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       〜言葉を風にのせて〜   高安ミツ子

 1月号 VOL33
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お待たせ致しました。dd
今月のWind Letterです。

Wind Letterは言葉を紡ぐ楽しさを詩や随筆で送ります。
私の言葉の風を受けとめてくださいますか。
あなたの心の窓を開けてくださいますか。風の手紙があなたと
私の夢をつないでくれますように。
それでは、どうぞ今月のWind Lettrをお楽しみください。

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○●作者紹介●○
名前:高安ミツ子(たかやす みつこ)
日本ペンクラブ会員
日本詩人クラブ会員
千葉県詩人クラブ理事
詩誌「玄」[White Letter」同人

 

                     弦月
          

    

朝の緞帳(どんちょう)が表情もなくあがったはずなのに

突然義母は能面の顔で怒り出したのです

私はあの日からあなたにかぶせる

みつからない帽子を家中探し続けていきました

打ち寄せるあなたの怒りの波頭でびしょぬれになった私は

言葉も、体力もなくなり 心が壊れてしまう苦しさに

仏壇の義父に「助けてください」とただ掌を合わせるだけでした


ふと回路がつながる午後になると

状況を知った義母は

「こんなにやさしくしてもらっているのに」

「そんなとき、私から離れていてくれ」

と壊れていく寂しさを飲み込んでいくあなたに

手渡す薬のない私の心は寒く震えるばかりでした


義母の魂は

あなたの好きな牡丹の花びらが崩れるように散る

あの速さにも似て

壊れて 時を束ねていきました


妄想の多い義母の姿を追いかける日々の中

まるで私はサーカス小屋で綱渡りをしている

化粧のはがれたピエロでした

このままこの渡り綱からまっさかさまに落ちたほうが

楽になるに違いないと夢想しても

30数年過ごした義母の姿を忘れることはできないのです

あなたの娘ではないけれど

信頼を寄せてくれているあなたの声が聞こえるのです



どうにもならない闇を抱えた私は

手折れる花のない悲しさを知りました


あなたの心が壊れだしてから

どくらいの時間が過ぎたのだろうか

施設で目覚める朝を迎えるようになった今でも

義母は私の名前を呼ぶという

今頃は部屋で眠っているだろうか

見上げると

私だけを見つめているような弦月が

冬の夜空で微笑んでいるように見えました

風は肌をさすように冷たく

あなたとの契りを切り離す勢いで私の心を吹き抜けていきました

「神は細部に宿る」といわれるが

私に何が見えるのだろうか

あなたに託された冬の庭は哀愁のある顔で春を待っています

 

   

                                       

 

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