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タイトル:雲は遠くて <67> 17章 世田谷区たまがわ花火大会 (7)  2013/08/13


17章 世田谷区たまがわ花火大会 (7)

5時30分になった。天気も、夏らしく、暑(あつ)い。

都立の深沢高校(ふかさわこうこう)の、
和太鼓部(わだいこぶ)の演奏(えんそう)が、
大空や、会場の芝生(しばふ)の運動場に
「ドドドドーン!ダダダダダッ!」と
大反響(だいはんきょう)する。

オープニング・セレモニー(式典)は、
開始された。

森川純の兄の、森川良(もりかわりょう)と、
ポップス・シンガーの白石愛美(しらいしまなみ)が、
定員4人の、まるいテーブルで、
オープニング・セレモニーに、すっかり、見入(みい)っている。

白石愛美(しらいしまなみ)は、今年の4月で、20歳(はたち)。
雑誌やテレビなどのマスコミで、日本の、マライア・キャリー
といわれているほど、
知名度(ちめいど)も、急上昇中(きゅうじょうしょうちゅう)だった。

その、抜群(ばつぐん)の、歌唱力(かしょうりょく)や、歌声を持つ、
白石愛美(しらいしまなみ)を
見(み)つけて、育(そだ)ててきたのは、
モリカワ・ミュージック・課長をしている、
森川良(もりかわりょう)といえるかもしれない。

モリカワ・ミュージックでは、デモテープや、ライブハウスなどで、
日々(ひび)、新人の発掘(はっくつ)に、力を入れている。

ポップス・シンガーの白石愛美(しらいしまなみ)や、
ピアニスト・松下陽斗(まつしたはると)は、
モリカワの全店と、モリカワ・ミュージックが、
全面的支援している、
有望(ゆうぼう)な、新人・アーチストだった。

森川良(もりかわりょう)に、はじめて、会ったときは、
髪(かみ)も、
ぼさぼさで、あまり、ぱっとしない、第一印象(だいいちいんしょう)
だけしか、
頭の中に残(のこ)らない、白石愛美(しらいしまなみ)であった。

白石愛美(しらいしまなみ)が、森川良(もりかわりょう)に、
頼(たの)もしさや、男らしさや、
特別な愛情を抱(いだ)くようになるまでは、
時間はかからなかった。

いまでは、ふたりは、同じ目標(もくひょう)に向かって、
燃えている、同志(どうし)であり、
仕事にも、恋にも、激(はげ)しく、燃(もえ)えている、
最愛(さいあい)の、
恋人同士(こいびとどうし)であった。

「花火って、一瞬(いっしゅん)だから、儚(はかな)くって、
考えていると、哀しくなるくらいだわ。
でも、儚(はかな)くって、一瞬だから、
美しいのかしら?」

白石愛美(しらいしまなみ)は、キラキラと、
瞳(ひとみ)を、輝(かがや)かせて、
微笑(ほほえ)むと、
森川良(もりかわりょう)に、
そんな問(と)いかけをする。

「美しいものは、一瞬だろうし、永遠なんだろう、きっと。
こういう、深遠(しんえん)なことは、
論理的に考えてたりするのは、バカな話さ。
詩的(してき)に、感覚的(かんかくてき)に、
解決する問題さ。
空があるように、地面があるように。
夜があるように、朝が来るように。
だから、一瞬もあるし、永遠もあるってね。
愛美(まなみ)ちゃんの、美しい歌声を、
何度も、永遠のように、
再現できて、楽しめるなんていうのは、
よく考えたら、
奇跡的(きせき)なことなんじゃないかな!?
おれ、そんなことに、すっげえ、幸福、感じるよ。
あっはっはは」

森川良(もりかわりょう)は、そういいながら、
やさしい声で、わらった。
そして、白石愛美(しらいしまなみ)の手を、握(にぎ)った。

「ありがとう。良(りょう)ちゃん。わたし、いまの言葉、
とても、うれしい・・・」

言葉(ことば)に詰(つ)まった、
白石愛美(しらいしまなみ)の頬(ほほ)に、
きれいな、涙(なみだ)が、ひかった。

夜の7時。
グランドオープン・・・の、開始だった。

ドーン、ドーン、ドーン!
バチ、バチ、バチ!

花火の、オープニングを飾(かざ)る、
連発仕掛(れんぱつしかけ)花火の、
スター・マインが打ち上がった。

何十発もの、花火玉(はなびだま)が、
テンポもよく、つぎつぎと、
打ち上げられて、夜空(よぞら)に、色あざやかに、
花が咲(さ)いては、消えていく。

夜の7時55分。
グランド・フィナーレ(最後の幕)の、
クライマックス、最高潮(さいこうちょう)。

都内(とない)でも、屈指(くっし)の規模(きぼ)を誇(ほこ)る、
8号の花火玉(はなびだま)の、100連発が、
次々と、打ち上げられる。

時(とき)が、止(と)まったように、夜空(よぞら)が、
大輪(たいりん)の花たちで、明るく染(そ)まる。

連発仕掛(れんぱつしかけ)花火の、
スターマインが、打ち上がって、
金色や銀色に、キラキラと、光輝(ひかりかがや)く。

滝(たき)の流(なが)れのような、空中(くうちゅう)の、
ナイアガラが、
夜空(よぞら)に、出現(しゅつげん)する。

夜の8時には、およそ、6500発の花火が、すべて全部、
打ち上げられて、全プログラムは終了した。

≪つづく≫ 

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