メルマガ:小説『さなだむしの自画像』
タイトル:NO5  2009/05/09


こんばんは、さなだむしです。


小説『さなだむしの自画像』の続きをどうぞ・・・。



「今すっごーい不思議な気分。

さなちゃん、何してたんよ。

体育の時も雪降ってたんで。

マラソン、めちゃ寒かったし。

さなと一緒に走ろうと思ってもおらんし。」
 


「ああ、さっき怒られた。

ってゆーか愚痴られた。

それでも真面目に来ようって気ないけど。

どろれすは馬鹿だね。

ウチは癌じゃないよ。

あいつの虫、ドロレス顎口虫は皮膚に症状が出るはず。

終宿主は豚、イノシシ。

そういえばあいつ豚を思い出させるほどメタボ。

自分も厄介な寄生虫だということに気づいてないね。」
 


「さなちゃんと私は主に魚からきてるもんねー。

どろれすは豚だもん。

私も豚どろれすムカツク。

魚は水の中をすいすい泳ぐものよ。

豚は太らされて食べられるために飼われているもんね。

がっこうちゅうが
私たちの自由な青春なんかに歩み寄れるわけないね。」
 


「一面真っ白。息が凍るっ。

なんか周りの人間が、
本当に生きているみたいに見えないんだけど。

どろれすも、ふぃらりあも、ぎょうちゅうも、
かいちゅうも、せんちゅうも、いとじょうちゅうも、
みんなロボットみたい。」



 「わかるーっ。

自分が箱庭かなんか遊ばれているみたいなんでしょ。

仕方ないよ。

人間は寄生虫よ。

宿主の外には出れないね。

宿主と共存する道を選ばなきゃ。」
 


「世の中は本物かな。

なんかウチは自分以外の人間が
ちゃんと自分みたいに感情があって、
血が通っていて、
温かい生物だなんて信じられない。

どろれすなんか頭を真っ二つに切ってやったら、
変な機械がつまっていて、
ジー、ジー、って動いてそう。」
 


「目が覚めたら
『ああ、夢でよかった』
と言ってるよ。

明日の体育は変な夢見ないで絶対来てね。

私今日先輩のばってら君と一緒に帰るから。」



あにさきすは最近憧れの先輩と付き合っていた。

さなだむしとはあまり一緒に過ごす時間は
格段に少なくなっていた。

あにさきすは思ったことを率直に表現する明るい性格で、
さなだむしにとっては少し無神経に映ることがあった。

あにさきすと一緒にいてイライラする気持ちと、
あにさきすをとられて淋しい気持ちが、
ほんのわずかな間にさなだむしの中に揺れ動いていた。






(この続きはまた今度・・・。)

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