メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio No.805 ◇現代時評 《GPS捜査判決を読み解く》:井上脩身  2017/04/04


──────────────────────────────────────
【609 Studio】メール・マガジン 2017年4月4日 No.805
──────────────────────────────────────
   フォト・ジャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身
氏の現代時評、ロシアやサハリンの話題、編集長のコラムなど多彩な話題満載! 
──────────────────────────────────────
          e-Magazine Lapiz のホームページが変わりました!

               進化する!深化するLapiz 
   
             http://lapiz-international.com/

──────────────────────────────────────
                 好評発売中!
             
          《サハリン逍遥》 片山通夫写真集

 サハリン残留朝鮮人の取材のため15年間サハリンに通った写真家が自然や人
々の暮らしを折にふれて撮りためた素顔のサハリン。さり気ないアプローチでと
らえた被写体にユーモラスな文章をそえた魅力的な写真集。

        群像社刊 モノクロ152ページ、予価1800円+税

        群像社サイトからお買い求めいただけます!!
       http://gunzosha.cart.fc2.com/ca8/198/p-r-s/
──────────────────────────────────────
                         【著書案内】

     「追跡!あるサハリン残留朝鮮人の生涯」 片山通夫 著

  日本の植民地統治が生んだ一家離散「二重徴用」「急速転換」「樺太
    への逆密航」を語る貴重な証言!!

    凱風社 刊 http://www.gaifu.co.jp/index.html

           定価 1900円+税
──────────────────────────────────────
◇現代時評 《GPS捜査判決を読み解く》:井上脩身
──────────────────────────────────────
 捜査対象者の車に全地球測位システム(GPS)端末を付けて居場所を把握す
るGPS捜査について、最高裁は3月15日の大法廷で「プライバシーを侵害し
違法」との判決を下した。弁護団は「憲法の理念に沿った判断」と高く評価して
いるが、もろ手をあげて喜ぶわけにはいかない。判決はGPS捜査のための「立
法措置」を求めているからだ。テロ等準備罪という名の共謀罪の成立に躍起の政
府はいずれ「GPS捜査法」を制定しようとするだろう。テロをしようとしてい
ると疑われたら最後、捜査当局にこっそりとGPS端末が取り付けられ、しかも
それが合法とされる時代がやってきかねないのだ。今回の判決で権力側がGPS
捜査をあきらめると思ったら大間違いである。

 裁判になった事件は窃盗容疑の大阪府の男性について、同府警が2013年5
〜12月、この男性と共犯者の車やバイク19台にGPS端末を取り付けて捜査
したというもの。令状のないGPS捜査が憲法、刑事訴訟法上許されるかどうか
が争われた。大阪地裁は「令状のない捜査は違法」と判断。大阪高裁が「重大な
違法はなかった」としたため、弁護側が上告していた。

 最高裁はGPS捜査について「対象車両と使用者の所在と移動状況を逐一把握
でき、プライバシーを侵害し得るもので、私的領域への侵入を伴う」と指摘。憲
法35条(何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を
受けることのない権利)の規定には「私的領域に侵入されない権利が含まれる」
と判断。その上で「GPS捜査は、個人の意思を制圧して憲法が保障する重要な
法的利益を侵害する。刑事訴訟法上、特別の根拠規定がなければ許されない強制
処分に当たる」と判示した。裁判官15人全員一致の意見だった。

 新聞報道にはほとんど触れられていないが、判決のなかで注目されるのは「強
制の処分では手続きの公正さを担保するため、事前の令状提示は原則であり、こ
れに代わる公正担保の仕組みがなければ適性手続きの観点から問題が残る」と述
べた点だ。法律用語が駆使されているので理解しにくいが、平たく言えば、「適
切な令状がなければ適正な手続きとはいえない」ということだ。

 刑事捜査に関して、大ざっぱにいうと「実態的真実主義」と「適正手続き主義
」の二つの考え方がある。少しむりがあるが分かりやすくするために別件逮捕を
例にとる。
 警察が東京で起きた強盗事件の容疑者とみている人物を、大阪での軽微な寸借
詐欺で逮捕した場合、強盗事件の追及が許されるか、が問題となる。この場合、
真犯人を捕まえることに重きを置く実態的真実主義では適法な別件逮捕となり、
被疑者の人権を重視する適正手続き主義では違法な別件逮捕になる。(実際には
このように単純に割り切れる事件はほとんどない。あくまで参考である)

 我が国の司法はおおむね実態的真実主義をとってきた。しかしさまざまな冤罪
事件が起きる中、自白の強要など荒っぽい捜査手法への批判が高まり、「適正手
続き主義をとるべきだ」との意見が専門家から強く出されるようになった。こう
した流れをみれば、今回の判決は適正手続き主義に沿った内容のようにみえる。
だが、前述の判決の文脈中の「令状提示に代わる公正担保の仕組み」という文言
はくせものだ。そうした「担保の仕組み」があれば令状がなくても許される、と
読めるからだ。事実、判決は「(GPS捜査が)今後とも広く用いられ得る有力
な捜査手法とすれば、憲法などに適合する立法的な措置が講じられることが望ま
しい」と、国に法整備を求めている。

 判決後、弁護団は記者会見し「満額回答。非常に踏み込んだ判断」と絶賛した。
恐らく十分に判決文を吟味していなかったのだろう。よく読むと、適正手続き主
義の仮面をかぶっているが、「法律をつくりさえすればGPS捜査はできる」と
言っているのである。

