メルマガ:少女の性シリーズ
タイトル:少女の性 239  2016/11/27


少女の性 第二百三十九部

「ありがとうございます。・・・・それで、この仕事自体はある業者から別の件を相談していた時に出てきたもので、その時はなんとなく話していたら出てきたって感じで誰のアイデアでもなかったし、どこのノウハウも入ってなかったんです。そして、確かに開発が始まった最初の頃はどうなるか分からなかったし、いろいろな人のアイデアが役立ったし、元の上司の意見もいろいろ反映された部分はあります」
「それじゃ、それが今の土台になっているってことはあるんですね?」
「はい、そう言われれば確かにそうです。ただ、それは練り物の真ん中何かを挟むってことくらいで、練り物に窓を付けたりするなんて言う話にはなっていませんでした」

「窓を付けるアイデアは誰のものなんですか?」
「それは私と業者の人との打ち合わせの中で出てきたんです。ここに窓を付けたら楽しいんじゃないかって。でも、楽しくても実際に作れないと、どんなアイデアを出しても意味ないですから技術的な可能性を探りながらアイデアを練っていったんです」
「そうなんですか。でも、このプロジェクトで一番鍵になっているのは練り物に窓を付けたことでしょ?」
「そうなんです。何かを練り物の真ん中に挟むアイデアは確かに元の上司から出てきたんですが、それだけではインパクトが弱くてお弁当向けには良いにしてもリテールは無理ですから」

「そうだよね。それだけだと大量生産には向いているかも知れないけど・・・・」
「それが、最近になって技術的に進んだ部分があって、窓を付けて中に何かを入れても大量生産できそうだってことになってきたんです」

松野は目を輝かせた。話に興が乗ってきたので二人ともビールをおかわりして話に夢中になった。

「岡山の業者さんが、窓を付ける方法に良いアイデアを出してくれたんです。一番の問題は、窓になるこんにゃくと土台になっている練り物をどうやってくっつけるか、なんですが、新しい製法を試してみたら良い結果が出たんです」
「ほう、それでは実現できそうなんですね」
「はい、工程が増えると生産効率が下がってコストが上がるんですが、ちょっとしたアイデアで簡単に窓を固定することに成功したんです」
「でも、少し気になっていたんですが、こんにゃくって透明なようで透明じゃないですよね?それが窓になるんですか?」
「ご覧になります?」

そう言うと松野はスマホの写真を見せてくれた。

「ふぅん、確かに、少し濁ってるけど、ちゃんと中のものがはっきり見えますね」
「そうなんです。この窓に使っているこんにゃくは、お菓子のこんにゃくゼリーと同じものなんで、そんなに高くないんです」
「この窓の中に入っているのは・・・・・麩ですか?綺麗な色ですね」
「はい、取り敢えず見本として色づけした加賀の生麩を炊いたものを入れています。今は窓がきれいに見えるようにするために麩を入れていますが、たいていのものは入れられるんですよ。大きさについては制限がありますが」
「でも、その麩から出た汁ですかね?窓が麩の周りだけ窓に色が付いて濁ってますね」

「気がつきましたか。それは今も開発中です。窓を固くすれば濁るのは減りますが、食感が固くなるので難しいんです」
「でも、こんにゃくの食感が好きな人には良いんじゃないですか?思い切り堅めって言うのも。今はお菓子でハードグミとか流行ってるし」
「・・・そう言えば確かに・・・・そうですね・・・・考えてみます」
話が十分に盛り上がってきたところでサラダとステーキハンバーグセットが運ばれてきた。
「それで松野さんは試作の業者との打ち合わせで出張が多いんですか?」

宏一は松野にグラスワインを勧められ、ワイングラスを手に取って言った。

「もともと営業ですから出張は普通ですが、最近はちょっと多めでしたね」
「それじゃ、試作品とか食べ飽きたんじゃないですか?」
「えぇ、まぁ・・・・・、でも、好きでやっているのでそれほど苦じゃないし、このプロジェクトになってから、かえって練り物が好きになりました。いろいろな可能性を秘めていますから」

