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タイトル:雲は遠くて <35>11章 ミュージック・ファン・クラブ (3)  2013/07/06


11章  ミュージック・ファン・クラブ (3)

どこか、いつも、内気(うちき)と大胆(だいたん)との、
アンバランスが目立つ、谷村は、
目を大きくして、片手で頭をかきながら、
ぺこっと頭もさげて、愛想(あいそ)わらいをふりまいた。
背の高い、谷村のそんな仕草(しぐさ)に、
女子の部員も、男子の部員も、くすくすと、あかるく笑った。

「そうですよね、谷村さん。おれらは、OB(卒業生)に、尊敬できる、
純さんや信也さんたちがいて、ラッキーですよね!」
と岡。
岡の、フォロー(補足)がうまいところは、みんなから好(す)かれた。

「岡ちゃん、おれたちは、なんで、純(じゅん)さんや信也(しんや)さん、
翔太(しょうた)さん、明(あきら)たちの、
クラッシュ・ビートのみんなを、尊敬して、信頼しているのかな?」
と幹事長の、3年生、矢野拓海(やのたくみ)。

「あまり、考えたことないっす、拓(たく)さん」と岡昇(おかのぼる)。

「クラッシュ・ビートって、みんな、ビートルズが好きで、ビートルズの
コピーばかり、熱心にしていたんだよ。大学1年から4年まで、ずーっと。
もう完璧(かんぺき)というくらいに、コピーしちゃってさ。
それをやってきたから、いまでは、プロとしてもやっていける実力の
バンドになっているんだよね。それって、コピーのおかげってもんで。
コピーって、大切だってことなんだよね。
サザンの桑田佳祐(くわたけいすけ)さんだって、
すごく、コピーとかで、練習したんだろうね。
じゃあないと、オリジナル(独創的)な作品も作れないんだと思うよ。
クラシックの天才、モーツァルトも、ほかの人の音楽の、
真似(まね)つーか、コピーというか、
模倣(もほう)というか、得意(とくい)だったらしいんだ。
やっぱり、模倣や、コピーこそが、
オリジナル(独創的)への道って、ことなのかなあ。
天才は、そんな、芸術創造の秘密を教えてくれている気がするよ。
クラッシュ・ビートも、おれにそんなことを教えてくれたんだよ」

と、矢野拓海(やのたくみ)が、言葉をとぎれとぎれにいうと、
「なるほど、さすが、拓ちゃんだ」と、副幹事長の
大学2年の谷村将也(たにむらしょうや)が、
「ほんと、すごいです、拓さん」と、大学1年、会計担当の
岡昇がいって、ふたりは、マジで感心した。

その話を、そばで聞きいている、
大学1年の森隼人(もりはやと)が、ちょっと早口に、
3人の会話に入り込むように、しゃべりだした。

「まったく、さすがですね、拓海(たくみ)さんの考え方は。
おれなんかも、女の子に、モテたいから、
音楽やっているって感じですよ。岡も、そんなもんだろ。
拓海(たくみ)さんのお話を聞いていると、
おれも、考え直(なお)さないといけない思えてきます」

「男なんて、ふつう、そんなもんだよ、森ちゃん」と岡がいった。

「みんな、女の子にモテたいのが、本心だよ。森ちゃん」
と谷村も、自己卑下(じこひげ)ぎみに語る、森を、かばった。

「やっぱり、そんなものでしょうか?
でも、それ聞いて、安心しました。
それにしても、拓海(たくみ)さんのお話はいつも深いですよね。
ぼくは、いつも勉強になりますよ。
さすが、僕らのサークルの幹事長ですよ。
理工学部の先輩としても、いつも尊敬しています」と、森隼人(もりはやと)。

「森ちゃんは、優秀だから、ぼくが、いろいろと、刺激を受けるくらいだよ」
と矢野拓海(やのたくみ)。

「拓さんに、褒(ほ)めていただけたようで、うれしいです。
拓(たく)さん、女の子とのつきあいって、むずかしいですよね。
ぼくには、どんなふうに、つきあったらいいのか、いまもわからないです。
男は女とつきあうことで、成長するとか、いいますけど、
たしかに、女の子には苦労しますよね、だから成長できるのかも」
といって、森隼人(もりはやと)は、
矢野拓海(やのたくみ)たちに、照(て)れるようにわらった。

≪つづく≫ 

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