メルマガ:作家&出版人育成マガジン「パウパウ」
タイトル:『パウパウ』第135号  2011/02/27


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      作家&出版人育成マガジン『パウパウ』第135号
   2011年2月27日発行(不定期発行)(2000年3月7日創刊)
      編集・発行人 上ノ山明彦
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<お知らせ>
世界と日本で災害が相次いでいます。義援金にご協力をお願いします。
○日本赤十字がニュージーランド地震救援金受け付けています。
http://www.jrc.or.jp/contribution/l3/Vcms3_00002021.html
○都城市が新燃岳災害の義援金を受け付けています。
http://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/kouhou/sinmoekifuorei.jsp
○日本ペンクラブ関係のイベントをHPでご紹介しています。
3/5 「平和の日」 会津若松の集い
3/6 「早乙女貢先生墓前祭」 会津若松・天寧寺
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●巻頭言 ●   上ノ山明彦 
         図書館での本の貸し出しと作家の生活
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 読売新聞のWeb版に、非常に気になる記事が掲載されていました。新進
作家の樋口毅宏が新刊を出したが、 その巻末に、図書館での貸し出しを
半年間猶予してほしい、という要望が書いてあるというのです。
 DVDやCDのレンタルで新規商品は1年間レンタル禁止というのがありま
すが、たしかに書籍には制限がありません。 しかも公共図書館は治外法
権の状態にあります。人気の新刊が何冊も用意され、貸し出されています。
 日本全国にある公共図書館と大学図書館を合わせると、約4900館あり、
貸し出し数も約6億冊あるということです。これは文部科学省調査の数字
を基にしています。すごい数字です。
 仮に図書館全体が樋口毅宏の新刊を2000冊購入したと仮定しましょう。
図書館の購入数は、人気が出れば出るほど増えます。その1冊を何人に貸
し出すのでしょう。私はそのデータを持っていません。少なく見積もって
も50人を下回ることはないと思いますので(彼の前作で実際に図書館の予
約待ちがそれくらいあった)、こういう計算になります。
 50人×2000=100,000冊相当
 これだけのビジネスチャンス(実際に売れる数ではない)が失われるこ
とになります。これがもっと多ければたいへんな数になります。
 100人×2000=200,000冊相当
 200人×2000=400,000冊相当
 仮に、この数字の1%が実際に売れる冊数と仮定しても、それが失われて
しまう作家にとっては、死活問題です。実際はもっと売れるのではないかと
思います。せっかく人気が出ても、書店であまり売れないということになり
ます。記事にもあるように、樋口毅宏は、丸1年かけて新刊の執筆に取り組
みました。初版が6,000部です。その印税が96万円。その中から税金や必要
経費を差し引くと、赤字になってしまいます。とても生活できません。
 文化を守り育てる立場に立っている図書館が、作家を殺す役割を果たすの
はいいことではありません。図書館が購入してくれることによって、一時的
に売上が伸びる、というメリットもありますが、作家と版元にとって有害な
側面も大きいといえます。せめて半年や一年くらい新刊の貸し出しを制限す
ることくらいは実現していただきたいと、文部科学省や図書館の皆様にお願
いしたいと思います。読者の皆様にはぜひ新刊を書店で買っていただきます
ようお願いします。
 この問題は非常に重要な問題なので、下記に全文引用させていただきます。
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  図書館貸し出し猶予を…小説家が巻末にお願い

 気鋭の小説家、樋口毅宏(たけひろ)さん(39)が、25日発売の「雑司
ヶ谷R.I.P.」の巻末に、公立図書館での貸し出しを、新刊の売れ行き
に影響が大きい刊行から半年間、猶予するよう求める一文を掲載した。
 図書館がベストセラーを大量購入して貸し出す現状については、複数の作
家が「無料貸本屋」と異議を唱えてきたが、作家が自著に、このような一文
を載せるのは「おそらく前例がない」(版元の新潮社)という。
 樋口さんは「さらば雑司ヶ谷」で一昨年デビュー。続編となる新作は、昨
年1年の大半を執筆にあてた力作だが、定価1600円で初版6000部の
ため、印税は96万円。一方で、昨年12月刊の自著「民宿雪国」が、ある
図書館で44人もの貸し出し予約が入っていることを知り、それが今回の行
動のきっかけとなった。
 日本文芸家協会は、図書館の貸し出し実績に応じた補償金を著者へ払う制
度の導入を国に求めているが、実現していない。
 樋口さんは「(増刷されなければ)僕の昨年の労働の対価は、印税の96
万円だけ。このままでは、皆が卵(本)をただでもらううち、鶏(著者)は
やせ細り、死んでしまう」と話している。
(2011年2月25日16時08分 読売新聞)
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●夢幻流もの書き道場  上ノ山明彦
 文系高校生のための全国大会
「森の聞き書き甲子園」「海・川の“聞き書き甲子園”」に参加しよう
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 これは高校生と教師、高校生の保護者の皆様に宛てたメッセージです。
 高校野球に春・夏の甲子園があるように、文系が好きな高校生が参加で
きる全国大会があります。それが、「森の聞き書き甲子園」、「海・川の
“聞き書き甲子園”」です。
 「森の聞き書き甲子園」は、平成23年度で10回目、「海・川の“聞き書
き甲子園”」は2回目を迎えます。 
 林野庁・文部科学省・社団法人国土緑化推進機構・NPO法人共存の森
ネットワークの4者で構成する実行委員会が主催し、たくさんの企業や財
団が協賛・協力し、水産庁 / 環境省 / 全国知事会 / 全国市長会 / 
全国町村会 / 経済同友会 / 経団連自然保護協議会が後援しています。

