2012年8月10日 第30号(通巻第324号)

個性的な新香水登場

人工的なデザインで作られたものに比べて、自然界の作り出す生物や景観は、常に神秘的で不思議な色彩に満ちている。飛び回る一匹の小さな虫ですら、子どもや童心を失わない大人たちに喜びと幻想を与えることができる。人の創り出すものも、多くが自然界にインスパイアされて生まれたものだ。最も直観的なデザインこそ、人々の最も根源的な購買力をそそるのかもしれない。

マーク ジェイコブズが発表した新しい香水、「DOT MARC JACOBS」の外観は、夢のような色彩の、次から次へと浮かんでくるような水玉模様である。展示台の上に並べられた超個性的な香水瓶は、まったく説明を必要とすることなく、瞬時に人々の視線を奪ってしまう。球体上に描かれたマーク ジェイコブズお気に入りの水玉模様は、独創性の非常に強い赤と黒の配色である。ちょっと見るとナナホシテントウのようだが、よく見てみるとそれが蝶であるのに気が付く。上下全体に丸みを帯びているのがとても可愛らしく、瓶よりも大きく張り出しているキャップは羽を広げて飛ぼうとしている蝶である。瓶の上にはさらに、空から舞い降りたカップルの蝶がとまっている。パールとゴールドのロゴとリングが、香水にさらにゴージャスな魅力を加えている。

香りは、トップノートがレッドベリー、ドラゴンフルーツ、ハニーサックルのミックスで、ハートノートはジャスミン、ココナッツウォーター、オレンジブロッサムが絡み合った香り、ドライダウンはバニラ、ドリフトウッド、ムスクが余韻を残す。デザイナーのマーク ジェイコブズはこのデザインについて、ポルカドット(水玉模様)は流行遅れになったことはいまだかつてないと語っている。彼がアーティスティック・ディレクターを務めるルイ・ヴィトンが7月に発売した水玉模様の商品も、大きな反響を呼んでいる。

マーク ジェイコブズの新しい香水「DOT MARC JACOBS」は、11月7日に発売される。デビュー以来繰り返し登場しているポルカドットにインスパイアされた香りの香水である。8月1日には、代官山のDAIKANYAMA T-SITEで、新商品発表のパーティが行われた。今回発表された主な新商品は以下のとおりである。DOT MARC JACOBSオールドパルファム30mL 6825円、50mL 8925円、100mL 13125円、DOT MARC JACOBSボディローション(限定品)150mL 5040円、DOT MARC JACOBSシャワージェル(限定品)150mL 4305円(以上はすべて税込価格)。(緋梨執筆)

(C)MARCJACOBS.COM

MARC JACOBS http://ja-jp.marcjacobs.com(日、英)

神も深く眠る大地

美瑛は北海道の中ほどに位置し、田畑や野原や牧場が広がり、素朴で美しいヨーロッパ風の街並みも備えている。美瑛は光と色彩の大地であり、長い歳月の間、人に知られることなく静かに四季が巡ってきた大地であり、種蒔きと収穫、労働と喜びを含んだ大地であり、神すらもここでは深い眠りについているように静かな土地である。

美瑛の美しさは、写真で記録するのが難しい。その美しさは、広さの中に、静けさの中に、そして流れる雲が平原に描く影の動きの中にあり、こうしたものは写真の濃縮された静止画面では表現することができない。美瑛に行ったことがない人は、カメラマンのレンズの中の風景を見て、その広さと色調に感嘆する。しかし彼らは、丘の上に立って見上げた時の無限に広がる青い空と、眼下に果てしなく広がる金色の平原の大きさも、山道を曲がった瞬間にまったく違う色の斜面に出会う驚きも、四角形に分割された土地に異なる作物が植えられ、まるで大きな布でパッチワークをしたような畑の間に、シンプルな造りの素朴な木の小屋が立っているのを見た瞬間に湧き上がる、心の静けさとやすらぎを見つけた感動も得ることはできない。

