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タイトル:雲は遠くて  128章  I LIKE ROLLING STONES (わたしは転がる石が好き)  2017/07/17


128章  I LIKE ROLLING STONES (わたしは転(ころ)がる石が好き) 

 7月15日の日曜日。真夏のような、晴れわたる上空で、気温も34度ほどだ。

 午後1時を過ぎたころ。
川口信也は、下北沢駅南口から歩いて3分、
世界最高レベルの、レコーディング・スタジオ・レオのミーティング・ロビーのドアを開けた。

 信也の彼女の大沢詩織たちのロックバンド、グレイス・ガールズが、
3枚目となるサード・アルバムのレコーディングをしているところだ。

 グレイス・ガールズは、ファンにも恵まれて、人気もあった。
しかし、メンバー全員、他に主となる仕事があるという、
音楽活動であるので、アルバム作りのペースも、ゆっくりとしたペースだ。

 2013年10月13日に、デヴュー・アルバム、 『Runaway girl(逃亡する少女)』
セカンド・アルバムは、2015年5月の『恋のシチュエーション(Situation of love)』
そして、サード・アルバムは、 『 I like rolling stones (わたしは転がる石が好き)』だ。

「しんちゃーん、こんにちは!」

 そう言いながら、テーブルでくつろいでいたメンバーの、
清原美樹や大沢詩織、菊山香織、平沢奈美、水島麻衣の5人は、
みんな笑顔で立ち上がって、信也を迎(むか)えた。

「みなさん、こんにちは。レコーディングも順調に、最後の1曲の、
『 I like rolling stones 』となったと聞いて、
おれも聴きに来ましたよ。みなさんのレコーディングの現場に立ち会えて、
とても光栄に思っています」

「今回、わたしたちの、サードアルバムが完成できますのも、
しんちゃんたちのご協力があったからだと思います。
なんといっても、アルバムのタイトルにもさせていただいた、
『 I like rolling stones 』は、しんちゃんが作(つく)ってくださったのですから!
ありがとうございます!しんちゃん!」

 清原美樹は、笑顔でそう言って、頭を下(さ)げた。

 ほかのメンバーのみんなも、「ありがとうございます!しんちゃん!」
と満面の笑顔で、そう言って、頭を下げた。

・・・美樹ちゃんやほかのみんなもだけど、このバンドって、
どうしてこうも、美しい顔かたちとスタイルの女性ばかりが揃(そろ)ったんだろうか?
グレイスっていう言葉が意味している、
上品とか、優美とか、神の恵みとかが、ぴったりくる女性たちだよな。
ビジネス的には、もっともっと売り出せば、いくらでも稼げるんだろうけど、
それはしないという、経営方針の、
われらの、モリカワとモリカワミュージックか、それでいいんだろうけど・・・


午後3時を過ぎたころ、サード・アルバムのタイトル曲の、
 『 I like rolling stones (わたしは転がる石が好き)』の、
レコーディングは始まる。

 イントロは、ギターーから始まる。信也がギターで作った曲だ。
この曲への思いを、リードギター担当の水島麻衣に、
冗談交じりに、ちょっとだけアドバイスした、信也だ。

 もちろん、信也は、この歌を、ボブ・ディランの最大のヒットシングルの、
『Like a Rolling Stone(転がる石のように)』を、意識していていた。

 それだけ、いまの時代と、真正面から向き合うような思いで作った、ロックバラードだった。

 信也は、レコーディングのための司令室の、コントロール・ルームで、
グレイスガールズの演奏を見守った。

 ヴォーカルの詩織は、リズムギターもやりながら、
この歌を、しっかりと自分の歌にしていた。

「こんな感じかな」とか言って、これまでに3回、
詩織の前で、ギターの弾き語りで歌った信也だ。

 演奏は、優秀なレコーディング・エンジニアや、
5人の彼女たちの、最良のコンディションで、
最高にすばらしく、かっこいい、ロックナンバーに仕上がった。

 演奏を終了した直後は、熱気と歓声に、スタジオは包まれた。

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I LIKE ROLLING STONES       
(わたしは転がる石が好き)

作詞&作曲 川口信也

楽しかった デートの 帰り道 
ふと 足もとの 小石を 転(ころ)がす わたし
なぜって? 特別な 意味なんて なにもない

わたし 子どものころから 石ころが好きだった
晴れた日 河原に 転がる たくさんの 石ころたち
石ころって 自由で 気ままで 平穏で 楽しそう

だから わたしは 転がる 石が好き
So I like rolling stones

石ころや 自然の世界は 教えてくれる 
人が作る 観念や思想に  絶対なものなど 無(な)いって
そんなものに 縛(しば)られないで 自由に生きようって

つらいこと 苦しいことが あっても
そんな 悩みは 人の心が 作り出したもの
心の幻(まぼろし) 心の囚(とら)われ すべては 空(くう)だから

だから わたしは 転がる 石が好き
So I like rolling stones

いろいろな 言葉や 論理や 思想って
ひとの 幸せのための ツール(道具)の はず なのに
ひとの 不幸や 戦争を するために 使われている

あなたと わたしが 交(か)わす 愛の言葉 愛のすべても
その愛に とらわれたとき 苦しみのもとにも きっと なる
いつも この愛や 人生が 神秘で あることを 大切に しましょう

だから わたしは 転がる 石が好き
So I like rolling stones

わたしたちの からだが 自然から できているように
わたしたちの 魂(たましい)は 宇宙から できているのね 
なにものに もとらわれない 心は 幸せの 最高の 境地

みんなで 果てしない 夢や 希望を 追いかけよう!
美しく咲く花 やさしく吹く風 すべての自然の恵みは
いつも やさしく そんなふうなこと 語りかけている

だから わたしは 転がる 石が好き
So I like rolling stones

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☆参考・文献・資料☆

1.寂聴訳 絵解き般若心経  瀬戸内寂聴  朝日出版社
2.『般若心経』 2013年1月 版 (100分 de 名著)  佐々木閑(ささきしずか)

≪つづく≫ --- 128章 おわり ---

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