メルマガ:toxandoriaの日記
タイトル:]「財務省の論理」に洗脳されポピュリズム扇動で日本滅亡への先棒を担ぐ記者クラブメディアの無責任  2011/02/07


[新暴政の予兆]「財務省の論理」に洗脳されポピュリズム扇動で日本滅亡へ
の先棒を担ぐ記者クラブメディアの無責任  

<注記1>当記事は、下記◆の補足&姉妹編として書いた内容である。
◆2011-02-05・政権交代の原点を捨て『巨大企業のレセプター』化した菅総
理の蒙昧な冷酷(2/2)、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20110205

<注記2>お手数ですが、当記事の画像は下記URLでご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20110207


[エピローグ動画] Josep Carreras Tu、Ca Nun Chiagne
 
 

[エピローグ]

名古屋市長選挙で河村市長が復帰し、自民離党のうえ無党派で立候補した大
村氏が愛知県知事に当選したことで、<劣化した小泉政権>と成り果てた
<菅カラ民主党政権>が直撃を食らった(らしい)ことは、とりあえず同慶
の至りだとは思う。

ただ、問題は目先の選挙の勝敗の視点で終わる限り、素人集団(あるいは実
体不詳?)の審査会(名ばかり市民代表?)の検察審査会に正義のジャッジ
を求めることで良しとする、あの記者クラブ・メディアの思惑どおりの<素
朴なお白州感覚>で<正義と国民主権>を仕切る(弄ぶ)ことに、これから
先も終始するだけという、まことに可笑しな民主主義国・ニッポンになるの
ではないか?

なぜなら、彼ら記者クラブ・メディア(新聞&TV界に連なる)人々がソック
リ心を入れ替えて真摯な深い反省を取り戻さぬ限り、この日本の近未来は、
相変わらず一部の実効権力と、彼らからの恩恵を下賜される輩だけが、米国
の自然権リバタリアニズム派の背後霊をオ―ラとするトリクルダウン・カル
ト(自然権リバタリアニズムに占拠された財務省の論理)で、無辜のポピュ
リズム社会を、つまり善良な日本国民層の多くを手玉に取り続ける、戦前と
は異なる新タイプのヒトラー型暴政国家が誕生する可能性が高いからだ。

・・・以下は、
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20100923の
エピローグからの部分転載・・・

hanachancause 2010.09.23 06:28RT @iwakamiyasumi: 佐藤氏、昨夜ニュース
で知ってから資料を調べ直し、墨で署名のある、前田検事の作成した調書を
確認したという。ここでも、「割り屋」の本領を発揮していたのか。郵便不
正事件から、佐藤氏の事件、そして小沢氏の睦山会事件まで、ひとつの線で
つながって行く。

 hanachancause 2010.09.21 23:53
メディアによる政治の美学化で巨敵を創り大衆(実は、ヒトラーの真の敵)を
感情移入で洗脳するヒトラーの真似が小泉、対巨悪(小沢)消去法戦略で小
泉好みの大衆心理にマスゴミが上書きしたのがミニヒトラー化傾向の菅政権
の本質・本性。

 hanachancause 2010.09.21 20:18連続メディア偽装報道が祟り脆くも崩壊
しつつある「正義」の目撃者たる我々が注意すべきは最も分かり易いのが実
効権力の見立て通り改竄された「真実」で最も見え難いのが真理に沿う「真
実」

 hanachancause 2010.09.21 20:05
【郵政民営化・振興銀行の生みの親、竹中平蔵の迷言】バカは何人寄っても
バカだが新自由主義(市場原理主義)下では大きなゼニ儲けに役立つ“従順
で非常に良質なバカ”の大量生産ができる故にバカは日本の今後の発展に必
須の人的資源だ。

[本 論]

ここは、本論と書いておいたが、自分の言葉で論述はせず、表題に関連する
重要な情報を転載しておく。ただ、一言だけ述べておくならば、<正義、国
民主権、合理的で現実的な経済政策あるいは、その手法>などを、マスメデ
ィア(特に日本の)が好むような、別に言えば<水戸黄門か大岡越前のお白
州物語>のように直截的かつ単純な白黒の構図で説明はできないということ
だ。

