メルマガ:作家&出版人育成マガジン「パウパウ」
タイトル:作家&出版人育成マガジン「パウパウ」  2009/11/23


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      作家&出版人育成マガジン『パウパウ』第115号
   2009年11月23日発行(不定期発行)(2000年3月7日創刊)
      発行元 出版人コム http://www.shuppanjin.com/
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[お知らせ] 
 出版人コムでは、2010年度に期待される日本での電子ブックの爆発的
普及に備え、原稿を募集します。審査基準をクリアした作品を電子ブッ
クとして発行・発売します。詳細はホームページでお知らせします。
 プロをめざす方、ふるってご応募ください。
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●巻頭言 ● 上ノ山明彦
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進化論のダーウィンに次の言葉がある。
種というのは、
最も強いものが生き残るのでもなく、
最も知的なものが生き残るのでもない。
最も変化に適応できる種が生き残るのだ。
             
 世界的な100年に一度の大不況の中で、世界中が変化に対応することを
求められている。オバマ大統領の誕生や日本の先の衆議院選挙結果を見
ると、旧態依然とした政治経済からの変化を国民の多くが望んでいるこ
とがわかる。時代は今、「変化し、生き残ること」が求められている。
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●やっと電子ブックブームがやってきた!
 電子ブックの原稿募集   上ノ山明彦
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 本格的に「もの書き100人プロジェクト」を2001年に開始して以来、
2010年でちょうど10年になります。来年ようやく日本にも電子ブックブー
ムがやってきそうです。
 今年は米アマゾンから「キンドル」という電子ブックリーダー(閲覧端
末)が発売され、爆発的に普及しました。
 これはオンライン決済システムと連動し、簡単で安く電子ブックをダウ
ンロード(購入)することができたことも、普及の大きな要因です。読者は
端末から本を選び、ボタンを押すだけです。もちろん事前にクレジットカ
ードや個人情報を登録するのですが、後は非常に簡単です。
 日本でもこれまで日本語の縦組、右開き可能なリーダーがいくつか発売
されてきました。それが普及しなかったのは、アマゾンのように簡単で安
く購入できるシステムがなかったからです。機械(ハード)と仕組み(仕組み)
の両方が揃わないと本格的に普及しません。アメリカでの成功は、アマゾ
ンという書店が中心となったことが大きいといえます。
 来年から日本でも同様のサービスが始まることを期待しています。それ
が電子ブックの爆発的普及につながるものと信じています。
 そうした展望の下、出版人コムでは来年、電子ブックの発行に全力を注
ぎます。ジャンルを問わず、優れた作品を募集し発行発売します。
 詳細は弊社ホームページで発表します。
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●小説のテーマ 「癒し」と「慰み」  上ノ山明彦
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 近松門左エ門が浄瑠璃を書いたときの一貫したテーマというのは「慰み」
である。時代は徳川幕府の安定期。身分制や主従関係のしがらみの中で、
庶民の許されない恋と苦悩、夫と妻、妾の愛憎、嫁と姑の闘い、親子のい
さかい。そうした苦悩の中にもかすかに見え隠れする人間の優しさ、尊さ。
それがささやかな希望や喜びにつながるのである。
 例えば、雇い主の理不尽な要求に苦しみながらも、惚れた相手との愛を
貫く男と遊女。最後は心中という結末で終わる。それが庶民に侮蔑ではな
く共感をもって受け入れられた。理不尽なものに対する庶民の「心意気」、
それが近松の描く「慰み」の世界なのである。
 なお、これはあくまでも私の勝手な解釈なので、そのまま受け売りしな
いようにお願いしたい。
 現代の「癒し」は、疲れた心、傷ついた心を慰めてくれたり、勇気づけ
たりすることを意味している。現代社会に法律的な身分制はなくとも、経
済的な「身分制」が残っている。人間関係からくる理不尽な出来事もたくさ
んある。
 現代の「癒し」には、そういう理不尽さに反発する庶民の「心意気」は込め
られていないようだ。心の痛手をやわらげたり治したりするところまでの
ようである。近松の「慰み」とはニュアンスの違いがある。
 歴史と歴史的作品から学ぶことは多い。過去を理解することによって、
今現在が鮮明に見えてくる。それを小説という舞台の上で、どう昇華させ
ていくか。書き手の力量が問われてくる。
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●この名著を読もう! 
  佐野真一著  『大往生の島』  
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 日本は高齢化社会になった。「死」の意味を正面からとらえる必要がある。
「縁起でもない」と逃げる、長生きだけを考える。あいまいにして目を伏せ
る。それが日本の現状である。「死」を正面から受け止めるということは、
いかに生きるかを問うことでもある。日本では、いかに生きるかを考える
ことさえいい加減になっている。
 佐野真一は、宮本常一を追って『旅する巨人』を書いた。その取材で周
防島を何度も訪れた。そのときふと気がついた。島の住民の大半が高齢者
なのである。他の地域と比べてみると、その何倍も高齢者の割合が多いこ
とがわかった。
 そのくせ島民に暗さがない。生き生きと暮らしている。毎日働きに出て、
汗を流している。お互い助け合って暮らしている。なぜこんなに楽しそう
に暮らしているのだろう?佐野はそういう疑問を持った。
 あらためてテーマを決め、取材しなおして書き上げたのがこの本である。
 読み終わった後、私の心に浮かんだものは、厳然としてそこにある「死」
をどう迎えるかということ。高齢者は「世の中で役目を失った人間」ではな
い。隔離して保護すればよいというものではない。社会で役割を終えた人
間というレッテルを貼られ、保護という形式の中で見捨てられていく老人
制度に人間としても尊厳があるだろうか?「死」を正面から受け止めるため
には、最後まで誇りを持って生きることが必要なのだ。本書は多くの示唆
に富んでいる。
 ルポルタージュを書きたい人には、非常によい手本でもある。何も大冒
険や大がかりの取材だけがルポではない。身近な人や街の中にも、人間に
取って大切な題材はたくさんある。要は書き手のセンスなのだ。予断、偏
見、先入観を取り払って眺めていると、いろいろなものが見えてくる。佐
野真一はいつもそういうことを教えてくれる。
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●インターネットもの書き塾からのお知らせ●
 12月1日より2010年度受講生募集開始します。
 詳しくは、このページでご覧下さい。
http://www.shuppanjin.com/ikoza/guide.html
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 編集後記
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 子どもの頃に憧れていたスターたちが次々と亡くなったり、倒れたりす
ると、自分も年取ったなあと痛感する。「死」が射程距離に入ってきたと思
う。それは決して打ち落とせないが...。
 ある陶芸家はガンが見つかったとき、病床に縛られることを嫌い、手術
を拒否。残された時間を創作活動に打ちこんだ。そしてあるとき、ひょう
然とこの世を去っていった。芸術への限りない情熱を残して。
 ある若い母親は一度ガンの手術を受け、しばらくして再発した。余命が
半年くらいしかないことがわかっていた。それでも何事もなかったのよう
に普通に暮らした。いつものように子供たちを小学校に送り出し、いつも
のように友人たちと言葉をかわした。休日も変わりなかった。家族と普通
に過ごす時間を大切にした。そしてある日、静かにこの世を去った。きっ
とこの人は愛する子供たちとのごく普通の時間に最高の幸せを感じていた
のだろう。
 一人の芸術家と一人の平凡な主婦は、残された人々に美しい生きざまを
教えてくれた。「死」を真正面から受け止めるにはどうしたらよいのか、
身を持って教えてくれた。(かみのやま)
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 編集発行人:上ノ山明彦
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