2006年5月31日第20号(通巻第36号) 毎週水曜日発行 ブログ 中文簡体 中文繁体
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ファッション・イベント

与勇輝(ATAE Yuki)さんの世界

横浜高島屋で「与勇輝 人形芸術の世界」をみた。散歩と買い物のついでにふらりと入ったら惹きつけられた。

日本人独特のアーモンドアイ、果物のようなチョンととがった唇。木綿の布の顔や手足。丁寧に作られた着物や小物、桶や箒・裁縫道具やたんす、はたまた携帯電話などの小道具まで。多くは20cmほどの人形だが丹精こめて製作されたのがよくわかる。そのためずっと見ていて飽きない。不思議なことに人形そのものにこめられた魂や歴史などより、作り手の手の温もりと愛情が見えてくる。この作者は与勇輝氏、昭和12年(1937年)9月生まれの69歳である。

作品の多くは小学生くらいの子供たち。友だちと遊んだり、家のお手伝いをしたり、兄弟の面倒をみて幼い弟をおんぶしたりしている。作者によると、無心な子供たちが美しい自然の中で素直に生きる様を表現したかったとのこと。最近は携帯を手にした少女をモデルにしたものも多い。渋谷などの街にたくさんいそうな10代の少女の服装は風俗画ならぬ風俗芸術としてみることも出来る。また、晩春、麦秋、東京物語など小津安二郎監督の映画の原節子をモデルにした人形もある。小津監督と与勇輝氏の感性は似ているのかもしれない、と思った。

布という素材の持つ温かさと、作品に彩りを添える小物へのこだわりが、愛玩用の人形という範疇を超えている。与氏の言葉でいうと、「人形ではなく、布を用いた塑像」だそうだ。支えも無いのに安定して立っているのも興味をひいた。「人形が立つのは人間と同じ」というが、造形の極意とみた。 (西岡珠実執筆)
与勇輝館  http://www.musekan.net/
 
家電製品・IT情報

指輪型携帯電話登場

NTT ドコモでは、昨年末に開催された「CEATEC JAPAN 2005」で出展した世界初の指輪型携帯電話――「指話」(Yubi-Wa)について、先ごろ主要新聞各紙で1ページ全面広告を行なって大々的に宣伝を展開した。

この斬新な携帯電話は、マイクとスピーカで構成されたウズラの卵2個程度の大きさの機械を、無線通信規格であるBluetoothによって携帯電話本体と無線で接続している。「骨伝導技術」を採用しているため、「指話」を指にはめて指先を耳の穴に挿入すれば相手の声を聞くことができる。また自分のしゃべる声は「指話」に内蔵されたマイクが拾って送信する。

記者も「指話」を使って通話してみたが、まるで「頭の中から伝わってくる命令」を聞くような感覚で、非常にはっきり聞こえた。「指話」にはまだ細かい点で改善すべき点もあるが、このような今までにない斬新な創意や発想が携帯電話分野に大きな衝撃をもたらすことは間違いない。

今までにも「骨伝導スピーカ」を搭載した携帯電話は登場しているが、音声の漏れやノイズが入るなどの問題があり、理想的な状態を実現することはできなかった。しかしこうした問題は「指話」ではすべて解決されている。また、「指話」は「UbiButton(ユビボタン)」という新機能を備えており、指先同士を軽くタンタンと触れ合わせると、発着信などの指令を送ることができる。

街角のあちらこちらで見られる長方形の携帯電話を耳に押し当てて対話している光景も、もしかしたら近い将来なくなるかもしれない。
(C)2006 NTT DoCoMo, Inc.

「指話」のテレビ広告 http://www.nttdocomo.co.jp/corporate/ad/tvcm/060512.html

 
観光スポット・グルメ

表参道の国際未来空港

東京の中心に位置する流行ファッションの発信地、表参道が突如国際空港に変身?!戦前には表参道に滑走路があったこともあるそうだから、空港が表参道に登場したとしても、その頃なら誰も驚かなかったかもしれないが、現在は高層ビルが林立するにぎやかな街の中である。この表参道に6月19日から28日までの10日間、突然国際空港が登場するという。

もちろん、飛行機が飛んでくるわけではない。「空港」をテーマとした巨大なアートイベントが行なわれるのである。

まず「空港」(スパイラル)で専用の「パスポート」を受け取ると、空港の各種展示やWEBで投稿する「未来メッセージ」の展示を見ることができる。それから、青山ダイヤモンドホールで金属探知機の検査を受ける。出国審査カウンターは表参道ヒルズに設置され、パスポートに「出国許可スタンプ」を押してもらうと、目的地(デスティネーション)である「各国の空港」に飛んで、特設の11ヶ国の「空港ショップ」で自由に買い物ができる。スタンプを3個集めると、楽しい記念品ももらえる。