つまり、この点については、マスメディアも読者&視聴者ら(一般国民層)
も、日本の未来を拓くには、ある程度以上の真摯な努力が自ら求められるこ
とは覚悟すべきなのだ。エジプトをはじめとする中東諸国の一般国民層が何
に目覚めつつあるのか、その意味について、遠い国の他人事と傍観せず、自
分でよく考えるべきだろう。

(関連ツイッター情報)

hanachancause 2011.02.06 19:37
【菅総理がカラ缶であることの証明】TPPに見る「自由貿易の罠」http://t.co/h3107zU VT: http://twitvideo.jp/04iap

achancause 2011.02.07 05:27
【QT】陸前高田市長選、小沢支援の候補敗退http://bit.ly/id3iUN投票率
80%、戸羽8600、菅原7473←コノ差(1127)は冷静に見るべき
、只の勝敗だけなら、素人が検察審査会に正義のジャッジを求める、メデ
ィア思惑どおりの<素朴なお白州感覚>で終わる。

hanachancause 2011.02.07 05:26
@Kiyoshi_IWATA Dobry rano!御意、但、今こそ現実的視点が肝要。大衆判断
では例えばTPP賛同の如き「正義=過激ネオリベ」へ流れる(Ex. みんなの党
フィーバーor上げ潮&バブル扇動化の)可能性あり。Cf.
http://bit.ly/fhxX4V
エピローグ、
http://bit.ly/i2gf0z 無責任増塵は勝てば官軍だけ。

hanachancause 2011.02.06 21:30
御意! RT @tetsumura: 名古屋市長選&愛知県知事選大敗→執行部批判→菅
退陣圧力増大→前原新総理誕生 だけは、勘弁して欲しい。日本が米国の植
民地を越え、奴隷化されそう。 
http://yfrog.com/h4hdj5j via Yfrog 
 

hanachancause 2011.02.06 21:03
一種の“嘘吐きクレタ人のパラドクス”の状況? RT @meeeenie: ポピュリズ
ムの季節。河村ー大村−減税日本。嫌な感じだなあ。

hanachancause 2011.02.06 19:39
検察審査会の本来の役割は対検察の牽制&チェック(そもそもが検察官の不
正が目立ったので、これを牽制する意図で生まれた制度)、故に【コレ】が
事実なら司法自身が検審会法に違反してることになる、しかもこの司法関連
三者の癒着は憲法違反でもある⇒【注視=最高裁・検察審査会・検察ズブズ
ブの癒着】http://bit.ly/ezbcQD cf.小泉時代・司法改革の妖しい動機http://bit.ly/bzp5If、http://bit.ly/fhxX4V

(菅政権のTPP参加への意志が根本的に誤りであることの説明)

・・・マル激トーク・オン・ディマンド/自由貿易を考えるシリーズTPPに
見る「自由貿易の罠」ゲスト:中野剛志氏(京都大学大学院助教)、http://t.co/h3107zUより転載・・・

菅直人首相は政権の3本柱政策のひとつ「平成の開国」の目玉として、TPP
(環太平洋経済連携協定)参加をあげている。これはアメリカ、オーストラ
リアなどの9カ国との間で関税などの貿易障壁をすべて撤廃する自由貿易協
定だが、菅政権は6月までにこれに参加するかどうかを決定するとしている。
TPPへの参加で、はたして日本は本当に幸せになれるのか。シリーズで考えて
いく。

第一弾は経済産業省から京都大学大学院助教に出向中の中野剛志氏を招いた。
中野氏は出向中とはいえTPP推進の先頭に立つ経産省の現役官僚でありなが
ら、TPP批判の急先鋒。今日本がTPPに参加することは、最悪のタイミングで
最悪の選択だと、これを厳しく批判している。

中野氏の主張は明快だ。まず、TPPは9カ国といっても、経済規模で日米2カ
国が参加国中9割のGDPを占めることから、実質日米二国間の自由貿易協定以
外の何物でもないと指摘。菅首相はTPPへの参加によって「発展著しいアジア
太平洋地域と共に成長の道を歩む」と言うが、そもそもその大前提が間違っ
ているという。

