メルマガ:パッピパッピにしてやんよ!
タイトル:蝶サイコーな第25回目『メリクリ企画■ネコは噛み付くものだから■』  2008/12/24


気が付いてみたらクリスマス直前じゃないですか。
サイト開設から初めてのクリスマス、そしてお正月。

なんか相方とも一周年記念だし。
すごい高いプレゼント貰ったのにこっちはプレゼントを忘れるという……今年一番やっちゃいけないうっかりをかましました。

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パピハピバ本の締め切りも決まったようですし、来年も忙しくなりそうですね!

さて、クリスマスといえば一大イベントなわけですよ!
なので雪とか、そういうのに関係する小話をとりあえず一つ。
なぜか大二郎と弾爵です。オリキャラです。
ふたりの詳細はサイトの『捏造キャラ一覧』に記してありますのでどうぞ。
軽く説明するなら攻爵たちのおじいちゃん世代です。兄弟です。

オリキャラ苦手な方は申し訳ありません。次のメルマガをお待ちください。

あ、何気に弾爵初登場だ……


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題:ネコは噛み付くものだから


弾爵が帰ったとき、玄関には見慣れた靴があった。
雪に侵され冷え切って、タイルの上に転がったそれら。やけくそのような泥が下駄箱にまで飛沫している。
「大二郎が居るのか」
二つを拾い揃えると、使用人が軽く目を伏せた。
家出をして二週間、まぁこんなものかと少しだけ肩の力を抜く。
次男坊の悪癖は今に始まったことではない。父も、そして母さえも気にとめない、取るに足らない事象の一つ。
仮に消息不明になったとしても、その態度が変わることはないだろう。
男爵はしっかりとした靴を脱ぎ、しけって重くなった鞄と入れ替わるように乾いたタオルを受け取った。
「それで、今はどこに」
雪に濡れた帽子がずるりと滑り落ちて床を汚した。

示されたまま大二郎の自室に向かう、その途中で弾爵は歩みを止めた。
すくむような冷気が足先を侵食している。進路を変えて庭に面した回廊を覗けば開け放たれたガラス戸。
近づけば、靴下の布地は瞬時に冷水に染まった。
眉をしかめ、木枠に手を伸ばし遮断する。これで雪の浸食はひとまず止んだ。
「おい、誰かいないか」
数歩下がり、バケツをひっくり返したようになったありさまを見る。
床の木理を薄い雪が覆い、遮られた外界にはさらに分厚い雪の層。
その層にわずかなへこみ、足跡を見出したとき、弾爵は知らず拳を握り締めていた。
「あの、どうかされたんですか」
声をかけたのは玄関にいた使用人だった。振り返った彼の表情に、ひっと息を呑む。
弾爵はその腕から先ほど預けたコートを奪うと、一度は閉ざしたガラス戸を開けた。
止める間もあればこそ、ためらうことなく飛び出していく。
彼の鋭い眼光は、今は淡くしか残らない足跡の先を追っていた。
感覚の薄れているはずの足を歪みなく踏み出し、確実に距離を詰める。
弾爵の足が速いのか、それとも対象が止まっていたせいか、数分も経たずに求める姿を見つけることができた。
雪に紛れることのできない黒い髪を、後ろ頭を思い切り殴りつけた。
「がへ」
間の抜けた音、倒れこもうとするのを素早く支える。
回した腕にしがみ付いたのは、存外に力強い大二郎の指。
「酷いなぁ、兄ちゃん。久々に会ったと思ったらいきなり殴るなんてさ」
何がおかしいのか、大二郎は笑った。笑いながら振り向いたその頬は、何故か赤く腫れていて。
「誰にやられた」
険しい表情のまま、小さく口を動かす弾爵に、大二郎は変わらず不明瞭な笑みを向ける。
「前家出したときはさ、路銀が尽きちゃったから戻ってきたけどね。今回はそんなことがないように沢山沢山持ってってみたんだよ」
そしたら変なのに殴られて、みんな持ってかれちゃったよ。
ツボにはまったようにへらへらと笑いつづけている。
「で、そいつはどこに居るんだ」
「もうどこにも居ないよ」
ぴたりと、大二郎は笑うのをやめた。
まぁ、冗談だけどね。と続けた後でもどこか冷めた様子のままで、そんな弟を男爵はやはり険しい顔つきで見詰めていた。
大二郎は兄の手から離れてぐいと伸びをする。
「あ〜あ、傷を冷やそうと思って外まで来てみたけど、こんなところにいちゃあまた怪我が増えちゃうなぁ」
トントンと殴られた後頭部に触れてみせた。
「すまんな」
「どうして兄ちゃんが謝るのさ、それとも、もう私のこと殴らないの?」
「いや、殴る」
「うわぁ、恐いな」
「悪いことをしたら……だ」
「あはは、もうしないよ、家出はもうやんない」
「どうしてだ」
「飽きちゃったからね、次の趣味を探すよ」
そんな会話をしながら、大二郎はするりと懐に入り込んでくる。
「寒いよ兄ちゃん」
「……このコートを着るといい」
弾爵が差し出せば、礼も言わずに腕を通した、
「そうだ、今度の趣味は兄ちゃんと二人でできることをしようかな」
「ムリだな」
「どうしてさ」
「お前はネコだから」
連れ戻そうと掴んだ腕が、くすぐったそうに揺れた。
肩越しに見下ろせば、黒いコートを羽織った大二郎は小さく首を傾げている。
弾爵は、わざと大きく舌打ちをした、
「俺は気まぐれな奴が大嫌いなんだ」
「わーひどい! 思ってても言う? そういうこと!」
「黙れ」
握った手の力が強まったのを感じながら、弾爵は心の奥で呟いた。

(もしお前に、喉笛を噛み千切られるようなことがあっても……。
ネコは噛み付くもんだから、しょうがないんだよな)

「大二郎」
「ん? なぁに」
「あんまり俺に甘えるんじゃないぞ」
「ははっ、何それ」
「さて、なんなんだろうな」

心までが凍傷しそうな寒空の下で、大二郎の羽織るコートだけがやけに暖かそうに見えた。


END

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ブ ラ コ ン だ と ! ?
弾爵さんが変な人です。
さすがに蝶野家の人間は一味違いますね。
時期的には大二郎中学生〜高校生くらいかな?

それにしても捏造キャラ+捏造キャラだと全てが妄想しほうだい♪

大二郎さんの家出癖なんて今思いついたし(爆
でも本当に一時的な趣味くらいのもんだと思うんですよ。
多分半年くらいの間ちょこちょこ家出しては戻ってきてて、ある日を境にぱったりと止めちゃう。
そんでもって新しい趣味を開発すると。

それにしても、こんな早い段階でぬっこぬこにされている弾爵はもう大二郎には勝てませんね。
頑張れ兄ちゃん! ネコちゃんに負けるな!


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森下里虎

E : kamiosandaisuki@yahoo.co.jp 

HP: http://tool-4.net/?morimori

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