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タイトル:[M4 Action! 10]「ニートが増えるのはネットのせい」  2005/08/04


通巻82号 2005.8.3発行


                  M4 Action!
                「ニートが増えるのはネットのせい」


 「ニート(NEET=Not in Employment, Education or Training)」問題が世間を賑わ
せている。働きもせず、教育を受けているわけでも、職業訓練も受けていない15歳か
ら34歳までの若者を指すという。今は大学を選ばなければ、誰でも大学に入れる時
代。ともすれば、大学まで進学しないのと、働かないのは別の問題だ。大学まで進学
しないのは、大学に行っても先が見えないから、または行きたい大学がないからだろ
うか。これは団塊ジュニア世代以降に言えることで、私の代までは、大学までは競争
してでも普通に行くものだと思っていた。大学卒業以降の将来についてまでは考えて
いなかったし、大学に行かないという選択肢についての情報が氾濫していなかった。
だから、不登校の延長線上にある進学しないニートと、大学まで行ったのに働かない
ニートを一緒には考えるべきではないと思う。不登校は、私の代より前からずっと存
在していたし、そう思ってしまう気持ちは実は分からないのが本音だ。18歳以前で進
学しない若者がいるとしたら、まずは学校に行って、単純に「時間稼ぎ」をしてもら
いたいと思うだけだ。

 理解できるとすれば、大学まで進学し、または卒業したのに就職しないニートのほ
うだ。東大でさえ、ニートになる卒業生はいるし、大学院に進学した者がすべて有利
な条件で就職できているわけではなく、博士号を持っていながらの"Dr.NEET"だって
いる。働かないのは、働かなくても生きていけることが前提となる。実家ならば、ま
だ親も職についており、自分の部屋もある。通信費や光熱費、食費は親持ち。これな
らば、食うためだけに働くという単純な選択肢にはならない。職を選ぶ行為そのもの
が日本が豊かになった証拠でもあり、ぜいたく病とも言える。途上国の人が聞いた
ら、怒るかも知れない。または、私たちのほうが幸せなんだ、と日本人を影で蔑むか
も知れない。

 では、何故働かなくても食えるから働かないのだろうか。進学しない学生にも言え
るかも知れないが、私はインターネットのせいだと思う。私は大学生になるまでイン
ターネットはなかった。ネットは、欲しい情報がすぐ手に入る。本来、生きていくた
めの手ほどきを受ける教育が、ネットがあれば知識の埋め合わせで事足りてしまう。
先日、韓国で10歳の米国人の少年と話す機会があったが、彼は物理的に学校に行って
いないという。小学校もネットだとか。小学生といえば、給食を一緒に食べたり、友
達とサッカーをしたりと、非常に大事な時ではないか、それなのに知り合いはネット
上だけだと言う。頭が悪いわけではない。コミュニケーションが特別下手な感じでは
ない。ネットは、老若男女、万人が平等。一部の有料サイトを除けば、どんなお金持
ちでも同じ時間で同じ検索結果が表示される。自分の未熟さや劣等感、悔しさなどそ
の反動で頑張れる何かがネットには存在しない。

 何も余計なことを考えなければ、大学までは普通に進学してしまうはずだ。少なく
とも、ネットがなければ、マスメディアの情報を中心に生きる指針にしてきた。その
間にいろいろな事件が起こり、それを解決していく中で成長する。将来なりたいこと
が見えてくる。しかし、未来に希望がなさそうだと、考えてしまうのだ。考えて情報
武装をしようとする。ネットを使う。ネガティブな情報が氾濫している。すると、考
えまでネガティブになってしまう。若ければ若いほど、そんなネガティブな情報を覆
せるほどの自分の考えを持っていない。それに若ければ、自信につながる結果も出せ
ていない。今、学校で本当にかけっこの順位を出していないのか直接知らないが、1
番になれば、自信がつくはずだ。そういう自信をつけられるものはネットの中では難
しい。第三者判定による順位がつくのは、ネットゲームぐらいだろうか。第三者の判
定でなければ、ネットの中でのすべては自己満足で終わってしまう。自己満足では、
なかなか自信につながらない。

 まさかネットにこんな落とし穴があるとは思わなかった。18歳になるまでクレジッ
トカードは発行されないので、私はパソコン通信さえ大学生になるまでできなかっ
た。情報はテレビや雑誌、新聞、先生、親などから得たのに、今はネットがほぼ同様
の情報を教えてくれる。ネットに氾濫する情報は極端なものが多い。極端にポジティ
ブか極端にネガティブか、なぜならわざわざホームページにするのにはそれなりのパ
ワーを必要するため、極端に思っている情報しかアップされてこないからだ。もし、
少しは極端な情報が緩和されるとすれば、ブログの存在だろうか。ブログには、くだ
らない日記やコメントが溢れている。これは日常会話に近い。ブログは誰でも簡単に
つくれるため、パワーを必要としないので、極端さは緩和されているように思う。

 ニート対策だからと言って、今さら若者からネットを取り上げることは不可能だ。
Windows95が発売されてから10年。インターネットの普及は社会に思わぬ落とし穴を
突きつけている。今まで得られなかった情報が簡単に得られてしまう功罪。情報が氾
濫している中で、シンプルに生きるためには、両耳を塞ぐぐらいのことをしなければ
乗り越えないのだろうか。真実を追究しようとすればするほど、追求できてしまうこ
とが果たして幸福なことなのか。今までネットがなく、情報が少なかったために大学
に進学し、就職をしてきた人はこれからの標準ではない。これからはあらゆる情報が
手に入る中で、自分は何のために存在するのか、何故働くのか、どうして成長しなけ
ればならないか、など万人に共通ではない哲学的な問いをすべてクリアし、自分で納
得できなくてはならない。これはどうだろう、もしかしたら新興宗教の温床になりか
ねないのではないか。身近なオトナはこれらの哲学的な問いについて、自分の意見を
まとめておくべきかも知れない。自分も分からない問いに答えられるわけはないから
だ。間違っても私には聞かないでいただきたいが...(笑)
                          (こくぶ ひろゆき hk@ihg.jp http://lvsh.jp/)


追伸) 初めてこのメールマガジンをお送りさせて頂いた方もいらっしゃいますが、
  1994年から(当時はFAXでしたが)不定期に発行しているものです。徒然なるまま
  に思いつきを皆さんにお送りするものですが、ご迷惑でしたら、一番下の解除
  方法で解除できますので、お手数ですが、ご自身でご手配をお願いします。
  「おいおい、ふざけんな!」という方はその旨、ご返信下さい。そういう方には
  こちらで対応させて頂きます。
   なお、バックナンバーM4 Visionについては以下のホームページにあります。
   http://www.sm4.jp/new/m4_index.html
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國分 裕之 (Hiroyuki Kokubu), LVS Holdings Inc.
E-mail hk@ihg.jp URL http://lvsh.jp/

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