しかも、長引く不況と高い失業率で政権基盤が揺らいでいるアメリカのオバ
マ政権は、先月25日の一般教書演説でも、2014年までに輸出を倍増し、輸出
を通じて雇用を生む方針を明確にしている。リーマンショック以来、金融で
大きくつまずいたアメリカが、次に打ち出してきた窮余の策が、自由貿易協
定を通じて、豊かな金融資産を抱える日本にアメリカ製品を売り込むことだ
ったと中野氏は分析する。

また、韓国がアメリカやEUと自由貿易協定を結んだ以上、日本もTPPでそれに
続かなければ韓国に負けてしまうという論調も散見されるが、これも前提が
間違っていると中野氏は言う。GDPの5割を外需に依存している韓国に対し、
日本の外需依存度は17%に過ぎない。日本の輸出セクターではすでに現地生
産が進み、関税が撤廃されたところで、日本からアメリカへの輸出が急激に
増えるとは考えられない。いや、むしろ為替の方がはるかにインパクトが大
きく、それに比べれば関税など誤差の範囲だと、中野氏は言う。つまり、日
本にとって自由貿易とは、日本の国内市場を諸外国、とりわけアメリカに差
し出す行為に他ならないということになる。

菅首相は「平成の開国」と言うが、日本はすでに開国していると中野氏は言
い、日本の平均関税が工業品、農業品ともに、国際標準と比べて高いわけで
はないことを指摘する。

そして、中野氏がTPPが間違っていると主張する最大の理由は、自由貿易、
つまり関税の撤廃が、デフレ状態にある日本にとっては最悪の影響を及ぼ
すことだ。

グローバル化によって、輸出産業は収益を上げたが、労働分配率は減り、一
人あたりの給与は下がり続けたことで、日本では依然として長期のデフレが
続いている。TPPによって関税が下がる結果、日本により安い製品が海外か
ら入るようになれば、デフレが更に悪化し、賃金が下がるため、国民はより
苦しい生活を強いられることになる。

要するに、今の日本にとってTPPは、百害あって一利なしと中野氏は言い切
る。

また、中野氏は自由貿易への信仰には根拠がないことを指摘する。国内経済
が成長してはじめて、貿易が拡大するのであり、自由貿易が経済を成長させる
のではないというのだ。2つの国がそれぞれ得意な商品に専念し、それを自由
貿易で交換することが、結果的に2つの国のより大きな発展をもたらすとする
リカードの比較優位論のモデルは、2つの国が完全雇用の状態であるなどいく
つかの前提がある。中野氏は、世界中で失業者が増大する中で、その前提が崩
れていることが議論されていないと指摘し、自由貿易原理主義的な考え方に疑
問を呈する。

欧米が「内向き」になって必死で自国の雇用や産業を守ろうとしているときに、「開国」を叫び、関税自主権を放棄しようとしている菅政権は、鴨がネギを背
負って来たのも同然だと酷評する中野氏とともに、TPPの問題点と自由貿易の
限界について、議論した。

[ [2011-02-05・政権交代の原点を捨て『巨大企業のレセプター』化した菅総
理の蒙昧な冷酷(2/2)、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20110205のエピ
ローグより“ぴっちゃん”さまからのポーランド政治・経済の現況についての
レポートを部分的に転載]

<注>今のポーランドは、欧州一の順調な経済状況を、更にこれからどう維
持・発展させるかの分岐点に差し掛かかっており、米国型ネオリベラリズム政
策(自然権リバタリアニズムの圧力)とポーランド学派(ポーリッシュ・モデ
ィラティスム/ポーランド独特の歴史経験に基づく伝統的中道保守政策)との
激戦(激論)の場と化している。マスメディアもアカデミズムも与野党も、そ
の一切合切が自然権リバタリアニズムの圧力下の「財務省の論理」にスッポリ飲
み込まれている異常な日本の政治・経済環境と大違いである。

ぴっちゃん 2011/01/25 20:36 

こんにちは。おひさしぶりです。

柴田様がされたご質問はじつは予期しておりました。私ももっと説明が必要
かなと思っていたのですが、話がどんどん拡大してtoxandoria様の主題から
逸脱してしまうことを心配しまして、オーストリア学派の言及までで止めさ
せていただきました。

