メルマガ:パッピパッピにしてやんよ!
タイトル:蝶サイコーな第10回目■『渡り川』■  2008/10/15


新規購読者様へ
購読ありがとうございます! とっても嬉しいです。
色々と難点のあるメルマガですが、これからもお付き合いいただけたら幸いです。
※今回の件名には「■」が付属していますが、これはオリキャラ出現フラグです。
それだけ理解していただければもう攻略したも同然です。


今回の配送物は小話でこれまたオリキャラが出現します。
一部の方にご好評の「蝶野大二郎」です!

大二郎とは:蝶野刺爵の父。ほわほわぷーな性格をしている。親馬鹿。

これだけ判ってればもう大丈夫!  安心してご覧いただけます。
※オリキャラの詳細はHPに掲載してあります。

しかし 死にネタ なのでご注意ください。

それではどうぞ

・‥…━━━★゜+.*・‥…━━━★゜+.*・‥…━━━★゜+.*


題:渡り川

気が付けば、広がる草原。
風もないのに揺れる青、あお、アオ?

――――。

(はだし……?)
ひんやりとした土の感触に、自然と目線が下がった。
黒い、ズボン。どこかで見た。
手、袖がある。シャツを着ている。その上にベスト。
「…………」
何の気なしに腹部へと手をやる、途端、粟立つ肌。
足裏の冷たさが強烈に意識された。
“ここにはもう、一秒だって居られない”
駆け出せば、身体は驚くほどに軽い。

――水の流れる音がする。

注意を向けると、そこには大きな太鼓橋がかかっていた。
その中央部、一番の盛り上がりに何か居る。

「しゃっくん、こっち、こっちだよー」

へらへらとした笑顔、ぶんぶんと振られる腕。

(誰だ……?)

警戒しつつ、しかし呼ばれるがままに足を進める。
木目の連なる板に踏み出せば、冷たさはもう感じ取れなくなった。
一歩一歩、傾斜を昇り、

「ふふ、久しぶりだね」

手を取られてはじめて、この人が父親であることを思い出した。
だらしのない格好、しまりのない表情、全てが記憶と合致する。
――ただ一部分を除いて、
「父さん、随分……若返りましたね」
「えへーそうかな? しゃっくんもかわいいよ」
見た目20代の父にそう言われ、川面を覗き込む。
(大学時代――か)
「かわいいって……年齢、あまり差がないじゃないですか」
「しゃっくんは幾つになってもかわいいってことだよ」

はぁ……

まったく、埒が開かない。
「本当に、相変わらずなんですね」
「……」
答えず、彼は私を擁した。
擁しながら、泣いた。
その僅かな震えを感じながら、ぽつりぽつりと言葉を漏らす、

「なぜ泣くんですか」


「懐かしいからですか」


「私は……死んだんですか」

そんなこと、聞かずとも判っているけれど。

「あまり、泣かないで下さいね」

ぽんぽんと、その頭に手をやった。
そういえば、息子をこうやってあやしたことすら、なかったのだが。


FIN

・‥…━━━★゜+.*・‥…━━━★゜+.*・‥…━━━★゜+.*

と、言うわけで刺爵と大二郎、三途の川にて。
大二郎さんいつの間に……という話ですが、MY設定では攻爵が12の時にちょっと早めだけど老衰で亡くなっています。
刺爵、百合子の見守る中やすらかに眠りました。
悲劇の蝶野家においてなんというひとり勝ち人生www

さて、今回の話ですがあまりにドシリアスなので以下に緩和剤を用意いたしました。
本編の雰囲気無視のギャグ展開です。相変わらず細道組みを彷彿とさせてくれます。

〜その後 ひとこま〜

「いつまで泣いてるつもりなんですか」
「うう……ごめんね。ダメだね歳とると涙腺がね」
「何でもいいですけど人のベストで涙拭うのやめてください」
「あは、バレてた?」
「……」
「もう少しで鼻もかめると思ったのに……あー残念」
「抉りますよ。川で洗えばいいでしょう」
「うん、そうだね――って、今なんか恐いこと言った!?」
「いいえ」
「そ、そう、ならいいんだけど」(ドキドキ

バシャ バシャ

「どうかなーしゃっくん」
「まだ目が赤いですよ。もうひと洗いしたらどうですか」
「んーでもこの水凄い冷たいからさ、あんま触りたくないんだよね」
「……」
「そういえばね」
「はい?」
「さっきジロちゃんも来てたんだよ、抱きつこうとしたら逃げられたけど」
「……次郎が?」
「うん、現世に戻って何をするつもりなんだろうねーあの子も」

「じゃあ……あれは……」

事切れる寸前に目にした、仮面の奥の苛立ちに満ちた瞳。

「攻爵だったのか」

「ん?何か言った?」
「いいえ……。ただ、最期まで不出来な父親だったな……と」
「そりゃあね、私の愛に満ち満ちた父性に比べたら世の親なんていうものは――あれ? しゃっくんどこいくの?」
「少し眠くなりましたんで、“橋の向こう”で眠ります」
「……そっか」
「父さんはどうするんですか」

「私は、まだ待ちたい人がいるから、もう少しここでふんばってるよ」

「そうですか……」
「うん」

「それでは」    「うん、またね」

いつしか、河原には静寂が戻った。

FIN

読んで下さってありがとうございました。


*:;;;:*゜。+☆+。゜+*:;;;:*:;;;:*゜。+☆+。゜

森下里虎

E : kamiosandaisuki@yahoo.co.jp 

HP: http://tool-4.net/?morimori

*:;;;:*゜。+☆+。゜+*:;;;:*:;;;:*゜。+☆+。゜

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。