メルマガ:風のひとり言――マスコミの裏を読む
タイトル:「風のひとり言――マスコミの裏を読む」第49号  2005/11/03


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         「風のひとり言――マスコミの裏を読む」vol.49
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□■□ 「風のひとり言」その49□■□-----------------------------------
「小泉独断内閣の功罪」
様変わりした組閣
様変わりした政治家

 第163特別国会の閉幕を受けて、先月末、第3次小泉内閣が発足しました。
私も最終的には政治部にいた人間なので、“組閣”と聞くと血沸き肉踊る性質
なのですが、どうも最近はいけませんな。従来の派閥均衡や順送り人事は完全
に姿を消した形となり、小泉さんの子飼いの人間だけが重用もしくは抜擢され
て入閣する形になっています。

 今回は個人的にサプライズもないし、これという感慨は特にありません。一
方でけっこう経験のある政策通の政治家を配していますので、世間的には受け
はいいようです。竹中さんや麻生さんの重用、中川昭一氏の農水相への横滑り
などを見ると、どこかヤッカミの声が聞こえてきそうですが、実務家としての
竹中さんにはかなりの能力があることは評価できますし、いい悪いは別にして
も麻生さんの見識も評価していいのかもしれません。中川氏の台頭はちょっと
解せませんが……。

 谷垣財務、小坂文部科学、与謝野金融・経済財政といった顔ぶれを見ても、
かなり政策や実務面でのてこ入れもしている感じがします。これはコレとして
評価しないといけないのかもしれませんね。

 しかし、一方で、この国の政治(まつりごと)の行方とその実質には心配が
ありますなぁ。決して全否定はしないものの、比例トップで入った猪口邦子氏
(少子化・男女参画)がいきなり入閣。この人は選挙運動すらほぼしていない
人ですぞ。昨日も、静岡で私の好きな城内実氏をなぎ倒した片山さつき先生が
これもいきなり経産省の政務官に選ばれた、などというニュースが流布してい
ました。ここまでくると、日本の政治は一体どうなってしまうのかという気が
します。古い派閥政治を多少知っている私としては、ア然とする思いです。

日本の財政・外交・社会保障は
誰が責任を持つのだろうか

 そもそも、これまでの政治家や政治体制を信奉してきた官僚やマスコミから
すれば、小泉純一郎なんて人が総理になり、かくも長くその職になるなどとい
うことは想像だにできなかったでしょう。

 私は、「日本が変わる」という命題の中では、この希代の“変人”が総理に
なったことを基本的に歓迎した一人です。しかし、任期4年半が過ぎ、来年の
9月をもって辞任すると表明しているこの人の業績は、やはり手放しで誉めら
れる部分ばかりではないと思います。とにかくも心配なのは小泉以降です。小
泉さんはあらゆる意味で“一代限り”の資質でしょうから、いくら小泉配下、
チルドレンといってもその実力は知れている。そうなると、この国の財政、外
交、そして社会保障政策はどうなってしまうのかという心配なのです。

 ここで手短かに、小泉政治の功罪を現時点でまとめておきます。

 まず何よりも、功として挙げられるのは、文字通り「自民党をぶっつぶした」
ことでしょう。橋本派は見るかげもなくその実質を失いましたし、ミスター自
民党とでも呼ぶべき重鎮は何人も党を去りました。今また小泉さんは揺さぶり
をかけていますので、今後も解党が進むことでしょう。少なくとも当分は、元
に復さないと思います。

 国民に益のない派閥均衡、順送りの政治がなくなったこと。また、そこに絡
む利権政治の温床だった族議員がほぼ形をなくしたことは、最大の功績といっ
ていいかもしれない。しかし、物事には何でも表と裏があります。政治を分か
りやすくしたとの意味で、この人ほどの力量を発揮した人はいませんが、それ
をヨシとしない人もたくさんいるハズなのです。これは政治家でも官僚でも同
じ。またいつか、どこかで揺り戻しのようなものが来る気がしています。その
一方で少なくとも、今の小泉チルドレンが今後勢力を今後伸ばし続けることは
ないでしょう。私はそう思います。

 罪の方をまたいくつか、象徴的に示しておきます。これはまず、ポピュリズ
ム基盤に乗った政治家として、人気取りのために田中真紀子氏を重用したこと。
一方で、真紀子さんの力がなければこの人が総理・総裁になることはできなか
ったのも事実でしょうが、それにしても外務省の出直しが結局できなかったこ
となど、悔やまれる諸点がいくつもあるように思います。

 それからもっともっと大切なことは、日本の財政・外交・社会保障にキチン
とした道筋をつけていないことです。選挙での大勝を受けるように、急に増税
の論議が上がってきています。これは当然、予想されたことでもあるのですが、
増え続けた国・地方の借金は小泉内閣でむしろ増え方が増しているのです。ど
うすればいい、ということなのか、そこでは悪者になることも辞さないほどの
リーダーシップが求められます。小泉首相はそれができなかったと言えるので
はないでしょうか。

 拉致問題を含む北朝鮮問題も同じ。確かに入り口をこじ開けて中に数歩入っ
たことは事実でも、肝心の目的地にはまだいくらも近づいていないのが現実な
のではないか? 賛同してくれる方も多いはずです。

 社会保障政策に至ると、もっと目もあてられない。破たんが見えている年金
制度。医療・介護保険の組み直しも早急に手をつけないといけない問題に思え
ます。

 小さな政府、成果主義の風潮に基本的に盾をつくものではありませんが、し
かし、日本の良俗や日本人の心情をそこに重ね合わせると、何か寒い風が吹い
ていくような気もしてならないのです。変革に非情さは必要かもしれませんが、
それは民に及ぶものであってはならないと思います。最近は少しずつ、小泉首
相の手法に危惧を感じ出している、私のひとり言ですが……。

□■□ 後書きのつぶやき□■□----------------------------------------
「情報保護に行き過ぎはないのか?」

 文化の日。日本はもともと、非情に文化的な国であることは疑っていません
でしたが、その質ということになると「?」と思うことも多い今日このごろで
すね。

 特に言葉の問題。その変質がはなはだしいことを殊に強く思います。言葉の
活力がなくなれば、その国の文化もまた、衰退していくのではないでしょうか。
近くの工事現場にある注意表示の看板。「つい落事故を起こさないように」。
思わず「ウッカリどこかに落ちないように気をつけろ、ということだろうか?」
と思いましたが、これは墜落事故のことなのですな。気がつくまでしばらく時
間がかかりました。

 個人情報保護法の施行を受けて、過剰な運用が問題になっているようです。
病院が警察の照会に答えないということも困り物ですが、報道の現場でも、警
察が被害者の名前を人権を盾にして明らかにしないケースがかなり出ているよ
うです。情報の根本のところが隠されてしまえば、真実の追求に大きな障害に
なることは自明です。これは大きな問題。つまり、権力側の恣意的な運用の恐
れもかなりあるからです。

 この国の権利と義務の問題、今一度見直して考えてみる必要があるのではな
いでしょうか。

 アッと言う間に数カ月が経ってしまいました。一度は落ち込んでばかりだっ
たのですが、少しづつ持ち直してきているようです。社会に対しても悲観して
ばかりしてはいられませんから、また皆さんと考えるようにしませう。チョコ
チョコと発信をしますので、よろしくお願いします。

  枝のべて水も燃えゐる紅葉かな(秋桜子)

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