メルマガ:週刊REOPOLD 
タイトル:PANISHMENT  〜1号〜  2003/02/09


    **********************************************************
        
              週刊 REOPOLD
                  第一号
               
               PANISHMENT
    
    **********************************************************



第一話――


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 


 君は覚えているかい?

 僕がここにいたことを

 君は何もかも壊しつづけてくれたね

 僕が守っていたものを

 だから粛清してあげる

 監視しつづけてあげる

 僕からのプレゼントだよ

 『PANISHMENT』

 君にはお似合いの言葉だよね?

 ――僕は見ているから

 ずっと――みているよ

 


 


 少女は逃げ続けた。

 どこへ行くのか、どこへたどり着くのか

 それさえも分からない。

 理解し得なかった――という表現の方が正しいかもしれない。

 とにかく走り続けた。

 考える暇などなかった。

 考える必要などなかった。

 ただ、逃げ惑うのみ。局地災害とさえ恐れられる『PANISHMENT』

 植え付けられる事実

 しかし……







「餓鬼が……世話かけさせやがって」







「そんな事言ったら、司祭様にきついお叱りを受けるぞ」







「ふん、そもそも何で俺達がこんな事しなきゃいけねえんだ」

 




 

 司祭……様?

 どうして私は……罰を受けなければならないの?

 どうして?

 どうしてなのっ!!?







「おまえの所為だぞ」

 





声を押し殺して泣き出した少女を見て一人の男が諌めるように言った。







「俺かよ。関係ねえだろうが」







「餓鬼、なんて言うからだ」







「妙にこいつに肩入れしやがって」







「肩入れ? 違うな。オレは気に入らないだけさ――まぁ、どうでも良い。早く司祭様に

 報告だ」







「訳わからねえな」







「それはオレも同じさ。司祭様の真意も、そしてそれに従順なお前達も、な」

 




少女を担ぎながら会話をする二人――神官風の男だ。

 深緑の神官服に身を包む二人。

 少女を乱暴に担いだ男を睨みつけ、一言呟いた。

 それは背信を意味するものでもある。







「知らねえぜ? 司祭様には不思議な力があるだろ? さっきの言葉も聞かれたかもな」







「確かに正しい部分もある。だが――全てじゃない」






 

 分からない

 私には分からない

 そんな事はどうでも良いよ

 私をおうちに帰してよ……!!






「ほら行くぞ。先はまだ長いんだからな」






 どうして……

 誰でも良いよ

 誰でも良いから――私を助けて!!!!
    
 







 それでも人々は抗い続けた

 それが『人間』であるという事を証明するかのように

 文明を手に入れたのが今より2600年前。

 その喜びを分かち合った。

 特に栄えを見せたのは工業部門であった。

 森を切り裂き、資源として――

 大気汚染、自然の急激な現象。

 その時はまだ知らなかった。

 それが自らの身を引き裂く事になる、という事を。

 後、2500年の時が必要だった事は憂うべき事だろう。

 しかも自分で気づいたわけではなく、『PANISHMENT』によって気づかされた……

 それが未だに残る

 2500年前に産まれし混沌の王

 ドゥルーズ

 彼は文明を棄てさせた

 異界の存在

 彼は種を世界に撒き散らして去っていった。

 ドゥルーズ・ウイルス

 感染したその日より強制的に見せつけられる

 過去の棄て去られし記憶

 安息して睡眠する事も出来ずに

 やがては精神異常をきたす。

 ドゥルーズ・ウイルスに感染した人間は

 闘いを強制される。

 記憶との闘い――精神との闘い。

 全ては……

 自分なのだ

 闘いを放棄したものが次に向かうのは

 死

 工業の発展を断念し

 ドゥルーズ・ウイルスとの闘いに専念するしか方法がなかった







「ハインズ様、例の少女がこちらに到着したようです」







「……そうか」







「ハインズ様?」

 





 ハインズと呼ばれた、白髪白髭の厳格を物質化したような老人は

 報告を耳にしても尚、表情が優れなかった。







「いや、何でもない」







「これで、また我々は救われる事になります」







「下らん事を言う暇があれば次の職務に戻れ。おまえの歓喜の言葉など聞きたくはない」

 ハインズは突き放すような言葉を部下らしき男に投げつけた。

 その眼は、見下すと言うよりも殺気を伴っている。

 部下の男は敏感に察知して言葉を止め、ハインズに一礼をして部屋――老司祭ハインズ

 の職務室を出た。

 一人になった事を確認するように職務室唯一の窓から外を眺めていたハインズは職務室

 に用意されている机に向かって

 古ぼけた本を開いた。







「瞬間の幸福を手に入れても、それは解決策ではない……ただの慰めだ。時間稼ぎにしか

 ならぬ」








  ただの時間稼ぎ?

  それは無駄な事なのか……?

  いや違う 

 断じて違う

 我々は待ち望んでいるのだ

 第二のドゥルーズを

 ドゥルーズ復活が――

 真に世界を救う事になる

 そのためには

 多少の犠牲は否めない

 許しておくれ……

 ノエル







 老司祭は本を濡らしてしまう事にも構わず、涙を流し続けた。







 止めようとすれば止まるだろう

 しかし、そうする事によって――

 私は心を失ってしまうようで

 恐ろしいのだよ
 
 数千万人の命と引き換えに

 捧げる小さな一筋の光を伴う命――

 許しておくれ

 私に司祭を名乗る資格はない

 神よ……愚かなる私を

 許されよ

 





つづく。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

*****************************************************
アトガキ

mailuxをご利用の皆様、はじめまして。
REOPOLDと申すものでございます。
この小説はもともと、まぐまぐ様のところで発行して
いたものですが、こちらにもご厄介になることに
なりました。
なにぶんにもよろしくお願いします。




URL:http://www45.tok2.com/home/reopold/
(更新のないHPにアナタが華を添えてください)

アドレス:kurokan4@hotmail.com 
(アナタのメールが私の原動力になります)

                   REOPOLD

http://www.mailux.com/mm_dsp.php?mm_id=MM3E45F5056B69

****************************************************

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。