美瑛には花畑があり、ラベンダーとひまわりが最も有名である。七月と八月は花がいっぱいに咲き、青池の湖水も冷たく美しいブルーになってまるで鏡のようであり、白みを帯びた松の枝が映って、まるで静謐な油彩画のようである。この期間、美瑛は観光シーズンを迎え、あちこちからの観光客が絶えない。美瑛駅を境として、西側には観光客の絶えない花畑と青池があり、面積の広い東側には農家の田畑や林が広がる。西側は鮮やかな色の花が咲いて明るく生き生きした雰囲気であり、東側は広い田畑が広がる素朴な雰囲気だ。観光用の自転車をレンタルして丘を走れば、あたり一面、柔らかい色調の純粋な色彩が広がり、自然と生命の持つ力と美しさがゆったりと流れている。これらのすべてに向かい合うと、心の中が穏やかに満たされ、ゆったりと透明な気分になり、すべてのネガティブな気持ちが浄化されて天と地の間に自然に溶けて行くような気分になる。まさに「この中に真意あり」(陶淵明の詩の一節)といった境地である。

美瑛に行ったことがある人は、心の中に美瑛への特別な思いを持つようになる。その後に苦労や曲折があったり、煩わしいことに巻き込まれたりしても、心の中には常にこの純粋で美しい場所の思い出がある。そのため、美瑛を訪れた人の多くは、いつか再び美瑛に帰ってきたいと言う。心の故郷である美瑛は、「行く」場所ではなく「帰る」場所なのである。(李薊執筆、撮影)

社団法人美瑛町観光協会 http://www.biei-hokkaido.jp/

日本の鉄道のアイドルたち

日本にはいろいろな「ファン」がいる。我々にもおなじみのものとしては、音楽ファン、アニメファン、ゲームファンなどがあるが、これ以外に、日本には人数がかなり多い「鉄道ファン」たちがいる。彼らは新幹線や一般の電車、地下鉄などの歴史上における様々な型式についてたいへん詳しく、あらゆる鉄道の路線図も完全に熟知している。そればかりか、多くの鉄道ファンたちは撮影や模型製作にも精通しており、頻繁にいろいろな列車の写真を撮りに行くし、車体や軌道、さらには駅や街の模型を自分で作ってしまう人までいる。これは彼らが列車への愛を表現する方法なのだ。

日本の鉄道ファンによって、一つの産業が形成されている。「オタク文化の天国」と言われる東京の秋葉原に行くと、鉄道模型の専門店がたくさんあるし、一般のショッピングセンターでも、駅名の入ったタオルや電車の形の貯金箱や箸などの記念品を売っている。各大手鉄道会社も、自分たちの持つ文化的な力に気づいて、「駅のスタンプ収集」や「駅の個性的な発車メロディ」などの企画をしている。こうした背景の中から、鉄道ファンのためのアイドルや人物が登場するのも自然なことだ。

2005年、木村裕子さんという「鉄道アイドル」が誕生した。彼女は1982年、名古屋生まれで、トレードマークは真っ赤な鉄道員の制服と真っ赤な制帽である。様々な鉄道ファンのためのイベントで活躍しており、まるで鉄道員の化身のようである。今では、日本の鉄道ファンで彼女を知らない人はいないほどのアイドルになっており、各地の鉄道会社も新しい路線の開通式に彼女を招待している。最近は仙台などの東北の駅に登場して、震災後の鉄道の復旧のために力を尽くしている。

一方、今年の6月25日に、伊豆急行線の片瀬白田駅に、新しい名誉駅長が生まれた。彼女は金田祥道という女性で、以前は列車の運転士だった。だが、35歳の今、彼女は「尼僧」という特殊な身分を持っている。二人の男の子の母親である金田さんは、運転士の仕事を離れた後、名古屋の曹洞宗の寺院で修行をし、現在は東泉院の副住職である。出家して6年になる彼女は、当地の旅行業のために以前の職場からの要請を受け、故郷の駅で名誉駅長を務めることになったのだ。このことは、鉄道ファンの間でも、新しい話題となっている。(凱特執筆)

