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タイトル:NYBCT#304/ケヴィン・リトル「ターン・ミー・オン」  2004/08/29


今回はロングバージョンです。
miniバージョンは【原則・月水金】にお届け。
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         New York Black Culture Trivia #304
    ニューヨーク・ブラックカルチャー・トリヴィア

     ケヴィン・リトル「ターン・ミー・オン」

           2004/08/29
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      爽やかとエッチが両立するカリブ海



 カリブ海に浮かぶ小さな島国セントヴィンセント(*)出身のケ
ヴィン・リトルが歌う「ターン・ミー・オンTurn Me On」。この
曲が今、アメリカでも大ヒット中だ。BET(*)やMTVでは、カリ
ビアンカーニヴァルを模したこの曲のビデオクリップがヘビーロー
テーション中。ジャマイカ、グレナダ、バルバドスなどなど、カブ
海諸国の旗を振りながら踊るダンサーの大群に囲まれたケヴィン・
リトルは、爽やかな笑顔とファルセット・ヴォイスで気持ち良さげ
に歌っている。

*=正式国名はセントビンセント・グレナディン諸島
*=Black Entertainment TV


 ところで「爽やかな笑顔で」歌っているにしては、タイトルが
「Turn Me On」? 訳せば「その気にさせられる」「ムラムラさ
せられる」「欲情させられる」である。歌詞もまたすごいんである。
以下、抜粋で訳詞も載せるので、ケヴィン・リトルのイカれ振りを
楽しんでほしい。まずはパーティでのダンスシーンから始まる。


And you're wining on me
そして君はボクに身体を押し付けて踊っている
Pushing everything right back on top of me 
君の「everything」を何度もボクの「top」に押し付けてくる


 「ターン・ミー・オン」のビデオクリップでも見られる、男女密
着型のダンスがある。男女が向き合い、または女性が男性に背中を
向け、ふたりの身体(っていうか下半身)をぴったりと密着させる
スタイルだ。お互いに身体をくねらせ、腹部、背中からヒップにい
たる「everything」を相手の身体に押し付ける。これを「wining」
という。この詞に登場する彼女は、押し付ける先を彼の身体の中で
も「top」に絞っているようだ。さてボクの「top」とは何を指すの
か? 言わずもがな。


 彼女の情熱的なダンスにすっかりマイったボクは、首尾よく彼女
と一緒に帰宅。


So let me hold you
君を抱きしめさせて
Girl, caress my body
ガール、ボクの身体を愛撫して
You got me going crazy - You
君はボクをクレイジーにさせる
Turn me on
君はボクを興奮させるんだ
Turn me on....
ボクを興奮させるんだ
Let me jam you
君をジャムさせて


jamとは、フルーツジャムのごとく、ぐちゃぐちゃにすること。転
じてセックスを指す。


 さて、もっとも問題の箇所は以下。さすがにこれを日本語にする
根性はないなぁ……とギブアップしかかったのだけれど、それでは
今回のエッセイを発行する意味がなくなるので、がんばってみた。
(日本版CDの訳詞は一体どうなっているのか気になるところ?)


One hand on the ground & Bumper cock sky high
(ボクは)片手を地面につけ、バンパーコック(*)は空にそびえてる
Wining hard on me
(彼女は)身体をボクに押し付けまくって
Got the Python
ニシキヘビ(*)を手に入れ
Hollerin' for mercy
慈悲を求めて叫んでいる
Then I whisper in her ear So wine harder
ボクは彼女の耳にささやく。もっと激しく身体を押し付けて
And then she said to me
そうしたら彼女は言った
Boy just push that thing
ボーイ、ただアレを押し込んで
Push it harder back on me
もう一度もっと強く押し込んで

*=ともに男性器を指す


 以下は何度も繰り返されるフレーズ


Girl Just Hug Me, Hug Me, Kiss Me, Squeeze Me 
ガール、ボクを抱きしめて、抱きしめて、キスして、スクイーズし
て(絞って)
Hug Me, Hug Me, Kiss & Caress Me 
抱きしめて、抱きしめて、キス&愛撫して


 ケヴィン・リトル、あんな涼しい顔して、アルバムジャケットで
はスカイブルーをバックに純白のシャツなんか着込んで、こんなこ
とを歌っているんである。日本では「カリブ海の貴公子」なんて言
われているらしいけれど。ちなみにセカンドシングルのタイトルは
「ラストドロップ」=「最後の一滴」。最後の一滴って、いったい
何の一滴なのか? 言わずもがなアゲイン。



      アメリカン・ゲットー vs. カリブ海



 「黒人はエッチ」という神話だか噂だかがあるけれど、黒人に限
らず、どんな人種だって基本的にはエッチだろう。ただ、セクシュ
アリティの種類は国やエスニックよって違うのではないだろうか。
同じ黒人であっても、アフリカンアメリカン(アメリカ黒人の意)
とカリビアンではセクシュアリティの傾向がこれまた違うのだ。


 アメリカの話:最近のヒップホップのビデオクリップでよく見掛
ける「shake your ass系ダンス」(=尻振り系ダンス)は、もう行
き着くところまで行き着いた感のある下品さだ。BETでは夜中の3
時から「uncut」と題して、とことん下品系のビデオクリップだけ
を流す。たとえばリュダクリスの「Booty Poppin'(ケツがポンポ
ン飛び出す)」などタイトルからしてそのものスバリ。ラッパーが
10人ほどの女性ダンサーに囲まれているのだけれど、女性は全員
がドギースタイルか、ストリップバーに逆さに巻き付いてヒップを
激しく振っているだけ。


 ラッパー(男性)は、「金があれば、女のケツを10ヶ並べて、
それをオレのためだけに振らせることもできるんだぜ」と言いたい
だけで、女性とのセックスそのものを表現しているわけではない。
リュダクリスの場合は彼特有のユーモアのセンスによって多少は救
われているものの、それでもゲットー育ち特有のくすんだ、自意識
の低い下品さを感じる。それまで手にしたことのない大金が手に入っ
ても、その全うな使い方を知らないのだ。(考えようによっては、
とても切ない。)


 それに対してカリビアンたちの濃厚な「セックス系ダンス」は、
これも間違っても上品とは言えないものの、トロピカルアイランド
特有の解放感と大らかさを持っている。暖かい気候がそうさせるの
か、あまりにも開けっ広げ過ぎるとも言えるけれど、男女がお互い
にセックスのフレイバーをふんだんにまき散らすことを、心から楽
しんでいるように見える。なにより男女が対等……というより、
「ターン・ミー・オン」の歌詞では女性のダンスのほうが積極的。

 それにしても、パーティで超エッチなダンスを散々楽しんだあと
に、お家でさらに大きなお楽しみが待っているのである。一晩で二
度おいしいカリビアンライフ。これって、ある意味健全か。


ケヴィン・リトル公式サイトの「MULTIMEDIA」コーナーで「Turn
 Me On」のビデオが見られます
http://www.kevinlyttle.net/


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