メルマガ:風のひとり言――マスコミの裏を読む
タイトル:「風のひとり言――マスコミの裏を読む」第36号  2003/10/23


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         「風のひとり言――マスコミの裏を読む」vol.36
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□■□ 「風のひとり言」その36□■□-----------------------------------
「自民党はどこへ行くのだろうか」
政権担当能力には疑問
しかし、民主進出の芽も

 私は今、飲み屋でもそうだし、親しい人に会う度に口走っているのが「今度
の選挙は面白いよ」ということ。全体に小ぶりになっている政治家や、崩壊寸
前の政党政治の中でも、やっとというかまともな形で“政権交代”の可能性が、
わずかながら生まれていることからです。

 こんなことをいうと、「お前は民主党びいきなのか」と問われてしまいそう
ですが、実は全然違います。まず菅さんという人が好きではないし、政党の人
的構成という意味でも滅茶苦茶だと思っています。何しろ、旧社会党の左派か
らバリバリの元自民党員幹部までいるのですから(小沢一郎氏が合流してから
益々その意を強くしています)。

 「じゃ、どうしたいんだ?」と問われても、正直言って困るのです。民主党
の中には個人的に応援したい個性もけっこういます。特に若手でマスコミに名
の売れている政審会長の枝野幸男氏(埼玉5区)、さらに政策通と言われる仙
谷由人氏(徳島1区)、当選前から注目していた1年生議員の長妻昭氏(東京
7区)は名前を挙げてもいいのかな、というところ。しかし、烏合の衆である
ことは間違いないし、鳴り物入りのマニフェストも、高速道路無料化一点だけ
に絞ってみても、私にはどうしても現実的な議論とは思えません。

 今回の解散をある程度予期していた頃、さらに解散が決まった時期において
も、私は「よもや自民党が負けることはあるまいな」と思っていました。まず
何よりも、小泉首相の人気が落ちないこと。これは、私個人としてはその理由
がハッキリとは分かりません。しかし、“次善の選択”として国民が小泉氏以
外の政治家に「何かを変えること。旧来の自民党政治を壊していくこと」を期
待できないことを、本能的に感じているからでしょう。

 一方で、これは少しクロートっぽい感じ方なのですが、どうも小沢一郎・前
自由党党首の個性がスンナリと国民に受け入れられるとは考えにくかったから
です。ただ、これは一般の人には、かえって逆の思いがあるのかもしれません。
政権交代の可能性は、やはり数と政策の力が強い作用を持っているので、まと
まることによって自民党の力に対抗する“形”が出来たと実感する層があるか
もしれないからです(確かに小沢一郎は政策通であるとは思います。勉強も確
かにしている)。

 「しかし、しかしねぇー」というのが、ちょっと前までの私の実感でした。
ところが、その後の世の中の動きを見ていると、情勢はかなり変化してきてい
るとも思えるのです。

候補者調整に失敗すれば
自民党は完全に落ち込む

 一つは、言うまでもなく藤井冶芳・日本道路公団総裁の解任問題です。つい
最近、奥田碩・日本経団連会長も「解任することは法解釈上の問題がある」と
藤井氏の言い分に一分の理があるようなことを話していますが、これはまさに
その通り。手続き的に瑕疵があるのは、もしかして政府・国土交通省の側かも
しれないのです。もっと早く、小泉首相が政治的な決断をして、キチンと辞め
させるべきだったのです。それが出来なかったことに最大の問題がある。これ
は、ハッキリさせておきましょう。

 民主党・自由党合併の日に辞職勧告の会見を設定するなど、姑息なことを考
えるからこんなことになるのです。ご存じのように藤井総裁は扇・前国交相と
ズブズブの関係でした。ここら辺でも自民党=小泉政治が旧保守党を取り込ま
なければならなかった事情が、不幸な影を落とした結果だという気がします。
この際、藤井総裁は道路族の悪玉議員6人の名前を明らかにすべきでしょうな。
そうすれば、確実に自民党の人気は凋落していくハズです。

