メルマガ:作家&出版人育成マガジン「パウパウ」
タイトル:作家&出版人育成マガジン「パウパウ」第119号  2010/01/17


◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆
      作家&出版人育成マガジン『パウパウ』第119号
   2010年1月17日発行(不定期発行)(2000年3月7日創刊)
      発行元 出版人コム http://www.shuppanjin.com/
◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
●巻頭言 ● 上ノ山明彦
       ハイチ大地震の実態把握と救援金へのご協力を
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
 ハイチで発生した大地震の被害は、我々の想像を絶するものがあります。
人口約1000万人の国で、死者だけでも10万人とも50万人とも言われていま
す。交通が遮断されているため救援活動もままならないようです。残念な
がら日本の報道機関の情報収集力はきわめて貧弱です
 これなら最初から海外の報道機関のニュースを視聴するほうが、はるか
に事実を知ることができます。まずは下記のサイトをごらんください。そ
の上で救援金などに協力していただきたいと思います。
●アメリカのCNNのサイト
http://www.cnn.com/
●CNNより最新情報
http://www.cnn.com/2010/WORLD/americas/01/15/haiti.earthquake/index.html?hpt=T1
●イギリス BBCの最新ニュース
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/default.stm
●BBCの救援金募集ページ
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/8460380.stm
●ニューヨークタイムズの最新情報
http://www.nytimes.com/pages/world/americas/index.html
以下に、その他信頼できる機関による救援金情報を掲載しておきます。
●日本赤十字社がハイチ大地震の救援金を募集
http://www.jrc.or.jp/contribution/l3/Vcms3_00001446.html
●World Vision
http://www.worldvision.org/
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
●有名作家はいかにしてプロになったか     上ノ山明彦
 池波正太郎の素顔 第3回 池波正太郎的気配りとは?
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
 人を楽しませる小説を書く、それが池波正太郎の根本にある姿勢だった。
「これは読者に喜んでもらえる良いもの、面白いものを書きたい気持ちか
ら、私のいろいろと考えたことである」(『私の歳月』320頁、講談社文庫)。
)」
単純に「人を楽しませる」と言うが、それはそう簡単なことではない。
 かつて池波正太郎担当の編集者で、現在は作家として活動している筒井
ガンコ堂が、池波の作家としての姿勢をずばりと表現している。
「一つだけ言っておきたいことがある。それは純粋にエンターテインメン
トを書くと決めた池波正太郎の覚悟、自制心についてである。池波作品の
特徴はいろいろあるが、読み易いということ、面白いということ、そして
読後が爽やかであることなどをまず挙げていいだろう。それらを達成する
ために作家がどれほどのものを捨て去ったかということを、私は時どき考
えることがある。・・・私たちの想像を絶する努力・工夫があったに違い
ない。その読み易さを読み違えて、ある種の人たちは「軽い」とみる風が
あったが、池波正太郎は百も承知だったのだ。・・・・作品こそすべて、
読者こそすべて、都会人の照れもあっただろうが、池波正太郎が厳しく定
めた小説作法がそこにある。いわば職人に徹していた。その自制の見事さ
を凄いと思う」(『新 私の歳月』271-272頁より、講談社文庫)
 ある作家が読者の娯楽のためにおもしろおかしい小説を書いたとしても、
その作家の世界観や人生観は無意識のうちに作品の中に染み込んでいくも
のである。読者はそれを敏感に感じ取る。小説を楽しみながら、知らず知
らずのうちにそれを吸収していく。むりやり説教する必要もないし、哲学
を持ち出す必要もない。エンターテインメントとはそういうものだ。
 むしろ芸術家気取りで中身のない小説を書くほうが滑稽以外の何物でも
ない。世の中にはそういう作家も多いし、そちらのほうを高く評価する人
もいる。「世の中には良い作品か悪い作品かのどちらかしかない」。表面
的な要素で作品を判断することは愚かなことである。
 池波正太郎は気配りの人であった。それは妻、母、義母への気配りから
タクシーの運転手、旅館の仲居、料理屋の板前、編集者など周りの人すべ
て対してであった。彼の気配りは表面的なものではなく、相手の立場を思
いやる深い配慮があった。例えば、嫁姑の間が団結してうまくいくように、
常に自分が「暴君」として振る舞った。そうしておいて1年に1回は家族
全員で旅行に出かけた。池波は作家の資質についてこう言っている。
「生活でも仕事でも、絶えずこまかく気を遣っていないと駄目なんだよ。
伸びて行かない。ことに時代小説というものはそうだ。時代小説では出て
来る人間がみんなお互いに気を遣っていないと時代小説にならない。ここ
が肝心なところだ」(『私の歳月』289頁、講談社文庫)。
「作家というのは世俗のことに超然としていて、酒くらって好きなものを
書いてりゃいいと・・・・だけど、これでは時代小説は書けないんだよ。
作家は「無頼の徒」であれというのはあくまでも精神の次元のことですよ」