今回の企画は、「ココロのリゾートを提案する架空の旅行代理店」をコンセプトとするアートプロジェクトユニット「Resort Travel Agency」(RTA)と成田空港公団によって行われる。この奇抜なアイデアは、東京の老若男女の感性を大いに刺激するに違いない。直接体験しに行くことができない人は、下記のFLASHサイトを楽しんでほしい。

このイベントは、6月2日に成田空港にグランドオープンする第1旅客ターミナルビルのプロモーションとして行われるものである。 (嶋田千里提供)

表参道国際未来空港公式サイト http://www.futureairport.jp/

 
イベント掲示板
日本のナンバーワ

最大の水上木製ジェットコースター

質問です。「東武動物公園」は何をしに行くところですか?――答はもちろん、「動物を見に行くところ」。でも、若者たちの答はちょっと違っている。「レジーナを体験しにいくのさ!」(レジーナとは、イタリア語で「女王」という意味である。)

2003年3月18日、東武動物公園はこの世界最大級の水上木製ジェットコースター「レジーナ」を公開した。このものすごいジェットコースターを建設するためにアメリカから輸入した高級木材は、家を約600軒建てられるほどの量だそうだ。1998年11月に施工を開始してから一年半の間に、多い日で一日に何と180人の大工が足場の上で作業したという。

さて、レジーナの驚くべきデータを紹介しよう。

ジェットコースターを取り囲む池の面積は26000平方メートル。

レジーナの最も高い部分は37メートルで、12階建てのビルに相当する。

最大傾斜度は50度で、そこでの速度は110キロメートルに達する。

全長は1334メートルで、全部走り切るのに2分10秒かかる。

スリルを増すために、途中にわざわざ250メートルの直線部分を設けてある。

全身が宙返りする瞬間や、木組みの迷宮に飛び込む瞬間は、とてもスリリングである。

【編集部から「特集第2弾」についてのお知らせ】テレビなどご活躍中の「ねんドル」岡田ひとみさんの取材特集を明日(6月1日)に配信します。ご期待下さい。

→貴メルマガを愛読してまもなく一年になります!たいへん楽しいメルマガで、紹介されている創意にあふれるいろいろなものに、大いに啓発されました。以前、あるサイトでたくさんの日本のテレビ広告を見て、その制作や構想が優れていることにたいへん驚き、それから私はこの分野の芸術に興味を持つようになりました。しかし、 PC が故障したためにそのサイトの URL が失われてしまいました。そこで、広告を鑑賞できるサイトをいくつか教えていただけないでしょうか。よろしくお願いします。【中国  任燕

→前号で紹介されていた大江戸温泉物語のドクターフィッシュには、いつまでという期限がありますか?【日本  AKI

→私も三好和義氏と言えば、やっぱり RAKUEN です。偶然買ったリゾート本に載っていた三好氏の海の写真に惹かれ、写真展に足を運ぶようになりました。ベルサイユや日本の温泉なども撮られているようですが、やっぱり海リゾートの RAKUEN こそ氏の原点であり、私の心を惹きつける源だと思っています。 (メルマガの「編集後記」を読んで) 【日本  クマコ

→ブログを拝見しまして、感心しました。よかったら、私のブログ (BMW 愛車について ) にもお遊びに来てくださいね……【台湾  美女
配信サイト
ALAYA
先端技術・出版・雑学

エリート現役高校生に科学技術の最先端教育を 

「格差」という言葉が昨今のキーワードになっている。地域格差、賃金格差から、負け組・勝ち組などという言葉まで登場し、社会の中のあらゆる格差の是非が問われているようだ。仕事の量と質によって適正な報酬を、という意見と、実力を発揮する機会の均等がなければ報酬格差は不公平だという意見。格差の是正か悪平等の是正か。様々な意見が飛び交う中、教育の差別化・特化を目指す動きが出てきた。

日本の教育水準は世界の中で低下しつつあるという。テレビやゲームなど安易で受動的な娯楽が増え、自分の頭で考えることが減っている。少子化によって将来の労働力の量が低下する中、頭脳集団の質まで低下して行くとなれば日本の国力の弱化は避けられまい。国土が狭く、資源の乏しい日本の国が発展し我々国民の生活が豊かになるためには、頭脳労働による物づくりしかありえない。

