メルマガ:クリスタルノベル〜百合族
タイトル:クリスタルノベル〜百合族 Vol. 056  2010.8.14  2010/08/14


☆。・゜゜・。♪゜・。。・゜☆。・゜゜.。.:*

  ◆∞◇                    ◆∞◇
   ◇∞◆  クリスタルノベル〜百合族〜    ◇∞◆
    ◆∞◇      Vol. 056  2010.8.14      ◆∞◇


       ♪゜・。。・゜☆。・゜゜♪・゜゜・。☆。゜・。.。.:*


                    ◇∞◇ タイトル ◇∞◇ 
            
             ♪ − ビアン・スキャンダラス


 翌日、生徒手帳を無くしていることに気が付いた時、菜々美は頭をハンマー
で殴られたかのような激しい衝撃に襲われた。
 まさか、昨日、あの路地裏で……?
 充分にあり得る話だ。あの不良少女の手を振り払った時や、全力疾走で逃げ
出した時に、落としていても不思議ではない。
 だとしたら、名前も住所も通っている学校も、全て割れていることになる。
 菜々美は泣きそうになりながら、一人で頭を抱えた。唯に相談するという手
もあるが、貴重な夏休みにこんな深刻な話を持ち出されては、さすがの彼女も
迷惑だろう。
 結局菜々美は、不安に襲われながらも黙っていることにした。案外、自分の
部屋にでも置き忘れているだけかも知れない、と自分に言い聞かせた。
 結局、あれ以来何も起こらなかった。あの不良少女が仲間を引き連れて自宅
にまで押し寄せてくるのではないかとびくびくしていたが、平和のうちに夏休
みは終わった。
 始業式を終えて菜々美が帰宅準備をしている時、いくつもの大型バイクのけ
たたましい排気音が教室の四方から聞こえてきた。生徒たちが大騒ぎして窓の
外を見ている。嫌な予感に駆られ、教室の窓から様子を窺うと、何台ものバイ
クが、学校の外周を低速で周っている。菜々美を待ち伏せしているのは明らか
だった。
 ライダーはヘルメットなど被っておらず、暴走族が着るような特攻服に身を
包んでいる。顔を良く見ると、菜々美と同じ高校生くらいに思えた。確認でき
る限りでは、みんな女だった。いわゆる女版の暴走族、レディースというやつ
だろうか。あの不良少女がバイクの後部座席に座っているのが見えた。まさか
レディースだったとは……。
 まだ教室に残っていた半数くらいのクラスメート達が、口々に騒ぎ立て始め
る。彼らの声にはいくらかの不安が混じっていたが、大半は何かの事件を期待
して面白がっているのが感じられる。
 それに苛立っている余裕は、菜々美にはない。とにかくどうすればいいかと
いうことで、頭が一杯だった。まさか校内に突入してきたりはしないだろうが、
早くなんとかしなければ、と気持ちは焦るばかりだった。
「あれ、なんのさわぎかしら?」
 菜々美の横で唯が怯えた表情で彼女たちを見ていた。菜々美もどうしてよい
かわからずオロオロしていると、パトカーのサイレンの音が遠くから聞こえて
きた。誰かが警察に連絡したらしい。サイレンの音を聞き、バイクに乗った不
良少女たちは蜘蛛の子を散らすように校門の前から逃げ去っていった。
 いつの間にか、バイクの音は聞こえなくなっている。それでも念のためしば
らく様子を見ることにした。唯には「図書室で勉強するから」といってしばら
く時間をつぶしてから図書室の窓から学校の外の様子を伺った。
 いつもの静けさが学校を包んでいる。平和そうに小鳥の鳴き声が聞こえてく
る。壁の時計を見ると、もうすぐ五時になる。部活動もとっくに解散している
ようで、校内に人の気配はない。
「そろそろ閉めますよ」司書の女性職員にせかされ、菜々美は仕方なく図書室
から出た。
 早く帰って、明日からはお母さんに送り迎えをしてもらおう。事情を話せば、
きっと分かってくれる。とりあえず、家に帰ろう。
 念のため校門で耳を澄ませて辺りの気配を窺ってみたが、やはりバイクの音
はしなかった。さすがに、何時間も待ち伏せする気力はなかったのだろうか。
あるいは、菜々美がすでに帰ってしまったとでも思ったのかも知れない。
 さらに念には念を入れて、正門からではなく裏門から出て行くことにした。
