メルマガ:ちょっとだけHなお話し
タイトル:ちょっとだけHなお話し3  2003/05/01


鬼のニノミヤ3      

今日のニノミヤはなんか朝からキョドってた。白い髪の毛がかなり自然じゃなく逆立
ってるし、部屋ん中いったりきたりしててちょっとウザ。
「なんかヤーな予感がすんだよ」
とか聞いてないのにブツブツ言ってたり。
あたしは加奈先輩のことがあってからニノミヤを意識しないで見ることができなくな
ってた。こいつは加奈先輩の下僕だから、呼ばれたらいくしかない。命令されたらイ
ヤでも従うしかない。本人も、
「もう嫌だーーー!」
って、しょっちゅー叫んでるけど。でも、この、目の前にいるニノミヤは加奈先輩と
ヤッテるニノミヤだ。そんであたしとはなんのカンケーもない。いや、全然関係なく
もないか。でも加奈先輩ほどニノミヤと関係が濃いっつーか深いっつーか、そんなワ
ケじゃない。
それにあたしは別にニノミヤとやりたいワケじゃない。いや、全然ダメってワケじゃ
ないけど、イヤってワケでもないけど、ってゆーか加奈先輩と一緒にしてほしくない
ってのもあるし、別に別に加奈先輩をバカにしてるってコトでもないし、ってゆーか、
ってゆーか、ってゆーか…。
とにかくあたしの心ん中はかなりフクザツで、あたしの心が読めるニノミヤはあたし
が考えてるコトは全部わかってるハズなのに、そのコトについてはなんにも言わない。
つまり、それはあたしのコトなんかなんとも思ってないってことなんじゃないかって
思ったり。
とにかくとにかく、ニノミヤの顔見るのがツライって思うコトが多い今日この頃。
ひとりになりたい、とかじゃまだなあ、とか思ってもニノミヤはあたしの部屋から出
てかないんでそんな時はあたしが出てくしかない。ふーっ。

「あのう、こんにちは」
外に出ても別にどっか行きたいとこがあるかってゆーとそうでもない。どーしょーも
なくって家の前でタメイキついてたら小っさな男の子に声をかけられたんだった。
男の子はエヘッ、て笑った。ちっさくって可愛いコだ。小学生?後ろを見ると、引越
しのトラックが止まってて、ずっと荷物を家に運びこんでる。
あたしん家の隣に引っ越してきたそのコは、『すずお』って名乗った。子供だから引
越しの邪魔にされてブラブラしてたとこだって言うから、あたしの部屋で遊ぶことに
なった。
ニノミヤがいるけど…普通のコには見えないからいいか。って思ってたら部屋に入る
なりすずおは言った。
「あれェ?ここも鬼がいるね」
ゲッ。なにこのコ、また加奈先輩みたいになんかの生まれ変わりだったりして?
「なんだオメェ?」
ベッドに座ってたニノミヤはすずおをすんごい恐い顔で睨んだ。朝から逆立ってた髪
の毛も量が増えてて総毛立ってる感じだ。
にしても初対面の、それもこんなちっさいコにいきなり『なんだオメェ』はないっし
ょ?
「おい、そのガキの後ろに隠れてるやつ!」
ってニノミヤがすずおの方を指さしたらいきなり煙みたいのが出てきて、でっかいヤ
ツが現れた。
ゲゲッ。またなんだよコイツ!黒い髪の毛の、黒い顔の、黒い着物きた、額からツノ
一本生やしたヤツだった。
「あ、これボクの鬼…」
ってニコニコしながらすずお。黒鬼もその後ろでゲラゲラ笑いだす。
「けっ、家に縛りつけられてるヤツかよ。しけてんなあ」
あっ、ニノミヤむちゃくちゃムカついたカオしてる。
「ケンカしないでよ…ボクこれから隣に住むんだよ?お姉ちゃんに嫌われたくないし
ぃ…」
エ、お姉ちゃんってあたしのこと?
「あ…ねェ、お姉ちゃんって呼んでもいいでしょ?」
自分で言ったことに照れながら、すずおがあたしにお願いするように言った。うーん、
実の弟よりすずおは可愛い。素直そうだし。
すっごくちっさいと思ってたすずおはあたしの一コ下だった。じゃあ明日から一緒に
学校いこっか、なんて話してる間もニノミヤと黒鬼はずーっとにらみ合ってた。殴り
合いでも始まりそうなフンイキだったけど、すずおがちらっと見るたびに黒鬼は手を
ひっこめる。
「ふん、ご主人様の言いなりってかあ?」
ニノミヤもやめればいいのに黒鬼を挑発してる。さっきしけてるって言われたんで怒
ってるらしー。自分だって加奈先輩の言いなりのクセに。ってちょっと思ってたら今
度はニノミヤがあたしをギロッて睨んだ。
「憑いてる女に手も出せねェ腰抜けが、言うんじゃねえよ!」
すずおを後ろから抱きしめながら、黒鬼はまたゲラゲラ笑った。え、なに?憑いてる
女ってあたしのこと?え?なんであたしとニノミヤがそういう関係じゃないってこと
知ってんの?ってかやるのがジョーシキなわけ、この鬼たちには?え?じゃあすずお
はこの鬼とやってんの?え?中一で?マジ?え?ってか男同士じゃん!とかいろいろ
考えてるあたしの顔は真っ赤だったに違いない。すずおも耳まで真っ赤になってた。
「うるせぇ!俺はガキには興味ねーんだ!」
「もう!バカ!消えろよっ!」
と、すずおが怒って叫んだとたんに鬼たちは消えてなくなった。
「あの、お姉ちゃん、あんまりアイツの言うこと気にしないで…」
ホントはすずおと黒鬼のこと、もっと聞きたかったんだけど、おっきな目に涙ためて
る顔見せられて、あたしはとにかくすずおをなぐさめるのだった。
「それと…ボク、お姉ちゃんのこと好きなんだ」
その後、つきあって、って言った。ゲゲゲ。なんか初対面でいきなりコクられてるし。
でもなあ、すずおは可愛いけど頼りなさそうだし、年下つっても一コしか違わないの
に背、ちっさいし。とは言えないから遠まわしに断ったら、
「じゃあ、ボクがお姉ちゃんより大きくなったらいいの?」
なんて、すずおがなんかいっしょけんめーだし、将来有望そうなんで、考えとく、っ
て返事した。悪い気しないしね。

