メルマガ:風のひとり言――マスコミの裏を読む
タイトル:「風のひとり言――マスコミの裏を読む」第35号  2003/09/11


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         「風のひとり言――マスコミの裏を読む」vol.35
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□■□ 「風のひとり言」その35□■□-----------------------------------
「転換期の政治に何を期待するか」
小粒になった政治と政治家

 いささか以前の話になってしまうのですが、9月4日の毎日夕刊コラム「論
外ですか?」で、論説委員の松田喬和氏が興味深い意見を書いています。

 まずは、今回の自民党総裁選の話が枕でした。。亀井前政調会長、藤井孝男
元運輸相、高村正彦元外相といったところで、本当の大物と呼べるような人物
が出ているわけではない。以前は総裁選は「自民党最大の権力闘争だった」の
ですが、今回はそんな匂いも乏しく、今一つ迫力に欠けることが一つの指摘で
す。実際、藤井さんあたりは知っている人も多くはないでしょうし、悪い印象
は持たれないかもしれませんが、かといって期待感と呼べるほどのものをにわ
かに持つことはむずかしい状況でしょうね。

 亀井静香は論外。私はこの人の悪人ずらが本当にキライです。また、悪い噂
も随分知っているので、こういう人に期待してはいけないと思う。かつての盟
友である石原都知事あたりが何のかのと言っているようですが、しょせん同じ
穴のムジナですよ。仮面をかぶって色々なことを言うでしょうが、あまり信用
しないように個人的には進言しておきます。

 高村氏はいいですね。私は、自分が政治記者をやっていた時から、この人は
知性派だと思っていました。弁護士出身。金の匂いもしない人ですし、スポー
ツマンでもあるので、潔さも持っているように推量しています。しかし、いか
んせん小派閥の長ですから(元三木派)、実質的な力を持つようになるまでに
は、それこそ小泉さんのようなウルトラCがないと無理でしょう。それはそれ
で、次代を担う政治家として期待を寄せたいところです。

 話を元に戻していきましょう。

 いい悪いは別にして、かつては自民党の各派閥が自派の長を総裁にするため
に、死闘とも呼べるような闘いを演じたものです。中曽根首相の後を受けて行
われた総裁選で、竹下、安倍、宮沢といった大物が暗闘を繰り広げたことは記
憶に新しいことですね。しかし、そうした雰囲気は、今回の総裁選には全くあ
りません。

 また、派閥の弊害は認めるにしても、以前はその派閥が最大の人材育成機関
であったことは事実。さらに同士的結合は、いまの数倍も強かったことは松田
論説委員も指摘する通りです。今回、橋本派が内部分裂し、あおりを食った野
中広務元幹事長が議員を引退する騒ぎにまで発展しています。まぁ、野中氏の
引退劇は単に派内の確執というだけではなく、利権を巡る争いがその根幹に強
く巣食っていると思いますが……。青木さんは自分の利権を温存しようとした
わけですし、野中さんはそれが難しくなったので、「怒髪天をついた」という
わけでしょうね。

 派閥の姿が形を変えたり、実質が変わっていることはいいことなのかどうか。
にわかには判断できません。しかし、かつてのような一枚岩はもうとうになく
なっていると考えた方がいいでしょう。そこで、今回の総裁選は迫力を欠いて
しまうし、争点や政策論争が始まる前に「小泉有利」とシラケタ展開になって
しまうわけです。

二世議員が日本の明日を
変えることができるのか

 話の核心が遅れてしまいましたが、私の言いたいのは以下のようなことです。

 つまり、毎日のコラムでも指摘していたように、今回の立候補者の大半は世
襲議員です(小泉総理ももちろん)。しかし、反対に黒幕的存在と言われてき
た親小泉の山拓をはじめ、青木幹雄参院幹事長、反小泉の野中元幹事長、古賀
誠前幹事長もすべて二世議員などではないのです。すべての人物が、苦労を重
ねて這い上がってきた“たたき上げ”であることは、一体何を象徴しているの
でしょうか。

 こうした大変動期、大転換期に“人物”を求められない組織は、衰退してい
くだけであるのは自明の理。さらに、かつての派閥が持っていたような人材育
成の機能が働いていかないとなれば、これはさらに危機的状況を招来すること
につながっていくと予想できます。

