メルマガ:少女の性シリーズ
タイトル:少女の性 501  2022/02/09


少女の性 第五百一部

「先日お話ししたシステムの移行を始める件ですが、配線工事とサーバーの設置が予定通り進みそうなので、スケジュールソフトから始めたいと思います」
「そうか、スケジュールからか」
「はい、スケジュールだけなら売り上げなどのお金の問題が起きる可能性はゼロですし、仮に何か問題が起きたとしても連絡が飛んでいかないとか、スケジュールに反映されないとか、比較的発見しやすい問題しか起きませんから。もちろん、現状ではほぼ間違いなく正常に動くと判断しています」
「分かった。明日の部長会で報告して、スケジュールソフトから新システムに移行すると伝えておこう」
「ありがとうございます」
「それでは、部長会で承認が取れ次第、移行の案内を出すことにするから、案内の方の作成は頼むよ」
「はい、既に雛形はできていますので、後は日程など詳細を詰めておくだけです。承認のご連絡をいただければ、2日以内に案内を出せます。実施日についてはご指示いただければと思いますが?」

何か相手に花を持たせなければ、きっと良くないことが起こることは宏一は経験からよく分かっている。

「分かった。それほど急ぐ必要は無い。それなら実施日も部長会で決めることにするよ。案内はわかりやすく作ってくれよ」

自分が旗振り役のように振る舞えると部長は気を良くして言った。

「はい、ありがとうございます」
「もしトラブルが発生した場合の対処はよろしくお願いするよ」
「もちろんです。営業は時間が命ですから、24時間体制で対応します」
「分かった。お願いする」

総務部長がそう言うと、宏一は去って行った。すると総務部長はメールの中から一つを選び出し、中味を開いた。これは宏一は知らないが、移行作業中のシステムの監視結果をセキュリティ会社から毎週送ってくるもので、宏一がどのような作業をしているのかを監視、推定するものだった。前任の部長が半ば左遷の形で転勤した後、この総務部長が宏一の仕事を客観的に評価するために導入したものだ。その報告によると、確かに宏一の仕事は早いし確実だった。

これまでにシステム上のトラブルはほとんど発生していないし、宏一の対応も早い。ただ、移行準備作業が始まってからは、監視報告は宏一が一部のシステムを会社に無断で先行して動かしていることは分かっていたが、その意味までは掴みきれていなかった。

実は、この新任総務部長は宏一が好きではなかった。個人的に人格がどうとか言うのでは無い。会社のシステムという基幹機能を一人の個人に任せるというのが気に入らないのだ。もちろんこれは宏一の責任ではなく、それを決めた会社の責任なのだが、まさか取締役会の決定に文句を言うわけには行かない。だから、宏一の仕事に問題を見つけて個人ベースの仕事を他の会社に請け負わせようと考え、監視するために『進捗度を客観的に評価するため』として定期的なソフトの監視を契約した。もちろん、さとみの前任の友絵と宏一との間にあったことなど一切知らない。そう言うことに首を突っ込まないのがここまで上り詰める秘訣だからだ。

確かに宏一の仕事は早い。個人でやっているのでいちいち会議を開いて決定する必要など無いからだ。『それは分かるが、それにしても・・・・』と総務部長は思った。個人で会社の仕事を請け負うなど、グループの中でしか仕事をした事しかない総務部長には理解できなかった。特に宏一は個人にしては経費の使い方が多いし、報酬額もそれなりに多い。宏一の年齢にしてはちょっとあり得ない額だ。経費もグループで仕事をしているのならまだ分かるが、認められているとは言え、個人が使う経費の額にしては大きすぎるのでは無いか?と思っていた。

11時を回った頃、宏一はさとみに言った。

「今日は業者の人とランチミーティングを持ちたいんだ。悪いけど、牛丼を人数分買ってきてもらえない?」

そう言うと宏一は一万円札をさとみに渡した。さとみはそれを受け取りはしたが、直ぐに宏一に言った。

「三谷さん、この前も三谷さんが出しましたけど、ランチミーティングなら経費で落ちるんです。経費にしますか?」
「ううん、俺が出すよ」
「だって、ランチミーティングで話しているのは仕事の進捗確認とか手配の話とか、打ち合わせの内容ばかりじゃないですか。個人で出すなんておかしいと思います」
「でもね、俺は正社員じゃないし、会社の経費はこの会社のために使わないとね」
「ミーティングだって会社のためじゃないですか」
「うん、それはそうなんだけど、経費では落としたくないんだ。お願い、分かってよ」
「まぁ、決めるのは三谷さんだから・・・・・・でも、なんかおかしい気がします」
「心配してくれてありがとう。それと、わかってくれて嬉しいよ」

