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タイトル:[民主主義の危機]「株価擬装・耐震強度擬装」と「小泉オレ劇場」の輪舞(ロンド)  2006/01/18


[民主主義の危機]「株価擬装・耐震強度擬装」と「小泉オレ劇場」の輪舞(ロンド)
2006.1.18

  ホリエモン、小嶋、小泉オレ劇場という“オレオレたち”の迷走が始まったようです。1月17日の東京地検特捜部の家宅捜索(ライブドアの関連会社ライブドアマーケティングの企業買収を巡る証券取引法違反事件関連)でライブドアの経営が、突然、揺らぎ始めました。そして、その株価へのマイナスの波及が底知れぬ動きを見せています。18日の東証市場の約定件数がシステム処理件数を超える可能性が出てきたため、東証では証券会社などに注文を可能な限り集約するようにとの協力要請の措置を取りました。ライブドアショックが株式市場のシステム自体にまで影響を及ぼし始めた訳です。18日付の日本経済新聞・記事“堀江氏「選挙の顔」一転「疑惑の人」によると、自民党の中川政調会長は『今回のライブドアの事件と、ルールの中での自由競争(市場主義経済)は厳正に区別しないといけない』という主旨のことを述べています。しかし、政府与党が誇るほど「小泉オレ劇場」による市場主義経済は完備した(完成度が高い)ものだったのでしょうか? このことを考えるため、いつごろから低迷する株価が上昇し始めたのかを振り返ってみます。
 
  2004年2月18日、内閣府は「2003年10-12月期のGDP(国内総生産)速報値」を発表しています。それによると、物価変動の影響を除いた実質伸び率は前期比1.7%増、年率換算で7.0%増の高い伸びで四期連続のプラス成長になっています。また実質では1990年4-6月期いらい13年半ぶりの高い伸びだと発表されています。ただ、デフレは依然として続いており、実質に比べて名目GDPは0・7%増(年率換算2.6%増)にとどまりました。年率換算で7%の高いGDP伸び率、実質と名目との大幅な乖離、素人の頭では分りにくい、これらの数字の矛盾は何を意味するのでしょうか?先ず、日米同盟経済の根本的矛盾という問題が隠れています。それは日本政府が日本国民から徴収した血税と国家債務の増加(国債の増発)で「アメリカの消費と双子の赤字を支える」という、アメリカが隷属支配関係を強要する構造になっているということがあります。この実態を「日米同盟」という大義名分で粉飾するため、当時、日本政府はデフレ不況の経済から脱出しつつあることを一刻も早く国民一般に対して効果的に演出して見せる必要に迫られていました。

  そこで採られたのが「都合の良いデータだけを公表し、根本的に誤った政策についてはとぼけて見せる」という、いわばアメリカ・ブッシュ大統領流の政治手法の亜流です。従って、この時に発表されたGDPの数字には何か得体の知れぬ胡散臭さが漂っていました。2004年2月19付の日本経済新聞は、このことについて『物価指標に“からくり”』という真に適切な(あるいは苦し紛れの?)表現で記事を書いています。因みに“からくり仕掛け”という言葉の意味を国語辞典(小学館・大字泉)で調べると「建築物や装飾品などについて外見の見栄えだけを良くして内部を粗末につくること」と書いてあります。要するに「ペテン・インチキ」の類だということです。ただ、ペテン・インチキでも、その技が熟成して一種の妖気(オーラ)を漂わせ始めると、善良な一般国民から尊敬の眼差しを浴びるようになるのかもしれません。

  ともかくも、この時の日本経済新聞の解説記事は“実感を上回る13年半ぶりの高成長を記録した「からくり」は物価指標にある”と書いています。その専門的な説明は読んでも素人の頭ではあまりよく理解できませんでしたが、要するに“今期のGDP計算から、推計基準となる指標調査の対象企業を旧来のものから高付加価値の製品・サービス部門に差し替えた”ということであったようです。推計の基準を変えた、つまり“測る尺度を変えた”というからには、この数字は旧来の規準で測れば云々です、という注釈をつけるのが筋ではないでしょうか? さもなければ、まるでマルチ商法まがいの詐欺商法と同じことです。これは、2003年の春に「日経平均株価指数の基準銘柄の一部が付加価値の高い業種に差し替えられた」手法と同様の数字操作(からくり作り)であったと思われます。この日経株価指数の数字操作が報じられたばかりの時には比較的正直に説明がなされたこともあり、旧来基準の指数より2〜3割程の嵩上げになっていることを大概の人々が意識していました。しかし、慣れは恐ろしいもので、いつの間にかそんな“からくり”があったこと自体を殆んどの国民もマスコミも綺麗サッパリと忘れ去っています。

