メルマガ:作家&出版人育成マガジン「パウパウ」
タイトル:作家&出版人育成マガジン『パウパウ』第105号  2004/05/23


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      作家&出版人育成マガジン『パウパウ』第105号
   2004年5月23日発行(毎月1回発行)(2000年3月7日創刊)
      発行元 出版人コム http://www.shuppanjin.com/
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[お知らせ]
・弊社HPで「推薦公募」情報を更新しました。ご参考に。
・訂正とお詫び
 前号の上山明彦のコラムの中で「的を得た」という誤植がありました。
 これは「的を射た」(物事の肝心な点を確実にとらえた)、もしくは
「当を得た」(道理にかなっている)が正しい表現です。訂正してお詫び
申し上げます。
・本誌は「投稿人パウパウ」の読者の皆さんにも配信しています。採用作
 品が少なく、発行が遅れておりますので。ご了承ください。
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■目 次■(本文共敬称略)
●不定期連載● 夢幻流ものかき道場 上山明彦
         ノンフィクションを書いてみよう(4)
●連載● いちゃもんチャンネル   植野 満
  第4話 売りっぱなしでいいのか
●連載● 乱読乱話  久和山武輝
  第6話 仮想空間は小説の原点
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●不定期連載● 夢幻流ものかき道場 上山明彦
             ノンフィクションを書いてみよう(4)
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 インタビューする場合、よほど慣れた書き手でない限り、相手の話を録
音したほうがいい。そのほうが記事のスタイルによって、いろいろ書きわ
けることができるからだ。それについて説明する前に、テープ起こしにつ
いて簡単に解説しておこう。
 テープ起こしは、インタビューした相手の言葉を、話したとおりに文字
に書き起こす作業である。これ実際にやってみると、けっこう大変手間の
かかる作業だ。
 まず、文字量が非常に多くなる。(人間って、しゃべるときは無駄な言
葉がびっくりするくらい多いんですよ)。それだけではない。脈絡がつな
がらないことが多い。話を聞いているときは、聞く側がいろいろ推測した
り、言葉を補足しながら聞いているので理解できるのだ。
 テープ起こしでは、その余計な言葉も、脈絡のない話も忠実に文字に書
き起こさなければならない。この段階で、テープを起こす人が主観を混ぜ
て整った文章にしてしまうと、客観的事実の資料としての価値がなくなっ
てしまうからだ。
  インタビューも他の取材も終わった。いよいよ原稿執筆に取りかかるこ
とになる。
 その際、まず考えるべきことは、記事のスタイル。自分の取材で得た事
実、その分析と評価、インタビューした人の言葉、そういったものを関連
づけながら展開していくのが、通常多く使われている記事のスタイルだ。
 インタビュー記事だけで書く場合もある。話し言葉で、相手の言葉をで
きる忠実に再現していく書き方である。この段階では、相手の真意にそっ
て言葉を整理し、脈絡がつながるように書き手が書き直すことになる。
(雑誌のインタビュー記事を読んで、その人がその通りにしゃべったと思っ
ている人はいませんか?どんな記事であれ、相手の真意がよりよくわかる
ように書き手が苦労して文章にしているんですよ)。しゃべった通りに文
章にしたら、読者には意味不明になってしまうからである。
 複数の人にインタビューした場合は、対談形式にすることもある。(雑
誌でよくみかけますよね)。ときには「覆面座談会」とか「匿名座談会」
といった怪しげな記事にすることもある。(これ話した人の正体が不明な
のですから、まともに信用してはいけません。よく吟味しましょう)。

 ここではオーソドックスに、自分が集めた事実、その分析、評価、取材
した人の言葉を交えて文章を展開していくとしよう。
 こういうケースでも起承転結は必要になる。特に最後にどういう結末で
締めくくりたいかよく考える必要がある。
 たとえば、ある実業家の成功物語を記事にするとしよう。ビジネスの各
段階を起承転結のベースとする。そのビジネスを始めたきっかけから入り
(起)、創業期の苦労(承)、成功(転)、現在の心境とこれから取り組
もうとしていることで締める(結)。
 その流れの中でその人の生い立ちや影響を受けた人たちの話を随所に盛
り込んでいく。最後の締めで、その人の人間性、人間的魅力を浮き彫りに
