メルマガ:toxandoriaの日記
タイトル:[机上の妄想]日本を蝕む“極右”奥の院についての妄想的観察/田母神、小松基地、アパ&学者グループetc  2008/11/08


[机上の妄想]日本を蝕む“極右”奥の院についての妄想的観察/田母神、小松基地、アパ&学者グループetc
2008.11.8


<注記>お手数ですが、当記事の画像は下記URLでご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20081108


【画像】Carlos Montoya - Malaguena
[http://www.youtube.com/watch?v=jVxba6fBTsU:movie]


「米失業率6.5%に悪化」、「米オバマ新体制への布石始動」、「半導体 進む業績悪化、日本勢にも再編機運」、「トヨタ自動車の連結営業利益が前期比7割強ダウン・・・円高6,900億円吹き飛ぶ」、「上場企業3月期25%減益見通し 」、「米GM7〜9月期、最終赤字2400億円/同、フォード赤字125 億円」、「世界景気失速に危機感、欧州一斉利下げ」、「日経平均、又もや9000円割れ」、「農林中金、経常益71%減/債務担保証券(CDS)などを主体に約1000億円の損失処理」、「世界のCDS損失元本総計は33兆6千億ドル(約3290兆円・・・日本1377億ドル/約13.5兆円)2008.11.7付・日本経済新聞」・・・と、金融不安と世界同時景気悪化で動揺しながらも、新しい時代への画期をも予感させる新聞のヘッドラインが踊るさなか、まるで約70年前の日本で「翼賛政治会」がつくられた時代へ逆戻りしたような“大時代錯誤のニュース”が流れ続けています。それは、“日本の侵略は濡れ衣であった”とする田母神・前空幕長の<アパグループ第一回「真の近現代史観」懸賞・受賞論文>の問題です。


<注記>翼賛政治会


第二期・近衛文麿内閣のとき(昭和15年/1940)、既に政党は解散され「大政翼賛会」体制となっていたが、東条内閣下で昭和17年(1942)に行われた第21回衆議院議員総選挙(翼賛選挙)では東条内閣に批判的な議員も少なからず当選した。このため、東条英機は政界・財界・言論界の代表を招いて「翼賛政治結集準備会」を結成させ、座長に住友財閥出身の小倉正恒元・大蔵大臣の下で準備作業のうえ「翼賛政治会」をつくった。これは、歴史上、唯一の「一国一党」体制を実現したした団体であり、選挙以前に存在していた翼賛議員同盟以外の小会派には政事結社としての継続を認めずに解散が命じられた。このため、今回の選挙で選ばれた衆議院議員は新組織に所属しない限り、政治活動が不可能となり、かくして新議席の8割が東条内閣の推薦議員で占められ、事実上、日本の議会は軍部に抑えられた。


この問題は、今、急に突発したものではなく「小泉-安部-福田-麻生」の<ネオリベ・極右癒着型チャランポラン政権>を遥かに遡る高度成長期辺りの頃から政権与党の“母屋(奥の院=政財学の極右癒着グループ)”の手で慎重に培養されてきたものと考えられます。ここでは、<妄想的観察>の観点から、主な関連情報と直近記事[2008-11-05付toxandoriaの日記/麻生「漫画政権」が放置する「三つの格差」の母屋で“おがる”田母神「軍事統制派」の狂騒、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20081105]へのコメント&レス(部分的に加除・修正あり)を転載しておきます。


[アパ“田母神”論文/関連情報の整理]


論文応募隊員は78人(防衛省)、http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008110601000214.html?ref=rank


前空幕長論文問題:アパ懸賞論文、自衛官78人が応募 空幕教育課が紹介、http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081106dde001010083000c.html


小松基地、同テーマで論文指導 田母神氏は応募薦める、http://www.asahi.com/national/update/1106/TKY200811060314.html


前空幕長投稿の「懸賞」テーマ、小松基地で幹部論文に採用、http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081107-OYT1T00013.htm


