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タイトル:609studio 号外 ◇現代時評+ 《プーチンがやってくる!》:片山通夫   2016/12/14


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【609 Studio】メール・マガジン 2016年12月114日 号外
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   フォト・ジャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身
氏の現代時評、ロシアやサハリンの話題、編集長のコラムなど多彩な話題満載! 
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◇現代時評+ 《プーチンがやってくる!》:片山通夫          
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 明日15日、ロシアのプーチン大統領が訪日する。我が国の首相の最大の関心事
は「北方領土の返還」だという。いや、言っていた。この夏の終わり頃までは。
情けないことに我が国の大新聞もテレビも「2島返還だ」とかなんとか、あのム
ネオハウスの鈴木宗男氏まで首相もマスコミも引っ張り出して大騒ぎだ。そして
ついに明日大統領はやってくる。しかしここにきて安倍首相とその周辺は国民と
マスコミの間で過熱した「領土返還への期待」の火消しに躍起だ。

アナトリー・クージン氏インタビュー

 ここで筆者が過去にサハリンで、郷土史家としても名高いアナトリー・クージ
ン氏にインタビューした内容をまず紹介したい。この記事は2013年夏号のLapiz 
に掲載した。

インタビュー「ロシアは南クリル(北方領土)を離さない」

 このインタビューは2013年3月26日時点でのインタビューで、その後、安倍首
相が訪露して、情勢が大きく変わる可能性がある。クージン氏は「個人的な見解
だが」と断った上で、インタビューに応じてくれた。

*プーチン大統領は昨年3月、大統領に就任後、北方領土問題に関して「双方に
受入れ可能な解決策」をと言及した。この「解決策」に関して日本では「面積等
分」と理解されているようだが。具体的にはダマンスキー島(中国との国境)は
そのようにして境界線が策定された。

クージン:中国との国境問題は「戦争の結果」持ち上がった問題ではない。全く
違う次元の問題だ。南クリル(北方領土)は我々が《戦争で勝ち取った》領土で
ある。それ以前、1905年の日露戦争で日本は勝利した。結果、それまで我々の領
土であった《南サハリン》は日本の領土となった。これらの理由で、ダマンスキ
ーのケースと一緒に論ずることはできない。また日本は、1952年4月28日発効し
たサンフランシスコ条約「千島列島・南樺太の権利、権原及び請求権の放棄(
第2条(c))で戦前の持てる権利権原は放棄したはずである。
 
*当時のソ連はサンフランシスコ条約に参加(署名)していないが。
クージン:我国が署名しようとしまいと、サンフランシスコ条約に日本は署名し
た。受け入れたのだ。最も受け入れざるを得なかったとは思うが。そうでないと、
《今の日本》は存在し得なかったのではないか。1956年9月9日、当時のフルシチ
ョフは「歯舞、色丹の二島を《日本に贈呈する》と言った経緯があった。まずこ
こで注目してもらいたいのは、《贈呈》という言葉だ。決して《返還》とは言っ
ていない。我々のものだから《贈呈》なのだ。
 しかしこれは実現しなかった。当時の最高ソビエト(註)が承認しなかったか
らである。一方、日本はソ日間に《平和条約》を結ぶという考えがあったが、ア
メリカがこれに反対したようだ。それが《四島一括返還でないと平和条約は結べ
ない》という論理に日本は陥ってしまった。
註)ソビエト連邦の最高国家権力機関

*日本では5月の安倍首相の訪露で何らかの結果が出るのではないかと期待して
いるが。
クージン:例えプーチン大統領が日本の要求に一定の譲歩をしたとしても、我国
の連邦議会はそれを承認することは無いと思う。ちょうど56年のフルシチョフ
時代のように。
 また領土問題は第二次大戦で解決済だ。もしこれをひっくり返すなら、世界中
で領土問題に関して火がつく危険がある。そんなことは誰も望まない。