する。その人の成功が単なる「運が良かった」からではなく、成功の陰に
人間的魅力があったからという締めくくりで終わる。
 これはよく使われているし、実際私もよく使っていたパターンだ。お涙
ちょうだい的だが、これがけっこう受けるんだなー。わかってて書くこと
があったんだなー(なんか恥ずかしくなってしまいますが)。
 よくあるパターンの話のついでに、読者受けする書き方の例を一つご紹
介しておこう。それは原稿の冒頭をセリフで始めること。たとえばこんな
ふうだ。
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「私にとってはですね、やりたいことをやって人生が危なくなったとして
も、全然後悔することはありません。でも、無難な道ばかり選んで歩いて、
やりたいことを何もせず人生を終わったとしたら、悔やんでも悔やみきれ
ないでしょうね」
 これはいまや丸々業界では不動の地位を築いた××社社長△△氏の言葉
である。
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 もっと浪花節調に書きたいなら、最後に「含蓄深い言葉だ」とか「彼の
人生哲学を象徴している言葉だ」と付け加えておこう。(時々雑誌の記事
でみかけませんか?これ、けっこう使ってます。受けるんですよ。ほんと)。

 別に読者受けを考える必要もなく、社会的使命として真実を追及すると
いう方向性もある。
 企業犯罪、政治家の犯罪、社会悪、そういった正義の闘いをノンフィク
 ション作家として実践している人もいる。私は佐野真一をその筆頭にあ
げる。こういう道を進みたい人は、先駆者の著書をよく読み、取材方法か
ら分析方法、哲学などを学ぶとよいだろう。
 4回にわたってノンフィクションの書き方について紹介してきたが、参
考になっただろうか?時間を見て、教材としてより豊富により詳しくまと
めたいと思う。
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●新連載● いちゃもんチャンネル         植野 満
       第4話 売りっぱなしでいいのか
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  「たばこは吸うの?」「ええ、吸います」。これだけの会話で、再就職
に失敗した知人がいる。
 履歴書などの書類審査をクリアした彼は、二次試験の面接に出かけた。
面接室に行く途中の社内エレベーターで、偶然にもその会社の社長に声を
かけられ、冒頭の会話となった。そして、その社長はこう言ったそうだ。
「禁煙したら2か月後にまたチャレンジしてください」。面接室に入る前
のエレベーター内でのわずか5秒の”面接”で不採用を言い渡されたので
ある。
  喫煙者にとっては、窮屈な世の中になった。仕事で月に数回訪れていた
高層ビルでも、1階にあった喫煙コーナーがなくなった。また、地元の市
役所の1階の隅っこに設けられていた喫煙コーナーも、屋外の目立たない
場所に移された。JRの一部の路線ではホームの端に喫煙コーナーが残さ
れているものの、ほとんどの私鉄ではホームでのたばこは吸えないように
なった。
 最近では、”新宿を禁煙の街にしよう”という運動も起こっているらし
い。うさん臭い、雑踏の街だからこそ、魅力のある街なのに、もし新宿が
紳士的、常識的な街になったら何が残るのだろうか。
  たしかに、たばこ嫌いな人にとっては、禁煙運動の広まりは望むところ
だろう。私は喫煙者だが、特急電車を利用するときは禁煙車に乗る。あの
たばこの煙と臭いのなかで小1時間も座り続けているのは苦痛だからだ。
だから、たばこ嫌いな人の心境は少しは理解できているつもりだ。
 それにしても、なぜたばこを吸う人だけに冷たい視線が注がれ、売る側
(メーカーや販売店)への批判がないのだろうか。電車のホームでは灰皿
も設置していないのに、たばこは売っている。禁煙運動を推進する新宿で
もたばこは売り放題だ。「売るのはいい、でも吸ってはダメ」というのだ
から、これは矛盾していないのだろうか。禁煙運動をするのなら、ついで
にたばこの不買運動を起こしても不思議ではない。たばこの箱には「あな
たの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに気をつけましょう」と
ありがたいご忠告が印刷されているが、健康を損なう商品、つまり有害商
品ならば売らなければいい。いや、売ってはいけないだろう。そうであれ
ば「あなたや他人の健康を損なうおそれがあるだけではなく、地球環境の
悪化にもつながりますので買いすぎに注意しましょう」と呼びかけるべき
だ。
 そこで、日本たばこ産業に提案。10円、20円の姑息な値上げを定期
的にやるのではなく、一気に1000円以上の値上げをしたらどうだろう。
そうすれば、それをきっかけに禁煙する人も増えるだろうし、健康を損な
