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タイトル:609studio No.799 ◇現代時評《日米首脳会談を読み解く》:井上脩身  2017/02/21


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【609 Studio】メール・マガジン 2017年2月21日 No.799
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   フォト・ジャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身
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◇現代時評《日米首脳会談を読み解く》:井上脩身
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 安倍晋三首相は10日、アメリカのトランプ大統領と首脳会談を行った後の共
同記者会見で「日米同盟は強固な揺るぎない絆」と述べ、「緊密な関係」である
ことを強調した。問題は緊密の中身だ。同首脳会談の2週間前、米英首脳会談が
行われ、「米英の特別な関係」を確認し合っている。米英の特別な関係とは、核
兵器の共有にほかならない。その米英関係が日米同盟のモデルというのが従来の
アメリカの態度である。トランプ大統領の最初の首脳会談の相手がイギリスのメ
イ首相、2人目が安倍首相であることを考え合わせると、トランプ政権は日米間
の米英的特別関係化に一歩踏み出したと捉えるべきだろう。トランプ政権は近い
将来、米国製核兵器の保有をわが国に求めてくる、と私はみる。

 安倍政権になって以降、日米関係はアーミテージレポートにしたがって展開さ
れてきた。同レポートはブッシュ政権下の国務副長官だったアーミテージ氏が2
000年に発表した「米国と日本――成熟したパートナーシップに向けて」と題
する論文(第1次)を根幹とし、07年の第2次、12年の第3次報告を指す。
第1次レポートで、「米国と英国の特別な関係が日米同盟のモデル」としたうえ
で、「米国の防衛技術の日本への優先的な移転」を提案。さらに第3次レポート
で「次世代戦闘機、軍艦などの共同開発に向けた長期的な運用」を同盟の役割に
挙げた。

 同レポートに核兵器の言葉はない。しかし「米英の特別な関係」とは戦略核の
共同開発と共有であることは軍事上の常識である。その具体例の一つは潜水艦発
射弾道ミサイル「トライデント」。アメリカで開発され、1797年に配備され
た。その後、イギリスにも供給され、アメリカ海軍では14隻のオハイオ級原子
力潜水艦にアメリカ製核弾頭付きで、またイギリス海軍では4隻のヴァンガード
級原子力潜水艦にイギリス製核弾頭付きで搭載された。

 イギリスのメイ首相は就任して間もない昨年7月、下院議会で「核抑止で重要
なのは、敵に我々が核を使用する用意があることを知らしめることだ」と述べ、
トライデントミサイル搭載原潜の更新を提案、可決された。英政府は今後20年
間、310億ポンド(410億ドル)〜410億ポンド(540億ドル)をかけ
て順次更新する計画だ。

 トランプ大統領が就任後最初に首脳会談を行った相手として選んだのはメイ首
相である。1月27日、会談はホワイトハウスで行われ、トランプ氏が「英国と
の深いついながりを新たにする日だ」と述べると、メイ氏は「(就任直後の)招
待は特別な両国関係の証し」と応えた。メイ氏は、トランプ氏がNATO加盟国
にGDPの2%以上を軍事予算に計上するよう求めていることに理解を示し、負
担の公平化を図るために他の同盟国に働きかけることを約束した。

 2人目の首脳会談の相手としてトランプ氏が安倍首相を選んだことは、「特別
な関係」の文脈で考えるべきであることは本稿の冒頭にも指摘した。選挙中、日
本を名指しして「在日米軍駐留費をもっと払え」などと強硬な発言を繰り返した
トランプ氏は、会談では一切この点に触れず、逆に「米軍を受け入れてもらい感
謝する」と低姿勢ぶりをみせた。また、会談前、「不公平」と日本の非難してい
た対米自動車輸出問題についても、言及しなかった。

 この態度の豹変をマスコミはきちんとした分析をせず、「満額回答」などと安
倍首相をもちあげた。おかしい、裏に何かあると思わないならば、ジャーナリズ
ムとはいえない。外交・防衛政策にほとんど無知なトランプ氏に対し、従来通り
の対日政策を行うよう求める強い力が背後で働いていた、と考える以外に説明が
つかないではないか。間違いなくいえることはアーミテージレポートの復権であ
る。選挙中、アーミテージ氏が「トランプではダメだ」と反トランプ色を鮮明に
していただけに、私も正直意外である。

 共同声明の中で注目されるのは「核および通常兵力の双方による、あらゆる種
類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎな
い」との文言だ。日米の緊密化を示したこの文章の真の意味は米英の特別関係化
と読みとるべきである。

 トランプ大統領が安倍首相との首脳会談で米軍の駐留経費の増額を求めなかっ
たことに、日本政府は胸をなでおろしたという。だが、トランプ氏は本質的に商
売人である。「核兵器を買え」と言ってくるだろう。ただでゴルフを楽しませて
くれるような甘い男ではない。
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◆「スプートニク」 >>> 引用元    http://jp.sputniknews.com/
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◆情報通信・ラジオ「スプートニク」(HOME)
 http://jp.sputniknews.com/

◆日本関連
 http://jp.sputniknews.com/japan/

◆国際───────────────
 http://jp.sputniknews.com/world/

◆ロシア国内───────────────
 http://jp.sputniknews.com/russia/
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◆《News Digest》:609studio編集部
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◇◇ニュースな言葉、一口メモ 【暗殺】

