メルマガ:堤のノンフィクション物語
タイトル:私がPTSDになった訳-第8章裏切り-  2003/05/20


第8章 裏切り


高校1年の時の夏の話。
 私は今までの出来事のトラウマで、男性恐怖症となっていた。
 しかし、一般の女性も怖かったのも事実。人間すべてが怖いといってもいいほどで、話
しかけられても、
 「うん…」
 たとえばバナナとイチゴのどちらかの飴をあげると言われても、
 「…どっちでもあまったほうで…」
と、いうように答えていた。
 話しかけられただけで心臓はバクバク破裂しそうだ。会話にはならないし、友達も作れ
ない。
 これではいけないと一生懸命話す努力をした。
 自分から積極的に話題に入ってみたり、飴を上げる口実に話をしてみたり。
 毎日がドキドキの連続だった。
 そしてついに普通に女の子とふざけあったり、恋話もできるようになった。
 でもどうしても男の子とだけは、話が繋がらなかったり、うつむいてしまったりした。
 そんな中、ちょくちょく私に話しかけてきてくれる男の子がいた。ちょっと太った(そ
の子をA君としよう)A君は毎朝早く学校に来る私に合わせてか、そういう性格なのか、
毎朝顔をあわせては話をした。
 と、いっても一方的な話で、
 「好きな男いる?」
 「どういう男が好きなの?」
 「髪型ってアフロはだめだと思うんだよね」
 「何色の服の人なら惚れる?」
 などどうでもいい話ばかりしてきていた。
 私はあいまいに
 「はいはい」
 と答えていた。
 そんなある日、朝の掃除途中、同じクラスの女の子に教室に呼び出された。
 「今日放課後暇?」
 「え?暇だけどなに?」
 とりあえず用事もなかったので、放課後の約束をした。
 「とりあえずかおる(仮名)に話をしたい人がいて…うん…そういうことなのさ」
 そうして授業が始まる。
 だんだん放課後に近づいてくる。
 授業が終わりに近づき恒例の先生の雑談が始まる。
 「おい〜ヤン(仮名)なにニヤニヤしてるんだよ」
 先生が言う。
 先生の雑談は面白いので実はしっかり聞いている。
 「せんせ〜ヤン、今日告るんだよな〜」
 A君が言う。
*『告る』→告白
 (今日は告白話か。誰にだよ。てゆーか、そーゆーのって公にして大丈夫なのかな?)
 ヤンとは一度も話したことはなかったが、一応気になる。
 「誰だよ教えろよ」
 先生がニヤニヤしながらヤンの口元に耳をあてる。
 先生と一瞬目が合う。
 (え?まさかな〜話したこともないしありえないだろう)
 自分ではないと思っているにもかかわらず、嫌なようなあせるような気持ちだった。
 放課後、学校の近くの公園に呼び出され、告白された。
 (考えがあまかったなぁ…本当に私なんて…でも好きな人いるし…)
 「ありがとう、ごめんなさい。うれしいんだけど好きな人がいて…出来れば友達でいよ
う?」
 そういって断った。
 しかしそれ以降まったく話してはいない。男と女ってそんなもんなんだろうな…とおも
った。
 しかし、それからが大変だったのだ。A君が毎朝毎朝、
 「本当は好きな人いないんでしょ?」
 「ヤンのどこがだめ?」
 「一週間だけでも付き合ってやってよ。ヤンならキスするくらいの勇気しかないから」
 などとしつこく言ってくるのだ。
 同情で付き合っても相手に失礼だと思っている私には、迷惑でしかなかった。
 しばらくして、やっとその話題も落ち着いてきて、たまにしか出てこなくなった。
 そんな帰りの掃除の時間、早めに掃除の終わった私と友達は暇なので、話をしようと教
室へ入った。
 教室掃除だったA君は、教卓のところで座ってサボっていた。
 「ねぇ」
 A君が私たちを呼び止める。
 「ヤりてぇ〜」
 いつもの冗談だと思い、2人は笑っていた。
 「マジでHしたいんだよなぁ、ヤらしてよ」
 「私には愛するダーリンがいるから浮気できないもんっ」
 と友達は軽く交わす。
 私にはどう言っていいか分からない。だから笑ってごまかした。
 「本当にヤりたいんだってば、今日放課後でもいいから…ね?」
 だんだん本気に聞こえてきた。
 (怖い。何考えてるんだこいつは…どうしよう…本気だったら…)
 だんだん笑いも引きつってきた。
 そこに先生が帰りのHRのためにやってきて全員席に着いた。
 先生の話も終わり、
 「きりーつ、れーい」
 リーダーがかけ声をかけた瞬間、A君は私の机の上においておいた鞄をわしずかみ、廊
下に走って逃げていった。
 あっけにとられた私は放心状態でいたものの、
(鞄がなければ家に帰れないじゃないか!)
 と思い、走って追いかけた。
 校舎の一番隅にある階段を駆け上がり、2.3階の踊り場でやっと追いつき、自分の鞄
を掴み、引っ張った。
 A君も油断したのか、その瞬間階段から転げ落ちてしまった。
 でもA君は、倒れた私の上にまたがり、私のブラの中やパンツの中に手を入れようと必
死に触ってきていた。
 「やだ!やめてよ!」
 そう声には出すが、人に気づかれて見られるのが嫌だったのか、小声で言っていた。
 A君が重いのか、男の人の力なのか、A君を退かそうとしてもどうにも動かなかった。
 「先生来るよ!」
どうにか隙を突いて鞄を掴み、逃げようとする。
 しかしA君も私の鞄を離さない。
 そのうち鞄を強くひっぱられ私は、壁に打ち付けられた。
 そしてまた胸やパンツの中に手を入れていじってくる。
 (誰かに見られる!どいてよ馬鹿!)
 私の頭の中では『触られて気持ち悪い』よりも『誰かに見られたらどうしよう』という
気持ちがの方が多かった。
どうにかA君を退かして、上り階段に逃げる。
「ごめんね」
 うしろからA君の声が聞こえて振り返る。
 (謝るくらいならするな!)
 「あと1回…あと1回胸触らせてくれたら止めるから…」
 (あと1回か…それで止めてくれるならいいか…)
 どう考えても罠なのに、頭が麻痺して普通に考えられなかった。
 私は階段を下りてA君のところへ言った。
 A君と私は向き合って、A君は私の胸を触る。
 (これで終わるんだ…)
 
 「ドンッ」

 いきなり壁に押し付けられ、胸と陰部をいじられた。
 もうあきらめていて何の抵抗もしなかった。
 しばらくしてA君は触るのを止めてくれて、私は上り階段を登った。
 「バイバイ」
 A君が言った。
 「バイバイ」
 私も言った。
 数日後、同じ思いをしている人が何人もいたため先生に言いに行ったが、何もしてくれ
なかった。
 これが現実なんだと思った。

 その後A君は同じクラスの男の子の友達に『100万学校に持って来い』と脅されたら
しく、しばらく学校を休んでいたが後に学校を辞めることになる。

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