メルマガ:経済学はビジネスの武器だ
タイトル:【経済学はビジネスの武器だ】 Vol.8  2003/05/06


  http://sun.s15.xrea.com/ ━━━━━━━━━━━━━━━━Vol.12━

   『経済学はビジネスの武器だ』 Vol.12  平成15(2003)年5月3日

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   ◆◇ 『国債は踏み倒せるのか2:大インフレか大増税か?』 ◆◇

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  ┏━━┓  3月末より、よんどころのない事情でさまざまな出来事に
  ┃\/┃ 巻き込まれてしまい、メールマガジンの発行ができませんで
  ┗━━┛ した。その間、大勢の皆様からメールを頂戴しました。

   大変ご心配とご迷惑をおかけしました。仕事がらみで、急に予想以上に
  忙しくなり、ゴールデンウイークに入りようやく解放されました。ただし、
  少々息切れしております。これからは通常のペースで発行してまいります。
  
   では、大変久しぶりになってしまいましたが、今日もよろしくお願いし
  ます。
  
                      管理人Sun
                      平成15(2003)年5月3日
  
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            ▽    ▽    ▽

  ○国債を踏み倒せるのか?前回のあらすじ
    
   今回は、前回からの続きで、某県の公務員さんからのご質問の後半部分
  にお答えします。前回でもお話しましたが、国債が借金であるとはいって
  も、「政府」にとっての借金なのか、それとも「政府」と「国民」をあわ
  せた「国」全体にとっての借金ということになるのか、その点に注意を払
  ってお読みください。
    
   では、まず、ご質問の前半部分について、ずいぶん前のことになってし
  まいましたので、簡単にあらすじをまとめたいと思います。
    
   なお、前回の『国債は踏み倒せるのか1:財政破綻に陥るケース』
   http://sun.s15.xrea.com/mm/arc/mm011.html
   をあわせてご覧ください。
    
   さて、日本政府が、国債を踏み倒して、借金を返さなければ、デフォル
  ト(債務不履行)と呼ばれる「政府」の倒産状態となります。ひとたびこ
  のような状態に陥りますと、例えば自己破産をした個人の場合と同じで、
  それから先も、借金の借主としての日本政府の信用はがた落ちになります。
  また、日本政府の信用ががた落ちになったわけですから、同じ日本政府が
  発行する円も、政府が今後どのような政策を取るのか、信頼できなくなっ
  てしまったわけですから人気を失い、円は売られ、その結果大幅な円安に
  なります。
  
   しかし日本の製造技術などはかわらず健在だと考えられますので、大幅
  な円安になれば輸出などによって景気は急速に回復することが予想されま
  す。すると、投機に適した都心の土地や、先端技術を持った企業の株式な
  どが、回復を予想された外国からの資本に買い占められることになるでし
  ょう。その結果、「国民」の富が「国」外の資本によって安く買いたたか
  れてしまい、「国民」は大変な損失をこうむることになります。
    
   これは「政府」にとっても、「国民」にとっても恐ろしい状態です。
  仮に「政府」が「国民」のことを親身になって考えていないとしても、財
  政破綻に陥る前に手を打つことでしょう。それではどのような手段が考え
  られるのでしょうか。
  
      
  ○増税は、わずかな額であっても不人気
    
   国債は、「政府」が「国民」やさらには「国」外から借金をすることで
  すから、一番まっとうな対処方法としては、「きちんと耳をそろえて返済
  する」という方法があります。きちんと返済する方法、言い換えれば、新
  たに借り入れをして、そのお金でとりあえず借金を返済する「自転車操業」
  的な方法以外には、借金をきれいさっぱりなくする方法としては、やはり
  「増税」することしかありえません。
    
   ところが、ここで「政府」にとって問題が持ち上がります。それは、増
  税ほど「国民」に不人気な政策はないことです。
    
   例えば、日本の消費税は、取引ごとに課税をされる小売税としてみて、
  世界的な平均からみた場合、極めて低い5%という税率です。しかしそれ
  以前の3%から現在の5%に引き上げた時の状況を思い起こしてください。
  消費税は、平成元(1989)年4月に3%で導入され、その後平成9(1997)
  年4月1日に地方消費税2%を含む形で5%に引き上げられました。
    
