メルマガ:クリスタルノベル〜百合族
タイトル:クリスタルノベル〜百合族 Vol.015  2009.7.26  2009/07/26


☆。・゜゜・。♪゜・。。・゜☆。・゜゜.。.:*

  ◆∞◇                    ◆∞◇
   ◇∞◆  クリスタルノベル〜百合族〜    ◇∞◆
    ◆∞◇      Vol.015  2009.7.26      ◆∞◇


       ♪゜・。。・゜☆。・゜゜♪・゜゜・。☆。゜・。.。.:*


                    ◇∞◇ タイトル ◇∞◇ 
            
             ♪ − 星の降る夜空の向こう


 本当に地球はこれでいいのか? そう思うほど温暖化の影響で暖かい日が続
いていたのに、その日は十二月になったばかりだというのに寒い日だった。寒
くて、手が完全に凍りそうだった。
 指が思うように動かなかった。楽譜を見て、弾こうと思えば弾けるのだが、
どうにも指がついていかない。
「手が冷たいんでしょ?」
 梨香が、ユーフォを吹くのをやめて近づいてきた。
「ははは、やっぱ、冬はこうでないとね。地球は大丈夫そうだ」
 そんな冗談を言う私を、梨香は心配そうに見つめていた。
「私、カイロであっためてあるんだ」
 そう言って、彼女の細い手が私の手に重ねられた。包み込むみたいに、温か
い手が私の手を温めた。
 私の胸は高まった。心臓の音が梨香の耳に届くんじゃないかというほど、私
の心臓が胸の奥で激しい鼓動を繰り返した。
 この子、何の意識もしないで、こういう事が出来るの?
 私はかなり動揺していた。
 梨香の顔もかなり近いうえに、手まで握られている。
「……」
 何も言えなくて、そのまま梨香の手に私は温められていた。
 温かい……。
 これほど心から温かいと思ったのは、いつぶりだろうか。
 ずっとこのまま梨香の手に触れていたいと思った。
 でも、私が言ったのは自分の心とは正反対の言葉だった。
「……カイロ貸して」
 もっと、ずっと梨香の手を握っていたかったけど、彼女の顔があまりにも近
いから、私はたまらずそんなそっけない言葉を吐いた。
 ほんの数秒手を握られていただけなのに、私には相当長い事そうしていたよ
うに感じられた。
「……いいよ」
 梨香の顔がやや寂しそうに見えた。
 スッと自分のブレザーのポケットから使い捨てカイロを取り出して私に握ら
せた。温かかったけど、梨香の手みたいな柔らかい感触は無かった。貸しても
らったカイロを握って、何とか伴奏を弾けるほどに指は動くようになった。
「うまい、うまい! そんなに上手いなら別の曲でもピアノやればいいのに」
「そうかな? ピアノって、何か苦手なイメージがずっとあって。本当は皆の
前でこれやるのも、抵抗があるの」
 実際、私は、通っていたピアノ教室で一番うまかった。
「そんな事ないですよ! 美紀さん、最高にかっこいいです。かっこいい……」
「別にかっこよくないよ……それに、私、梨香みたいに綺麗じゃないし」
 こんな事言う必要なかったけど、かっこいいとか言われて恥ずかしくて、つ
い自分のコンプレックスを話してしまった。
 中学にいた頃も男の子にモテたことなくて、高校に入ってからも女の子に手
紙とかもらったことも無くて、いくら楽器がうまくても、地味にチューバを吹
いてる私は、あれだけ少ない人数の中でも大して目立たなかった。
「変な事気にしてるんですね。 美紀さん、十分かわいいですよ。私が男だっ
たら、付き合ってくださいってお願いしているところですよ? 私なんて、楽
器だって正直、限界感じてるぐらい才能無いって分かってるし。私なんかより、
先輩の音楽の才能は相当だと思います」
 私はどこか落ち込んだ気分だった。
いつも笑顔で、何の悩みも無いように見えてたけど、彼女なりに葛藤はあるみ
たいだ。
「将来に通じるような才能があるといいのになあ……っていつも思うんだけど
……見つからないね」
 将来……。
 十七歳の私達に広がる未来の図。
 高校を卒業して、私は何をやってるだろう。
 大学生でもやってるだろうか。
 それで、そこを卒業したら、どこかに勤めてOLにでもなってるんだろうか。
 夢なんか持ってなかったけど、梨香の言葉で自分の将来をやや真面目に考え
た。



オトメ文庫  ガールズラブ  電子書籍
http://www.dmm.com/digital/book/-/list/=/article=keyword/id=90029/media=n
ovel/lovelymei-001

放課後ガールズラブ
http://www.dmm.co.jp/mono/dvd/-/detail/=/cid=snfd005/lovelymei-001

同性交 ガールズラブ
http://www.dmm.co.jp/mono/dvd/-/detail/=/cid=h_100smow099/lovelymei-001

♪=♪=======================================================♪=♪

  ご意見ご感想ご質問等々お待ちしております。

  発行者      : 春野 水晶 

  * タイトル:『クリスタルノベル〜百合族〜』
  * 発行周期:不定期(週2回発行予定)

♪=♪========================================================♪=♪

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。