メルマガ:組紐工芸 工房 多津蔵通信
タイトル:「薩摩の夢」 ”多津蔵物語 其の十”  2003/12/16


夢を語る事は、嬉しい事です。其の夢が、一つずつ実現したならば、幸せです。工房の夢を描き、工房を実現し、工房で生活をし、工房が動きだしました。此処まで来るには、長い長い歳月が費やされました。春からは、現実の厳しい取り組みが始まり、主宰は、てんてこ舞いでした。其の慌ただしい取り組みも、秋には、ゆったりとした生活が始まりました。
実りの秋と云うように、多津蔵にも、実りが沢山在りました。大きな実りは、物が産まれる事です。確実に出来上がる物は、多津蔵の屋台骨を支えてくれます。手仕事の工芸の工房ですので、物が出来なければ存在価値は在りません。でも、今は、間違いもなく、確実に出来ています。出来たものは、全て、お客さまの用に供しています。この事は、多津蔵が、受注生産の姿をとっている事を意味致します。
此の姿は、実は、夢の姿では在りません。経営的には、安全で安心ですが、新しい提案は出来ません。多津蔵の使命は、此の”新しい提案”なのです。だから、機織りにも挑戦致しますし、染色にも手を染めます。仕立てにも精を出しますし、組紐工芸は、当たり前の事です。一杯の仕事に取り組み、其の中から生み出される輝きを形に致します。
多津蔵のカテゴリーは、”素材”なのです。其のもしか持ち得ない輝きが、狙う姿なのです。ナンバーワンではなく、オンリイワンを目指すのは、当然の帰結なのです。どんなオンリイワンなのか?デザインは出来ています。其の具体的な姿の第一が、生活の確立でした。和の生活を育まなければ、和の文化は生み出せません。こうした取り組みは、遠回りのように見えますが、実は、最短距離なのです。江戸時代に、明治も大正も、ましてや昭和など、有り得ません。此の事は、生活に規定された物しか出来ないと云う事なのです。目茶苦茶な生活しか出来なければ、物も目茶苦茶なものしか出来ません。和の生活だから、和の香りを盛り込めるのです。和の感覚を磨けば、和の味わいを醸し出せるのです。一夜漬けの底の浅い感性など、所詮は、人真似の珍奇なものでしか無いのです。オンリイワンとは、とてもじゃないですが、云えません。
多津蔵は、こうしたデザインのもと、生活を確立したのです。更に、空間を飾る在り様として、お花に取り組んでいます。
来年からは、版画・スクリーン印刷・絵画も始めます。どんな生活空間が生まれますか、楽しみです。
                    工房「多津蔵」デザインルー

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