 もう一つ、重大な影を落としているのが、自民分裂選挙区と政権与党である
保守新党議員との候補者調整の問題。これは深刻です。悪い方にころぶと、自
民党は一気にその勢力をそがれることになるのは間違いないでしょう。

 紙面に限りがあるので、全国に20以上ある自民党分裂選挙区、および保守
新党との競合区5つの中で、特に注目されるところをごく簡単に挙げておきま
しょう。

 分裂選挙で面白いのは新潟5区、静岡1区、福井2区など。新潟5区は言わ
ずとしれた田中真紀子さんの選挙区で、ここでの情勢を改めて述べるまでもな
いでしょう。田中さんが当選することはまず100%間違いないのですが、星
野行男氏というのも確か長岡市長かなんか務めたバリバリの越山会。悩ましい
歴史があるのです(きのう、真紀子さんは正式に離党届けを出したようです。
これで選挙上は問題はなくなりました)。

 静岡1区も面白いですよ。自民党が公認予定の上川陽子氏は前回公認を外さ
れて、無所属で出た経緯がある。その時も党とケンカをしたのですが、もちろ
ん当選したら復党です。それが、今度は自分が前回の憎まれ役の公認候補の立
場に立たされた。田辺信宏氏は県議上がり。地元ではけっこう力があるし、票
が割れれば民主党(牧野聖修氏)が漁夫の利を得ます。

 福井2区も、山本拓という元議員(2回当選)に、平泉渉(元経企庁長官)
という良く知られた大物が無所属で対抗する形。これもちょっと異例の格好で
しょう。私が良く知っている牧野隆守氏はどうも恐れをなして逃げ出したよう
ですね。選挙は元々強くない牧野さんは現実を見据えたのかもしれません。

 それと、これは今回の選挙の一方の白眉になるかもしれないのは、静岡7区
でしょう。ここでは、保守新党の代表である熊谷弘氏と自民党新人の城内実氏
が一騎打ちします。連立の絡みからして、自民党は熊谷氏を公認せざるを得な
いのですが、地元ではむしろ城内氏の若い力に期待する声が強いのです。

 というのも、城内氏は元外務官僚で自民党の候補者選びに公募して選ばれた
人物。また、知る人ぞ知る話ですが、城内・元警察庁長官の子息です。毛並み
も良いし、注目の安倍幹事長や町村総務局長などが相当に肩入れした人物でも
あり、自民党も立候補を黙認せざるを得ない立場にある。本人も「比例に回れ」
などという勧めには全く耳を貸さず、「選挙区で無所属でも出る」と息巻いて
います。

 これは面白いですよぉー。城内氏が当選するようなことになれば(熊谷氏は
節操がないとして、地元では人気急落中)、公党の党首が落選するという前代
未聞のことが起きてしまいます。個人的にはその可能性があるとも思っている
のですが……。

 あと注目区は、同じ自民と保守新党の競合区である東京14区、自民と公明
が競合する沖縄1区などでしょう。字数が足りず解説は出来ませんが、これか
らイヤというほど記事にはなってくるハズです。

 繰り返しになりますが、「国づくりは投票から」が私の持論。酒を飲んで文
句をたれるだけでは日本は変わりません。ぜひ、この際、日本の将来を成形す
選挙にしてください。選挙大好きの私のひとり言ですが……。

□■□ 後書きのつぶやき□■□----------------------------------------
「死刑制度について」

 たまたまなのですが、東京新聞の朝刊(10月21日3面)に死刑制度に関
わる「終身刑」の話が載っていたので、終身刑直接ではないのですが、現行の
死刑制度について少し考えてみましょう。

 東京新聞の記事というのは、オウム真理教の元幹部・中村昇被告(36)に
「終身刑」という言い方で言い渡された「無期懲役」判決が、波紋を広げてい
るという話題です。もちろん、今の日本の刑法に終身刑というものはありませ
ん。ご存じのように、無期懲役の判決が言い渡されても、現実には20年程度
の服役で仮出所してきてしまうのが実態。そこで、この死刑判決と無期刑のあ
まりの乖離を埋める意味で、裁判長がこの“終身刑”という言い方をあえて用
いたというところがミソなのです。

