べると凄い進歩。みんなよく頑張ってくれた」
「舞さんは幸せだね。苦労は多かったみたいだけど、こんなに苦労が実ってるんだから」
「そうね。まだまだ売り上げ自体は大きくないけど、基本技術は応用が利くから、練り物全般に波及できるだろうって」


つづく

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