メルマガ:風のひとり言――マスコミの裏を読む
タイトル:「風のひとり言――マスコミの裏を読む」第52号  2006/08/04


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         「風のひとり言――マスコミの裏を読む」vol.52
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ごあいさつ
 
「お詫びと近況と」

 イヤイヤ、最後に発行してからもう5カ月超。とうとう発行者側から「何を
やっているのですか。読者がかわいそうじゃありませんか。やる気がないんな
ら、発行を停止しますよ」と引導を渡されてしまいました。そりゃそうでしょ
うね。私も気にはしていたのですが、自分の身の回りのことを考えているうち
にズルズルと……。もちろん、言い訳にはなりませんので深くお詫び致します。

 さて、何をやっていたかというと、大したことではないのですが、去る5月
から私はライブドア・ニュースというところで統括デスクをやっています。も
ちろん、あのライブドアの一部門で、メディアを重視するという戦略の下で1
年半ちょっと前にできた部署のようです。

 話をすると長くなってしまうものの、要はこのニュース部門を立ち上げた関
係者の一人と知り合ったことがキッカケ。この方も外部から部門強化のために
入った人だったのですが、いい人なのでずっと付き合ってきました。新興の企
業の哀しさなのかどうか、色々と人の異動などがあるようでデスクに穴が空い
たので「ぜひ」となったわけです。

 もちろん、迷いはありました。事件の経緯は詳しく承知していた訳ではあり
ませんが、いわば反社会的行為で指弾を受けている会社。現在もいくつかの裁
判が進行中です。

 一方、間に入った人(H氏といいます)が非常に信頼のおける人だったこと。
また、メンバーがいわば素人集団で「指導できる人がいない」とのことだった
ので、いく分の興味もあったわけです。

 さて、結果はどうかって? これはなかなかなかなか…もったいぶって言い
ますが、複雑な人間関係とシステムの素っ頓狂さには辟易しますが、まずは面
白いところです。若い記者連中(だいたい30歳前後)との酒席の会話でも、
まんざらやる気がなさそうな訳でもないので「一つ鍛えてやるかな?」などと
思っているのです。

 会社自体も、逆に若い人たちのケセラセラで平穏に推移しているように思え
ますし、やりようによってはこれからも伸びる可能性の大きい組織だと思いま
す。

 そんなこんなで、私もとうとうヒルズ族の一員――笑ってしまいますね。た
だし、この辺りに独特の文化が育っていることも事実なので、その辺の観察も
こらから折に触れて発信したいと思います。乞うご期待――。
□■□ 「風のひとり言」その52□■□-----------------------------------
「鈴香容疑者の闇」

秋田児童連続殺人は
人知を超える

 これまでは専門的なニュースを追う機会が殆どだったので、ジェネラルのニ
ュースは以前ほどの興味が湧きませんでした。しかし、現在は別。仕事のこと
もあって以前よりはずっと、新聞を読むようになりましたね。

 この間(ここ1、2カ月)でも大きなニュースが目白押しでしたが、私は一
番大きな衝撃を受け、かつその真の意味が分からないのは秋田の連続児童殺害
事件にトドメをさすと思います。

 一体、この畠山鈴香容疑者(33)という人物はどんな女なのか? 母性のか
けらもないのか。あるいは母親を装った、ただ“オンナ”だったのかどうか。

 私も現在のところで、この人物がどのような人間性を持ち、どんな目的でこ
のような事件を起こしたのか、全く持って分かりません。ほぼお手上げといっ
てもいいでしょう(そのくらい、この事件は人知を超えるものです)。

 しかし、一点だけ、この事件の背景にあるものとして私が普段から気になっ
ているものがあるとすれば、それはコミュニティーの喪失とリセット願望と呼
ばれるものでしょうか。

 事件の衝撃性もさることながら、こんな出来事が秋田・藤里町という、冬に
なれば雪に埋もれてしまう、閑静な田舎の集落で起こったことが信じられませ
ん。常識的に考えれば、この種の場所は濃密な人間関係があり、事件を防ぐ逆
の抑止力が働くハズです。それが、今回は全く働かなかった。むしろ、この集
落の成り立ちを考えると、その地域性が事件の遠因になった可能性すらある。
その辺が信じられないところです(最近はむしろ、田舎町と思われるような場
所で事件が多発します。これは、日本の文化と住環境の変化と無縁ではないと
思っています)。

容疑者には
リセット願望があった?