ポーランドの現政権の経済政策の担当者とオーストリア学派との関係は特に
バブルの発生メカニズムの認識にみられます。私のあのときの投稿の主旨は
この点にありました。しかし彼らがオーストリア学派とは異なり「ポーラン
ド学派」と呼んでもよいような政策を採っている所以は、その先にあります。


彼らが実際に採用する政策がハイエクの唱えたネオ自由主義(ネオリベラリ
ズム)とかなり異なる点です。たしかに市民プラットフォームは2005年と2007
年の総選挙の際に所得税の税率のフラット化などといった、ネオ自由主義的
な政策を打ち出しましたが、その後はこれに拘泥する気配がありません。

たしかに付加価値税は今年1%だけ基本税率を上げましたが、付加価値税率の引
き上げはそこで打ち止めにするようです。

バブル発生のメカニズムに関して彼らポーランドの現政権の人々の認識がオー
ストリア学派的であるとして、では実際の彼らの採る経済政策は何に近いので
しょうか?そこでふと思うのは、もしかしたらこれはケインズをはじめ、ジョ
ーン・ロビンソンやリチャード・カーンの取り組んでいたケンブリッジのケイ
ンズ・サーカスの「幻の第二理論」ではないかと思うのです。

ケインズは生前、「一般理論」はその考え方は正しいけれども扱う事象が限
られている(注:それでも完全雇用の状態のみを扱う新古典派理論よりは広
い)ので現実とそぐわないからそのうち第二理論に相当するものを書くつも
りだと言っていました。ケインズは、ハイエクとの会話ななかでももはや一
般理論は現実に通用しないとはっきり言っています。

そうこうしているうちにケインズは実際の経済政策の現場での仕事に駆り出
され忙しくて理論家としての研究活動の時間が取れなくなり、そのうちに健
康を損ねて亡くなってしまったのですが、この「幻の第二理論」は、先述の
ロビンソンなどのケインズ以後の人々が取り組んでいたように、「一般理論
の動学化」であると思うのです。

ポーランドの政策担当者はこの方針(第二理論は完成しておらず、当然なが
ら第二理論そのものではない)にかなり近いところで政策を考えているよう
に思います。ヤン・ヴィンツェント=ロストフスキ財務相はロンドン・スク
ール・オブ・エコノミクス出身の経済学者で、LSEの学風からオーストリア
学派、ケインズ経済学、古典派経済学のすべてに精通しています。

動学化されたケインズ理論は未だ完成しておらずとも、その神髄にあたる勘
どころ(ケンブリッジなどではマクロ経済学というものは口伝えおよび直の
問答でないとその「勘どころ」は掴めず、論文を読んでも決してその本質は
理解できないという、一見神秘主義的のようではあるけれど、仏教思想に慣
れ親しんだ日本人には割とすんなり納得できそうな、じつに合理的な考え方
があるそうです:それはマクロ経済学も仏教哲学も重層的な弁証法を用いる
からでしょうか)はかなり確実につかんでいてもおかしくありません。

そういうことで、私個人の推測としましては、ポーランドの現政権の政策担
当者たちは、この手のやり方をとっているのではないかと思います。

ところで、先述の「勘どころ」に関して、ヒックスのIS-LM分析に始まる、均
衡分析に極端に偏った、俗にアメリカン・ケインジアニズム(アメリカ式ケ
インズ経済学)ないしバスタード・ケインジアニズムと揶揄されるケインズ
経済学の理解の仕方が、理論としてまったく通用しないどころか、1970年代
のケインズ経済学の政治の場における衰退期にケインズ経済学批判のネタと
して使われたのは、当然の帰結でしょう。

アメリカ人て、じつに単純な馬鹿ですね。ようするにドンキホーテが風車を
敵と勘違いして突撃したのと同じです。そのアメリカ人からもろに影響を受
けた日本の政策担当者(昔の自民党=アメリカ式ケインズ経済学、小泉時代
ごろの自民党=ネオクラシック経済学、民主党=ニュー・クラシック経済学)
たちも、なわけですが。

