メルマガ:作家&出版人育成マガジン「パウパウ」
タイトル:作家&出版人育成マガジン『パウパウ』第104号  2004/04/26


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      作家&出版人育成マガジン『パウパウ』第104号
   2004年4月26日発行(毎月1回発行)(2000年3月7日創刊)
      発行元 出版人コム http://www.shuppanjin.com/
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■目 次■(本文共敬称略)
●不定期連載● 夢幻流ものかき道場 上山明彦
          ノンフィクションを書いてみよう(3)
●連載● いちゃもんチャンネル   植野 満
  第3話 乱暴なネットビジネス
●連載● 乱読乱話  久和山武輝
  第5話 左遷や不遇は世のならい
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●不定期連載● 夢幻流ものかき道場 上山明彦
             ノンフィクションを書いてみよう(3)
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 取材申込みが無事完了し、取材日が決まったとしよう。いよいよ実際に
インタビューすることになるが、ここにも初心者が陥りやすい大きな落と
し穴がある。いや、ベテランでさえ自覚していない人がいるから、感性の
問題なのかもしれない。
 インタビューで最も重要なことは、相手の話を聞き出すということだ。
えっ、「そんなあたりまえのことは、誰だって知ってるよ!」って?
 確かに誰でも知っていることなのだが、実践できる人がどれくらいいる
だろうか?そこが問題なのである。
 
 取材する側は、話し手からエピソード、苦労談、人生観、趣味、恋愛体
験など、できるかぎり記事に使えそうな話をたくさん聞き出す必要がある。
 そこで二つの要点が出てくる。
 相手に話をさせること。
 相手の本音を聞き出す質問をすること。
 最初の「相手に話をさせること」は単純なことなのだが、これができな
い人が少なくない。インタビューに行ったのに、相手よりも自分がしゃべ
る時間のほうが多いという取材者がいるのだ。
 自分には博識があるという自信があるのだろうが、取材の目的は相手の
話を聞き出すことにある。たとえ相手の話が自分と反対の考えであっても、
知識の水準に上下があっても、読者には取材相手の話を伝えるのが目的な
のだ。取材者が自分の意見を一歩的に述べたいなら、別の紙面を取っても
らうべきなのである。
 相手の話を読者に紹介した上で、取材者の解説や評価を載せる場合があっ
たとしても、それはあくまでも相手の話を詳しく紹介することが前提とな
る。相手の話を聞かないことには、記事にはならない。
 いや、こういう自分だけがしゃべりたい人、相手の話を深く聞こうとし
ない人、けっこう多いんだよね。たぶんこういう人は性格的に取材する側
に向かないのだと思う。ノンフィクション作家、ジャーナリスト、テレビ
のインタビューワー、対談の司会者などはやめたほうがいいと思う。
 これ、おしゃべりだからダメというのでもないから注意してほしい。明
石家さんまのトーク番組を見たことがあるが、彼は相手の本音を聞き出す
のがうまい。自分が機関銃のようにしゃべりながら相手にいいタイミング
でいい質問をする。相手もつい乗せられて本音をしゃべってしまう。さん
まには「相手の話をもっと聞きたい」という感性があるからだろう。ただ
一方的にギャグを飛ばしているタレントとは格段の差がある。
 黒柳徹子も機関銃のようにしゃべる人だが、「徹子の部屋」という対談
番組では、ちゃんと相手の話を聞こうという姿勢があり、そのせいか相手
も打ち解けた感じで話をしていた。彼女もそういういい感性の持ち主なの
である。

 相手の本音を聞き出す質問をすること。
 取材者が相手にたくさんの質問を浴びせ、ふだんあまり話さない内容を
聞き出すためには相手の気分をほぐし、饒舌にし、話したくなるような質
問をしなければならない。杓子定規の質問をしたって、表面的なことしか
話してはくれない。
 的を得た質問をするには、入念に相手自身や立場、社会環境などについ
て詳細に下調べを行い、相手の書いた本やインタビュー記事について読み、
理解し、その上で質問内容を考えることが大切だ。
 的を得ているだけでなく、公表されている話を前提としているから、一
段深く踏み込んだ質問になるから、取材される側も、「ああ、この人はこ
れくらい自分のことを知っているんだ。それくらい私に興味があるんだ」
と、心を開いてくれることになる。
 いい加減な準備しかしないで取材に挑むと、取材に失敗し、中身のない
記事しか書けないことになる。
 余談だが、筒井康隆がある本の中で、「最近一番腹が立ったことは?」
という質問に、「自分の本を読まないでインタビューに来たやつがいたこ
と」と答えていた。プロの中でもいるんだよね、そういう人が。