アパグループ(懸賞論文スポンサー)は、1971年4月1月に、石川県小松市において信金開発株式会社として会社設立、http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D1%A5%B0%A5%EB%A1%BC%A5%D7


自衛隊トップは同意人事に=民主が法改正検討・・・現職自衛官78人が同じ懸賞論文に応募していたことから、「文民統制が揺らいでいる」との警戒感が強まっている、http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008110600996 


[机上の妄想]“田子神”教を崇める“極右嗜好”御用学者・渡辺昇一らの罪作りの深層、http://asyura2.com/08/senkyo55/msg/709.html


田母神問題、広がる波紋 参院委、前空幕長を11日招致、http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20081107AT3S0602006112008.html


空幕長の侵略正当化発言 “空気”つくった安倍氏と麻生氏の歴史観、http://www.hokkaido-np.co.jp/news/fourseasons/127323.html?_nva=1


名古屋「正論」懇話会発足 渡部昇一氏が記念講演・・・代表幹事=「川口・中部電力会長、木村・名鉄会長、張・トヨタ自動車会長」で、<東京裁判史観>の脱却を目指す、http://sankei.jp.msn.com/life/education/081106/edc0811062347002-n1.htm ← これは、パラノイア極右“田母神”教を支援する財界「奥の院」が垣間見せた尻尾?


田母神・論文問題/現職空自隊員(田母神氏を除く)の応募者数は94人に達した、http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081108ddm041010112000c.html


田母神前空幕長とアパグループ代表、10年来の親交/「日本を語るワインの会」=アパ政財界人脈?、http://www.asahi.com/national/update/1106/TKY200811060304.html


田母神前空幕長 アパグループとのズブズブ関係(日刊ゲンダイ) 、http://netallica.yahoo.co.jp/news/54288


田母神論文の原文:日本は侵略国家であったのか、http://www.apa.co.jp/book_report/images/2008jyusyou_saiyuusyu.pdf#search=%27%E7%94%B0%E6%AF%8D%E7%A5%9E%E5%B9%95%E5%83%9A%E9%95%B7%E3%81%AE%E8%AB%96%E6%96%87%20%E5%8E%9F%E6%96%87%27

[http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20081105へのコメント&レス転載(第一部)]


[副題/“田母神”教を崇める“極右嗜好”御用学者・渡辺昇一らの罪作りの深層]


・・・以下は、[直近記事/2008-11-05付toxandoriaの日記/麻生「漫画政権」が放置する「三つの格差」の母屋で“おがる”田母神「軍事統制派」の狂騒]へのコメント&レス(部分的に加除・修正あり)の転載(第一部)。


・・・・・


あるふぁ 2008/11/06 16:55


田母神など戦中の亡霊ですな。


toxandoria 2008/11/06 21:51


●“ あるふぁ”さま、コメントありがとうございます。おっしゃるとおり、まさに「戦中の亡霊」だと思います。というよりも、亡霊ならぬ「ゾンビ」(死に切れず現世を永遠に彷徨う死霊)というべきかも知れません。ただ、このようなゾンビが突然に墓穴から這い上がってきたのではなく、その墓穴へ梯子を降ろした人々(グループ)が必ず存在するはずです。


●例えば、「改憲論」に関連して、2007年5月2日の「NHKクローズアップ現代」が下記の二点(1)〜(2)を取り上げていたことを思い出しました(これに関連して下の記事◆を書いています)。


・・・・・


◆2007-05-09付toxandoriaの日記/改憲論に潜入するカルトの誘惑[2]、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070509


(1)財界の改憲論の主張(経済同友会が火付け役となった)は、グローバリズム経済で世界に伍して大競争に勝ち抜くためには「集団的自衛権の行使」を容認して「世界の経済戦線で活躍するビジネス現場を自衛隊が守るべきであり、そこでは場合によって「先制攻撃も辞すべきでない」と考えていること。