 これはさしずめ、英語でいえばライフセンテンス・ウィッズアウトパロール
(仮出所なき無期懲役)という奴でしょう。アメリカは殺人について、相手が
婦女子であったり残虐の度合いが強いと、この終身刑が言い渡される可能性が
非常に高いのが実態です。私も心情的には、この終身刑が可能なら、日本の刑
罰にも取り入れるべきかなとは思います。

 ところが、皮肉なことに、特にこの終身刑制度を支持しているのは、主に死
刑制度廃止論者だというのです。死刑を廃止するにはまだ、国民感情が熟して
いない。一方、死刑に相当するような極悪非道人が20年足らずで出所するこ
とは、今の刑罰制度に大きな懐疑論(別の意味で)を投げかけています。そこ
で、死刑に代わる“厳罰”として、この終身刑を前面に押し出そうというわけ
です。

 話が長くなるので、終身刑の検討についてはここでは措いておきます。一方
の死刑制度については、私は個人的には「廃止すべきではない」とズッと考え
続けていることを、明らかにしておきましょう。

 理由はいくつかあるのですが、一番に感じることはやはり遺族の感情でしょ
う。私もコトここに至ると、いわゆる応報刑論としての死刑にさほど犯罪を抑
止する力があるとはもはや考えていません。こんだけバカな人間が増えると、
いくら死刑があっても人を簡単に殺す奴は殺すでしょう。しかし、それでも被
害者および家族の無念を思うと、どうしても死をもって償わなければならない
罪というのはあるように感じられるのです。

 一般に、国民の想像力が乏しくなった社会のように思います。特に日本人は、
周囲の人間と“共感”する術を失っているようにも感じられます。子どもを何
の料(とが)もないのに殺された親御さんにしてみれば、その無念さは実に想
像に余りある。私は、その無念さを共有したいと考える人間の1人です。

 もちろん、それでも「人に人を殺す権利などはない!」とする議論があり得
ることは分かりますよ。でも、そういう人も考えて欲しいのは、何時の時代で
も、今現在でも国家権力によって殺されている人は数多存在するという現実で
す。戦争論までは飛躍する気はまったくありませんが、この辺が心情右翼とし
ての私の面目を施すところになるでしょうか。

 それにしても、国会議員有志で作る超党派の「死刑廃止議員連盟」の会長っ
て、誰だか知っていますか? あの亀井静香ですよ。これはホンに笑えます。

今週のことば……「再審請求」
 今回は、不勉強できちんと時事用語を解説することを容赦ください。ついで
といっては何なのですが、きのう最高裁が上告を棄却した、例の東電女性殺害
事件について触れておきます。衝撃的な事件だったので覚えている人が多いと
思います。事件も事件ですが、この件で捕まったネパール人のゴビンダ・マイ
ナリ被告(37)については、一審で無罪、高裁で逆転判決という異例の展開
となりました。
 事件については、その特異性と同時に、被告の動機やアリバイにまだつぶし
きれていないところがあること。状況証拠だけで起訴しているところなど、刑
事事件の裁判としてはかなり弱いところがあるような気がします。この件でゴ
ビンダ被告の無罪を終始主張し続けている作家の佐野真一さんの本などをよく
読むと分かるのですが、どうも裏に何かあるような気がします。この東電の女
性社員の“客”になった人に、有名財界人がいたことも当時、話題になってい
たところ。私も個人としては、冤罪の匂いはするなぁ――などと思うのです。
ゴビンダ被告の代理人は再審請求をすると述べていますが、再審が認められる
のは“新証拠”が出た時だけです。この事件はこのまま闇に葬られてしまうの
でしょうか。日本の裁判制度について、今一度考えて欲しいところです。

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