う人も少なくなるはずだ。それにしても、あらゆるところで販売されてい
ながら、これほど多くの人に嫌われている商品は他にはない。こんな売りっ
ぱなしの商品が生き延びているのも税金を堂々と取れるドル箱商品のひと
つだからである。「こんな商品はいらない!」と禁煙宣言をできないとこ
ろが私の意志の弱さでもある。トホホ。
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●新連載● 乱読乱話  久和山武輝
       第6話 仮想空間は小説の原点
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 仮想空間は、想像の世界であり、最近の言葉ではバーチャルとも称さ
れている。古代より原始宗教や神話の世界から始まったと考えられるが、
当時は仮想の世界ではなく実想であった。原始宗教や神話は口伝で継承
されていた。その後、文字が発明されて書跡として今日に残されている。
 文字が発明されたことにより、とくに宗教は急速に伝搬し世界に普及
した。文字の複写複製技術と宗教は、切り離して考えることはできない
ものがある。政治(統治)も同様、文字と密接な関連がある。統治の決
まり事を律令法律という文字にすることによって、支配の呪縛となった。 
 その後、音声(ラジオ)や映像(映画、テレビ)の発達により仮想空
間の世界が広がった。相互通信の手段も手紙のやりとりから、電信電話、
ファクシミリ、ケータイ、インターネットへと急速に多様化した。イン
ターネットでの相互通信の特異性は、文字と音声映像がマルチになって
いることよりも、匿名が主流になっていることだろう。
 匿名でのやりとりには、ある意味では魅力的な影の部分に落ち込みや
すい危険性をはらんでいる。影の行為のさいたるものは、犯罪である。
仮想の世界だけに、罪を犯した加害者意識は薄くなるが、罠がある。
 鈴木輝一郎「罪と罠へのアドレス」実業之日本社刊は、現代風のイン
ターネット犯罪の短編小説集である。扱っている犯罪は、殺人、ストー
キング、バーチャルセックス、あやつり人形、不倫、他人になりすまし
など多様である。主人公の職業は、小説家志望、女子大生、ライトノベ
ルライター、ラジオタレント、専業主婦とさまざまである。
 どの犯罪も主役も特異なものではなく、ごく日常的でありながら、罠
に落ちるところが、こわいところでもある。すべての事件に狂言まわし
の老刑事が登場するのが、頬笑ましい。小説という仮想空間に浸りなが
ら、ちょっと頭の中で遊んでみるのは面白い。ところで、いちばん楽し
んでいるのは作者自身なのではないかと仮想する。
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 編集後記
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 史跡巡りとハイキングを兼ねたコースに参加してみた。シルバー・ボ
ランティアのガイドさんの案内で、参加者も私より年長者つまりお年寄
りばかり。4キロのコースの半分で私の足腰は悲鳴をあげてきた。周り
を見ると、誰も苦しい表情はしていない。むしろ元気満々。私は体力増
強を決意した。なにしろやりたいこと山ほどある。精神力も体力がない
と息切れしてしまう。6年前は5キロマラソンに参加できていたのだ。
来年は知る人ぞ知るボルドーマラソンに出るぞ、と。
 そのやりたいことの一つをご紹介する。このメルマガや事業を立ち上
げたときから考えていたことだが、小中学生を主な対象とした作文講座
をホームページで始めたい。もろろん無料で。作文というと、苦痛でし
かなかった学校の授業を連想してしまうので、「小中学生のための文章
教室」といったタイトルにしたい。趣旨は小中学生に読む楽しさだけで
はなく、自分で文章を書く楽しさを知ってもらうこと。「作文が苦手」
「文章を書く才能はない」と思いこんでいる子供たちに、「こう書けば
いいんだよ。今まで書けないと思っていたのは、とっても簡単で大事な
ことを教えてくれる人がいなかったからだよ」と伝えたい。私自身、学
校の作文の授業は苦痛でたまらなかった。書きたくもない課題について
無理矢理書かされていたからだ。かつ教師の期待する内容で書かなけれ
ば評価されなかった。それは子供たちを文章嫌いにする効果はあっても、
好きにさせる効果はまったくなかった。子供たちにこの講座で多少とも
本を読むこと・書くことの楽しさを伝えることができればと思う。大人
の皆さんもときどきHPを見てください。(かみのやま)
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『パウパウ』編集発行人:上山明彦
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