メルマガ:『テーマパークは私の学校』
タイトル:【テーマパークが私の学校 No.001】03/01/22 No.1号  2003/01/22


■ ■ ◇                    テーマパークが私の学校
■ ■ ■          「そうか!! 教育って、そういう事だったんだ」
■ ■ ■                     . . .2001.3.26 No,001
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▼ご挨拶--------------------------------------------------------------
このたびは、メールマガジン「テーマパークが私の学校」をご登録いただきま
してありがとうございます。今までどうしようもなかった私が、テーマパーク
という場所で様々な先輩や上司に支援され、一人前の社会人になり、そういっ
た人との出会いを通して、現在では、企業教育のお手伝いする側にもなれまし
た。

まだまだ勉強しなくてはならないことの多い私ですが、今まで支援をしてくれ
た方々に感謝を込めて、私自身が体験したことをみなさんにお伝えできればと
思い書き始めました。少しでもみなさんのお役に立てれば幸いです。

今後ともよろしくお願いいたします。それでは第一話行ってみよぅ!!
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●第一話「テーマパークとの出会い」●
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私がはじめてテーマパークに行ったのが小学6年生でした。言わずと知れた千
葉県舞浜にある巨大テーマパークです。まだ、純粋だった私は、見るもの全て
に感動したのを覚えています。まさか数年後にここで働くとも知らず……。

その後も中学・高校と何度となくこのテーマパークに足を運びました。だから
といって特別このパークが好きだったわけではありません。当時を振り返ると
あまり好きではなかったのです。ではなぜ何度も足を運んだのかかというと、
その時々で私が付き合っていた彼女の影響です。

ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、だいたいヤンキーの女の子って
そのパークのキャラクターが大好きなんですよ。ほらあの「ねずみのキャラク
ター。」

当時の私は、人ごみも大嫌いだし並ぶのも大嫌い。だから行くのは学校をサボ
った平日……。

ここである事件がおきます。私が高校1年生。やっと16歳になったときのことで
す。16歳と言えばもう立派にアルバイトが許される歳、その当時付き合って
いた彼女とパークで遊んでいるときに彼女がこう言ったのです。

「私が好きなキャラクターは、なかなか出てこない。一緒に写真とりたいのに
……」私が小遣い稼ぎにちょうどアルバイトでも始めようかと情報誌を見てい
ると、そこに「パークの住人募集」と書いてありました。「これで私が働いて
、彼女が好きなキャラクターになれば、一緒に写真を撮ってあげられるかも知
れない……」今考えると安易な考えです。

そんなこんなで面接へ。

今では絶対に受からなかったでしょうという格好で面接。そこで初めて社会と
いうものを体験したのかもしれません。面接官やそこに居るスタッフは、全員
左の胸に「ネームタグ(名札)」をつけ、目が合うと微笑みかけ聞けてくるの
です。「正直気持ち悪いな……」と言う印象でした。

そして面接官からは、「親の承認はもらっていますか?」「学校はアルバイト
をしても大丈夫ですか?」「もし受かったら、頭髪を会社の規定にすることは
出来ますか?」などなど。

今思うと、非常に厳しい条件ですが、当時始めてアルバイトをする私にとって
はこれが働くこと前提条件なのかと思い納得していました。

高校生のアルバイトが選べる職種はひとつ「パレードゲストコントロール」と
いう仕事で、へんちくりんな名前だなと思いながらも、パレードは知っていた
私にとって、頭の中ではすでに、彼女の大好きなキャラクターになった私がパ
レードを躍っている姿でした。恥ずかしいのですが、後の説明は覚えていませ
ん。

数日後連絡が入り、見事採用が決定。電話口で担当者から「アルバイトの初日
から3日間は、教育期間となります。できればスーツか、学生服でお越しくだ
さい。」そういわれても、私の学生服はやばいだろと思い。親からお金を借り
て(まだ返していない母ちゃんゴメン)スーツを購入。いざ初日へ。

当日研修会場では、人事部の方々が一人ひとりの名前を呼んで研修ルームへ案
内してくれます。普段年上の人から「おい!!」や「お前!!」としか呼ばれない
私にとって、若い女性スタッフが「こんにちは!!須磨さんですね。ようこそ!!
それではこちらへどうぞ!!」と私をエスコートしてくれます。私は恥ずかしさ
あまり相手の顔も見れないまま下を向きつつ研修会場へ。

当時を振り返って見ると、「須磨さん」などと「サン付け」で呼ばれることな
んて後輩以外はめったになく、ましてや初対面で私と目を合わせてくれるなん
て事はほとんどありませんでした。だってどう見たっていかつい少年でしたか
ら。でも何だか恥ずかしいのと同時に心地よさを体験したように思います。

最初にやったのは自己紹介ならぬ他己紹介でした。他己紹介とは、ペアを組ん
でみなの前で、私のペアを紹介しあうのです。私のペアは大学生の人でした。
当時は見知らぬ人の前で話すことなんかなく、ぜんぜんうまくいかなかったの
を覚えています。
それが終わると全員でそのパークの歴史などを男性インストラクターに教わり
ます。
残念ながらそのとき私は机に顔を付けたまま居眠り、気が付くと昼食タイムで
した。

私以外の人たちは他己紹介などで仲良くなった人たちと食堂へ。一人取り残さ
れ、私も食堂へ行ったのですが、食事代は当たり前ですが私もち。しかし、こ
れまで給食や弁当で育った私は、昼食代なんて持ってません。
「まっいいか」という事で、外に出て缶ジュースを飲みながら煙草を吸って時
間を潰すことにしました。

道路沿いに腰をかけ煙草を吸っていると、今朝の女性スタッフと男性インスト
ラクターが通りかかりました。その二人が私に気づき「お昼ご飯は食べないの
?」と聞いてきます。お金を持っていないことが恥ずかしく「腹減ってないん
で」と返事をしてしまいました。すると女性スタッフが手にもっていた菓子パ
ンを「良かったら食べて。今お腹がすいていなくても後で減るかも知れないか
ら」
私は何度か断りながらも結局菓子パンをもらいました。

男性インストラクターが僕の隣に同じように腰をかけ話し掛けてきます。
「須磨さんだったよね。自宅はどこになの?学校は?アルバイトは初めて?」
色々話しているうちに、当時の私は横に座って熱心に話を聞いてくれる姿に何
だかとても親しく思えてきたのを覚えています。

しかし、最後にその男性インストラクターは、僕の眼を見て「須磨さんはとて
もユニークな人だね。きっとこのパークにふさわしい住人になれるよ。ひとつ
僕からアドバイスをするとすれば、煙草はやめなさい。家や友達の居るところ
で吸うのはかまわないと思う。でもここでは吸っては駄目。通勤途中ももちろ
ん駄目だよ。それが守れればきっといいスタッフになるよ絶対に。」

当時の私にとって初めて煙草を吸っていることをきちんと注意されたのだと思
います。感情的でもなく、好意的に注意されたのです。それも当時のいかつい
私の目線に合わせて。はっきり言って衝撃でした。怒るでもなく怒鳴りつける
のでもなく、面と向かって駄目なものを駄目と教わったのです。

それから午後の研修は、居眠りもせず前向きに研修を受けることが出来ました
。これが私がテーマパークで働くことになった初日の出来事でした。

つづく

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