優秀な人材を育成するために、大学と企業が連携する産学協同という試みはあるが、さらに年齢を下げて、高校生の理系離れをくいとめる教育サービスが始まった。大学と現役高校生対象塾の連携である。東京と神奈川を拠点に展開する早稲田塾が、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスと東京工業大学との共同で生命科学、ロボット光学、 IT技術の研究に現役高校生を参加させるプロジェクトを立ち上げた。「スーパーサイエンスプログラム」「スーパーロボティクスプログラム」「スーパー IT プログラム」。塾が大学教授に特別授業を依頼するのは珍しくないが、このプロジェクトの画期的な事は、塾生以外にも門戸を開放して一般公募による試験選抜をすることと、受講料が無料であること、大学での学問領域を先取りする基礎講義を大学キャンパスや研究施設で開講することだ。いうなればエリート高校生へのプレエデュケーション。日本の未来が見えてくるだろうか、注目に値する。 ( Cross-border Coordintor 執筆)
(C)2006 wasedajyuku.com
早稲田塾公式サイト http://www.wasedajuku.com/index.html
 
芸能・ドラマ・音楽

少女漫画と能の間に―創作能「ガラスの仮面」―

中央にしつらえられた作り物(据え道具)は、梅ノ木に見立てて薄茶の布で囲った山のみ。その上にルビーのように光る梅の花が枝垂れている。舞台後ろは一面のスクリーンで、綾模様のモチーフが深いブルーの中に浮かび上がっていた。5月15、16日、ル・テアトル銀座の現代演劇用のシンプルな舞台で、新作能「ガラスの仮面」が演じられた。

静まった舞台に一人登場し、「ガラスの仮面」の物語を語るのは、月影千草役の宝塚歌劇団の邦なつき。その後、西の者と東の者による環境破壊を題材にした狂言が演じられ、さらに仏師が登場して阿古夜(紅天女)との恋物語が演じられる。

1976年からなんと30年も連載している「ガラスの仮面」はまだ完結しておらず、劇中劇の「阿古夜(紅天女)と仏師の一真の物語」はまだ漫画の中では描かれていない。能のほうが原作より早くリリースした、というわけである。「ガラスの仮面」は登場人物も多く、シテとワキだけの能でどのように表現するのか不思議に思っていたが、演出によってさらりと処理されていた。要するに、導入部の月影千草の語りで全体のストーリーが、縦軸の能と地謡で「自然(神性)と人間の愛と掟」が、紡がれていくのだった。横軸として「地球と人間の共存」が狂言として付け加えられていた。

梅若六郎の紅天女は完成された美しさを見せ、福王和幸の清々しい美男子ぶりはため息を誘った。脚本は宝塚歌劇団特別顧問の植田紳爾、「ベルサイユのばら」を宝塚歌劇にした演出家である。これで謎は解けた。漫画と能の間には、宝塚があったのだ。納得の舞台である。 (Nyanya執筆)
美内すずえ公式サイト http://homepage2.nifty.com/suzu/
 
編集後記

平面デザイン、立体構成、絵画や写真、装飾品、ファッション、ゲームキャラクター、音響や映像、パフォーマンスアート……屋外には太陽が輝き、初夏の青空は澄みきって美しい。屋内は多くの人で賑わい、誰もがどこまでも広がるアートの大海を泳ぎまわって、創造の自由と快感を体感している。

先日、東京国際展示場(BIG SIGHT)で、第23回デザイン・フェスタが行われた。この人類の創造の可能性が無限に広がる、半年に一回の世界最大級のアートイベントは、「表現の自由」によって、国籍も肌の色も違う3歳から93歳までの5900人の芸術家を引き寄せ、そこに60000人近くの観客が集まって熱狂した。

どこまでも続く2600個のブースをゆっくり歩きながら見ていくと、視線と思考がさまざまな色や形のアート空間を突き抜けていく思いがする。何物にも縛られない、自由自在な創意と思考に触れていると、心の中に賛嘆と感動の気持ちが溢れてくる。この「創造の喜び」の空間に身を置いていると、魂の深いところから思いがけないインスピレーションの火花がひらめいてくるのだ。

数年前、ある西洋の哲学者の著作を読んだが、その中で、人類というものは生、死、戦、愛の四つの言葉で概括できると述べられていた。前二つは人の生物としての自然な属性であり、後の二つは人類だけに備わった、生に伴う本性である。言い換えれば、人類が存在する限り、戦争と愛情が永遠についてまわるということだ。それでは、どうしたら武器を花束に替えて戦争や紛争を回避することができるのだろうか。スポーツ大会は、戦のエネルギーを転化させる有効な道であろう。ならば、愛情はどうか。人生の喜怒哀楽を左右し、人生の甘さと苦さを調合する根源である愛情についてはどうしたらいいのだろうか。

ビッグ・サイトの巨大な逆三角形の展示場を出たところで、大地に刺さった巨大な鋸(のこぎり)型の彫刻を振り返る。そのときふと悟るものがあった。識者たちが思い悩む「ますます冷酷になる世の風潮」をかかえた現代社会にあって、このようにたくさんの人々を集め、熱狂させ、われを忘れさせるものは、芸術。芸術しかない。

芸術こそ人類の最も高邁な心――愛情の発現であり昇華なのである。