メルマガ:小説『さなだむしの自画像』
タイトル:NO41  2009/04/21


こんにちは、さなだむしです。

小説『さなだむしの自画像』の続きをどうぞ・・・。



しかし、大人が諭し、自分が拠り所にしている
「将来」、「社会」という言葉に
今の苦しみの重みを心から、かけられるのだろうか、
と考え出していた。

世の中はどうしようもない不景気で、
信頼のない政治家や官僚に
自分達の生活を預けなければならないときている。


何か壁がある。

さなだむしは本当は壁の向こう側で生まれたかった。

生きている限り自由になれない。

嫌なところ、どうしようもないところを
無視して生活しなければならないほど、
人々は追い詰められている。

そうして、
もっともらしい生活を送っているフリだけで、
何かあってもこの社会を憎むことしか出来ず、
どうしようもならないことを皆知っている。


そう、この世の中はどうしようもない黒い影をもっている。

人間たちは四方を透明な壁に囲まれたまま途方にくれて立っている。

どうしたらいいんだろう。

どうしたら自分にのしかかってくる黒い影を取り除くことができるのか。


1月20日、月曜日。

さなだむしは、学校に行かず、午前11時頃まで寝ていた。

昨日寝たのは午前1時だから、ちょうど10時間睡眠。

寝すぎて気持ち悪くなる。

朝ごはんも昼ごはんも食べずテレビのワイドショーを見る。


妙なニュースが多かった。

通り魔。

誘拐。

強盗。

オレオレ詐欺。……。

特に自分と年の近い人が当事者になっている時、
さなだむしは不思議な気分だった。

そういう世界で生きている違和感を忘れたかった。

今から学校に行く準備をしようとは思えなかった。


自転車で30分かけて、まらりあ駅に着いた。

さなだむしはここで人間観察をしようと思った。

人間を見る。

あのせわしなく動いて、
次々にさなだむしの前を通り過ぎていく足たち。

おじさんもいれば、おばさんもいて、
学生とか、怪しい人たちとか、
みんな考えていることは様々で、
誰にも理解されないことを多少は嘆いている人たちばかりだ。
……というようなことを2時間くらい考えながら、座り込んでいた。


午後2時。

寒くなってきた。

近くの焼き鳥屋に入って、
あるものを適当に食べたら、
次第にさっきの事件のことも、
ああいう人もいるんだなというように思えてきた。

さなだむしは、県内有数の進学校にいて、あと2年で卒業なのだ。

勉強して、大学に行って、いい会社に入って、幸せな結婚をして死んでいく。

自分はそれができるし、それが一番いいのだと思うことにした。

今から学校に行こうと思った。


(この続きはまた今度・・・。)

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