我ながら慎重すぎると思ったが、それでも門を出る時は緊張した。
 学校を出て最初の曲がり角を折れると、道路の先で数人が固まって話をして
いた。菜々美は特に気にも留めず軽く考えて歩き続けた。急に複数の人影がこ
っちに向かって駆けて来た。
「おい! いたぞ!」
「捕まえろ!」
 菜々美は突然のことに硬直してしまい、簡単に取り押さえられてしまう。相
手は全員女だ。やはりみんな菜々美と同じくらいの高校生に見える。菜々美と
同じとはいってもそれは年齢だけの話で、黒髪セーラー服の菜々美とは違い、
彼女達は茶色や金色に髪を染め、いかにも暴走族ですと言わんばかりの特攻服
を着ている。
 不良達を町で見掛けるだけだった時は、嘲笑と侮蔑の対象でしかなかったが、
いざ牙をこちらに向けられると、紛れもない恐怖の対象になっていた。
 これから自分がどうなるのか見当も付かず、恐ろしくて歯がカチカチと音を
鳴らす。
「てめえ、コラ! 抵抗すんなよ!」
 怒鳴りつけられて、初めて気づいた。無意識に逃げようとしていたのか、掴
まれている手に力が入っていたようだった。
 この期に及んで逃げ切れるはずもない。菜々美は服従の意を示すように慌て
て力を抜いた。
 にもかかわらず、不良の一人が菜々美のお腹に拳をめり込ませた。菜々美の
生まれて初めて受ける暴力だった。
「うっ」
 強烈な鈍痛に息が漏れる。苦痛に耐えられずその場で崩れ落ちると、掴まれ
ている腕を引っ張り上げられ、無理矢理立たされる。
 あまりにも理不尽な暴力に、目尻から涙が零れ落ちた。それを見た不良達の
間から忍び笑いが起こる。誰かが携帯電話で仲間を呼んでいる。
「泣いてんじゃねえよ、バーカ」
 こんな低俗な連中に泣かされてしまい、悔しくて情けなくて、涙がポロポロ
と流れ落ちていった。
「ああ、こいつこいつ。このバカだよ、あたしを鼻血ブーにしてくれた大バカ
は」
 散々不良連中に小突かれた後、ようやくあの不良少女が姿を現した。どうや
ら彼女は別の場所で菜々美を張っていたらしい。
 菜々美の泣き顔を見ると、彼女は上機嫌で菜々美の頬をペチペチと軽く叩い
た。
「なに泣いてんの? 地獄を見るのはこれからだっつの」
 心底肝が冷えるようなことを平然と言い放つ。
「あ、ああ、あの……」
 菜々美は必死になって謝ろうとするが、思うように舌が動かない。
「ん? なに? 言いたいことがあるなら言ってみ?」
「ご、ごめ、ごめん、なさい。ご、ごめんなさい」
「あ、それね。その話ね。その話はさ、あたしらのアジトで聞いてやるよ。ち
ょっと付き合いなよ。そこでワビ入れてもらうからさ。わかった?」
 ここで「嫌です」と言ったところで、強制連行されるのは目に見えている。
「分かったのかって聞いてんだろうがよ! どうなんだよ、おい!」
 菜々美は震えながら、小さく「分かりました」と涙を流しながら呟くように
言った。



≪無料メールマガジン:アーケロン通信≫
オリジナル官能小説メールマガジンです。
登録は無料です。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 
http://www.alphapolis.co.jp/maga.php?maga_id=1000563


オトメ文庫  ガールズラブ  電子書籍
http://www.dmm.co.jp/digital/book/lovelymei-001


レズビアンコミック
http://www.dmm.co.jp/digital/book/-/list/=/article=keyword/id=4013/media=comic/ lovelymei-001



♪=======================================================

  ご意見ご感想ご質問等々お待ちしております。

  発行者      : 春野 水晶 

  * タイトル:『クリスタルノベル〜百合族〜』
  * 発行周期:不定期(週2回発行予定)

========================================================♪

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。