メルマガ:風のひとり言――マスコミの裏を読む
タイトル:「風のひとり言――マスコミの裏を読む」第46号  2005/04/14


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         「風のひとり言――マスコミの裏を読む」vol.46
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□■□ 「風のひとり言」その46□■□-----------------------------------
「海老沢前会長に退職金払われず?」
情緒に流された
攻撃は止めるべきだ

 いささか旧聞に属してしまうのですが、4月1日の東京新聞朝刊。1面トッ
プの記事として「NHK海老沢氏の退職金払わず」という見出しが踊っていま
した。もちろん、言わずとしれたNHK前会長の海老沢勝二氏に対する退職金
不払いを、NHKが組織の方針として固めた、とするものです。まさか、エイ
プリル・フールではないと思うので、東京もしっかりソースの話を取ったうえ
で記事化しているものと想像します。

 もう少し内容に立ち入ると、政治部出身の海老沢氏はNHK副会長を経て9
7年に会長に就任し、3期7年半にわたって務めたとのこと。こうした業績に
対して、副会長時代を含めて退職金は1億円を少し超えるぐらいと言われてい
ます。

 ところが、改選時期を迎えた7人の理事全員の交代とともに、前会長に対す
る不払いの方針を固め、経営委員会に報告するというもの。続報は1、2本し
か見ていませんが、理事の交代は既定のことながら、この退職金の扱いをめぐ
ってはまだ完全には方針は決まっていないようです。

 しかし、しかしです。私はこの話はかなりオカシイと思うのです。なぜなら、
今回のNHKの一連の不祥事、特に元チーフプロデューサー氏による番組制作
費の詐取事件などに関しても、前会長に監督責任はあるでしょうが、直接の犯
罪加担者ではありません。こうした事件を起こす土壌があったことや、その後
の対応のまずさ、国会での一連の誠意のない回答などに、道義的な責任を求め
ることはできても、それは直接的な制裁を正当化するものではないハズです。

 もしNHKが、「ここで退職金を本人に辞退させれば、国民の怒りも幾分か
は和らぐハズ」などと考えていたら、それは姑息以外の何物でもない。しかも、
不払い(この場合は退職金)の理由のないところで、規程のある権利としての
退職金がもらえないとすれば、それはまさに人権侵害であると思います。

 日本人には情緒的な面があることは否定できない事実でしょう。池に落ちた
犬に石を投げるのは、誰にとっても快感でしょうが、本人の業績や成果を全く
無視して結果論だけで断罪するのは止めたほうがいい。西武の堤さんも今は非
難の大合唱ながら、つい半年以上も前に同じことができたマスコミ人がいたで
しょうか。胡散臭さは多くの人が感じとっていたでしょうし、事実、犯罪の臭
いを嗅ぎ分けていた記者もいたはずですが、まともにぶつけられた人間はいな
かったのです。

あなた方はそんなに
身ぎれいなのですか

 NHKの問題では、先週の『週刊文春』(4月14日号)で、現役の経理部
員であるという立花孝志氏という人が裏金の作り方や使い道を暴露していまし
た。興味深く読んだものです。しかし、私はこうした記事を読んでも「だから
NHKは…」とは思いませんね。NHKに多くの友人がいるからでもないので
すが、似たようなことはどこのマスコミでも、恐らく商社やメーカーでも行わ
れているハズです(「そんなことは断じてない!」という方がいればゴメンナ
サイ)。

 事実、私だって通信社にいた時に、カラの領収書をきっていくばくかのお金
を受け取ったことは何回かあります。誤解のないように言っておきますが、自
ら策してやったことではなく先輩からの申し送りです。それも1回、1万数千
円の単位でした(人によってはもっと請求していた人もいたようですが)。

 つまり、使途や名目が決まっているお金やその使い方だけで組織が成り立っ
ているわけではないこと。そこに、この種の“犯罪的行為”が入り込む余地が
あるのですが、誤解を恐れずに言えば、こうした行為がすべてなくなることは
あり得ないと思います。しかも、もっと組織立った大きな使途不明金、ムダ遣
いといったものも、どこの組織でも多かれ少なかれあるように思いますが、ど
うでしょうか。

 一番恐ろしいのは「アイツもやっていること」と不正に慣れてしまうことで
あり、公私の別や思慮をなくして多額のお金を私することです。行為の可否云
々より、程度の問題だと私は思うのです。エッ? お前は犯罪を認めるのかっ
て? そうじゃないのです。すべての人は「私は身ギレイにしている」といっ
て、この世が成り立つものかと言いたいのです。

 人の欲望は限りがない。だからこそ、自制と適切な判断力が求められるのは
言うまでもないこと。「これ以上はやってはいけない」という思慮分別という
のは、きちんと躾や教育を受けた人ならきっと身に付けているはずのものと思
うのです。私の経験で考える限りは、マスコミの人間はほぼこの思慮分別があ
ったと思うのですが……。でも、NHKもここまでの大金をキックバックさせ
ていた人間がいるとは、私も知りませんでしたなぁ〜。みな、同じ穴の貉なが
ら、同じ貉なら人をだますのではなく、信頼をつなぐためにお金を使うのが筋
だとは思います。批判は覚悟の上の私のひとり言ですが……。
□■□ 後書きのつぶやき□■□----------------------------------------
「天変地異の不気味」

 「そう言えば、最近メルマガ届きませんね」――ついこの間、久しぶりに電
話をくれたかつての後輩から言われた言葉です。飲みに誘われたのですが、私
の近況も気にかけてくれているようでした。

 そうです。いつものこととは言いながら、また2カ月ほども間を空けてしま
いました。基本的には自分の身辺が慌しかったことが理由の大元。仕事や日常
の些事にかまけてしまい、自分のことで精一杯というのが実情でした。そんな
ことを言っていたら、季節は冬からすっかり春に。寒さは大の苦手なのでこの
生命力は救いなのですが、世の中にはノンビリとはいかない大きな動きが渦巻
いているようです。

 気になるのは天変地異ですね。地球の歴史は大きな流れと年月でいえば、常
に天変地異と呼べるかもしれません。しかし、それにしても不気味な地震の多
さ。つい先日(4月11日)も早朝に千葉北部で震度5という地震があり、そ
の前の九州の奴も今までにない北部という地理に対してビックリしました。世
界的にも多発は止まりません。

 少しだけ警告を発しておくと、毎年起こる洪水の被害や気候の極端な変動は、
やはり人為的な要素も大きく関係していると思います。オゾン層を破壊するフ
ロンの放逐に、日本のメーカーはあまり熱心ではありませんでした。今ごろに
なって“ノンフロン冷蔵庫”などと騒いでいますが、これは時期が10年遅い。
少なくともヨーロッパ諸国は、もっとこの問題を真剣に捉えています。産業最
優先の姿勢は、どこかでヒトの生命を奪っていくはずです。

 それと森林の破壊。これも深刻な問題でしょうね。日本もともかく、東南ア
ジア、そして南米アマゾンの熱帯雨林の伐採は、気候を大きく変えてしまうこ
とはハッキリしています。マングローブの森がなくなることは、生命の源を奪
うだけでなく、天候にも大きく作用することは自明です。

 もういい加減に、自然破壊に歯止めをかけるべきではないか。日本人は公害
の恐ろしさを知っているわけですから、もう少し先鋭的に国際世論をリードし
てもいいと思うのですが、そうはならないでしょうね。何といっても、そこら
中にゴミを投げ散らかして、恬として恥じない国民ですから……。大きな道路
の中央分離帯にある植え込み。ここを見ると、よ〜く分かりますよ。

   ちるさくら海あをければ海へちる(窓秋)

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