3つ前と2つ前の段落における、ポーランドの政策担当者の考えに関する部分
は全くわたしの推測ですから、書くのをためらっていた(ので、説明が大変
なので「オーストリア学派に近い」あたりまでで止めておいた)部分なので
すが、もしこの推測が正しいとすれば、ポーランドの現在の政策担当者たち
が、(1)ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス的なマネーサプライ観をちゃん
と持っており、(2)銀行による人工的な信用拡大と景気循環に関してもハ
イエクの考えを踏襲していながらも、(3)中央銀行を不要とみなす結論を
下したハイエクの考えからは乖離しており、(4)さらにはロスバード等と
のもっと過激なレッセフェール論を唱えるオーストリア学派系の人々と明ら
かに断絶している理由が、明快に説明できそうです。

「私は選択の自由から始まり、デヴィッドフリードマンのアナルコキャピタ
リズムやロスバードなどのネオオーストリアンに興味を持ちつつ一方で自然
権を至上のものとするリバタリアンは結局は経済厚生を害する単なる金持ち
の方便に過ぎないのではないかと思い至るようになりました。」という柴田
様のお言葉に、全面的に同意いたします。

これは、ポーランド史において17-18世紀に頻発した事件とおもしろいほど共
通します。ポーランドの大資産家(マグナート)たちのけっこうな数の人々
が、最後は1791年5月3日憲法として結実することになるポーランド・リトア
ニア共和国晩期から末期にかけての一連の改革に反対し、何度も反乱を起こ
したのですが、その大資産家たちがこの時代に資産を形成するに至ったのは、

(1)17世紀初頭から本格化した新大陸からの穀物輸入の増加でポーランド
・リトアニア共和国の国内経済の投資の限界効率が大幅に低下してきたこと、(2)(1)により国内の産業(工業)が衰退したこと、(3)さらに(1)
により中小零細の自作農たちが借金を重ねた末に土地を二束三文で大地主に
売り払い彼らに安い賃金で雇われる小作人となったこと、(4)イエズス会
の野心によって後ろ盾をうけたジグムント3世王の無謀な対外戦争(スウェー
デンにおけるジグムントへの反乱、モスクワ大公国の内乱「スムータ」への
介入)などで国家財政が厳しくなったこと、

(5)自作農だったザポロージェ・コサック(ウクライナ・コサック)たち
も(3)の経緯で多くが土地を失いシーチに集まって共同生活をする羽目に
なっていたが当時の彼らに残された唯一の収入源と言ってもよいクリミア略
奪が(オスマントルコとの休戦条約を交わしていた)ワルシャワのポーラン
ド中央政府に禁止されたことで彼らコサックたちがロシアと結んでポーラン
ドの東部で大反乱を起こしそれにつけこんだスウェーデンがポーランド西部
に侵攻してポーランド全体が「大洪水時代」と呼ばれる大混乱に陥り多くの
農民が戦乱で焼け出されてしまったこと、

(6)そしてここが一番大事ですが財政収支の悪化を食い止めようとクラウ
ン銀貨(ボラティーニ・クラウン銀貨というあだ名がある)を大量鋳造・発
行するといういわゆる「量的緩和」に相当する金融政策を(ジグムント3世
から2代後のヤン2世のときに)大規模に行ったこと(これによりポーランド
のクラウン銀貨の価値は1ズウォティ=90クラウンから1ズウォティ=800クラ
ウンまで切り下がりました)、にあります。

これで、大資産家がポーランド国内の富(農地)を独占し、彼らが増税には
反乱(たとえば「ルボミルスキの乱」)まで起こすほど猛烈に反対したもの
ですから(ボラティーニ・クラウンなどを通じて国内のマネーサプライを大
幅に増やしたのにかかわらず)ワルシャワの中央政府の債務は拡大して国庫
がどんどん逼迫し、大貴族は資産を拡大して個人的にホクホクないっぽう、
国は国家破産が目前に迫るという不幸な状況に至ったのです。

これ、内戦の有無の違いはありますが、まるでベトナム戦争とその後のアメ
リカの経済政策に似ていませんか?当時の大資産家は土地が信用の中心の時
代ですから大貴族(マグナート)たちですが、いまのマネーが信用の中心で
ある時代なら、現代の世界で彼らに相当するのは大銀行家や大投資家の、い
わゆるfinanciersと呼ばれる人々でしょう。

