メルマガ:作家&出版人育成マガジン「パウパウ」
タイトル:『パウパウ』第129号  2010/07/11


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      作家&出版人育成マガジン『パウパウ』第129号
   2010年7月12日発行(不定期発行)(2000年3月7日創刊)
      編集・発行人 上ノ山明彦
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<お知らせ>
「もの書き10000人プロジェクト」では、書評コーナーを新設しました。
新刊、既刊、印刷物、電子ブックを問わず、「あなたに伝えたい本」を
テーマにすぐれた本を紹介していきます。
毎週更新していく予定です。推薦図書情報もお待ちしています。
http://www.shuppanjin.com/support.html
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●巻頭言 ●   上ノ山明彦 
         「新人切り」までに堕落した日本企業の経営
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 最近腹が立った事件は、「新人切り」だ。内定取り消しすれば会社名が
公表され、社会的な制裁を受ける。それを回避するために、新入社員研修
で、新人のあら探しをして自己都合による退職を迫るというのである。
 こういう会社の経営者と幹部は、若者の人生をなんと考えているのだろ
うか。日本の会社社会では、中途採用は不利になる場合が多い。社会に出
てすぐに退職したら、その職業の経験を積むこともできない。中途採用で
はスキルと経験が問われる。入社後すぐ退職させるというのは、何の武器
もなくジャングルに放り出すのと同じことだ。これがどれだけ人生に悪影
響を及ぼすことなのか、新人切りの関係者は考えたことがあるだろうか。
 関係する政府官公庁には、こういう悪質な企業名も公表することを要望
したい。そうでないと、若い世代の被害が増える。これからの時代を創っ
ていく世代がつぶされてしまっては、日本に未来はない。中高年世代がな
んとかしなければならない。
 若い世代には過剰に悲観的になってほしくないので、このメルマガとHP
の推薦図書コーナーで、下記の本を紹介することにした。従業員や地域を
大切にする会社が、世の中にはちゃんとある。いい会社を見つけて就職し
ていただきたいと切に願う。
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●あなたに伝えたい本
 『日本でいちばん大切にしたい会社』、坂本光司、あさ出版
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 従業員を人として扱わない企業が多い中で、こんなにすばらしい会社が
あったのか、従業員にも地域の人にも愛されて伸びていく企業経営という
は実際にあるのだ、ということを教えてくれる本です。月並みですが、
「目からウロコが落ちる」思いで読みました。
 著者は法政大学の教授ですが、日本全国の中小企業6000社を実際に取材
して、たくさんのすばらしい会社の実態を研究している人です。アカデミ
ズミに捕らわれない熱い語り口には、思わず引き込まれてしまいます。
 本文で紹介されているのは厳選された5社。冒頭の日本理化学工業は、
社員の7割が障害者で、チョークを主に製造・販売している企業です。
50年前に初めて障害者を採用することになったいきさつ、それからの出来
事には心を打たれるものがあります。
 この会社の大山泰弘社長は、採用した障害者の社員が、毎日本当に楽し
そうに働くので不思議に思い、ある御坊さんに尋ねました。その人曰く、
「幸福とは(1)人に愛されること、(2)人にほめられること、(3)人の役に
立つこと、(4)人に必要とされること」。このうち2と3と4は働くことによっ
て得られるものだというのです。このとき大山社長は企業の社会的使命に
気付き、以来50年間障害者を雇用し続けてきました。ほかにも感動的な話
がたくさんありますので、それは本書で読んでください。 
 続いて、伊那食品工業、中村ブレイズ、柳月、杉山フルーツが紹介され
ています。それぞれの創業のきっかけには、ドラマがあります。どの会社
も従業員と地域の人々とお客様を大切にしています。立地条件や業種など
不利な条件がたくさんあるにも関わらず、経営的に伸びているのです。
 どうしてそういう経営ができるのか、知っていただきたいと思います。
生きがいのある会社を探している若者にはぜひ読んでほしい本です。
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●連載エッセイ ●   上ノ山明彦 
          江戸の恋 第6回  離縁
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 江戸時代の女性の社会的地位は、低かった、いや意外と高かった、と様
々な議論がなされている。はたして真相はどのあたりにあるのだろうか。
 ある男と女が見合いか恋愛をして夫婦になる。普通の町人なら、どこか
の長屋に所帯を持つことになる。部屋を借りる場合、単に家主と契約して
家賃を払うだけの関係を意味しない。当時、「家主は親も同然」といわれ
ていたが、その意味は深い。家主はいったん自分の長屋に人を住まわせる
と、住人に対していろいろな責任を持つことになる。現代の戸籍に当たる
人別帳に、入居者を記入する。以降、彼らの身元に責任を持つことになる。
店子が問題を起こしたら引受け人になるのはもちろん、私生活上の悩みの
相談に乗ったりもする。店子の夫婦が離縁する、しないという騒ぎになっ
た場合、両方の親族とともの家主が仲裁に入るのである。
 江戸時代、夫から離縁したい場合、三行半と呼ぶ離縁状を突きつけた。
夫側の権利が強かった。それに対して妻から離縁する権利はなかった。夫
がひどい場合、親族に間に入ってもらって夫側を説得してしてもらうしか
なかった。
 唯一、非常手段として、法的に認められていたのが、縁切寺への駆け込
みだった、その一つに鎌倉・東慶寺がある。ここに駆け込んだ女は、夫や
関係者からの一切の干渉から保護され、離縁までの手続きが保証された。
 井上禅定著『東慶寺と駆込女』という本がある。著者は、鎌倉東慶寺の
ご住職で、今は故人。縁切り寺、駆け込み寺として有名だった東慶寺に残
された文書を元に、女性の歴史を紐解いた本であ
る。特に江戸時代、女性の社会的地位はどういう状態だったか。女性たち
がなにゆえに駆け込み寺に救いを求めてきたのか。どういうふうに夫と離
縁したか。あるいは復縁したか。
 本書は主に江戸時代の事件を紹介しているのであるが、現代と比較して
考えるとき、男と女の諍いは、本質的な部分ではあまり変わっていないこ
とを痛感させられる。
 本書を読むと、江戸時代は東慶寺が奉行所と協力して、町内会の名主、
年寄り、5人組といった自治組織に責任を持たせ、女性を保護していたこ
とがわかる。反省しない男がいても、社会的な強制力があったのである。
これなら江戸時代のほうがマシではないか、とさえ思えてくる。
 鎌倉東慶寺は明治時代になってから縁切り寺法も尼寺も廃止され、現在
の姿に至っている。その歴史も本書で知ることができる。
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 編集後記
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 ふだんからいい本を見逃さないようにしているつもりが、まだまだた
くさん見逃していることがわかった。出版業界の大先輩から教えていた
だいた。それもあってメルマガとHPで書評を充実させていくことにした。
流行とは関係なく、みんなに伝えたい本って、たくさんあるものだ。紙
物だけでなく電子ブックも取り上げたい。自薦他薦を問わず、情報提
供もお待ちします。(かみのやま)
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