メルマガ:仮想力線電磁気学
タイトル:仮想力線電磁気学  2005/04/16


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 N┃→          仮想力線電磁気学
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●第96回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その26)

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当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。

さて、今回も遠隔作用と関連のある話です。
前回の続きで、エネルギー配分が偏る話についてです。

古典的な近接作用の理論であるマックスウェル電磁気学では、エネルギーが極端
に偏って配分される現象は説明できません。
そのため、量子論というトリックが必要になるわけです。
今回は、その説明の第三回目です。

なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。

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108.配分のされ方が問題
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今回は、前々回示した三つの欠陥のうち、前回残した「第二の欠陥」について考
えてみたいと思います。
ちなみに、第二の欠陥とは、下図の問題において、「エネルギーは物体Bだけに
配分されるのではなく、ごくわずかながら物体Cにも配分される、ということが
説明できない」ということでした。

[図94]
     B
     ○

   ○                 ○
   A                 C

エネルギーが、一つの粒子ではなく、複数の粒子という形で存在するという考え
方により、複数の物体にエネルギーが配分されることが可能になることは、前回
も説明しました。
このことから、第二の欠陥についても解決されているように思えるかもしれませ
んが、何か一つ重要なことを忘れてはいないでしょうか?
それは、エネルギー配分のされ方の問題です。
単に、複数の物体、すなわち、物体Bと物体Cの両方にエネルギーが配分されれ
さえすればよい、というものではありません。
物体Bに極端に多く偏ってエネルギーが配分されなければならないのです。
はたして、そのことがうまく説明できるでしょうか?
そこが問題なのです。

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109.作用の強さとの関係
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前回、物体が受け取るエネルギーには、(エネルギーの)粒子の数が関係し、そ
れ故に、粒子の存在確率が関係してくることを述べました。
粒子の存在確率が高い位置(注:正確には「領域」。以下、同様)にある物体ほ
ど、多くのエネルギーを受け取ることができることになるわけです。

しかしながら、粒子の数が関係してくるのは、物体が受け取るエネルギーだけで
はありません。
実は、物体が受ける作用の強さも、粒子の数が関係してくるのです。
強い作用を受けるためには、粒子の数が多くなければならず、それ故、存在確率
も高くなければいけません。
作用が弱い場合は、その逆です。

したがって、各物体が存在する位置における存在確率は、各物体が存在する位置
における作用の強さに似合う値でなければならないのです。

だとすると、物体Bと物体Cとがそれぞれ受け取ることになるエネルギーの大き
さの差は、せいぜい、各物体が存在する位置における作用の強さの差から推測さ
れる程度にしかならないのではないでしょうか?
作用の強さには、物体Aからの距離が関係してきます。
となると、エネルギーの大きさの差は、せいぜい、距離の違いから推測できる程
度にしかならないのではないでしょうか?

もしそうなら、困りますよね。
はたして、どうなのでしょう?

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110.受け手が単数か?複数か?
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もう一つ、心配事を指摘しましょう。
それは、エネルギーを受け取る物体の数が、単数の場合でも、複数の場合でも、
うまく説明できるのか?、という疑問です。

下図の問題を見て下さい。

[図96]

   ○                 ○
   A                 C

これは、エネルギーを受け取る物体が単数の場合ですよね。

これに対し、これまで取り上げてきた図94の問題は、複数の場合です。

そこで、思い出していただきたいことがあるのです。
それは、物体Cが受け取るエネルギーが、図94の問題と、図96の問題とで、
異なることです。

実は、これが問題になってくるのです。
もし、物体Cの位置における粒子の存在確率が、図94の問題と、図96の問題
とで、同じだとしたら…
物体Cが受け取るエネルギーは、図94の問題と、図96の問題とで、同じにな
ってしまうのではないでしょうか?

もしそうなら、これまた、困りますよね。
はたして、どうなのでしょう?