(2)格差拡大が進みつつある日本社会の底辺へ押しやられた、いわゆる負け組みの人々の中で一種の「職場としての戦争願望から改憲を望む」若者たちが増えつつあること。


<注記>


(2)に関する補足ですが、今日のNHKクローズアップ現代で「教育現場で増える非正規雇用教員、http://www.nhk.or.jp/gendai/」 の問題を取り上げていました。「教員の人件費削減」と「きめ細かな教育の充実」という矛盾した国の方針の押しつけによって、今や小中学校の全教員数の約 14%(約7〜8万人?)が、身分不安定な非正規雇用の非常勤講師によって穴埋めされているとのことです。
また、既に我が国の非正規雇用の就業者数は全体の1/3(1722万人・・・ここ10年で570万人増加した!)となっており、特に「15〜24歳の若者」では、その割合が約50%に迫っています(情報源:2008.11.6付・朝日新聞)。


・・・・・


● 突き詰めれば、これは「資本の論理」のなせる業ということだと思います。現在の米発「大金融パニック」の元となった「新自由主義思想」と「金融工学を駆使した、まさにマルチそのものの金融派生商品の開発」も、この「資本の論理」のなせる業の一つに過ぎないと思われます。だからこそ、無限定で野放図な「規制緩和」が社会的リスクの拡大に直結するのは当然だと思っています。


●歴史的に見れば分かりますが、「資本の論理」は全方位で凡ゆる可能性 を求めます。そして、「資本の論理」そのものに人間性の要素が入る余地はありません。旧いところでは、大航海時代のスペインの「エンコミエンダ」(Encomienda/16〜17世紀のスペイン王室が民間の植民者に与えた先住民支配権の委託方式・・・民営化の走り?)と呼ばれた、怖れ多くもキリストへの信仰までをも活用した植民地からの効率的な収奪方式があります。また、形は違いますが、特権的商業資本家が暗躍した17〜18世紀「英仏絶対王制」時代の重商主義政策もこの流れの上にあると思われます。


●19〜20世紀には英仏独日で財閥中心の軍産複合体が目立ち、第一次世界大戦以降はアメリカで軍産複合体が形成され始めます。近年では、そのパワーがブッシュ政権を後押ししたことが良く知られています。従って、今回の「田母神ゾンビ論文」も現代日本における軍産複合体の落とし子かも知れません。ただ、何処の国でも同じことですが、科学技術が高度化した現代においては、軍産複合体の分担産業範囲の見極め(線引き)は非常に困難になっています。見方しだいでは、凡ゆる業界が軍需産業のジャンルに入ってしまいますので・・・。


● ところで、今回の<ゾンビ出現の舞台>が何故に「アパグループ」の懸賞論文・受賞作品なのか? この点が理解できないところなのですが、あるいは「アパグループ」が「奥の院」のダミーという可能性があるかも知れませんね。なにしろ「アパグループ」といえば、「安部の美しい国」、「安晋会」などが連想される訳ですから。


●それに、ゾンビが集中発生した「航空自衛隊小松基地」と「アパグループ」の本店所在地が、同じ石川県であることにも何かがひっかかります。それにしても、渡辺昇一(当懸賞論文の審査員の一人)ら極右嗜好の学者たちは、よくぞこんなにも罪深い仕事をやるものだと思います。


(参考関連情報)


『新しい歴史教科書をつくる会、シンポ』、http://www.tsukurukai.com/08_simpo/simpo_bn.html


● 更に上の(2)と考え合わせるならば、「奥の院」の<一定数の徴兵願望の若者層を準備するという目的>と<2000万人近くの非正規雇用者の存在という日本の現実>が見事に調和(コンコルド)していることが不気味です。これが「アパグループ」の背後に潜む「奥の院」の姦計の結果だとすれば真に恐るべきことです。


[http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20081105へのコメント&レス転載(第二部)]