宏一のその言葉に、さとみはポーカーフェイスを保ちながらもドキッとした。そして『危ない危ない。こんな言葉に反応してたんじゃ、あっという間に落とされちゃう』と思った。

今までさとみは個人的感情は一切無視するように心がけてきた。しかし、少しずつ宏一に対する興味と親近感が湧いてくるのは仕方の無いことだ。ただ、会社でさとみの周りに居る女性軍団の視線がさとみの行動を大きく縛り付けている。

「分かりました。それでは12時前に買ってきます。何人分ですか?」
「今日は現場が合計5人で、俺とさとみさんで7人だね」

さとみは名前を呼ばれたことはわざと無視して答えた。

「7人分ですね」
「うん、一人じゃ重いだろうから手伝うよ。出かけるときに教えて」
「いえ、一人で大丈夫です」

さとみは買ってくるものの重さよりも会社の人目を気にした。宏一と一緒に出かけて、一緒に戻ってくれば人目に付くからだ。

「だって7人分じゃ大変だろう?」
「いえ、大丈夫です」
「それじゃ、多めにいろいろ取り合わせてお願い」
「はい」

さとみは返事をすると、ポットのお湯を足すためにパントリーに向かった。ここはもともと会議室エリアなのでパントリーは他の部署の方に行かないと無い。だからお湯の補給は手間が掛かる。そしてパントリーに行けば必ず誰かに会うので、その時に早めに買い出しに行くことを公表しておく必要があった。そうしないと後で予期しない噂を打ち消さなくてはいけないからだ。女性のネットワークの怖さは身に沁みて知っている。

宏一はさとみがしっかり予防線を張っているのが気になったが、こればかりは仕方の無いことだと諦めて任せることにした。そして、もう一度現場を回り、牛丼の用意があることを伝えてお昼に部屋に来るように言った。
その日の昼食は予想外に和やかになった。

「牛丼があるんだって?」

昼に業者が続々と集まってきた。応接セットにはさとみが買ってきた牛丼や味噌汁、漬物にサラダなどが並んでいる。宏一とさとみは自席で食べるから、応接セットは業者でいっぱいになった。

「さぁ、どうぞ。温かいうちに」
「ありがたいねぇ。ここでの仕事はそんなにもうけも出ないけど、これだけでこの仕事をやりたいって気持ちになるからね」

さとみがお茶を入れて回ると更に機嫌が良くなる。

「おまけに、水野さんにお茶まで入れて貰えるなんてさ。ねぇ、あんたフルコンエンジだろ?こんなの他にないよな」
「はい、私もこんなにして貰うことなんて無いです。初めてですね」
「おまけにさ、これって三谷さんの自腹なんだぜ、知ってた?」
「そうなんですか?申し訳ないです」
「気を遣ってるんだよ。一人でシステムの入れ替えから配線設計や施工管理にネットワーク運用まで全部請け負ってるから。今じゃセキュリティの関係で無線LANを使うところがほとんど無くなって、全部有線だろ?俺たちの仕事が増えて嬉しいっちゃ嬉しいけど、細かい要求ばかり増えてあれを付けろこれを付けろってぜんぜん配線が進まないだろ?仕事が進まなくてストレスも増える一方だ。でも、三谷さんに牛丼奢ってもらって水野さんにお茶を入れて貰えばやる気起こるわなぁ」
リーダー格の業者はそう言って宏一を持ち上げた。
「そう言って貰えると嬉しいです。さぁ、先ずとにかく食べてください」
「いっただっきまぁーず」
「俺、大盛り欲しい」
「俺、並が良い。最近血液検査で引っかかってさ」

そんなことを言いながら業者は牛丼を片付けていった。さとみは自分でも食べながら、時読お茶を注いで回る。それは絶妙なタイミングで、更に全員食べ終わった頃にはお茶が湯飲みに並々と注ぎ足されていた。

「それで、配線の部品だけど、どう?足りそう?」
「あぁ、それか。三谷さん、悪いけど、たぶん足りなくなると思うよ」
「あぁ、やっぱり・・・・」
「このビル、コンクリートの打設が粗すぎるよ。これじゃ、あっちこっちで配線を迂回させなきゃいけない。たぶん、結構な量足りなくなると思うな。フルコンエンジさんはどう?」
「うちは配線をしてるわけじゃないので・・・・でも、きっと足りなくなると思います」
「え?だってお宅は分岐工事だけだよね?」
「でも2,4,6階で分電盤を増設する位置と分岐の位置が離れているので、通線の苦労は無いですけど、分岐位置まで電源を通してPLCに繋ぐにはかなり配線を固定しないといけないから」
「いろいろ苦労はかけてますね。部品の追加分は届いているので、そこの棚から持ってって下さい」
「三谷さん、三谷さんだから言わせてもらいますけど、もう少し人数増やした方が早く終わるんじゃ無いの?」
「うーん、そうかも知れないけど、あっちこっちで線を回したり固定したりで引っかかってるとなぁ、人数増やしてもねえ」