 判決は新しい法律を作るに際して「憲法に適合するよう」とクギを刺している。
これもまた一見もっともだが、憲法をなんとでも解釈する安倍政権である。人権
をじゅうりんするGPS法を制定しても「憲法に合った法律」というだろう。
政府は「テロ等準備罪」を今国会で成立をさせる方針だ。普通の市民に対しても、
テロの共謀をしたとして逮捕、起訴できる法律だ。これにGPS法が加われば、
危なくて市民は車を運転することもできない。「そんなバカな」と言えないほど、
安倍一強時代のいま、危険な時代に入ろうとしている。
──────────────────────────────────────
◆「スプートニク」 >>> 引用元    http://jp.sputniknews.com/
──────────────────────────────────────
◆情報通信・ラジオ「スプートニク」(HOME)
 http://jp.sputniknews.com/

◆日本関連
 http://jp.sputniknews.com/japan/

◆国際───────────────
 http://jp.sputniknews.com/world/

◆ロシア国内───────────────
 http://jp.sputniknews.com/russia/
──────────────────────────────────────
読書《なぜヨーロッパで資本主義が生まれたか》
               西洋と日本の歴史を問いなおす
関曠野 著
聞き手 三室勇
発売日:2016.05.30
定価:2,592円
サイズ:四六判
ISBNコード:978-4-7571-4346-3
http://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100002384
 ──────────────
新刊ガイド《「大大阪」時代を築いた男 評伝・関一(第7代目大阪市長)》

 大山勝男 著                         
定価(本体2,600円+税)
2016年2月10日発行
http://koujinnotomo.com/
──────────────────────────────────────
◆《News Digest》:609studio編集部
──────────────────────────────────────
◇◇ニュースな言葉、一口メモ 【名誉校長】

⇒今を時めく職種である。ただし「給与」や「謝礼」はない。ただし「講演料」
はあるかもしれない。そして都合が悪くなると自由に辞められるが、世間的には
色々言われる。時として「名誉校長室」なんて部屋も持てるかもしれない。
                               
◇◇News Digest◇◇

◇森友学園特集 (3月30日まで)

森友事件 官邸錯乱の原因は安倍“仮面夫婦”の家庭内別居
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/202494

疑惑発覚境に関係冷え メール文面公表
http://mainichi.jp/graphs/20170324/hpj/00m/010/002000g/8

籠池氏喚問 関係者の説明が必要だ
http://mainichi.jp/articles/20170324/ddm/005/070/030000c

資金面でも苦境に 小学校開校頓挫で
http://mainichi.jp/articles/20170327/k00/00m/040/048000c

松井・大阪府知事「学園と首相は関係ある」
http://mainichi.jp/articles/20170328/k00/00e/040/177000c

◇ロシアからのニュース⇒

日本との島の経済活動は露法の下で
http://jp.rbth.com/news/2017/03/28/729131

「唇を読んで」 プーチン大統領 米選挙へのロシアの影響について回答
https://jp.sputniknews.com/politics/201703303489574/

ビートを打つ洗濯機がネットユーザーをとりこに【動画】
https://jp.sputniknews.com/entertainment/201703303489092/

考古学者らがシルクロードの古代国家の首都を発見
https://jp.sputniknews.com/life/201703313490099/

中国の産業廃棄物は日韓市民を殺すー研究チーム
https://jp.sputniknews.com/science/201703313490188/

沿海地方 危険な行為を煽るガムを回収へ
https://jp.sputniknews.com/incidents/201703303488329/

トランプ氏取り巻きの女性たちはどこへ消えた?
https://jp.sputniknews.com/politics/201703303490037/

◇きな臭い話、こぼれ話

ちょっと変わったロシアのサービス
http://jp.rbth.com/arts/2017/03/17/721466

【追記あり】中学校の武道に「銃剣道」が追加、ヒゲの隊長こと佐藤正久議員の
働きかけも
http://www.excite.co.jp/News/it_g/20170331/Buzzap_41912.html

────────────────────────────────────
◆編集長から:片山通夫
────────────────────────────────────
 傍若無人という言葉がある。「ぼうじゃくぶじん」と読む。アッ失礼!ここの
読者にはどっかの国の首相や財務相はいなかった…。
 傍若無人とは、読んで字のごとく、人まえをはばからず勝手気ままにふるまう
ことをいう。秦の時代、燕の衛の荊軻は、筑の上手い高漸離と酒を飲んでは、う
たって、酔い、騒ぎわめいて、まるで傍に人がいないかのような振る舞いをして
暮らしていたという故事から出来た言葉。「傍らに人無きが若し」と訓読する。

 つまり、勝手気ままにふるまうことである。国権の最高機関である国会におけ
るヤジや勝手な答弁なども指すハズだ。
───────────────────────────────
  発行    2017年4月4日 No.805
  発行   毎週火曜日  購読料無料
  FB  https://www.facebook.com/michio.katayama.5
 配信 まぐまぐ配信システム ID:0000052236
  MailuX配信システム ID:MM3E1B97842E020
  contact us http://www.609studio.com/html/mailform.html
  website  http://www.609studio.com/
      投稿   http://www3.ezbbs.net/06/609studio/
   購読 解除 http://archive.mag2.com/0000052236/index.html

           ◇禁・無断転載◇
────────────────────────────────────

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。