[副題]“田母神”カルト教にも通じる、元祖ネオリベの特異な精神環境


イオン 2008/11/07 01:15


こんにちは。昨日の「バラク・オバマ新米大統領」の誕生は感動的でした。ことに軍事や覇権でなく、アメリカが世界に貢献しうるのは民主主義の理念であると述べた部分、リンカ−ンの演説を引用し人民の人民による人民のための政治は決して滅びないと宣言した部分、また106歳で投票した黒人女性を紹介し、彼女の人生に重ねて如何にこの一世紀、アメリカが変貌と再生を成し遂げたかを語った部分には本当に落涙した程です。クリントンを遥かに凌駕し、ワシントン、リンカ ン、ケネディの名演説に迫る程だったかも、とも思います。


しかしここ三十年ほどの新自由主義、保守伝統回帰のイデオロギー、キリスト教原理主義のプロパガンダは白人層にひどく浸透しているようで、意外に多くの白人がマケインに投票したようです。これは毎日新聞に渡辺靖氏(慶大教授)が書いていたことですが、保守主義の根強さを示すものでしょうか。またあるブログ(「世に倦む日々」)の言うようにそれらと人種的偏見が混じったもののためでしょうか。


しかし近年の民主党候補の実績を見れば、オバマ氏が白人票の43%をとり、2000年のゴア氏が41%、2004年のケリー氏が42%であったことは、渡辺氏の主張により分があることを示唆していると思います。アメリカの白人サイレントマジョリティーのかなりの部分の脳髄には新自由主義カルトに加えて、プロテスタント原理主義的カルトが巣食っているのでしょうか。


どこで読んだか忘れましたが、カルヴィン派の運命予定説は、あらかじめ神に選ばれた宗教共同体に自分が属しているという観念を育み選民思想を導き出し、ついには人種主義をも導き出してしまったという説があるそうです。そういえば南アフリカでアパルトヘイト政策を進めたオランダ系を中心としたアフリカーナーも多くは敬虔な改革派=カルヴィン派信徒だったそうです。


さてこのようなアメリカの伝統保守主義と新自由主義の「野合」という謎ですが、今読んでいるデヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義』(森田稔也、他訳)(作品社、 2007)にその分析が出ていますが、(Toxandria様はお読みになったとは思いますが)いずれ紹介させて頂くかもしれません。ハーヴェイ氏によれば、新自由主義者はかけがえのない個人の自由を、経済活動の絶対の自由、また財産所有の絶対の権利と重ね合わせたり、もっぱら前者を後者として解釈して(すりかえて)、人々の心情に訴え、そこにイデオロギーの根を移植したのだとしています。如何にこのイデオロギーからアメリカ人民衆が脱却して行くかに今後のアメリカ社会と経済活動の運命がかかっているのかもしれません。


ところでこのプロテスタント原理主義と新自由主義の結合のルーツはどこにあると Toxandria様はお考えでしょうか。御教示頂ければ幸いです。(アメリカ保守主義、共和党イデオロギーの三本柱は絶対的経済自由主義(市場至上主義)、キリスト教右派主義、保守的社会政策(中絶反対、同性愛反対など)だそうですが… 保守退潮とは言われてもこの大統領選挙とともに行われた同性結婚の適法性を問う住民投票ではなんとカリフォルニアでも結果は「ノー」だったそうです。)

また勉強させて頂きました。今後とも宜しくお願い申し上げます。


toxandoria 2008/11/08 06:33


イオンさま、コメントありがとうございます。「バラク・オバマ新米大統領」の誕生は、まさにアメリカ民主主義の証明のような結果となりましたが、文字通り「CHANGE」への第一歩ですね。しかしながら、目前には「金融危機と深刻化するばかりの世界同時不況の果敢な克服、新生アメリカのイメージの世界へ向けた強力なアピール、そして、それらの具体化・・・と、これからが大変な道程だと思います。


デヴィッド・ハーヴェイの著書は未読ですので、よろしくご教示ください。


ところで、「プロテスタント原理主義と新自由主義の結合のルーツ」の問題ですが、・・・この点については未だよく理解できておりません。が、重要なカギは「オランダ独立戦争前後〜アメリカ合衆国建国時代頃の歴史」、「ハイエクの経済学」、あるいは「原始キリスト教史」の中にあるのではないかと思っています(以下は、二段階に分けて記述します)。