そんな会話をしているうちに全員が食べ終わってお茶の時間になった。さとみがすかさずお茶を追加して回る。話題は近隣の工事現場の話へと移っていった。

「品川の方はどこの会社も一段落したみたいだけど、ほら、東京駅の横のあれ、お宅も入ってるんだろう?あれが面倒だよね」
「ああ、あれね。インテリジェントだか次世代だか知らないけど、何種類もLANが走ってて、それぞれに分岐したりサーバーを付けたりしなきゃいけないって奴ね。あれって最終的には全部どこかでくっつくのかな?」
「いや、そう言う訳じゃ無いみたいだよ。ウチが聞いてる話じゃ、管理センターのLAN管理画面で集中的に監視するけど、そもそもネットワークが独立してるって言うのがセキュリティ上は有利らしいから」
「そりゃそうだけど、複雑なネットワークを管理するのは誰だと思ってるんだろうね?」
「きっと最新のAIとかが管理するんじゃないの?」
「何いってんの、AIは学習したことにしか使えないから、未知の状況だとなんの役にも立たないでしょ?最新だろうと5年前のだろうと、AIは言い換えればノウハウの塊でしかないからね」
「いっそのこと、AIがビルの中に線を通してサーバーとルーターの設定をやってくれないかなぁ」
「あーあ、なんかむなしくなってきた。さぁ、それじゃ、むなしい仕事に出かけますか」

1時を回ったので業者は仕事に散っていった。

「三谷さん、今週の作業予定ができました。送る前に一応見ていただけますか?」
「うん、わかった。どれどれ?」

宏一はさとみの画面を覗き込んだ。

「俺は『さとみさん』て言うのに、さとみさんは俺のことを名前では呼んでくれないんだね」
「な、何を言うんですか。当たり前です。そんなこと・・・・・」
「ごめんごめん。あ、金曜日のここ、1時間延ばしておいたほうが良いね。2時間じゃ終わらないから」
「はい。それと、一度向こうも整理しておく必要があると思うので、ハイフォレストの倉庫に行ってきたいんですが?」

さとみは移転先のビルの倉庫にいろいろ置いてあるネットワーク関連の整理を申し出た。

「あぁ、晴海だったのを北品川に変えたときにだいぶ発注を変えたからね。一度きちんと見ておく必要はあると思ってたんだ。大丈夫?一人で」
「先ず、どんな感じかを見てきます。それで一人で手に負えないようなら、明日相談しますから」
「うん、本当はそろそろメールサーバーくらい向こうで動かしたいところだから、配線や電源の取り合いなんかを俺も見たいんだ。しばらく行ってないから」
「それじゃ、それも合わせて報告しますね」
「うん、今日は直帰だね」
「いいんですか?」
「もちろん。そんな簡単に終わるとは思ってないから、覚悟して行ってね」
「はい、いってきます」

そう言うと、さとみは仕事の切りが良いところまでやってから出かけていった。その日は、夕方にさとみからメールが二つ来た。一つは仕事関係で、予想以上に乱雑なので棚卸しが必要だと言うこと。もう一つは金曜日の食事についてで、アメリカンが良いと言うことだった。

翌日の夕方、宏一はいつものウィークリーマンションのドアを開けると由美が静かに勉強していた。

「宏一さん」

由美は弾けるような笑顔で宏一を迎えた。

「由美ちゃん、勉強が忙しいの?」
「忙しいって言うか、もうすぐテストだから」
「そうなんだ。模試なの?」
「はい、今度のは全国模試だから」
「そうか、一年生でも全国模試なんて大変だね」
「はい、日曜日だからもうすぐだし」
「学校で受けるの?」
「はい、半日だけど」
「そうか・・・・」
「どうしたんですか?」
「ううん、あのさ、土曜日に由美ちゃんと泊まれるかなぁって思ってたから」
「それは・・・・・・」
由美は考え込んだが、直ぐに答を出した。
「宏一さん、日曜日じゃだめですか?日曜日だったら試験も終わるし」
「翌日の朝はゆっくりできないけど、それでも良い?」
「月曜日になるからそうだけど・・・・・でも、それならまた連れてってください」
「うん、それは構わないけど・・・・」
「だめですか?」

由美は少し心配そうだ。このところ、母親の病院のケアが忙しくてなかなか宏一と一緒に居られないので、とにかく宏一と一緒に居たくて仕方ないのだ。


つづく

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