松野はにっこり笑っていった。もともと上品な顔立ちの日本的な美人なので、朗らかに微笑むと本当に綺麗だ。

「今度、三谷さんにも試食をお願いしても良いですか?」
「良いですよ、もちろん」
「三谷さんは製造にもお詳しいようなので、意見を伺いたいんです」
「こんな仕事をしては居ますが、元々ものを作るのが好きなのでいろんな事に首を突っ込んでいるだけです。それに、こういう仕事だとあっちこっちの会社でいろいろな仕事ができますから」
「そうなんですか。そんなにいろんな会社でお仕事をしていらっしゃるんですか」
「えぇ、今回は総務部長のご指名をいただいて派遣されてきたので、プロジェクト全体を任せてもらっていますけど、商社って言うのは会社が複雑ですね。いや、複雑って言うか細かく別れてるって言うか・・・」
「そうですね。食品関係と言っても結構広いですから」
二人はそんな話でしばらく盛り上がった。そして食後のコーヒーが出てくる頃、宏一は気になったことを聞いてみることにした。

「あの、松野さん、聞いても良いですか?」
「はい、いいですよ」
「言いたくなければ話題を変えます。元の上司とは完全に切れたんですか?いや、切れたと考えていますか?」
「それは・・・・・仕事上で、と言うことですか?それとも、プライベートですか?」
「どっちもです」

宏一はかなり失礼な質問をしているのは分かっていた。しかし、松野の元上司というのはあれだけのことをする人物なので、また何かをするかも知れない。だから一応聞いておきたかったのだ。それに、正直に言えば目の前の年上の美人に興味もあった。
松野は少し考えていたが、やがて静かに話し始めた。

「お話しします・・・・・。でも、途中で嫌だったら直ぐに言って下さいね。こんな事、誰にも言ったことないので」
「はい、分かりました。嫌なら直ぐに言います」
「元の上司は、彼は私の入社時から同じ営業三課で先輩でした。最初は普通の先輩で、会社の飲み会で一緒になることはあっても個人的に一緒になることはなかったんです。ありきたりですよね・・・・」

そう言って松野は力なく微笑んだ。その後、二人が一緒に出張に行った時に松野の調整ミスから顧客に取引の中止を告げられ、ショックでホテルに戻って泣き崩れたところを優しくされてから個人的な関係が始まった。そして最初は飲みに行く程度だったが、だんだん深みに嵌まるように関係が深くなったらしい。しかし、あることが起こってから松野が別れることを決め、それに不満な彼と関係がぎくしゃくして今回のことが起こったのだ。

「こうやって話すと、本当にありきたりですよね。こんなんじゃ昼ドラには使えませんね・・・・・」
「今、悲しいですか?」
「いえ、前は悲しかったですけど、今はもう・・・・涙も涸れ果てたって言うか・・・・・、でも、仕事のファイルに細工するなんて、それは今日、とっても悲しかったな・・」
「ちょっと聞いても良いですか?その取引が中止になった顧客って、部にとってとっても重要な顧客だったんですか?」
「はい、それはもちろん。かなり有望な顧客で、取引は毎年増えていく見込みで、部では重点管理顧客に指定されていたんです」
「その時点での取引額は大きかったんですか?」
「いえ、その時点ではまだそれほど大きくありませんでした。しかし、工場を新設中で、その取引を任せてもらえる感じだったので、翌年には倍以上に延びるはずだったんです。でも、どうしてそんなこと・・????」
「話を聞いてふと思ったんですが、その先輩というか元上司が取引が中止になるように仕組んだって事は無いですか?」
「どうしてそんなことを。それは無いと思いますが」
「いえ、松野さんが落ち込ませるのが目的だったとしたら、計画通りに松野さんが落ちたんだなぁって思ったもので」
「そ、そんなこと・・・・・・・・」

松野は宏一に指摘されて絶句した。個人の恋愛のために会社の顧客を切ったりすることがあり得るだろうか?

「心当たりはないですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
松野はしばらく黙っていた。話すことがあるのに話せないようだった。しかし、少ししてから重い口を開いた。
「確かに、ご指摘のようなことはあるかも知れませんね・・・・・」
「ごめんなさい。こんな傷口に塩を塗るようなことを言ったりして」
「いいえ、今考えると確かにその可能性はあると思います。こんな事が起こる前だったら否定したと思いますが、今は・・・・・・・」
「そうですか」
「実は、あの取引が中止になった会社については、あの時点では会社の来年度の売り上げ計画には入っていなかったんです。だから、あそこで中止にはなりましたが、翌年度の計画達成には影響していなかったんです」
「翌年には売り上げが倍になることが判っていたのに?それってもしかして、営業の隠し球ってやつですか?」
「はい・・・全てが予定通りに行くとは限らないもので、どこかの取引にトラブルが起こることもありますから、そういうものも持っていないと当初の計画を達成するのは難しいですから・・・・・でも・・・・・」