 手放しで誉めるわけではないものの、私は野中広務氏が持っていた強い信念、
政治信条といったものは好きでした。また、その反骨精神にもいい意味の頑固
さを見ることが出来たと思います。これは、九州男児の代表のような古賀誠・
前幹事長もそうでしょう。

 対して、小泉さんあたりはどうなのか? 後に引かない頑固さのようなもの
はあるのでしょうが、それが知性・洞察力・判断力といったものに担保されて
いなければ、決して政治はいい方向には向かわないでしょう。どうも、最近は
そうした危惧を覚える機会が多いのです。

 確かに、多くの国民もそうした危惧は感じているのでしょうが、いくら見渡
しても後事を託せるような“人物”は自民党にはいない。そこで、ああした異
常な人気が出てきてしまうということなのでしょう。私は個人的には、そうし
た理由が人気の源泉ではないかと考えています。

 政治は政党政治が基本です。さらに、良い悪いは別にしても、派閥が持つ人
を育てる機能が働かなくなれば、自民党はもう完全に瓦解を始めているといっ
ていいかもしれない。民主党がどこまで出来るかは分かりませんが、自民党的
な派閥政治がもはや機能しないということならば、そこに代わる2大政党制な
り健全な野党機能といったものを育てていかないといけません(個人的には難
しい感も持ちます)。

 言いたいのは、自民党は危機にあるということ。しかし、そこに真に気づい
ている人は少ないということです。総裁選の後に、一度大きなリシャッフルと
呼べるものが行われないと、民主主義自体も危機に瀕していくと考えていいの
ではないでしょうか。一応、元政治部記者だった私のひとり言ですが……。

□■□ 後書きのつぶやき□■□----------------------------------------
「雑談」

 本当にとりとめのないことを書いてしまいます。今日は中秋の名月とか。お
月見までの風雅心はないものの、秋の訪れを肌で感じたり、ちょっと持病の憂
うつ症が心配になったりと、個人的には変化のある日常です。

 きのうは久しぶりに上野の森に行って、美術展を一つだけ観てきました(ト
ルコ三大文明展)。展覧会そのものも大変に豪華な装飾品に驚いたりと、面白
いものだったのですが、会場である東京都美術館の周りに足の踏み場もないほ
どのテント村が出来ていることの方に、むしろビックリです。いわずとしれた
ホームレスの人たちの住居。たまに顔を見る人は皆、こざっぱりとしているし、
身なりもそれとすぐに知れるようなものではないのですが……。

 きわめて面白かったのは、あるテントの前にきれいな盆栽の鉢植え、小さな
花植えのプランターが何個も整然と並べられていたこと。12、3個ほどもあ
ったでしょうか。これはビックリしましたね。こうした生活を送っていても、
それこそ風雅の気持を忘れていないわけです。あるいは、「お前らのようにア
クセクはしていないぞ」と自己主張しているのかもしれません。

 ホームレスの世界にも階級や派閥のようなものは存在するというし、先ほど
の政治の話ではありませんが、人間というのは集団を作ればやることは決まっ
てくるのかもしれません。普段の自分の生活や意識を、改めて振り返らせてく
れる経験でした。

今週のことば……「ロードマップ」
 中東紛争に絡んで、アメリカとEU、国際連合、ロシアが今年4月末、イス
ラエルとパレスチナ自治政府に提案した和平案のことです。
 計画は3段階に区分されていまして、まずパレスチナ側が暴力の即時無条件
停止を宣言。その上で、イスラエルの側が00年9月の大規模衝突以降にヨル
ダン川西岸やガザ地区で占領した地域から軍を撤退させ、すべての入植活動を
凍結すること。
 さらに第2段階では今年6月から12月にかけて暫定的な国境線を持つパレ
スチナ国家を樹立。04〜05年の最終段階でパレスチナ国家とイスラエルの
間で恒久的な地位協定を結ぶこととしていました。イスラエルは一部留保の上
で提案を受け入れることを決めたため、歴史的な出来事と位置付けられたので
すが、その後もパレスチナ過激派ハマスによる自爆テロ、イスラエルの報復攻
撃がむしろ勢いを増して、泥沼の状態に陥っていることは皆さんご存じのとお
り。血で血を洗う対立はかえって激しさを増しているといえるでしょう。

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