・・・・・


(16世紀末〜17世紀のオランダの空気/カルヴァン派の時代)


画家レンブラント(Rembrandt Harmensz. van Rijn/1606-1669)が少年時代、その家族はライデン市を二分する『レモンストラント派』(Remonstrant/ Remonstrantie(反対意見書)を提出したため、このように呼ばれる/ライデン大学の神学者アルミニウス(Jacobus Arminius/1560-1609)に起源を持つ反カルヴァン主義神学を信奉する一派)と『カルヴァン派』の抗争に巻きこまれています。


この抗争では、オランダ総督マウリッツ(Maurits van Nassau-Siegen 、Prins van Oranje/1567-1625)がカルバン派を信奉したためレモンストラント派はライデン市の行政職から一掃されました。


なお、レモンストラント派(アルミニウス派)に与したレンブラントの両親は、その余波を受けて、さぞかし肩身が狭かったのではないかと思われます(レンブラント自身の宗派は良く分かっていないようです)。


その後、このレモンストラント派とカルヴァン派の対立はオランダの大きな政治闘争へ発展し、神学論争としては1618年の「ドルトレヒト(Dordrecht)会議」で否定され、政治闘争ではレモンストラント派の大物政治家オルネンバルネフェルト(Johan van Oldenbarnevelt/1547-1619)が総督マウリッツに処刑され、レモンストラント派を疑われたグロティウス(Hugo Grotius/1583-1645/法学者、国際法の父)は投獄後にパリへ脱出しています。


しかし、レモンストラント派のオランダにおける批判的な影響力は、その後に復活してデカルト哲学や啓蒙活動の普及を助けることとなり、17世紀オランダを欧州における思想的自由の中心地とするのに大いに貢献したことが知られています。


また、ご周知のとおりカルヴァン派の「予定説」については「予定説→人間に対して神への大きな畏怖感を与える→人間は、この畏怖感を前提することによって、自らは神に選ばれた人間であるという証を求めて一心不乱に仕事に励むようになる(成功すれば自分は救われたことになるので)→与えられた職業にますます没頭するようになる→これが資本主義の発達を促すエネルギーとなった」とマックス・ヴェーバー(Max Weber/1864 - 1920)は説いています(『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』)。


レモンストラント派の教義についての正しい理解は持っておりませんが、それは、カルヴァン主義が持つ“一種独特の目眩めく歪みのような感覚”(むしろ、これはカトリック側の反宗教改革のマニエリスムと共鳴するのでは?=バランスの取れた知的合理主義の対極にある、天空へ舞い上がるような精神環境)に対する批判力として機能し、結果的に「近代啓蒙思想」と「公共の概念」をもたらす視野の広さを西欧世界に与えたのではないか、と思っています。


とすれば、カルヴァン主義は原理主義的な精神環境と馴染むことになると言えそうです。ただ、プロテスタント、カルヴァン派といっても数多の宗派があるので実像は理解できておりません。建国以前のアメリカに渡ったとされるカルヴァン派についても詳しい理解は持っておりません。


(アクイナス、スコトウス、サマランカ学派とハイエクの不可解な結びつき)


一方、ハイエク(Friedrich August von Hayek/1899-1992/オーストリア学派・代表格の経済学者、リバタリアニズム・新自由主義・新保守主義の元祖)は、“資本主義の基礎となる考え方はカルヴァン派ではなくイエズス会(Societas Iesu/カトリックの騎士的な男子修道会)のサラマンカ学派であった”と主張しています。


