メルマガ:ep-finance
タイトル:[ep-finance] 金銭債権の流動化への第一歩  2005/03/13


============================================================

         [[ e p - f i n a n c e ]]

         edition: 13-Mar-2005

============================================================

こんばんは。
発行人しております、shi でございます。

emichanproduction.com
http://www.emichanproduction.com

で、毎週連載中の経済小話を紹介して行きます、本メルマガは
発行人の知識と経験をもとにいろいろな、社会人なら
知っておきたい話から、こんなこと知ってるのは、金融業界の
ほんの一握り!といったカルト話まで、盛りだくさんで進めて
いこうと思っております。

。。。気づいたら、ひと月以上おさぼりしてましたか。。。
ごめんなさい。って100回書いても許してもらえなさそうですね(笑)

ええと、言い訳代わりの近況報告しましょうか。
だいたい2-3月というのはいろいろな会社さんがいろいろな事情で
いろいろとされたい時期なものですから、毎年この時期は普通に
忙しいのですが、例の信託業法の改正のおかげで受託の際の作業が
やたらと増えたので、大抵は

- 会社で午前2-3時までいて契約書を見ていたり、レポートを作成したり
- 日本全国を(主に日帰りで!)出張を繰り返していたり
- たまの休みはスキー場でだちょうになってくるくる回ったり(笑)

のどちらかでした。

まぁ、最後はさておき、最初の二つに関しては、日経でも改正信託業法の
影響ということで、受託の際の手間が増えたので通常だと受託の手数料を
下げてあげられていたものが下げられなくなった、みたいな話もありましたが、
本当にそんな感じです。それだけじゃないんですよ。

。。。あああ、このところの信託業法恨み節が止まらなくなっているくせで(笑)

さて、今までは不動産の流動化にポイントを当てて話をしておりましたが、
今回からは今度の改正で受託対象となるアセットクラスが
広がったとはいえ、資金調達のための資産としてはまだまだ基本の
金銭債権信託について話をして行こうかと思います。

今回のコラムはそのキックオフです。
概念的な話が多いので、特に不動産の方はわかりづらいかもしれませんが、
ゆっくりおつきあいのほどを。。。

<<<<<<<<<<<<<<<<<< financial talk >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
 [企業資産の流動化と信託 : 金銭債権の流動化の概論]

前回までは不動産の流動化の観点からいろいろと見てみましたが、
今回はアセットクラスで大括りに分けた場合に出てくる、旧信託業法下で
流動化できたもう一つの資産、金銭債権についていろいろと見ていきたいと
思います。

まず、最初に不動産の流動化と金銭債権のそれとの一番大きな違い、というものを
提示するとしたら、基本的な商品に対する発想が異なることから、こうなるかと思います。

「不動産信託は対象資産全体を投資家に移転するのが目的だが、
 金銭債権信託は対象資産の優良部分のみを投資家に移転するのが目的である」

不動産の場合は、投資家に信託全体を売却して、その収益とリスクの配分を投資家間で分け合う
ストラクチャーをとりますが、金銭信託の場合は、特殊な場合を除いて、信託のうち収益とリスクの
優良部分を投資家に転売して、残りの収益とリスクを委託者が保有し続けるという
ストラクチャーを取ります。

その背景は、不動産の場合、そもそも不動産売買の延長であることに付け加えて、
対象資産そのものはキャピタルゲインを除けば何も生むことはなく、その運用という形での
賃貸借という間接的な形で収益を生み出していることをふまえると、不動産そのものに
優先劣後させるという発想はないことから来ているのに対して、
金銭債権の場合には、元来資金調達を行う際の手法としての貸し付け債権の譲渡担保という
発想、すなわち、債権は委託者の手元に残している、という考え方や、資産そのものが
収益を発生させている債権の集合体という、統計学的なアプローチをすることの出来る資産と
とらえた場合に、その集合体の優良部分だけを取り出すことが出来る対象であること、
というものが、歴史的経緯としてあると思います。

さて、こんな風に書いてしまうと、なんのこっちゃ、ということでしょうから、
ちょっとした例示でとらえてみたいと思います。

例えば、「某銀行」が「とある優良取引先」に貸し付けているローンを10本計100億円あるとして、
これを信託に譲渡して受益権化して売却したい、というニーズがあると想定します。
ちなみに、このようなケースは「一般貸付債権信託」として、看做し有価証券扱いになる、
というカテゴリーがあるくらい古くからあってポピュラーなものです。
この場合、その優良取引先の貸付債権の履行見込みがまぁ80%くらいだとした場合、
100億円のうち、80億円分は確実に帰りそうですので、信託受益権を80億円のものと
20億円のものに分割して、受け取る金銭債権の元利金の支払いをもとにする
信託配当の規定を、まず80億円の受益権に優先して支払い、残りを20億円の受益権に
当てる、と規定するのです。そうすると、何となくですが、80億円の受益権は将来に
わたって確実に支払われそうですので、投資家としても丸ごと購入すると
80%しか帰ってこないような商品だったものが、ほぼ100%帰ってくるように見える、
買いやすい商品に

「投資対象の質が向上した」

ように見えるのです。しかも、このときの受益権は、売ろうとしている「某銀行」には
全く影響せず、債務者である「とある優良企業」の返済できるかどうかに依存していることから、
特に「某銀行」が格付けの低い場合には、彼らがマーケットで80億円を調達するときの
金利水準よりも有利な、「とある優良企業」の金利水準で商品が設定されることになるので
その意味でも

