メルマガ:クリスタルノベル〜百合族
タイトル:クリスタルノベル〜百合族 Vol.018  2009.8.22  2009/08/22


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   ◇∞◆  クリスタルノベル〜百合族〜    ◇∞◆
    ◆∞◇      Vol.018  2009.8.22      ◆∞◇


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                    ◇∞◇ タイトル ◇∞◇ 
            
             ♪ − 星の降る夜空の向こう


 そろそろ、と少女が促す。上映時間が近づいている。
 客席に入る重い扉を開けながら、少女は「私、礼子っての。原島礼子」
と、名乗った。
「あたし、嶋崎美紀」
 言いながら美紀は自分の声がかすれているのに気づいた。相手は自分と背丈
も違わないような子供だと思いながら、美紀の早い鼓動は一向に静まることも
なく、呼吸が苦しくなるほどの緊張を美紀に強いていた。

 私は礼子と並んでスクリーンを見た。始めから義理と暇つぶしで買ったチケ
ットだ。アニメーションあり、実写あり、長短取り混ぜての自主映画。TVを
点けっ放しにして見ていた、程度の感想しか私には与えなかった。
 最初のアニメーションで、少しグロテスクなシーンがスクリーンに大写しに
なった。礼子はびくっとからだを震わせて、私の手を握った。私は内心びっく
りしたが、気づかないふりをした。君の悪いシーンが終わっても、礼子は手を
離そうとしなかった。私はその手を振り払うべきか、そのままにしておくべき
か迷ったが、結局、そのまま放っておくことにした。
 彼女は私の手をなかなか離さなかった。彼女の掌の汗を感じ、私はなぜかど
きどきしてきた。握り合っている手を通じて、私の心臓の鼓動が彼女に伝わら
ないか気になった。やがて、身体の芯が鈍く疼くのを感じた。
(あ……)
 私ははっきりと感じた。濡れてきたのだ。私は慌てて腿を閉じた。
 横に座る彼女を盗み見た。肩までのさらっとした髪、通った鼻筋。ボーイッ
シュな素敵な女の子。
(だめ……)
 私は彼女に気づかれないよう、静かに深呼吸して呼吸を整えようとした。し
かし、胸の高まりは止まなかった。私はいつの間にか、妄想の中で彼女に抱き
しめられていた。




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  発行者      : 春野 水晶 

  * タイトル:『クリスタルノベル〜百合族〜』
  * 発行周期:不定期(週2回発行予定)

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