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111.確率と実際の結果との違い
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実は、上で述べた二つの心配事は無用です。
それが(粒子の存在)確率のおもしろいところなのです。
以下に、その理由を説明しましょう。

まず(再)認識しなければならないのは、「確率」は「実際の結果」とは異なる
ことです。

たとえば、コインの表・裏が出る確率がそれぞれ50%だったとしましょう。
すると、確率的には、表が出るのも裏が出るのも半々ということになりますね。
ところが、実際の結果は、表か裏しかないのです。
つまり、100%か0%しかないのです。
これが「確率」と「実際の結果」との違いです。

同じことが、エネルギーの粒子にも言えるわけです。
個々の粒子について考えてみて下さい。
一つ一つの粒子は、どれも、物体Bか物体Cのどちらかにしか受け取られないの
です。
つまり、ある粒子を一方の物体が受けとってしまうと、もう一方の物体はその粒
子を受け取ることができないのです。
ですから、結果は100%か0%なのです。
たとえ(存在)確率がいくらであったとしても。

まず、このことを理解してください。

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112.個数ではなく時間
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次に理解しなければならないのは、存在確率の意味です。

ここで、こんな問題を考えてみましょう。
8個の玉が入っている箱があるとします。
箱の内部は二つの領域からなり、一方を領域B、もう一方を領域Cとします。
一方、玉は、自力で、箱の中を動き回れる(移動できる)とします。
このため、領域Bと領域Cとを行き来することができます。
そして、領域B・領域Cにおける玉の存在確率が、それぞれ75%・25%であ
るとします。

さて、そこで重要になってくるのが、75%・25%という数字の意味です。

これは、「全部で8個ある玉のうち、75%(=6個)が領域Bに、25%(=
2個)が領域Cに存在する」という意味ではありません。
つまり、「玉が、領域Bには75%にあたる6個、領域Cには25%にあたる2
個存在する」という意味ではないのです。

では、どういう意味なのかというと、個々の玉、すなわち、任意に選んだある一
つの玉が、領域Bに存在する確率が75%、領域Cに存在する確率が25%であ
る」という意味なのです。

つまり、存在確率とは、「全ての玉の個数に対する、そこに存在する玉の個数の
割合」のことではなく、「ある一つの玉が、そこに存在する時間的な割合」のこ
となのです。
ですから、ある時間(時刻)において、領域B・領域Cに存在する玉の個数が、
6個(=75%)・2個(=25%)でなくなってもよいのです。
たとえば、7個・1個とかになってもいいわけです。
この場合、個数の偏りが、存在確率の偏りよりもひどくなっていますね。
とにかく、そういうことが可能なわけです。

さて、同じことが、エネルギーの粒子についても言えるのです。
「ある位置における粒子の存在確率」とは、「全粒子数に対する、そこに存在す
る粒子の個数の割合」のことではなく、「ある一つの粒子が、そこに存在する時
間的な割合」のことなのです。
ですから、物体B・物体Cに受け取られることになる粒子の個数の割合は、存在
確率と等しくなくてもいいのです。
つまり、より偏った値とかでもいいわけです。
となれば、エネルギーが大きく偏って配分されることがあってもよいことになり
ますね。

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113.先取りの優位性
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さて、三つ目に重要なのは、先取りの優位性です。

たとえば、こんな問題を考えてみましょう。
いま、「あたり」と「はずれ」がそれぞれ一本ずつのくじがあります。
このくじを、BさんとCさんの二人が引く問題を考えます。

もし、二人が全く同じ条件でくじを引いたならば、「あたり」が出る確率はどち
らも50%で同じになりますね。

ところが、ルールを次のように変えると、話が違ってくるのです。
まず、Bさんが先にくじを引く。
そして、Bさんが「あたり」を引いたら、その時点でくじ引きを終了する。(つ
まり、Cさんはくじを引けない。)
Bさんが「はずれ」を引いたら、「はずれ」くじを戻し、改めて、Cさんがくじ
を引く。
そして、Cさんがくじを引いたら、「あたり」・「はずれ」に関係なく、その時
点でくじ引きを終了する。
このルールですと、Bさんが当たる確率は50%で同じなのですが、Cさんの当
たる確率は、( 1 - 0.5 )・0.5 = 0.25、すなわち、25%になるのです。
なんと、Bさんの半分になり、差が出てしまいましたね。
つまり、BさんがCさんの二倍になるのです!