 もう一つ、気になる鈴香の人間性を追っておきましょう。ある心理学者がテ
レビで話していたコメントで印象に残ったのですが、「この鈴香容疑者には人
生のリセット願望があったのではないか?」ということ。日光・鬼怒川温泉へ
の住み込みの就職はまず初めに、「もう一度やり直したい」との思いがさせた
行動であり、その後も何回かそうした願望にとらわれたのではないかというの
です。

 最近はリセットなどという言葉がよく使われるようですが、人生がゲームと
同じだなどいうことは歌の文句ではあっても、現実にはありえない。そして、
成長すれば殆どの人はそれが分かるハズです。人の道程と営みは、まさに過去
からの連続です。それを瞬間たりとも断ち切ることはできない。しかし、いい
意味で“やり直す”ことはできるハズなのですが、時として家に火をつけたり、
親を殺したりする人物が現れてくることには驚くばかりです。

 まぁ、心理学的な背景でいえば、この鈴香容疑者がイジメられていたことと
全く無縁であることはあり得ないでしょうな。ヒトはいじめられれば、こんど
はイジメる側い回ります。また、極端な場合には攻撃的になっていくのも、ま
ま見られる現象ではないでしょうか。

 とにかくにも、今回の事件でも“家族”の意味や存在に関して考えさせられ
ました。どうも仄聞するところでは、今年の夏の目玉映画は殆どが“家族”を
テーマとして扱ったものだとか。どうも人の悩みや喪失感は、人を愛すること
や愛されることによってしか埋められないもののようです。やはり、最後に残
る人生の力は「愛」なのです。

□■□ 後書きのつぶやき□■□----------------------------------------
「ふじみ野のプール事故に思う」

 またまた悲惨な事故が――。埼玉県ふじみ野市の市営プールで7月31日、ふ
たの外れた吸水口に戸丸瑛梨香ちゃん(7つ)が吸い込まれ、亡くなるという
事故がおきた。

 自分も幼い子供をまだ育てているので、しばし言葉を失うし、なぜこんな単
純な事故が起こるのかとも思います。この種の話の後は必ず、管理責任がどう
かという議論が起きるが、そうした検証だけで済まされるような単純な話でも
ないような気がするのです。

 大人の気持ち、普段の身構えも弛緩してしまっているのです。電車の中でも
何が起ころうと皆さん知らぬ顔。街中で騒ぎが起こっても、女性が暴漢に襲わ
れたとしても、助けようとする人はごく少ないのではないでしょうか。

 昔は、こんなことはなかったと思いますよ。大人の人は確かに恐かったけれ
ど、いざという時は私たちを助けてくれた。半面でたのもしかったし、「子供
を守ろう」という気概にもあふれていたのではないのかなぁ。

 いつの頃からか、みんなみんな「自分がかわいい」「自分さえ良ければいい」
になってしまいました。今回の事故だって、連絡を受けた責任者が機敏な措置
を採っていれば、まず防げた事故でしょう。アルバイトまかせだとか、孫受け
がどうのこうのと言っていますが、そんなことは理由にならない。どこの会社、
官庁だって似たようなことをしているじゃないですか。要は、皆さんが大人の
男としての気持ちを持っているかどうかなのです。

 社会全体が緩い。そして、皆さん自分で責任を取ろうとはしません。誰がこ
んな世の中にしたのでしょうな。自分を含めまして、“大人”の責任は重いと
思います。


  夏山を統(す)べて槍ヶ岳真青なり(水原秋桜子)


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