   その際の騒ぎでは、一部の政党や評論家が消費税の導入により日本経済
  が崩壊すると主張していました。3%の間接税の導入で経済が崩壊するな
  らば、25%の付加価値税(VAT:消費税とほぼ同じタイプの間接税です。)
  をかけているスウェーデンなどはとうの昔に焼け野原になっていてもしょ
  うがないというのが私の率直な感想です。他にもイギリス17.5%、フラン
  ス19.6%などと共に20%近い税率を課しています。また日本での議論とは
  まったく逆に、欧州連合(EU)では付加価値税を15から25%までの間に
  すべきであるというEU指令が出ているほどで、間接税20%というのは欧
  州ではまったく珍しくありません。もちろん反VAT運動などというもの
  も国民の支持を得ていません。
    
  (余談になりますが、私などは、逆に3%の導入と聞いた時点で、本来な
  ら国に納められるべき消費税が一部の不心得な小売店に猫ばばされる「益
  税」の問題を解決するために、インボイス(税額を明記した伝票)制を導
  入した上で、税額を例えば10%程度にしたほうが、納税者の手間や徴税コ
  ストを考えるとはるかに効率的ではないかと思っていました。その時から
  現在に至るまで私は消費税には基本的に賛成です。消費税上げにも賛成で
  す。デフレ克服の手段として毎年1〜2%ずつ引き上げていくべきだとす
  ら考えています。このように消費税の問題は大変面白いのですがまた別の
  機会に譲ります。)
    
   消費税の問題は日本に特有の反応かもしれませんが、一般的にいって増
  税をすることは、増税の対象となる層からは、負担感が強いことからおこ
  る極めて強い反発がある一方で、それ以外の層からの支持はさほど強くは
  ないという問題があります。そこで、「国」全体の観点からは増税が望ま
  しい場合でも、「政府」当局は世論の反発をおそれ、「国民」の負担感が
  あまりない国債の発行に走ってしまうことが多いのです。しかしここでは、
  これ以上国債を発行しても買ってくれる人がいないことなどが原因でもう
  これ以上の発行はできない状態にあると仮定しましょう。
    
   増税もだめ、そしてこれ以上国債も発行できないというケースではもう
  万策つきたのでしょうか?デフォルト(債務不履行)しかないのでしょう
  か?いえ、最後の手段があります。それが大インフレです。
    
  
    ○国債を踏み倒す方法:大インフレ
  
     さる高名な経済学者が好んでいう話にこんな内容の言葉があります。「
  歴史上、巨額の財政赤字を抱えた国が、その借金を真面目に返した例はな
  い。」
    
   本当に、返した例がないのかどうかは厳密に検証した話ではないとは思
  いますが、確かに、ナポレオン後のフランスも、第一次大戦後のドイツも、
  第二次大戦後の日本もイギリスも「真面目」に借金を返したわけではあり
  ませんでした。とすれば、この言葉もあながち誇張ともいえません。かと
  いって、厳密にいえば踏み倒したわけでもなかったのです。
    
   ではどうしたのでしょうか?強烈なインフレが国民経済を襲い、その結
  果、「政府」の負債の金額が取るに足らないものになったのです。つまり
  国債の額面利率をはるかに超えてインフレが進んだ結果、実際の負担の金
  額がまったく小さな金額になってしまったわけです。これは債務者である
  「政府」にとってはありがたい話ですが債権者である「国民」にとっては
  大きな損害です。
      
   例えば日本の場合、先の大戦の戦費調達のために国債が発行され、すこ
  しでも生活費を節約して国債を買うことが、「国」へのご奉公だと奨励さ
  れました。その結果、国債の発行残高(=「政府」の「国民」からの借金)
  は極めて大きな金額に達していました。
    
   一方で、物価については、戦争中は、さまざまな品物の価格は統制され
  ていましたので、表面に出ませんでしたが、敗戦後、価格統制がはずれる
  やいなや強烈なインフレが経済を襲いました。それまでの不換紙幣(金と
  交換する約束があるのが兌換紙幣で、金との交換はできない(=不換)が、
  発行者である政府の信用だけで発行流通するのが不換紙幣)の乱発がイン
  フレの原因でした。
    