木村裕子オフィシャルブログ http://ameblo.jp/yuyu385-1/

文化となった漫画

漫画は虚構、誇張、写実、比喩、象徴、借用などの様々な手法によって、絵を用いて物語を語る視覚芸術である。現代のような漫画で、日本で最も早く登場したのは、1814年に出版された葛飾北斎の北斎漫画であろう。漫画は現代では、日本において老いも若きも、万人が共に楽しめる芸術表現の形式になっている。我々は漫画を書店で買えるだけでなく、スーパーやコンビニでも、棚の上に漫画を見つけることができる。出退勤の電車の中や、電車を待つ人々の中に、漫画を手にして夢中で読んでいるサラリーマンや学生を見ることができる。また日本の漫画は、国内で大衆文化として広く受け入れられているだけでなく、アジア各国での人気はさらに高く、近年では欧米でも日本漫画ブームが起きており、アジアを飛び出して世界に向かう勢いである。

漫画は高尚な芸術品の仲間には入れない市井の芸術だと思っている人もいるかもしれない。しかし日本では、人々の漫画を愛する気持ちやこだわりは、「高尚な芸術」を遙かに超えているのだ!日本の漫画は、「国民性」と共に発展する過程で、次第に地位を高めていったのである。京都市中京区にある京都国際マンガミュージアムは、2006年に開館した、日本で初めての総合的な漫画博物館である。館内には明治時代からの様々な漫画雑誌が収蔵され、現代の人気漫画作品と世界各国の漫画の名作が30万冊も集められている。

また福岡県北九州市では、8月3日に斬新な漫画博物館が開館した。この「北九州市漫画ミュージアム」は、JR小倉駅の新幹線口にある「あるあるCity」の5、6階にあり、面積は2330平方メートルである。展示と各種イベントによって、日本と世界に対して漫画の魅力を発信している。開館の日には、北九州市出身の漫画家で「銀河鉄道999」の作者である松本零士さんが来館し、300名の来館者と共に北九州市漫画ミュージアムの開館を祝った。博物館として、漫画家たちの作品とその関連資料を収集する一方、所蔵図書によって、蔵書が豊富な「漫画図書館」を構成している。名誉館長の松本零士さんは、「楽しく、思い出をいっぱい作ってもらえる空間を目指したい」と語っている。

高貴な生まれではないが、漫画は次第に我々の日常生活に影響を与える芸術へと変化している。その大衆性と芸術性によって、充分に人類の文明を伝えることができる文化となっているのだ。(小雅執筆)

京都国際マンガミュージアム http://www.kyotomm.jp/ (日、英、仏、韓、中)
  北九州市漫画ミュージアム http://www.city.kitakyushu.lg.jp/shimin/02101004.html

日本の道路の起点――日本橋

みなさんは、「麒麟の翼〜劇場版・新参者」という日本映画をご覧になりましたか?物語の舞台は、東京都中央区の日本橋に設定されています。「新参者」はもともとテレビドラマで、人気が高かったので映画版が作られました。一人の男性の死体が日本橋で見つかりましたが、彼は腹を刺されてから八分間の間、助けも求めずに歩き続け、最後に橋の上の翼のある麒麟像の下で息絶えました。

日本橋は長さ49メートル、幅27メートルで、最初の木製の橋は1603年に江戸幕府と同時に誕生し、1604年に五街道の起点に定められました。江戸時代には商人の街でしたが、その後、日本経済の中心に発展しました。現在のルネッサンス風の石橋は、1911年に建造されたものです。橋の中央には、道路元標が埋め込まれています。近くにある中央通りの両側には大型の百貨店や商業施設や、たくさんの歴史を持つ老舗が並んでおり、日本銀行本店や東京証券取引所などの金融機関もあります。小説の作者である東野圭吾は、巧みな手法で物語の筋と登場人物たちを日本橋と結びつけています。事件発生の地点であるだけでなく、日本橋は登場人物一人一人にとって特別な意味を持っています。映画の中でしばしば登場する日本橋と周辺の風景を見ていて、私はふと新しい視野が開けたような気がしました。

ちょっと恥ずかしいのですが、私が初めて日本橋に行ったのは、数年前に東京のガイドブックを出版するための取材をした時でした。その時私は、駅の近くの有名な百貨店や商業施設を巡り、昭和六年創業の洋食の老舗たいめいけんでオムライスを食べ、そのビルの中にある凧の博物館を見て、最後に日本橋の下を歩いて何枚か写真を撮っただけで仕事を終えました。最近になってこの映画を見て、物語の説明から、日本橋の上の二つの動物のような彫像は、中央の柱にあるのが麒麟像で、橋の端部の柱にあるのが獅子像だということを初めて知りました。ここは日本の道路網の起点なので、背中に翼のある麒麟像は、ここから出発して日本全国各地や、さらに遠くまで飛んでいくことを象徴しているのです。映画を見て、私は作者の観察力と連想力に感嘆しました。