 私も雑誌で取材記事を書いていた頃は、毎週のように話題の人にインタ
ビューしていたものだが、最近はやらなくなった。インタビューは楽しかっ
たし、勉強にもなった。「ああ、この人はすごいなあ」といつも思ったも
のだ。そんなことを考えていたら、またインタビューしたくなった。時間
を取って、自分が尊敬する作家たちから直接話を聞いてみたいと思う。
時間を効率的に使うことができる体力と精神力をつけなきゃ。期待せず、
待っていてください。
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●新連載● いちゃもんチャンネル         植野 満
       第3話 乱暴なネットビジネス
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 イラク人質事件での政府の「自己責任」論、小泉支持率50%超えの不
思議、閣僚3人の国民年金未払いなど、いちゃもんをつける材料は山ほど
ある。ありすぎるほどだ。しかし、今回は身近に起こった出来事をテーマ
にしたい。
 先日、ヤフーのショッピングサイトにマックのパソコンが2787円と
誤って表示され、約2万人から1億台の注文が殺到して大騒ぎとなった。
店頭では11万5000円前後で売られているもので、「超格安商品」に
ユーザーが飛びつくのも無理はない。注文客からの問い合わせで気づいた
販売元は、ヤフーに削除を要求したものの、しばらくはその価格が表示さ
れたままで、混乱にさらに拍車をかけた。お客からは「取り消すだけで済
むのか」ともっともな抗議が殺到したという。それにしてもいい加減なビ
ジネスをやっているものだ。
 ヤフーがこのほど発表した2004年3月期決算によると、売上高が前
年比62%増の757億円、当期利益はなんと同105%増の248億円
となった。個人情報流出もあって「ヤフーBB」の新規加入者は減ったと
はいえ、通年では快調そのものの実績を残した。こうした”ひとり勝ち”
のおごりが顧客軽視の姿勢につながっていないだろうか。年商1000億
円に迫ろうとする企業にしては乱暴なビジネスのやり方だ。
  もうひとつ、私が”被害者”になった事例がある。大手家電メーカー系
列のあるプロバイダーから「契約解除内容のご確認」というメールが届い
た。そのプロバイダーとは、なにも契約はしていないし、そのサイトを開
いたこともない。
 あて先のメールアドレスをみると、私のアドレスではなく、他人のアド
レスで届いていたのである。「どういうことなんだ」といくら考えても謎
は解けない。
そういえば、最近、そのプロバイダー経由で購読登録もしていない”メル
マガ”がいくつか定期的に届くようになっていた。私のアドレスをどこか
らか入手して配信しているのか、それともウイルスに感染してそういう異
変が起きているのか、どうしても判断がつかない。
 そこで、プロバイダーの「苦情はこちらから」というアドレスから次の
ようなメールを送った。
 「最近、購読登録していない御社経由のメールマガジンがいくつか届い
ております。私のメールアドレスをどのようにして入手されたのでしょう
か。勝手に送ることはやめて下さい。また、御社がある人に連絡しなけれ
ばならない”契約解除内容のご確認”のメールも届きました。あて先はそ
の人のメールアドレスなのに、なぜ私に届くのでしょうか。その人のユー
ザーIDまで明記されていますので、これはプライバシーの問題にもつな
がるものです。ご説明をお願いします」
 もう3週間も経過しているのに、この疑問点に対する回答はない。だっ
たら苦情受付コーナーなんて設けるな! いまでも多くのビジネスマンか
ら尊敬されている「経営の神様」はきっと嘆いていらっしゃることだろう。
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●新連載● 乱読乱話  久和山武輝
       第5話 左遷や不遇は世のならい
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 世の中で楽な商売であるサラリーマンにとっても、厳しくつらい時代
となった。もっとも、楽であったのは高度成長期の20年間ぐらいであ
ろう。バブルがはじけてこの15年、楽を知らないサラリーマンも多く
なっている。左遷や不遇どころか、人員整理や会社倒産というサラリー
マンとっては、地獄の苦しみに遭遇しているひとも多い。
 明治時代にも左遷された文士の公務員がいた。公務のかたわら、作品
を発表したり、大学の臨時講師をしたという理由からである。男社会で
の妬みがこわいことは、現代でも神代の昔から変わらない。九州・小倉
に左遷され、単身赴任したひとは、後に文豪と称された森鴎外である。
 内村幹子「左遷鴎外」新人物往来社刊を、左遷されたと思っているサ
ラリーマン、組織社会で苦しんでいるかたにすすめたい。苦学をしなが
らも順調に立身出世街道を歩んでいた森林太郎は、突然降格転任された。
 文士として売出し中であり、軍医として中央での出世を信じていたの
で、挫折感にさいなまれた。軍職を捨て、文士専任も考えたが、当時は
無頼の職と称されていたので、母のために思いとどまった。悩みは深い
ものだっただろう。中年にさしかかった人間鴎外が味わった苦しみと復
活にかけた執念がみごとに描写されている。
 二足のわらじが許されなかった作家も多くいる。気象庁課長であった
新田次郎、広告会社博報堂の社員であった逢坂剛など熟年で要職を捨て
た作家の枚挙にいとまがない。
 作者の内村幹子にも注目される。役所を定年退職後、「今様ごよみ」
で歴史文学賞を受賞、北九州を題材とした作品が多い。「武蔵彷徨」も
九州を主舞台とした興味深い作品である。二足のわらじを穿かなかった
作家なのかも知れない。
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 編集後記
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 弊社顧問・植野氏の体調があまりよくないのだが、今回無理して原稿
を書いてもらった。今後も体調回復を優先してもらうつもりなので、休
載することもあるかもしれない。無料メルマガなので義務も制約もない。
無理せず長く続けていくことを目標としている。ご了承いただきたい。
ところで、私もヤフーBBのADSLに加入している。名簿流出の被害者の一
人だ。事件の後、詫び状と500円のキャッシュバック券が届いた。会員
数からすると巨額の出費かもしれないが、個人情報の流出という事件の
重みに対する対応として、これで済むわけではない。会社のシステムと
して何か根本的な対策を取ったのだろうか。ちょっと不安になる。会社
が巨大化し、権力を持つようになると、腐敗が始まるのかな。孫正義と
いう人は、私が大学生時代にベンチャーの旗手として登場した人。他の
若手ベンチャー企業が没落する中、成功を収めているかのように見える。
油断すると、大変なことになる。孫さん、ご注意を。(かみのやま)
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