次の日。いちおー約束してたんで、昨日あたしはすずおとのつきあいを断った手前気
が重かったけど、家の前ですずおを待ってた。
すずおは今日初めて転校した学校に行くんだし、不安だろうなって思うと放っておけ
ないし。
「…お姉ちゃん」
後ろからすずおが声をかけてきた。あたしはドキッ!としたけど、なんとかヘイセイ
をよそおって、笑顔で振り向いた。
え?
え?
え?
でえええぇ〜〜〜?
「おねえちゃん、おはよ!どお、似合う?」
って言ってくるくる〜って回って見せたカッコは、あたしと同じ制服だった。
すずお、女の子じゃん!
あうあうしてるあたしを気にしてる風でもなく、すずおはあたしの腕にしがみついて
きた。
「おね〜えちゃん、ガッコいこ!」
どゆこと?すずお、昨日あたしにつきあってほしいって言ったじゃん!でもこのすず
おはどー見ても女の子…あたしのことからかってたワケ?
とか考えながらすずおの顔をじろじろ見てたら、すずおはニコッと笑って言った。
「お姉ちゃん…昨日言ったことボク、本気だからね。お姉ちゃんも約束、忘れないで
よ?」
本気…ってことはつまり女同士で?このコ、レズ?いや、でも昨日の黒鬼の話がホン
トなら黒鬼ともやってるってことになるし、えーっと、えーっと、えーっとぉ…。
「お姉ちゃん、胸おっきいね。ボク、まだぜんぜんなくってさ」
って頭混乱してるあたしにお約束のタッチ。うわぁ!
女の子相手に、胸触られたからって悲鳴上げて逃げるのもカッコ悪いんで、あたしは
すずおの腕を振り払って早足で先に行くことにした。
「あーんっ、お姉ちゃん待ってよーぅ」
恋人に甘えてるみたいな声を出しておっかけてくるすずおに、あたしは振り返ること
ができなかった。なんかコワイから。

ああもう!なんでこーなんの?
あたしのジンセイ波乱って言っていい?

追伸:すずおの名前は漢字で書くと『鈴緒』って言うそーだ。

                                   おわり

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