メルマガ:仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
タイトル:仇花の記憶 03/11/18 22号  2003/11/18


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仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜

本編第八回  やおい台所事情
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ごきげんよう。葡萄瓜でございます。
それでは頼りない記憶を何とか紡いでみる事に
致します。

雑誌の時代…と申しましても、やおいと言う世
界に於ける雑誌的存在≒オリジナルアンソロジ
ーであると申し上げても過言ではありますまい。
JUNE関係各位は道場をお持ちでしたので新風を
吹き込むのにもそうそう苦労は無かった様です
が、対する同人誌アンソロジーを発行した会社
各位は…と言うと、悲喜交々が在った様です。
ふゅーじょんぷろだくと社は同人誌アンソロジ
ー定期発行と言う形態を確立したものの、いざ
雑誌となるとどうも勝手が違った様です。
89年に同人アンソロジー出身作家さんを集めて
雑誌を創刊した(※1)と言う話を聞いている
のですが見事な程記憶にありません。先日古書
店でその雑誌のバックナンバーを幾冊か中身確
認程度に読んだのですが、やおいと言うよりも
ボーイズラブ、ボーイズラブと言うよりは友情
の行き過ぎ程度?と言う感じでした。因みにそ
れ以降、同社からオリジナルアンソロジーの類
が発行されたと言う話は聞いた記憶がありませ
ん。
対する青磁ビブロス社ですが、こちらはオリジ
ナル作品層の開拓にかなり積極的だった様です。
同社発行オリジナルアンソロジーの祖で今尚看
板シリーズとなっている『b-Boy』(91.12.20
シリーズ創刊)に先立って『Patsy』誌を創刊
していました。こちらはやや少女漫画色が強い
とは言え、一応やおいの範疇ではあるでしょう。
それ以降、多少の失敗はあったにせよ看板雑誌
である『マガジンBE×BOY』シリーズ中心の体制
を確立してからはやおい雑誌版元の雄としての
座を保持している様です。
白夜書房から創刊された『イマージュ』(91.12.
10創刊)は「BOY'S LOVE COMIC」(※2)の煽
り文句を纏って善戦していました。耽美ではあ
るがJUNE程垣根は高くないといった感じだった
でしょうか。惜しむらくはアンソロジー形態の
ままでしたが。
それ以外の雑誌は、本当に印象が薄いですね。
今回記憶だけではいけないと思って記憶の再確
認作業をしていましたが、桜桃書房の「GUST」
が90年の8月に創刊されていたなんてしっかり
忘却しておりました。やおい色が薄かったので
忘却したのでしょうか。その辺が自分でも気に
なります。
他にも色々創刊されたようなのですが…手元に
ある雑誌をみると奇妙な共通点が有りました。
押並べてと言って良い程美少女漫画雑誌の増刊
号として発行されているのですね。美少女ブー
ムで培ったノウハウをやおいブームにぶつけて
一儲け…と言う色気が出たのでしょうか。(※3)
アンソロジー形態の雑誌にしても版元は殆どが
美少女漫画を発行していた版元なのでした。
雑誌にしなかったと言うのは、最後の最後まで
書店で売り抜ける様にしようとした思惑があっ
たからでしょうか。
でも、単行本より高い「雑誌」を易々と買える
程当時のやおい愛好家の台所事情は良かった訳
ではありません。出来れば雑誌形態で少しでも
廉価な方が良いに決まっています。が、現実的
には雑誌で成功した例は「マガジンBE×BOY」
だけとも取れる有様。サイズもA5判だけでなく
B5版もあったと言うのに一向に根付かない。
JUNE及び小説JUNEは老舗の看板と言う事も有っ
てしっかり生き延びておりました。ロマンJUNE
と言うガス抜きの存在も重要だった様です。ま
あ、JUNE本体も世評程上品だった訳では無いで
すけどね。少なくとも生もの萌え関連について
はJUNEは結構過激だったと思いますし(それを
言うと『ALLAN』【※4】はどうしたとツッコミ
が入りそうですが、あちら様はもう萌えと言う
レベルで語り尽くせませんので…)。
この時期に出た雑誌と言うのは、思い返せば不
当に粗末な扱いをうけていたのかも知れません。
萌えよりも小銭優先と言う思惑に踊らされすぎ
ていた感じさえあります。新風を欲しがる割に
新人発掘が殆どなされなかった背景もあり、作
家さんはそれこそ引っ張りだこ。弊害として下
描き原稿が其の侭連載の原稿として掲載された
り作品の使いまわしも散見されました。
今の雑誌の隆盛から考えると、信じられないで
すけどね。

では、此度はこの辺で。
次の本編は9月30日発行予定です。又お会い致
しましょう。

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※1
『KID's』 89.1.1創刊

※2
恐らくはこの言葉が「ボーイズラブ」と言う
ジャンル分けのヒントになったのでは無いか、
と思う。これ以前に雑誌若しくはアンソロジー
での用例は今の所確認出来ていない。

※3
栗本薫:著「タナトス・ゲーム 伊集院大介の
世紀末」(講談社文庫/02.7.15初版)中に登場
人物の口を借りて言及箇所あり。

※4
増刊第1回参照。いまや伝説の域の言わば萌
妄想暴走熟成雑誌。

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仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜
本編第八回  2003.9.15発行 2003.11.18再発行

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