⇒暗殺は、主に政治的、宗教的または実利的な理由により、要人殺害を密かに計
画・立案し、不意打ちを狙って実行する殺人行為(謀殺)のこと。
見せしめや弾圧、粛清の一種としても存在する。(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9A%97%E6%AE%BA
                               
◇◇News Digest◇◇

◇日本のニュース・世界の話題

金正男殺害:後見人の張成沢氏処刑後、生活資金どこから?
http://www.chosunonline.com/m/svc/article.html?contid=2017021503482

北朝鮮独裁者、「身内殺し」の系譜
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/02/post-6978.php

【寄稿】 王朝の息子が死去 金正男氏はなぜ殺害されたのか
http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-38977508

英元諜報員のロシア調査文書、米当局が一部裏付け CNN.co.jp
  http://www.cnn.co.jp/usa/35096436.html?tag=nl

色丹島東海岸の2無人島も命名 ロシア
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/international/international/1-0368325.html

スパイの道具 写真特集:時事ドットコム
http://www.jiji.com/sp/d4?p=spi509-jlp11510516&d=d4_mili

【コラム】「暗殺の国」日本、安重根を犯罪者と言えるのか(1)| 中央日報
http://s.japanese.joins.com/article/767/183767.html?servcode=100&sectcode=120


【日本の中のロシア文化】 雪の降る夜は……? ペチカの物語
http://www.tenki.jp/suppl/okuyuki/2017/02/12/19621.html

安倍晋三首相、ニューヨーク・タイムズに風刺画を掲載される!トランプ大統領
の召使い? - 情報速報ドットコム
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-15438.html

特集ワイド:安倍政権4年の「不都合な真実」 首相が語らない結果とは 
- 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20170207/dde/012/010/005000c

日本共産党: 「退位は憲法と国民の総意の下で」などの動画
https://www.youtube.com/watch?v=_zhxtbh1Npo&list=TLGGfGxIroKv4jcxNTAyMjAxNw

シリア:ロシア・トルコ・イランのアスタナでの実務者協議を受けるかたちでヒ
ムス市北東部ハウラ地方のシャーム自由人イスラーム運動とシリア軍が停戦に合
意 その他紙 2017-02-09 翻訳者:シリア・アラブの春顛末期
http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=42128


ヨルダン:カサースィバ操縦士焼殺から2年が経つのに合わせて、ヨルダン軍が
シリア領でのダーイシュに忠誠を誓う組織を空爆 al-Hayat紙 2017-02-06 
翻訳者:平野耕陽
 http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=42119

シリア:ダーイシュ支配下のバーブ市近郊でロシア軍の誤爆によりトルコ軍兵士
3人死亡、シリア軍がトルコ軍の支援を受ける反体制派とバーブ市近郊で初めて
交戦 その他紙 2017-02-10 翻訳者:シリア・アラブの春顛末期
http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=42134

◇ロシアからのニュース

金正恩氏が死亡しても今ある問題は終わらず、
むしろはるかに大きな問題が始まる
https://jp.sputniknews.com/opinion/201610142901485/

ペスコフ報道官 クリル5島命名に対する日本側の抗議に答える
https://jp.sputniknews.com/japan/201702143339811/

詩人プーシキンの決闘と死
https://jp.rbth.com/arts/2017/02/10/698246

ロシア人が革命を逃れ日本に来た経緯 
https://jp.rbth.com/arts/2017/02/10/699208

安倍首相、「米国車が日本で売れないのは米メーカーのせい」と言えるか?
https://jp.sputniknews.com/opinion/201702103325148/

ロシア革命100年 
https://jp.rbth.com/1917

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◆編集長から:片山通夫
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  21世紀の今、「暗殺」と言うおよそ前近代的な方法で人を殺すという事件が
起こった。金正男という北朝鮮の金王朝の流れをくむ人が殺されたのだ。
 この金正男という人物、筆者は無論あったことはないが、どことなく憎めない
所があるように思える。きっとご本人はたとえ中国の政権に担ぎ出されようとし
ても、北朝鮮の政権にはつくまい。なんの理由もないのだが、そんな気がするの
だ。このクアラルンプルでの事件の一報を聞いたとき、金賢姫(キムヒョンヒ)
の事件を思い出した。大韓航空機爆破事件(1987年)を実行した北朝鮮の
工作員だった。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E8%B3%A2%E5%A7%AB

 あれからすでに30年。いまだに「暗殺」、「毒薬」などという前近代的な方
法がまかり通っているという世の中に驚く。そしてそんな世の中に今もあるとい
うことに、我ながら「平和ボケだな」と思い知った。

 折から拙著・写真集「サハリン逍遥」を上梓した。20年に及ぶサハリンのあ
れこれをまとめたものだ。最初サハリンに行ったとき、やはり緊張したものだ。
 いろいろ取材して回った時、「留学先の北朝鮮から逃げてきた人の話」だの「
北朝鮮に強制送還された息子と嫁の話」とか、余りほじくり返すと、自分の身辺
にも危険が迫ってくるような話がそこここで聞いた。話を聞いた相手は決して写
真を撮らせなかった。

 今、金正男氏の暗殺を目の当たりにして、サハリンでのことを思い出す。  
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  発行    2017年2月21日 No.799
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