○「森の“聞き書き甲子園”」の趣旨
 選ばれた高校生たちが、森の名手・名人を訪問し、その経験、苦労やエ
ピソード、森への想いを聞き、録音し、それを書き起こして文章にまとめ
るという一連の作業を行います。
 その中で、高校生たちは名人たちの知恵や生き方を学び取ります。その
体験は彼らにとって、人生の宝物になるに違いありません。
 この公式ホームページに開催の趣旨が掲載されていますので、抜粋して
引用しておきます。
 「日本人は古くから、森を育て、森の恵みを得る中で、自然と共生し、
持続的に暮らす知恵や技を培ってきました。(中略)
私たちは、森と共に生きてきた伝統的な暮らしの中に、これからの持続可
能な社会を考えるヒントがあるのではないかと考え、全国の高校生の皆さ
んに呼びかけて、森の“聞き書き甲子園”をはじめました」(同ホームペ
ージ)

○「海・川の“聞き書き甲子園”」の趣旨
 平成22年度より、「海・川の“聞き書き甲子園”」も同時に開催される
ようになりました。
 「森の“聞き書き甲子園”」と同じ趣旨ですが、対象範囲が海・川の名
手・名人、つまり「漁師や海女、船大工や釣竿づくり、海の食文化や漁村
の伝統文化を継承する人。また、海辺の環境保護や、藻場の再生など、豊
かな海を守るために活動を続ける人」(同ホームページ)になっています。
 私は「聞き書き甲子園」というすばらしい企画と趣旨に大いに賛同して
います。
 名人の話には深い知恵、びっくりするような出来事、熟練の技があふれ
ています。聞くだけで楽しいものです。
また、聞く側の姿勢も問われます。聞くのも一つの才能です。非常に緊張
するかもしれませんが、いい話を聞けた後の充実感は何にも代え難い経験
になります。
 文章が上手というのは絶対に必要な条件ではありません。重要なのは、
相手の話を真摯に聞き、そこに隠れている宝石のような話をさらに深く掘
り起こす姿勢です。
 そういう姿勢があって初めていい話が聞けます。それに加えて文章力が
あればなおいい。ホームページには、これまでの聞き書きの作品集が掲載
されています。動画もあります。一度ごらんになってください。

 高校生の皆さんがこういう体験を通して、生きていくことの充実感と文
章を書く、読む喜びを感じてほしいと思います。
○募集内容(公式ホームページより)
(1) 参加資格/高校生
※ 定時制、通信制の高等学校、高等専修学校、特別支援学校(盲学校、
聾学校及び養護学校)高等部等に在籍する生徒も含む。
※ 「聞き書き研修」など、すべてのスケジュールに参加できることが応募
の条件になります。
(2)取材先 /「森の名手・名人」「海・川の名人」(漁師、海女等)
○参加募集締め切り 毎年7月1日
○ホームページ  http://www.foxfire-japan.com/prof.html    
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●あなたに伝えたい本●
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 ホームページで下記の本をご紹介しています。「新たな人生」という
テーマで、どれも人生の深い意味を教えてくれる本です。
http://www.shuppanjin.com/support.html
「東京江戸歩き」 山本一力  文藝春秋 
「ほんまにオレはアホやろか」 水木しげる  新潮社 
「私の遺言」 佐藤愛子 新潮社 
「今日の風、なに色?」辻井いつ子  アスキー 
「ひまわりの海」 舘野泉 求龍堂 
「人生の贈り物――四つの物語」今道友信  かまくら春秋社 
「パパはマイナス50点」小山明子  集英社 
「江戸の旅人」高橋千劔破  集英社 
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 編集後記
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 世界はほんとうに混沌とした時代になった。中近東での政変では、こん
なにも急激に変わるものかと、現代の情報伝達の影響力に驚いた。中国や
北朝鮮の動向も目が離せない。日本は中東に90%の石油を依存している。
その影響は大きい。いや世界中の政治経済への影響は大きい。まったく
先行きは読めない。こういう時代、しっかりした人生哲学を持って生きて
いかなければ、右往左往するだけで終わってしまうだろう。その参考にな
る本をHPで紹介していきたいと思う。
 また世界各地での災害が頻発している。特に、ニュージーランド地震や
新燃岳で被災された方々には一刻も早い回復をお祈りしたい。同時に、読
者の皆様の義援金その他の支援をぜひお願いしたい。(上)
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 まぐまぐ[0000283181]http://www.mag2.com/
●i モード専用のHPは下記URLからどうぞ。
http://www.shuppanjin.com/i/
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