松野は元上司が自分を手に入れるためにわざと有望な取引先を切り捨てて近づいたという宏一が考えたストーリーを信じて良いのかどうか迷っているようだった。もちろん、もしそうであるとするなら、最初から自分は操られていたことになる。自分は填められたと思う悔しい気持ちと同時に、まんまと罠にはまった世間知らずの馬鹿と言うことになってしまう。

「ふとそう思っただけです。何の証拠もありませんから」
「わかっています」
「それはたぶん、松野さん自身が一番よく分かるでしょうから、これ以上は言いません。話して下さってありがとうございます」
「私こそ、今まで誰にも話したことはないから、自分では気がついていませんでした。三谷さんにお話しして良かったと思います」
「それじゃ、その可能性もあるんですね?」
「はい・・・・・その・・・・・たぶん・・・・・そうなんだと・・・・」

さすがに松野の口は重かったが、宏一の指摘通りだと思ったようだ。

「でも、本当に感じたことを話していただいて良かったと思います」
松野は改めてそう言って頭を下げた。
「良かった。失礼になるかと思ってびくびくしていたんですが、そう思っていただけて、嬉しいですよ」

宏一はそろそろ頃合いだと思った。話すことは話したし、食事も終わっている。時間も10時を回っている。
しかし、松野はまだ何か話したいことがあるみたいだった。宏一は、その様子を見てある意味当然だと思った。自分がずっと信じていた相手が最初から信じるに値しない相手であるらしいことを宏一に指摘され、何より自分が納得してしまったのだ。

「あの・・・・それで・・・・・」
「どうしましたか?」
「お時間が遅くなっているのは十分承知しているのですが、もう少しだけおつきあいをお願いできないでしょうか?」

宏一にそう言った松野はとても弱々しく見えた。ほんの一昨日まで信じていた人にだまされて良いようにされていたことが分かったのだ。それを宏一に指摘されて直ぐに納得してしまった自分が悲しいし、心の奥ではどこか既に気がついていた部分をわざと見ないようにしていた結果がこれだと言う自虐的な思いもある。その松野を見ていた宏一は既に心を決めていた。

「良いですよ。松野さんにおつきあいさせていただきます。大丈夫、恩に着せたりしませんから」
「もちろんそれは存じております」
「それなら、その営業口調は何とかなりませんか?もうプライベートな時間なんでしょう?」
「はい・・・・ごめんなさい。いつもの癖で・・・・・」
「優秀な営業なのはよく分かっていますよ。それじゃ、お酒でも飲みに行きますか?」
「よろしいで・・・・ごめんなさい。良いんですか?」
「はい、良いですよ。行きましょう」
「あの・・・・・」
「はい?なんですか?」
「三谷さんみたいに素敵な人なら『嬉しいです』って言わなくてはいけないんでしょうが、今日はそういう雰囲気ではなくて・・・・・ごめんなさい」
「何言ってんですか、いちいちそんなこと気にしてたらお酒なんか飲めませんよ」
「そうですね・・・・・・でも・・・・・安心しました」

「安心ですか?」
「そう、一緒にお酒を飲みに行けて、安心しました」
「良かった。それじゃ行きますか」
二人が席を立ち、松野が会計を済ませている間、宏一は外でタクシーを捕まえていた。
「どこに行きます?松野さんの知ってるお店?それとも私の知っている店にしますか?」
「お任せしても・・・・ごめんなさい。お願いできますか?」
「はい、分かりました」

宏一はそう言うと、会社からそれほど遠くはないショットバーに松野を連れて行った。そこは気楽に飲める小さな店で、時々宏一が使っている雰囲気の良い店だった。宏一が女性を連れていることを見たバーテンは、一人で来た時のように軽口はたたかずに丁寧に挨拶すると二人をカウンターの隅の落ち着いた席に案内してくれた。そういう心遣いができる店なのが宏一が気に入っている理由だ。

「カクテルは何が好きですか?」
「あんまり知らなくて・・・・仕事でこういうところにはあまり行かないから・・・」
「それじゃ、私が決めても良いですか?」
「はい」

宏一は自分にはマティーニ、松野にはテキーラサンライズを注文した。


つづく

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