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タイトル:仇花の記憶 04/07/20 55号  2004/07/20


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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜

第二十回  ショタやおい日本史(二)
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
では、ゆるゆると雑談をさせて戴きましょう。

本邦に於けるショタ及びやおいという観点から
捉えた虚実交えた人物史もどき・第二回目で御
座います
お気軽に御読みくださいませ。

●  ○  ◎  ●  ○  ◎  ●  ○
稚児物語の傾向は凡そが僧侶と稚児と僧の愛欲
を描いたものであり、物語の根底には多く仏縁
という隠し主題が流れています。
愛欲そのものを細やかに絵で描写するに至った
『稚児草子』でさえ、単なる色情と言うよりは
仏縁による慈悲的な感情を交えた形で物語が展
開されている様に見受けられますし(局部以外
の肉体描写を観ますと寧ろ色情よりは肉体美へ
の賛美的なものを感じたりもするのですが)、
その他の凡そは『契りを結んだ』と述べられる
だけに留まっているような感じです。色情沙汰
というよりは(和歌等の)言葉の駆け引き的な
面が大きいのやも知れません。『稚児観音縁起』
では老僧の祈願に応じ観音が稚児に化身して顕
現し、老僧と現世の契りを結んだ後(稚児とし
ての身は)死んで、後に仏性を顕して仏縁を約
する、と言う運びになっています。
寺院という閉じられた空間を中心に展開される
恋慕模様。同性間と言う事が違和感なく受け入
れられる前提。
なんとなく現在のやおいショタ同人誌の『お約
束』と共通したものを感じるのは筆者だけでし
ょうか?ついでに申せば往時の『本』なるもの
は商業出版というものではなく、回覧式の書写
本、一種の同人誌的なものであったろうと推測
されます。
●  ○  ◎  ●  ○  ◎  ●  ○
鎌倉時代辺りまでは男色関連の記述は寺院若し
くは公家周辺で留まっていた様ですが、室町時
代になって拠点を京都に移して公家と近しくな
った武家社会に於いては綿密な記録が残される
様になっていたらしいですね。
能の隆盛一つを見ても祖とされる観阿弥の子・
世阿弥が、鬼夜叉後に藤若と名乗った子供時代
(当時12歳だったとか)、後の室町幕府三代将
軍となる当時17歳の足利義満に寵愛された事に
端を発すると語り継がれても居ましたし(そう
言う関係を皆知っているという事を前提に様々
語られていた様子です)。能の曲にはそう言う
稚児愛男色の薫りがする曲が幾つか御座います
ね。
往時を偲ばせる小説としまして、杉本苑子女史
の『華の碑文』を推しておきます。藤若の稚児
としての在り様を描いておりますので、参考資
料となりましょう。
●  ○  ◎  ●  ○  ◎  ●  ○
元服前の少年が武将に仕えて身の回りの世話を
する、いわゆる小姓と言う形式がはっきり認識
されだしたのは室町時代末期以降からかと思わ
れます。それまでは武家社会に於いては『寵童』
と呼び習わされていたようです。寺院に於いて
は『喝食』と言う呼び名でしたとか。只寵愛を
受けるだけの存在であり、政務などには一切触
れずとも身の保障は(寵愛のある限りは)あっ
た様です。
さすれば、小姓の仕事と言うと寵童喝食のイメ
ージの延長線上で妻君側室の代わりに主君の夜
伽をすると言う先入観を大きく持たれる方も居
る様ですが(恥ずかしながら筆者も詳しく知る
まではそう言う先入観を持っておりました)、
それはあくまで役割の極一部であります。それ
以上に重要なのは仕える主君の身辺の(政務的
な事も含む)世話であったと言われます。
才色兼備である事を求められた、現在で言う所
の『美人秘書』の男性版、といえばお察し戴け
ますでしょうか?
その小姓の代表選手と見られがちなのが織田信
長に仕えた森蘭丸で御座います。時に名前を乱
丸と書かれた様子のこの人はただ美しいだけの
お飾りではなく、主君に相応しい豪胆さを見せ
たりする人であったとか。本能寺の変の際にも
主君と共に戦ったというお人だそうですし。
彼が小姓であったと言うだけの理由で女性的な
性格に描写していた時代小説を過去に読んだ覚
えがありますが、それはあんまりな濡れ衣とい
うものです。史実上の彼は夜伽の方面で重用さ
れたのではなく、寧ろ信長公の秘書兼ボディガ
ード的な位置にあり、又信長公寵愛の小姓達の
取り纏め役であったのではないか、と考えられ
ておりますそうな。
●  ○  ◎  ●  ○  ◎  ●  ○
寵童喝食小姓それぞれの伝の概略を記すにはそ
れこそどれだけ紙幅が要ります事か。
参考とさせて戴いている『美少年日本史』を著
した須永朝彦氏をして『美少年日本史』でさえ
まだ記録漏れがあると口惜しがらせていると言
う有様。
名前の列記だけでもと甘く見ておりましたが、
名前の列記だけでも充分な紙幅が必要となりそ
うです。せめてもの一助として同時発行の参考
文献一覧を参照して下さいまし。
●  ○  ◎  ●  ○  ◎  ●  ○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。次号では江戸時代以降を少し齧って
みようかと思っております。では次号まで、御
機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第二十回 2004.7.20発行

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