ニクソンショックのあと、アメリカは金兌換をやめてフィアット・マネーの
増刷に踏み切り、景気が後退するごとにドルをたくさん発行し、2007年のリ
ーマンショックにはじまる金融危機からベン・バーナンキが2度のQE(量的
緩和)により膨大なドルを市場に供給しています。これ、ボラティーニ・ク
ラウン銀貨とまったく同じ発想と言わざるを得ません。

ポーランド・リトアニア共和国は衰退しながらその後も136年間存続しまし
た。それでもポーランドは「シュラフタ民主主義」を発展させようとする勢
力が必死で国内改革に取り組み、最後の数年間で5月3日憲法という、人類全
体への未来の民主主義にとっての最大の贈り物を残し、(民主主義を危険視
したロシア、プロイセン、オーストリアの三国に同時に侵略されて)消滅し
ました。

いっぽう、シュラフタ民主主義の啓蒙思想とは程遠いヘーゲル哲学のアメリ
カ合衆国は人類の未来のために何かを残してくれるというのでしょうか?ア
メリカは他罰的な社会ですから自分の間違った社会経済政策は棚に上げて中
国でもなんでも敵にするでしょうが、彼らが未来に残すのが核戦争の放射性
物質とか核の冬だけなんてのは御免蒙りたいものです。 

toxandoria 2011/01/30 08:36 

ぴっちゃん さま 今回も、大変に有意義な情報と知見をご教示頂きありが
とうございます。

おそらく(?)真面目に取り組んでいるであろうと見なすべき、日本国家の
最高指導層に属すエリート政治家たる菅総理や与謝野大臣らが不見識な人物
と思いたくはないのですが、余りにもピントが外れているとしか思えぬ言動
が続くことに腹立たしい思いがする今日この頃です。

彼らのピンボケぶりが何故なのかが、今回のコメントで良く理解できた気が
しております。いずれ、ご教示頂いた内容を参照しつつ、toxandoriaの感想
は新しい記事として書かせて頂きます。

関連で、ご質問を頂いた柴田さまも、ご納得されていると思います。ありが
とうございました。 

ぴっちゃん 2011/02/02 01:46 

toxandoriaさま、ありがとうございます。

ところでいま、ポーランドで経済政策を巡って大騒動が始まっています。

民主化直後のポーランド経済を大改革し長期成長軌道に乗せたバルツェロヴ
ィチ・プランの立役者で、ブリュッセルにあるEU最強のシンクタンク「ブリ
ューゲル」会長を務め、ポーランドのシンクタンク「FOR」を主宰するレシ
ェック・バルツェロヴィチ博士と、先述のヤン・ヴィンツェント=ロストフ
スキ財務相の間で大激論となっているのです。

とくに当面の年金政策に関して意見が完全に異なっていて、特にバルツェロ
ヴィチ博士がカンカンに怒ってるんです。

ちなみにバルツェロヴィチ博士はハイエクに近い考え方の持ち主で、ヴィン
ツェント=ロストフスキ博士は先述のごとく「真のケインズ経済学」的な立
場を採っています。

したがって私はバルツェロヴィチ博士よりもヴィンツェント=ロストフスキ
博士を支持しますが、バルツェロヴィチ博士も決して間違った理論に基づい
ているわけではありません。

両者の違いは、「真のケインズ経済学」がより広い社会経済的要素を包含し
ていることで、理論としていまだボヤけた状態ではあるが、政策となるとオ
ーストリア学派や新古典派に比べるとより現実的なことです。

というのも、同じオーストリア学派理論にもとづき、政策としては新古典派
に近いことをやったバルツェロヴィチ・プランとマギー・サッチャーの改革
を比較すると、前者が成功し後者が失敗したのは政策導入時のポーランドと
イギリスの条件の違いによるものだからです。

バルツェロヴィチ・プラン直後のポーランドは民主化直後の体制転換期にあ
り国家は事実上の破産状態でハイパーインフレが起きていました。したがっ
てバルツェロヴィチ・プランの導入しかポーランドが生き残る道はなかった
のです。