このように、ルールによっては、先にくじを引く方が有利になることがあるので
す。
これを『先取りの優位性』と呼ぶことにします。

もし、Bさんが「あたり」を引いても、「あたり」くじを戻し、Cさんがくじを
引くことができるルールなら、平等になるはずです。
ところが、Bさんが「あたり」を引いてしまうと、Cさんはくじを引く権利を失
ってしまうルールのために、不平等になるわけですね。

Cさんが「あたり」を引くためには、Bさんが「はずれ」を引いてくれなければ
なりません。
ですから、後からくじを引くCさんにしてみれば、先にくじを引くBさんが「あ
たり」を引いてしまうことは、まさに「あたり」くじを『横取り』される行為に
なるわけです。
そして、このことは、すなわち、後から取る者が、先に取る者に『横取り』され
ることが起きることを示しているのです。

ここまで来ると、もう話が見えてくるでしょう。

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114.横取りが起こる理由
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以上の話を総合すると、エネルギーが極端に偏って配分される現象が説明できる
ことがわかるのです。

物体Bは物体Cよりも(物体Aに)近い位置にありますね。
一方、エネルギーの粒子は、物体Aから放出されます。
ですから、物体Bが粒子を『先取り』することになります。
すると、先の『先取りの優位性』の話からもわかるように、後から粒子を受け取
ることになる物体Cは、粒子を物体Bに『横取り』されて、ほんのわずかな数の
粒子しか受け取ることができないのです。
このため、エネルギーを『横取り』されてしまうのです。

すると、以前も説明したように、エネルギーが極端に偏って配分される現象が起
きるわけです。

以上で、第二の欠陥を含む全ての欠陥が解決されました。

ついでに、ここでもう一つ気付いてほしいことがあります。
それは、物体Cの位置における存在確率が、図94の場合と、図96の場合とで
は、異なることです。
図96の場合と比較すると、図94の場合は、物体Bに粒子を先取りされ、横取
りされてしまうために、物体Cの位置における粒子の存在確率が低くなってしま
うのです。

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115.トリックを不要にするには…
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以上の話から、エネルギーの粒子という考え方を正当化させるのに、(存在)確
率という考え方がいかに有効かがおわかりになったでしょう。
また、さらに、近接作用においては、エネルギーの粒子という考え方がいかに有
効かもおわかりになったと思います。

とはいえ、エネルギーの粒子も、(存在)確率も、近接作用を救うための、苦し
紛れの御都合主義的トリックのような感じがします。
現に、アインシュタインは、「神はサイコロ遊びをしない」とか、「誰も見なけ
れば月は存在しないのか?」などと言って、(存在)確率という考え方を批判し
続けました。

ならば、こうしたトリックを使わずに済むためには、どうしたらいいのでしょう
か?
答えは簡単!
近接作用を捨てて、遠隔作用でいけばいいのです。

「ならば、なぜ、わざわざ、こんなトリックの話を長々としたのか?」と言いま
すと、定説となっている近接作用との対応という形で説明した方が、遠隔作用が
理解しやすくなり、また、遠隔作用が近接作用に取って代われる理論であること
を認識してもらいやすくなると思ったからです。
そして、そのためには、近接作用におけるトリックを知っていただく必要があっ
たわけです。

というわけで、次々回からは、ようやく、遠隔作用の話に戻ります。

なお、次回は、少し脱線して、物理学全般に関係のある漫談(?)をする予定で
す。

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 発行者 : tarkun(たーくん) mailto:tarkun2@yahoo.co.jp
 配信  : MailuX http://www.mailux.com/

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