「資金調達の質が向上した」

形になるのです。

実は、金銭債権の流動化の目的の一つは、この資金調達の際の信用リスクの変換なのです。
中小企業などの低格付けの企業に対して如何に有利な資金調達のツールを提供できるか、
ということで、この信用リスクの変換がポイントとなるのです。

さて、次回以降は、各論に入っていこうと思います。

                   http://www.emichanproduction.com/
                          -> "Finance"
<<<<<<<<<<<<<<<<<< financial talk >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

そうなんです。
元々、入り口が金銭債権の流動化だった発行人にとっては、
収益配分の条項がやたらと長い信託契約を使うのが普通であって、
不動産信託のようなシンプルさを目にしたときには、実は目から
鱗が落ちた、ということがありました。

言い換えると、不動産信託から入ってくる人にとって、金銭債権の流動化の
契約書は、複雑怪奇に見えるらしく、どうも入って来づらいようです。

まぁ、SPCレベルでの収益の分配の議論もそんなに複雑ではないですから。。。

ということで、次回以降、マニアックな世界に突入していきますので、
ちゃんとついてきてくださいね:-)


いろいろな所にアンテナを張りながら執筆しておりますが、
「こんなネタ教えて?」
とか、
「これってどういうこと?」
というご質問から、
「それって嘘でしょ?」
というご指摘まで、いつでも大歓迎ですのでお気軽に
メールくださいね。

さて、ちょっと恨み節、いや、実務の観点から見た場合の信託業法の
改正の影響の話をもう少ししてみましょうか。
なお、最近、Blog をはじめとする、個人の仕事がらみの記載には
いろいろと注目を浴びているようですので、守秘義務の範囲内で、ということで、
ご勘弁を。

(その1)
この間、某不動産案件のクローズ(いわゆる受益権の売買の決済)に行きました。
そのときの委託者様は 10社ほどでしたので、10社の事務担当の方を目の前に
業法に定められる、信託契約締結前と締結時の説明を行いました。そのとき、
信託受益権化したのが、双子の建物だったので、信託契約は二つ。。。
今回アレンジャーの方にかなりご無理をお願いして、10社全員のご出席を
いただけたので救われたのですが、遠隔地でのクローズとなれば、全員出席が
出来ないケースが当然容易に想像できるのですが、その際の説明って、やっぱり
地の果てまでも行かないとだめなのでしょうか。。。

(その2)
この間、某金銭債権案件でアレンジャー氏と延々と受託の際のサービサーの
調査に関してお小言を食らいました。曰く、
「資金調達したいと仰っているお客様に向かって『あなたはうちがお願いするに
 足りるくらい大丈夫ですか?』って聞くのは失礼だろ!」
あのぉ。。。私が法律を変えたなら怒られても仕方ないんですが、頭のいい、
お役人様がお決めになったことなので、私に怒られても。。。
# これ、私と一緒に働いている若き弁護士氏も言ってました。

ただ、この話は実は結構シリアスで、諸般の事情からクライアントと守秘義務を
負わされているサービサー法のサービサーに委任する際には、その守秘義務との
兼ね合いで提供できる情報が限られているため、受託前のデューディリジェンスに
対して非協力的にならざるを得ないケースが考えられます。
とはいえ、法務省からライセンスが出ている会社だから問題はないと思うんですが、
やっぱり事前に事細かに調べないと、業法23条の条件に引っかかってだめですか?
金融庁様!

(その3)
やっぱり、別の某金銭債権案件でのお話。資金調達したいのは某零細に近い
中小企業さん。となると、債権回収を従前の通りに行ってもらうことになるのですが、
そうすると、信託譲渡したものとそうでないものとをちゃんと分別管理しないと
だめ、と業法に書かれてしまっているのですが、そもそも分別管理って何?
どのレベルまで要求されているのかわからないので、設備投資の程度がわからない。
ということは、そこにお金がかかるとなると信託を使って資金調達できないのでは、
という、卵が先か鶏が先か、という問題が。。。
これって資金調達しやすくするのが目的だったはずなのに、中小企業さんにとっては
却って敷居が高すぎてしまって入れなくなってるように見えるのですが。。。

うーん、なので、この数日は、本気で将来を憂えてきたのですが、
といっても、ほかに何が出来るのやら。。。

どなたか、こんな私に合いの手を。いや、愛の手を(笑)

なんにしても、まずはこの年度末を乗り切らねば。
ということで、次回発行は。。。4月になっても許してくださいね(笑)

==============================================
ep-finance: 
発行人: shi

http://www.emichanproduction.com/
メニューの "main magazine" でバックナンバーと
登録/解除をどうぞ。 

melcup: 40部
emaga: 54部
Mailux: 2部
メル天: 26部
メルマ!: 24部
==============================================
本メルマガは転送は変更を加えない限り許可ですが、
あわせて、上記サイトからの購読をお勧めください。

-----
ところで、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、

ビジネス本レビューの

           ep-books <http://melten.com/osusume/?m=18931&u=18930>

では、今スキルアップ思案中です。

80年代や90年代のポップスの紹介をする
        
           ep-music <http://melten.com/osusume/?m=18932&u=18930>

で、アンビエントハウスから派生した音楽を追いかけてます。

また、ep-update <http://melten.com/osusume/?m=18652&u=18930>で
この3つをダイジェストを中心にいろいろアップデートしたことや
はみ出したネタなどをご紹介して行こうと思っております。


そして、発行人のもうひとつの顔、浅草のお土産屋のお兄さんとしての
浅草ガイド、
         info-asakusa <http://melten.com/osusume/?m=18835&u=18930>
も、ぜひご覧くださいね。

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。