いっぽうイギリスの場合、国民がサッチャー改革に同意したところ、資産を
持っていた民間セクターが一斉に投資と消費を控えてしまったので、これで
労働市場が崩壊し、大量の長期失業者が生まれ製造業が崩壊し、サービス業
だらけの国になってしまったのです。

したがって、イギリスのあの怪しい「金融立国」とは、単に製造業やその労
働そして技術が崩壊し、その分野での社会資本が消滅して、しかたないから
資本形成の代替措置として金融セクターでのバクチの胴元になることに転換
しただけなのです。

その点、バルツェロヴィチは当時財務相兼副首相としてキッチリと実体のあ
る方法での社会資本形成を促しました。とくに、のちにこんどはポーランド
国立銀行(中央銀行)総裁として米国発の金融・不動産バブルには断固たる
措置を持って対処し、投機資本流入を防いだのです。


ここがイギリスのやったのと決定的に異なるところでした。世界金融危機で
ポーランドがヨーロッパでただ一国、プラス成長を続けられたのは、現政権
でなくバルツェロヴィチ博士の功績です。これは、バルツェロヴィチ博士の
政策の方向性に、ポーランド体制転換期当時の非常に特殊な社会経済条件が
幸運にも適合していたからなのです。

いまのポーランドはそういう条件下にありませんので、現在の財政改革には、
より一般的な条件を包含した、真のケインズ的な視点が必要なのです。それ
を持っているのがヴィンツェント=ロストフスキ財務相、そして元ポーラン
ド首相・元ポーランド貯蓄銀行頭取で現在は内閣直属の経済委員会会長を務
めるポーランド経済学会の重鎮のクシシュトフ・ビェレツキ博士を中心とし
た現政権グループです。

したがって両者の違いは理論の前提となる条件の取り方の問題だけであって、
その条件に限って言えば理論の組み立てにおいてバルツェロヴィチ博士は間
違っていないのです。

ですがバルツェロヴィチ博士の理論は前提条件がかなり限定されているので、
当然のことながら結果として現実にそぐわない政策が提案されてくるので
す。今回がそれ。

今回バルツェロヴィチ博士は、財政健全化を大幅な歳出カットで行うことを
主張していますが、私から見ると、それをやると労働市場が崩壊してしまう
と思うのです。つまり80年代イギリスのサッチャー改革と同じ結果になる。
長期失業が増加し、ポーランドの産業はせっかく形成した純資産が崩壊する
ほどの大打撃を受けるでしょう。

いっぽう、ヴィンツェント=ロストフスキ博士を中心とする現政権はもっと
穏健な措置を考えています。秋に総選挙があるのですが、彼らが恐れている
のは有権者ではなく(注:ロストフスキ博士もビェレツキ博士も財務相では
あるが国会議員ではないので本人たちは選挙を気にする必要は全くなく、万
が一トゥスク首相と対立しても自説を押し通せる立場にあります)、金融市
場の反応です。

サッチャー政権の失敗同様、大幅な歳出カットを行う場合、金融市場はそれ
を支持しても、実際の投資行動では、歳出カットに伴う事態を恐れてオーバ
ーリアクションを起こすでしょう。たとえばポーランド通貨ズウォティが大
幅に上昇したのちに高止まりしてポーランドの輸出競争力が削がれてしまう、
あるいは企業の資金調達が困難さを増して企業が(そんなに激しい歳出カッ
トをしなければ、やらなくてもよかったほどの規模の)大リストラを行って
しまったり、などです。これらは実際にイギリスで80年代におきました。

イギリスはもともと巨大な準資産(自己資本)が民間セクター(銀行家、大
貿易商、大地主などの人々)にある国ですのでその後は「金融立国」という、
バクチの胴元になることで成長の埋め合わせができました(これ自体はかな
りいかがわしいですが)。でもポーランドの民間にはそんなイギリスほどの
純資産はありません。したがっていまのポーランドでバルツェロヴィチ博士
の言うとおりの政策を採ると当面の国債の利息は縮小しますが、成長が削が
れたままになってしまう危険があるのです。