それは、スペインのサラマンカ大学(Universidad de Salamanca/創設1218年で、マドリード北東のサマランカにある世界最古の大学の一つ/http://www.usal.es/web- usal/Ingles/Universidad/Historia/Historia.shtml)に所属するイエズス会派の神学者たち(サマランカ学派/当時、ここには未だヨハネス・ドウンス・スコトウス(Johanes Duns Scotus/ca1265-1308)とトマス・アクイナス(Thomas Aquinas/ca1225 - 1274)の伝統が残っていた)が「公正な価格とは自然な交換(市場での交換活動)で決まる価格の上でも下でもない」と定義(会計上の現価主義のルーツ?)したため、これがその後の新古典派経済学の「限界効用の理論」を想起させるユニークなものとなっているからということのようです。


しかし、「トマス・アクイナスの公正 価格論」を支える正義のフレームは以下(【〜 〜 〜】)ようなものです(詳細は、参照 → http://d.hatena.ne.jp /toxandoria/20051217)。このため、(これはあくまでもtoxandoriaの妄想的で勝手な解釈ですが・・・)ハイエクはサマランカ学派の神学者らの「公正価格」についての解釈を誤解するか、意図的に曲解さえしたのではないかと思っています。なぜなら、「スコトウスの自由論」と「アクイナスの公正価格論」は、リバタリアニズムや新自由主義の対極にあると思われるからです(スコトウスの自制的自由論については、下記★をご参照ください)。


★2005-04-25付toxandoriaの日記/現代人の「自由意志」についての誤解(1/2)、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20050425


★2005-04-27付toxandoriaの日記/現代人の「自由意志」についての誤解(2/2)、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20050427


【 ・・・正義は、あくまでも「徳」に関する議論の中で論じられるべきだ。人間の「徳」は、「共同体」との繋がりがあってこそ確認される。一方、理想の共同体は共同善を体現すべきであり、このような共同体に属する者は共同善へ秩序づけられることになる。個(または部分)としての人間が共同体または他の個(または部分)とかかわる時に正義が問題となる。正義には「全体的正義」と「特殊的正義」がある。「全体的正義」は個(または部分)と全体とのかかわりの問題であり、「特殊的正義」は個(または部分)と個(または部分)のかかわりの問題である。そして、「特殊的正義」には「交換的正義」と「配分的正義」がある。「交換的正義」は個(または部分)と個(または部分)の間の秩序であり、「配分的正義」は個(または部分)と共同体全体との間の秩序である。また、「特殊的正義」は個(または部分)の「意志」によって顕現すべきものであり、「交換的正義」の中核的なもの(概念)として考察されるのが「公正価格」である。そして、この「公正価格」に対立するのが「悪徳」(“獣の道”に堕ちた人々が崇める価値観)である。・・・ 】・・・、なお。この前後の記述内容は下記◆をご参照ください。


◆2005-12-17付toxandoriaの日記/「耐震強度偽造問題」を予見したトマス・アクイナスの警告(2)、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20051217


・・・・・


このような次第で、「徳」と「共同体」と「正義」と「秩序」のバランス関係を重視するトマス・アクイナスの「市場の公正価格」、神の理性下での人間の自制的な自由意志を思量する「スコトウスの自由論」と「新自由主義思想=自由原理主義」を結びつけることは、どう考えても無理ではないかと思っております。「マックス・ヴェーバーの資本主義の精神」(予定説についての理解)にしても、その論拠となる因果論について、未だに十分納得できるとは思っておりません。


むしろ、これは不謹慎かも知れませんが、今思うのは、カルヴァンの「予定説」よりも遥かに古い時代の原始キリスト教精神の奥底に「自由原理主義(リバタリア ニズム)」を誘い込む得体が知れぬ悪魔的な存在(人間の記憶の消去とエントロピー増大を支配する悪魔のようなもの?)が潜んでいるのではないか、という ことです。人間の記憶(健全な歴史観)をデフォルトする(消し去る)という意味で、この悪魔的な存在がもたらす特異な精神環境の機序は、“田母神”カルト教あるいは“渡辺昇一”カルト教にも通じるものと思われます。


何か文字通り[机上の妄想]のようなご回答となってしまいましたが、この問題については、これから時間をかけて考えてゆきたいと思っていますので、この点をよろしくご了承ください。

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。