日本橋に立って写真を撮っている時、他にも多くの人が立ち止まってカメラや携帯を持ち出して麒麟像や道路元標を撮影しているのに気づきました。外国から来た観光客だけでなく、日本人も日本橋をかっこいいと思っているんですね。去年日本橋は、架橋百周年を迎え、あちこちの店で百年記念商品を売り出して祝いました。私は日本橋の上に立って、悠々と流れる川の水を眺めながら、百年の歳月はどこまで流れて行ったのだろうと思いをはせたのでした。(哈日杏子執筆、撮影)

お江戸日本橋情報サイト http://www.nihonbashi-tokyo.jp/  哈日杏子のブログ http://harikyoko.wordpress.com/ (中、日)

第30回 下北沢

【下北沢の概要】東京都世田谷区にあり、無数の小劇場、小ホール、ライブハウス、中古レコード店、古着屋などが集まる文化のおもちゃ箱のような街で、略称は「シモキタ」である。国士舘大学(梅ヶ丘キャンパス)、明治大学(和泉キャンパス)、東京大学(駒場キャンパス)から近いので、多くの学生が行き来している。「日本の若者が最も住みたい街」というアンケートで、常にベスト3に入る。

【夢見る人々の故郷】下北沢は東京の中にあるが、慌ただしさやストレスがなく、他の地区とは明らかに異なっている。安く出店できるので、若い経営者ががんばっているカフェや、アニメグッズの店などが経営を続けることができ、古着屋は価格が安く、快適さと自由の追求や憧れを象徴している。車両が通行できない小さな路地がたくさんあり、小さな家が集まっていてとても雰囲気がある。

【劇場、音楽祭】毎年2月には、1ヶ月間続く演劇祭が行われ、8つの小劇場で様々なプログラムが上演される。一方7月に行われる下北沢音楽祭には、小ホールで音楽を聴くこともできるし、狭い路地で足を止めてライブを楽しむこともできる。中国では、宮崎あおいが声の出演をした「魔法遣いに大切なこと」で、この異郷の楽土を知った人も多いだろう。(姚遠撮影、執筆)

タイトル:「道案内」
場所:北沢2丁目付近
撮影のポイント:古着屋の店員と道端の小さな神社が、緑色の電柱によって画面の両側に分けられている。黄色い看板の矢印は、ちょうど神社の方を向いていて、笑いを誘う。
使用フィルタ:Lofi+彩度(各部分のコントラストを強化し、陽光と陰影の効果を際立たせる。フレームの装飾性。)
タイトル:「大安売り軍団」
場所:ZENMALL下北沢店
撮影のポイント:半分は「完全閉店」の横断幕、半分は胸の前に宣伝のたすき掛けをしたマネキンたち。対角線の構図を用いて、不安定感を際立たせる。
使用フィルタ:Kelvin+彩度−フレーム(黄色のたすき掛けの雰囲気を強調する。フレームを除去して情報量を増加する。)

タイトル:「放浪者」
場所:ヘアサロンKING BEE
撮影のポイント:被写体の前に立って、上から見下ろして撮影する。ぼさぼさの巻き髪、花びらがしおれた造花、木彫りの足が三角形を形成し、画面にバランスと安定感を与えている。
使用フィルタ:Hefe+彩度(地面とマネキンの質感。花びら鮮明な色調。フレームの装飾性。)
タイトル:「路地の小劇場」
場所:「劇」小劇場
撮影のポイント:最も下北沢的な文化を表現している場所である。道路から正面にアングルを定め、人物をできるだけ画面の下の三分の一に配置し、より多くの人物が画面に入るようにする。
使用フィルタ:Sutro+彩度(画面全体に黄昏の色調をかぶせる。フレームの装飾効果。)

ぶらり下北沢 http://www.burari-shimokitazawa.com/   I LOVE下北沢 http://love-shimokitazawa.jp/

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