年金政策では現在は公的年金の掛け金の総額の7.3%を政府の承認をうけたプ
ライベートファンドによる運用に任せていますが、ヴィンツェント=ロスト
フスキ博士はこのプライベートファンドの運用分を7.3%から2.3%に、正味5%
分を減額してその分は公的年金のほうのファンドに留め置いて運用すると決
めたのです。

この政府の措置に文字通りカンカンに怒っているのが、民間ファンドのほう
が効率よく運用するはずだと言っているバルツェロヴィチ博士です(博士は
短気な性格で有名な人で、つまり江戸っ子です)。博士はおそらくコーポレ
ートガバナンスのことを考えているのでしょう。民間のほうがより市場原
理が働くから国営事業よりもガバナンスがマシなはずだ、という考えです。

ちなみに私はそう思いません。民間ファンドのほうが攻撃的な運用をやると
思いますが、投資リスクがより大きいだけでなく、民間ファンド内部の人々
の給与や中間業者のマージンがかさんでお金が漏れるので、年金の全体とし
てはたいして儲からないどころか、こんなことやってると最近のスウェーデ
ンの年金のプライベートファンド運用分の金融危機での大損の実例をポーラ
ンドで繰り返す可能性もあると思うからです。

そして公的年金ファンドのような国営事業のガバナンスは、まずは監査の厳
格化である程度対処すべきだからです。それをやらずに公的事業の民営化を
おこなうのは拙速だと思います(日本の郵政民営化も同じこと)。その両者
を天秤にかけてみると、ヴィンツェント=ロストフスキ博士の穏健主義・漸
進主義的な改革案(7.3%を2.3%にするだけであって、プライベートファンド
運用の政策全体をガラガラポンしてしまうわけではない、たんなる内部調整)
のほうがより合理的だと思います。

そんなかんじで、今のポーランドの経済政策に関する大騒動は、とても激し
いのですが、内容はじつに知的かつ生産的で、すごくおもしろいです。こう
いう、ほんものの天才たちの論争は、ヘビー級のボクシングの試合のように
迫力満点です。

日本の国会中継は見る暇がありませんが、きっと与謝野さんのいまの立場の
正当性を巡って大騒動なのでしょう。年金や財政に関して与謝野さんはバル
ツェロヴィチ博士に近い考えだと思うのですが、ほんらい与謝野さんの対手
となるべき政策が上げ潮派やリフレ派のものでないことは、これまで読んで
いただければ簡単にご納得いただけると思います。

しかし日本ではポーランドのような重量級の学識者たちによる経済学の壮大
な議論はでてこないかもしれないですね。先の投稿で述べたとおりアメリカ
の後追いというか押しつけというか、そういう経済政策ばっかりですから。
これじゃいまの日本はデフォルトしかねないですよ。ほんと危ないです。 

toxandoria 2011/02/05 06:16 

“ぴっちゃん”さま、コメントありがとうございます。

ご指摘のとおり、与謝野氏の菅内閣への参加を巡って、ますます日本の政治
・経済の方向性は混迷の度合いを日々に増すばかりとなっています。マスメ
ディア一般の意識も低く、旧来型の与野党間の事前協議の仕掛け役に甘んじ
ています。

今度は、「社会保障改革に関する集中検討会議」の設置が決まり、自公政権
時代に税や社会保障改革で中核を担った経験があり与謝野氏とも関係が深い
有識者(前自民党衆院議員で厚生労働相も務めた柳沢伯夫氏ほか)らをメン
バーに引き入れました。

一方で、菅民主党政権の政策は、殆どのマニフェストが放棄される中で、益
々「小泉構造改革」時代のネオリベ路線へそのまま後ずさりし始めています。
このため管民主党政権は<小泉内閣の劣化コピー>あるいは<小泉内閣の上
書き内閣>、あるいは時宜を得たように出現した大相撲・八百長事件に結び
付けて<菅・八百長内閣>などの罵声を一部から浴びる始末です。

現在のポーランドのように民主主義政治と経済・金融政策が進化する姿(高
度で真剣なアカデミズム論争が直接的に今の政治に反映する姿)が、ここ日
本では些かも見られず、ただ忸怩たる思いが深まるばかりです。なお、ここ
で頂いたコメントも含めて、新しい記事へそのまま転載させていただきます。

[エピローグ動画]LARA FABIAN−Quedate

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