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タイトル:雲は遠くて 127章 All We Need Is Love (愛こそはすべて)   2017/07/09


127章 All We Need Is Love (愛こそは すべて) 

 7月7日の土曜日。真夏のような晴天で、南風、気温も34度ほどと暑い。

 午前11時を過ぎたころ。

 川口信也は、女優として人気もある沢口貴奈(さわぐちきな)と、
待ち合わせの約束をしている≪農民カフェ 下北沢店≫へ向かって歩いている。

そのカフェは、下北沢駅の西口から、200メートルばかりの、
徒歩で2分の、民家をそのまま改装したような一軒家ダイニングだ。

 沢口貴奈(さわぐちきな)は、信也が課長をする外食産業のモリカワの傘下(さんか)の、
芸能事務所モリカワ・ミュージックに所属する売れっ子の女優だ。 

 沢口貴奈は、1993年、11月7日生まれ。23歳。身長161センチ。

 川口信也は、1990年2月23日生まれ。27歳。身長175センチ。

 信也と貴奈(きな)は、知り合って、ちょうど10年の月日が経(た)つ。

 信也は山梨県の韮崎(にらさき)市に両親の家がある。
 
 貴奈は、韮崎市に隣接(りんせつ)する甲斐市(かいし)竜王(りゅうおう)に両親の家がある。

 信也が高校3年生のときには、貴奈は中学2年であった。

 そんな当時、信也は、高校の文化祭やライブハウスなどで、ロックバンドの演奏をやっていた。

 貴奈は、ロックファンで、信也のバンドの追っかけでもあった。貴奈は、中2にしては、
スタイルもいい大人っぽい少女だった。
信也のバンドが出演する文化祭やライブハウスを、よく追っかけて、見に行っていた。

 ふたりは、アドレス交換もしたりして、メールもよくしていた。
ふたりは、すっかり、意気投合していた。
貴奈のほうは、信也に恋心をいだいていた、信也にはほかに好きな女の子もいた。

 そんな貴奈に、お互いに社会人になったばかりのある日、信也から、
≪貴奈なら、いまの会社勤めより、うちのモリカワミュージックっていう芸能事務所に、
所属してさあ。
女優やタレントっていう仕事をしてるのほうが、きっと楽しいかもね。
貴奈なら、そんな芸能界って向いているんじゃないのかな?≫というメールがあった。

 貴奈は、≪そうね!しんちゃんと同じ下北沢に住めるんだもの、
わたし、女優に挑戦してみようかしら!≫と、歓(よろこ)んで、メールで信也に返事をした。

 そんな調子で、またたく間に、東京にやってきて、現在モリカワミュージックに所属して、
現在、貴奈は、約3年という短い期間で、売れっ子で注目の人気女優になっている。

 貴奈は、店内で待っていた。ふたりは、田舎にいるような個室席でくつろいだ。
アイスティーやスープカレーなどを注文した。

 「しんちゃん、すばらしい曲をつけてくれて、ほんと、ありがとう!
しんちゃんって、やっぱり、すごい才能があるよね。
わたし、しんちゃんのことが、好きになるばかりだわ!」

「あっははは。貴奈ちゃんの詩がいいんだよ。まさか、ビートルズの名曲の
≪All You Need Is Love≫(愛こそはすべて)と、思わず間違えるような、
≪All We Need Is Love≫ (愛こそはすべて)なんていうタイトルの歌を作るとはね!
驚いたよ。あっははは。 
おれもね、こんな世の中を、平和に良くしていくためには、≪愛≫が1番に大切なんだろうなって、
つくづく感じていたところなんだよ。
ビートルズのは、≪All You Need Is Love≫は、1967年のシングル曲で、
ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500では、
362位にランクされているんだよね。
あの当時は、世界もまだのんきなムードだったのかな、
テロや格差とかの貧困や自然破壊とかの問題も、
世の中のシステムそのものが、どこか人間的じゃないとか、
疑問視されたりね、そんな現代的な問題の山積も、
あの当時は今ほどじゃなかったから、のんきだったんだよね、きっと」

「そうなのね。ビートルズのころは、いまよりも、平穏だったのかしらね。しんちゃん」

「貴奈ちゃんや今を生きる若い人たちって、問題が山積で、かわいそうだと思うよ、おれは。
ビートルズのあの≪All You Need Is Love≫(愛こそはすべて)の詞の内容は、
≪あなたたちには愛こそが必要≫だって、感じだと思うけど、
いまはそんなのんきな雰囲気じゃないよね。
今度の貴奈ちゃんのデヴューーシングルの、
≪All We Need Is Love≫ (愛こそはすべて)のように、
≪すべてのわたしたちには、愛こそが必要≫なんだよね。
まあ、むずかしいこと言ってごめん。
貴奈ちゃんは、すばらしい詞を作ったよ。センスがあるよ。
おれの曲作りは、なぜか、ビートルズの歌が、頭の中にあって、
ビートルズに似ないようにと、苦労したけどね。あっははは」

「しんちゃんの曲は、ほんと、イカしていて、最高よね。
歌っていても、すごく感情を入れやすかったの。ありがとう、しんちゃん!
あの歌詞は、しんちゃんのことを思いながら、作っただけなのよ。
わたし、しんちゃんのことが、いつまでも大好きなのよ。あっははは」

 貴奈は、そう言って頬を紅(あか)くする。

「ありがとう。おれだって、貴奈ちゃんのことは、大々、大好きだよ。
まあ、この歌で、貴奈ちゃん、歌手デヴューするんだけど、
デビューシングルとして、オリコンチャートでも、かなりいいとこまで、
ランキングでいけると思うよ」

「しんちゃんの作ってくれた曲、大人のバラードっぽくって、かっこいいから、好き!
きっと、みんなも気に入ってくれるわ!」

 貴奈は、瞳を輝かせて信也を見る。

「いつのまにか、貴奈ちゃん、歌もうまくなったよね」

「あら、まあ、しんちゃん、ありがと!うっふふ」

「貴奈ちゃんの歌手デヴューが楽しみだね!あっははは」

 ふたりは明るい声で笑った。

ーーー

All We Need Is Love (愛こそは すべて)  作詞 沢口貴奈
                               作曲 川口信也

一日の 終わりを 告げる 大空の 夕焼け
真っ赤で きれいな 夕陽が 静かに 沈んでいく・・・
やさしい風も吹くわ あなたと わたしの 住む街
  
わかっていたの わたし 始(はじ)めから
わたしには わたしの 行く道があるんだもの
あなたには あなたの 行く道があるんだもの・・・

わたしたちは まだまだ 若い 青春の真(ま)ん中だもの!
幸せの 人生のゴールを目指すなんて 早すぎるんだし・・・
それぞれの 道を歩くことは ごく自然なことだから・・・

わかっていたの わたし 始(はじ)めから
わたしの愛は 本物だけど きっと叶(かな)わないだろうって・・・
でもね 止(と)められなかったの この気持ちは・・・

いまも この出会いが 運命的 神秘的って 信じているわ
愛されることの 大切さ 愛することの 大切さ
あなたと 出会って 生まれて 初めて 知ったんだもの!

わかっていたの わたし 始(はじ)めから
でもね あなたを いつも いつまでも 愛しているわ
あなたへの愛は 永遠なのよ!愛こそが すべてだもの!

All We Need Is Love (わたしたちに必要な すべては愛)
All We Need Is Love (愛こそは すべて)

≪つづく≫ --- 127章 おわり ---

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