メルマガ:クリスタルノベル〜百合族
タイトル:クリスタルノベル〜百合族 Vol.020  2009.9.5  2009/09/05


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   ◇∞◆  クリスタルノベル〜百合族〜    ◇∞◆
    ◆∞◇      Vol.020  2009.9.5       ◆∞◇


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                    ◇∞◇ タイトル ◇∞◇ 
            
             ♪ − 星の降る夜空の向こう


 コーヒーを飲みながら、礼子は私を見た。私の体をじわり、と絡め取ったも
のがある。
「妬いたんでしょ」
 礼子は囁いた。声が愛撫するように背筋を駆け上り、私の喉が干上がった。
「私が好き?」
 声が出なかった。考える前にうなずいていた。
「私とセックスしたい?」
 私は耳を疑った。礼子はそう言ったのだ。照れ笑いもせず、至極普通に、ま
るでラーメンとハンバーガー、どっちを食べる? とでも言うような口調で。
 ののしればよかった。頬をひっぱたいてもよかったかもしれない。どちらも
しなかった。私は頷いた。
「じゃ、行こうか」
 礼子が私の手を取った。びくりとして彼女を見上げる
「どこに?」
「私のアパート」と言って微笑んだ。
 女子高生同士がセックス? しかも相手はついこの間、知り合ったばかり。
だが、礼子は平然とレジで支払いを済ませ、私が来るのを待っている。

 女同士で経験した場合、それでも私は自分のことを処女といっていいのだろ
うか。
 男に興味がないわけではなかったし、処女を失うについては、それなりの予
定や計画もあったりしたが、今、それらの総ては破棄されて、この美少女にゆ
だねられているのだった。
 混乱した頭で礼子の後を歩くうちに、もしかしたら、これは幸運なのかもし
れないという気持ちに変わってきた。今までは梨香のことしか見えていなかっ
たが、考えてみれば目の前を歩く礼子にしても、一生に一度お目にかかれるか
どうかの美少女なのだ。この先こんな機会は二度とないだろう。そう思うと度
胸がすわった。前を行く礼子の細っそりした後ろ姿を見ながら、私の心臓は破
裂しそうに脈打っていた。
 礼子のいる下宿は、駅一つ離れて畑の中に立つ、低層アパート群の一つだっ
た。下宿と言うから棟続きの木造アパートのようなものを連想していたのだが、
ごく普通の2DKで、高校生の一人暮らしとしては少しぜいたくのようにも思
われた。一つを寝室兼勉強部屋に、もう一つをリビングに使っているらしかっ
たが、どちらの部屋にもおびただしい本、雑誌の類が積み上げられて山を成し
ていた。見るともなしに背表紙に目を走らせたが、興味の持てそうな本は一冊
も見つからなかった。
 礼子が湯を沸かしている間に蛇、とだけ表紙にある本を好奇心からめくって
みたが、活字だらけの中に植物の図版とか、沖縄らしい写真があるくらいしか
わからず、元に戻した。
 礼子がインスタントコーヒーを作ってテーブルに置く。
「何か食べる?」
「ううん、いい」
 辺りを見回している私を見すかすように「汚ない部屋でしょ」と笑った。
「私の部屋だって、似たようなものよ」
「もしかして、初めて?」
 礼子の言葉の意味に気づいてドキッとしたが、平静を装い、コーヒーを啜り
ながら何気なく「うん」と答えた。礼子の顔がやにわに近づいて、カップを取
り落としそうになった。
「男とは経験あるの?」
 彼女の問いに、黙って首を横に振った。
「処女なんだ」
 礼子は真顔で言った。私は全身燃え上がるかと思うほど、羞恥に駆られた。
「うん」
 小さな声で答える。
「初めての相手が女で後悔しない?」
「うん」
 礼子は立ち上がり、押し入れから布団を敷いた。手早く服を脱いでいくのを
見て、私も背を向けて下着姿になった。礼子は毛布から裸の胸を出して私を待
っている。白くて艶のある大きな乳房だった。気おくれしながら布団にすべり
込むと、礼子は下着の上から私を抱きしめ、簡単に下着を外してしまった。




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  発行者      : 春野 水晶 

  * タイトル:『クリスタルノベル〜百合族〜』
  * 発行周期:不定期(週2回発行予定)

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