   そして戦後の猛烈なインフレの結果、政府の負債(国債)の実際の額は
  極めて小さなものとなったわけです。
    
   このように、巨額な国債残高があっても猛烈なインフレが起これば、実
  際の負債額は極めて小さくなります。「政府」としてはインフレを起こし
  たいという誘惑に駆られることでしょう。しかし、そんなことをされては、
  国債を買っている「国民」にとってはたまりません。
    
  
    ○「政府」と「国民」の利益が対立することもある
  
     このように、借金をしている側の「政府」は、わざとであるかないかに
  かかわらず強烈なインフレの進行で得をする立場にあります。一方、「国
  民」は、国債という「政府」に対する貸したお金(=債権)の実際の価値
  が落ちてしまうわけですから、大インフレになってはたまりません。(デ
  フレの場合にはまったく逆の現象が起きます。)ここに「政府」と「国民」
  の利益の食い違いがあります。
  
   理論的に考えれば、「政府」、特に国債の発行を担当する部局にとって
  みれば、まず最初に、「国債は安全確実な資金運用方法です」と宣伝をお
  こない、信用した「国民」にさんざん国債を買わせた後で、そのあげくに
  「国民」からの信頼を踏みにじって大インフレが起きても知らん顔をして、
  帳消しにする誘惑に駆られる可能性があります。「国民」にとっては、結
  果的に先の大戦の戦費調達で生じたことと同様のことになります。つまり
  ここでは「政府」と「国民」の利益が対立しているのです。
    
   もちろん「政府」が、信頼を損なう狡猾なやり方をするかどうかはわか
  らないので、我々「国民」としては、「政府」をどのくらい信頼している
  かによって国債を買うのか買わないのかの判断をすることになるでしょう。
  その結果、信頼できるならば国債を買うのがよいでしょうし、信頼できな
  ければ、例えば国外で運用することを考えるのがよいでしょう。
  
   さて、ここで考えなければならないことは、果たして現在の「政府」当
  局は、信頼するに値するのでしょうか、あるいは値しないのでしょうか。
  その答えがいずれであるにせよ、我々一人一人がじっくり考えなければな
  らない重い問題だと思います。
  
   これまでお話ししてきた大インフレは、増税とは違う形ですが根本的に
  国債の実質的な残高を下げてしまうやり方です。では、根本的にではなく、
  自転車操業的に国債の借りつなぎでしのぐ手段はないのでしょうか。次回
  は、今回のご質問の回答の続きとして、この「自転車操業」の上手なやり
  方についてお話しします。

  ◇参考リンク
   バックナンバー一覧
   http://sun.s15.xrea.com/mm/arc/arc2index.html
   
   バックナンバー『国債は踏み倒せるのか1:財政破綻に陥るケース』
   http://sun.s15.xrea.com/mm/arc/mm011.html
      
            ▽    ▽    ▽
                        
  編┃集┃後┃記┃
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   最後までお目通しいただきありがとうございました。ようやく配信にこ
  ぎつけました。今でも疲れが取れません。眠いです。特に、前回からご登
  録いただいた皆さんには、のっけから長い休眠期間に入ってしまいました
  ので面食らわれたことと思います。お詫び申し上げます。
        
   また、このメールマガジンは、過去の内容も踏まえてお話しを進めてい
  きます。私の都合で、ずいぶん昔のことになってしまいましたので、バッ
  クナンバーがご必要ではないかと思いますが、こちらをご覧ください。
  http://sun.s15.xrea.com/mm/arc/arc2index.html
  
   また、兄弟メールマガジンの「あなたも3分間でエコノミスト!」のバ
  ックナンバーも同じページからご利用になれます。こちらの方も近日中に
  必ず配信いたします。
  
   なお、今号からVolの計算方法を変えました。以前は創刊準備号を含め
  ずに計算しておりました。その計算方法によれば本号はVol.11となるので
  すが、Vol.11は欠番とし、今回からはVol.12から順に表示いたします。
  
   それではまた、次回にお目に掛ります。今度はきちんと早めにおおくり
  しますのでよろしくお願いします。
    
            ▽    ▽    ▽ 

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  ◆『ビジネスの武器としての経済学入門』 http://sun.s15.xrea.com/
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   発行できない間にも多くのお申し込みをいただきました。
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  -------------------------☆「経済学はビジネスの武器だ」☆ Vol.12--

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