  また、このような一連の小細工とほぼ並行して、2003年5月には「りそな銀行」へ公的資金が投入されています。つまり、このことは「大きいからといって潰せない銀行はないんだ」(複数のメガバンクの国有化も辞さず!)という竹中氏の恫喝の言葉で表明されたハードランディング路線(市場のルールに従う厳格な資産査定と経営責任の追及方針)が、“りそな銀行”国有化検討の土壇場になった途端、一転して、不合理(身勝手で、ご都合主義)な理由の下に金融庁(日本政府)の方針が、無節操にも、ソフトランディングへ変更された(モラルハザード化、つまり経営者&株主保護へ方針転換した)ことを意味します。そして、実はこれが契機となって株価の傾向が大きく上昇傾向へ転じ始めたのです。この経緯から経済小説の巨匠・高杉 良氏は、竹中プランの無効性を指摘します(参照、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20060109)。つまり、竹中プランを180ー転換した途端に銀行株が買い戻され、そこから株式市場が上昇方向へ転じたことは、竹中プランが景気回復には無効であった(つまり、竹中プランは内外の市場から信頼されていなかった)ことの証明になっている、という訳です。

  ところで『拒否できない日本』(文春新書)の著者・関岡英之氏は、“外国株対価の「三角合併」(海外本社の株との交換で日本に置いた子会社が日本企業を買収することができる手法)という究極の規制緩和を進める日米間交渉は、小泉=竹中ラインが正副の議長を務める「対日投資会議(JIC)」(参照、What is the JIC ? http://www.investment-japan.net/jp/jic/index.htm)が遂行してきたと言っています。つまり、このJICがアメリカの要望に従って、法制・会計制度・税制を改革するため法務省、財務省、金融庁を統率してきたという訳です。そして、このため時価会計、現損会計(http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0601/12/news015.html)などの国際会計基準の導入と一連の司法制度改革等による規制緩和政策が実行されてきたというのです。この観点からすると、小泉構造改革(小泉オレ劇場)とは、外資による日本企業の買収を促進するための政策だと見ることが可能です。そして、この一連の流れの背後には「米国政府から日本政府への年次改革要望書」があるのです。

  ともかくも、このようなアメリカの意向に沿った“異様な市場経済政策”を最優先させる小泉=竹中ラインの本心は何処にあるのか?ということが大きな問題になると思われますが、彼らの腹の中には、恐らく“日本企業の株価の総額が世界の基準に比べると異常に低すぎるので、これを引き上げることで日本経済を活性化できるはずだ”という、殆んど原理主義宗教に近いような信念があるのかも知れません。このため、たとえ外資に有利になろうが、アメリカの要望のままに闇雲に規制緩和と自由化を進めてゆこうと思ってきたのだと思われます。その結果、ヨーロッパ諸国から驚きの目で見られるほどの“異常な自由化の段階”まで一挙に踏み込んでしまったようです。しかも、それは“現在のアメリカ流”でさえないのです。松原隆一郎著『分断される経済』(NHKブックス)によると、現在のアメリカでは証券市場を始めとする経済犯罪に対しては非常に厳しいルールが整備されているのです。

  いわば、小泉=竹中ラインの「小泉オレ劇場」によって、日本の経済市場は“ヤクザが仕切る鉄火場”のような状態になってしまったのかも知れません。そこへ目敏く食い込みを図ったのがヒルズ族の旗手を自認するホリエモンであったようです。いずれホリエモンがやったことの全容は司直の手によって詳細に暴かれることになると思います。ここで、折角の日本経済の回復基調に水が差されたのは痛いという見方が大勢だと思わいますが、ものは考えようです。“ヤクザが仕切る鉄火場”状態になっていた日本経済の実態の一部が、今の段階で明るみに出たことで、遅ればせながらも市場への監視体制の欠如についての反省と一般の個人投資家を守るためのルール整備への切欠ができれば幸いだと思うべきかも知れません。愈々、来年は団塊の世代の大量定年組が集中する「2007年問題」の年であり、彼らの退職金・約80兆円と加熱気味の“鉄火場状態の株式市場”とのニアミスが起こり、多数の犠牲者が発生する前で良かったと思うべきかも知れません。

   一方、漸く昨秋に発覚したばかりの「耐震強度擬装(偽造)事件」は、その問題の前代未聞の(大量殺人の予備罪にも匹敵すると思われるほどの)深刻さにもかかわらず、早くもトカゲの尻尾切り(小者、小悪党の摘発レベルで止める)による強引な幕引き(政治権力・官邸サイドの一人勝ち)が懸念され始めています。一部の人々による追及の手が限りなく“黒幕”へ接近しつつあるようにも見えますが、恐らく、この辺りの幕引きの手法は、「住専問題」と「巨額・銀行不良債権」の処理経験を巡る“特別なノウハウ”が生かされている模様なので一筋縄ではゆかないようです。また、見方次第ですが、「ライブドアの株価擬装事件」が「耐震強度擬装事件」の幕引を支援する煙幕として使われる可能性が無きにしも非ずです。いずれにせよ、この二つの「事件」と「小泉オレ劇場」は“擬装”という一点で一種の共鳴現象を起こしつつあるようです。そして、この共鳴現象の発信源(黒幕の中枢部分)は『深く暗い闇』の世界に取り囲まれているようです。昨日の証人喚問に出たヒューザー・小嶋社長が手に数珠を持ち黒ネクタイを締めていたのは何を意味するつもりだったのでしょうか?

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