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タイトル:v  2009/12/23


今日は休刊日ですが、スポンサーの都合で発行致します。ですが、今日はチャリコンの当日ですので、実は、昨日書いたものです。
NHKのアマデウスは、音楽の裏話を探る点では面白いかも知れませんが、ちょっとストーリーを作り過ぎているような気がします。
ですが、音楽のストーリーというのは、大作曲家ならば以外と簡単に作ってしまうものです。
バッハの晩年の大作、ゴールドベルグ変奏曲と音楽の捧げ物などはこの例でしょう。
ゴールドベルグ変奏曲はアリアを最初と最後に演奏し、その間に30もの変奏曲を入れたものです。
この変奏曲、3つのグループが10個集まったといってよいでしょう。3の倍数の変奏曲はカノンとなっています。
そして、第3変奏が同度カノン(同じ音程のカノン主題が追いかけあう)、第6変奏が2度カノン、第9変奏が3度カノン----
となっており、最後の第30変奏はクオトリベッドと言われるバッハ一族のお祭りで使われる曲となっています。
つまり、三位一体である3という数字にこだわり、しかもカノンの音程を数学的に3の倍数ごとに広げていくということをやっているのです。
ちなみに、対位法的に、カノンは同度カノンが一番難しいのです。同じ音ですと、追走するカノン主題が和声的に結構難しくなります。
一番簡単なのは5度カノン。ドとソの音の2つで種々の和声に一致できます。古典の交響曲でティンパニを主音と属音に調律するのはそのためです。
ですが、バッハの力からすればこのような対位法的、数学的、しかもそこに音楽美を伴った作曲など朝飯前かもしれません。
バルトークのオケコン(管弦楽のための協奏曲)というのがあります。この第2曲の「対」というテーマの曲。
その名の通り、木管なら木管で2人の奏者が音程をずらして同じ音列(テーマ)を演奏します。
そして、この音程の違いがだんだんと広くなっていくという数学的な規則で作られているのです。
ですが、そんなことを微塵も感じさせないような斬新で印象的な曲です。
バルトークは、弦楽四重奏でも数学的な試みをずいぶんとやっています。
バルトークは現代作曲家ですが、いわゆる12音技法の作曲家とは異なり、数学的、音楽的な規則で曲を作りながら、そこに様々な感情や音楽的な内容をいれることが出来た人です。
だからこそ、単に興味本位ではなく、音楽そのものが愛される作曲家ではないでしょうか。
自分のイニシャルや愛人のイニシャルをそんまま音名に当てはめて旋律にするなんてことも昔からやられていました。
バッハのBACHをフーガの技法のテーマにしたのは有名です。ブラームスは恋人であったアガーテを音名に使い、弦楽6重奏の第2番を書いてます。
ショスタコーヴィッチは自分のイニシャルのD-Es-C-Hをさかんに使っています。このイニシャルが入った曲は自由人として生きたい作曲家自身の訴えの曲のような気がします。
弦楽四重奏では第8番に使われていますが、他の曲には似ているものの使われていないようです。
ショスタコーヴィッチは作曲技術が非常に優れており、 暗号として例の音列を入れたのでしょう。
もちろん他人が見たら当然ばれるのでしょうけど、その時は、多分、他の旋律をいっぱい例に出して白を切ったんじゃないでしょうか 。なんで「カルメンなの」と?

それではまたよろしくお願いします。
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IFE通信No.543 09/12/23発行(平日発行)
発行者:石川 聡
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