(同、290)
 作家のイメージとして”酒呑んで酔っぱらって暴れて常識知らずで放浪
癖があって”というものを持っている読者諸氏がたくさんおられるに違い
ない。それは「精神の次元」の話であって、実際にそういう生活をしてい
る作家は非常に少ない。
 ここまで3回「池波正太郎の素顔」と題して書いてきた。とりあえず今
回で終わるが、私も学ぶべきところ大であった。読者諸氏はいかに。
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
●夢幻流もの書き道場
           電子ブック「夢幻文庫」創刊  
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
 電子ブックの普及は、多くの人にチャンスを与えてくれ。紙での出版に
比べて、はるかに少ないコストで発行できます。つまり、リスクが少ない。
 私はもう10年前から言っていますが、売れるかどうかわからない書籍は、
初めに電子ブックで出し、読者の評価が高まったら紙の本で出す、という
仕組みにすればよいと思っています。
 未知の才能や新人の作品、評価が分かれる作品、斬新でチャレンジする
作品などは、先に電子ブックで発表し、読者の反応を知るほうが賢明なや
り方でしょう。版元のリスクが回避でき、紙資源の浪費も防ぐこともでき
ます。新刊の配本と返本の手間暇とコスト、在庫本の廃棄がどれほどムダ
なものか、私はこの目で見ています。文章でなかなか表現しにくいもので
す。電子ブックとはいえ編集コストがかかりますが、紙の本に比べたらは
るかに少なくて済みます。
 最初から名作を書ける人はいません。書いていくうちに心も技術も高ま
り、名作が生まれるものです。発行する側から見ると、「才能はあると思
うが、この作品はイマイチだな」という段階で、本で発行するには大変な
覚悟が必要です。電子ブックは紙の本に比べたら発行しやすいので、そう
した埋もれた才能にチャンスを与えることができます。
 そういうふうに電子出版を活用しようという流れが出版業界全体に広が
ることを期待しています。
 ところで、「電子ブックで出してしまったら、紙の本で出したとき売れ
ないだろう」という批判は当てはまりません。あるアンケートにもあった
のですが、PCや携帯で電子ブックは読みにくい、紙の本で読みたい、とい
う意見が多いという結果が出ています。いい作品は紙の本で読みたいもの
なのです。
 しかしながら、内容の更新速度が速い情報分野の本は、電子ブックが主
流となるでしょう。改訂がすぐにできるし、内容の検索も便利ですから。
 電子ブックで読み、紙の本でも読むという人もいるでしょうし、電子か
紙のどちらか一方で読む人もいるでしょう。どちらにしても読者層そのも
のの拡大につながると思います。
 電子ブックと伝統的な紙の本は両立します。むしろ出版業界にいい影響
を与えると確信しています。
 さて、私は夢幻文庫で出す作品を募集しています。今回第1弾を出しま
した。その作品はよく書けていますが、ダントツで優れているわけではあ
りません。著者・永部めいみがこれから書いていくなかで、もっといい作
品を書くだろうという期待を持っています。
 一攫千金を狙う人、自分の作品は莫大な価値があると思う人は、どこか
大手出版社主催の公募に応募してください。我々とともにチャレンジして
いきながらも、あせらず着実に実績を積み上げていこうという方のご応募
をお待ちしております。
 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
 編集後記
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
  池波正太郎は美食家というイメージがある。実際はどうか?。小説の
中で食べ物を出すのは、まず季節感を出すためであると本人が書いている。
それと登場人物のリアルな生活感を出すためだと思う。何を食べているか
で、その人物の職業や地域やふだんの生活、その場面の状況がイメージと
して浮かんでくるからだ。で、ふだん池波正太郎は何を好んで食べていた
か、というとチキンライス、ポークカツレツ(トンカツ)、カレーライス。
意外や意外、池波正太郎は洋食派だったのだ。特別な日や接待、取材旅行、
友人との会食などがある場合は、もちろん美食だったり高級料理だったし
たわけだが、ふだんは洋食が多かったようだ。この話を聞いて、なんだか
心休まるのは私だけだろうか?(かみのやま)
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
 編集発行人:上ノ山明彦
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
●メールマガジンを解除したい場合は、ご自分で登録サイトにいき手続き
をしてください。
 Mailux[MM408ADB0E0E3A7]http://www.mailux.com/
●バックナンバーはホームページにあります。
http://www.shuppanjin.com/
●i モード専用のHPは下記URLからどうぞ。
http://www.shuppanjin.com/i/
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
●「インターネットもの書き塾」では2010年度前期受講生を募集しています。
詳細はホームページで。
http://www.shuppanjin.com/ikoza/guide.html
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
このメールマガジンを転送するのは自由ですが、記事の無断引用?転載
はお断りします。転載を希望される場合は発行者の承諾を得てください。

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。