別世界(7)
どうやら老婆のほうが圧倒的に有利なようだ
ろくに反論もせずに只、彼女は下を向いて足元を見ている
「大体ね、そういう事に口出し出来るのはちゃんと
戦士として村々を行き交い、旅人らに認められてからというもんだよ
それをどうだい?村をろくすっぽ出た事が無い小娘が
言うに事欠いてよそ者?笑わすんじゃあないよ!」
延々とお説教が終わりそうに無いのでカシスは
意を決して切り出した
「すまないな、婆さん、この娘が俺のファーストレデイなんだ」
「!!!」
「???」
「なんじゃとて?はぁすとれでえ?」
「否、最初の女っちゅう意味なんだけどね」
どうやら、時折、意味が通じないらしく彼は一瞬慌てた
「ほほう、それはあまり感心出来んのう」
と老婆が顔を近づける
「彼は一目見て惚れ込んじまったんですよ」
とトマスがおどけて見せた、すると
「ふーん、それじゃあ仕方が無いねえ」
と急に温和な口調になり、ミリアの頭を撫でながら
「いいかいミリア、これから何度も死ぬ様な目に合うだろうが
がんばるんだよ、ね?」
と言って軽く抱き占めた、只、彼女は未だに信じられない
と言う顔でカシスを見続けていた
「それじゃあ、ミリア、あの3人の他に後何人欲しいんだい?」
さっきとは打って変わって老婆は彼女に切り出した
しかし彼女は首を二、三度振った後誰も見ずに走って出て行ってしまった
残された3人はその予想しない出来事に、しばし呆然とした後、
「一体どうしたんだい?あの娘は」と老婆は二人に問いかけた
「すまない婆さん、あの娘にはまだ
最初の女だと言う事は言ってないんだよ」
「そりゃまた可哀想な事をしたねえ」
と深くため息をついてからちょっと間、
考え込むとおもむろに
「それじゃあ、あの娘の家に迎えに行ってくるかね」
と立ち上がった、それに合わせて二人も動こうとしたが
「否、あんた達はここで待ってるといい、
ここは私に任せてくれないかい?」
そう言いながら制した後、ゆっくりと部屋を出て行った。
後姿を見送りながら顔を見合わせるカシスとトマス
そして二人共大きくため息をついた


2003/07/24/アダルタスファクトリーズ