* それではロシアとの平和条約は結べないというのが日本の立場だが。
クージン氏:《平和条約》には何の価値も無いのではないか。条約が無くとも交
流は可能だ。そんなものにこだわる必要は無い。また、南クリルの周辺には、ロ
シア天然資源省の専門家によれば、数カ所に油田・ガス田が存在する可能性があ
り、埋蔵量は石油換算で三億六千万トンとの試算もある。これは、日本の消費量
のほぼ一年分に匹敵する。千島列島最大の択捉にはチタンなどの希少金属が豊富
にある。また水産資源も豊富だ。サンマはロシアでは唯一の漁場だといえる。そ
んな有望な地域をロシアは手放せない。
 インタビューを終えて
インタビューは一時間半以上に渡って行った。はじめから終わりまでエネルギッ
シュな話し方で、また豊富な知識に驚かされることもしばしばだった。筆者の知
識は勿論日本の外務省や政府、それに新聞などマスコミから得た知識でしかない
が、クージン氏は、歴史学者として、またソ連当時、サハリンの党書記を歴任し、
公文書館にも勤務したという経歴があり、そしてサハリン州は北方領土を含む千
島列島をその行政範囲にある。
 同氏は、サハリン住民でもありその豊富な実績と知識で《確たる意見》をお持
ちのように見えた。
 
アナトリー・クージン(1939年生まれ)
 サハリン州アレクサンドロフスク・サハリンスキー地区出身
1962年党職員に。1969年ハバロフスク党学校で大学教育を受け優等で卒業。その
後20年間党の仕事に就く。うち10年間はサハリン州党委員会書記。1988年から公
文書施設に勤務の経験。現在は歴史学博士 連邦極東大学教授。
 著書に沿海州・サハリン 近い昔の話(翻弄された朝鮮人の歴史)凱風社刊19
98年など
 このようにクージン氏は「平和条約はなくとも、経済、文化などの交流は可能
だ」と話し。「北方領土は戦争で得た我が国(ロシア)のものであり。サンフラ
ンシスコ条約で、確定している」と力説した。

 この見解は、プーチン大統領にインタビューをした読売新聞などの記事を読ん
だ朝日新聞の今朝(2016/12/14)の記事からも読み取ることはできる。

 「淡い期待を打ち砕くかのように、ロシアのプーチン大統領が15、16日の
訪日を前に、北方領土問題で強硬な姿勢を示した。平和条約締結についての共同
声明も採択は困難な見通しだ。日本側は、北方領土での共同経済活動など、今後
の環境整備に向けて、ぎりぎりまで調整を続ける考えだ」と、今朝の朝日新聞は
伝える。 

 また同記事はアメリカをはじめとする西側の「対露制裁」がロシアにとって、
もっと言えばプーチン大統領にとって屈辱以外の何物でもなかったともとれる記
事が掲載されている。
 12月7日に行われた読売新聞などとのインタビューでは、一転して強い不快
感を表明した。プーチン氏が問題視するのは、日本の米国との同盟関係そのもの
だ。「日本が(米国との)同盟で負う義務の枠組みの中で、どの程度ロシアとの
合意を実現できるのかを見極めなくてはならない」「日本は独自に物事を決めら
れるのだろうか」と、疑問を呈した」とある。

 アメリカの尻馬に乗って、言いなりの安倍政権を痛烈に皮肉ったといえる。

 ここで筆者が近い過去に書いたコラムを紹介してこのコラムを終えることとす
る。ぜひお読みいただきたい。

現代時評+ 《プーチンがやってくる!?》
http://609studio.com/archives/3486

現代時評+ 《安倍首相のまやかし》
http://609studio.com/archives/3444

現代時評+《立ち込める暗雲》
http://609studio.com/archives/3435#more-3435

現代時評+《ロシアはなぜアラスカを売却したのか》
http://609studio.com/archives/3319

現代時評 《プーチンの時代は旧ソ連の臭いがする》
http://609studio.com/archives/3148

現代時評《安倍政権は新興宗教か?》
http://609studio.com/archives/2558#more-2558

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◆編集長から:片山通夫
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 明日15日、ロシアのプーチン大統領が訪日する。国賓だという。宮内庁のホー
ムページでは我国を国賓として来日した賓客に対して次のような歓迎の待遇をさ
れるようだ。

国賓のご接遇
 国賓とは,政府が儀礼を尽くして公式に接遇し,皇室の接遇にあずかる外国の
元首やこれに準ずる者で,その招へい・接遇は,閣議において決定されます。皇
室における国賓のご接遇には,両陛下を中心とする歓迎行事,ご会見,宮中晩餐,
ご訪問がありますが,両陛下はじめ皇族方は心をこめて国賓のご接遇をなさって
います。
http://www.kunaicho.go.jp/about/gokomu/shinzen/hinkyaku/kokuhin.html

 ところでプーチン大統領は「実務訪問賓客」としてくる。
 時事通信は次のように伝えた。

 プーチン・ロシア大統領の15日からの来日が、歓迎行事などの接遇を最も簡
略化した「実務訪問賓客」となることが1日、分かった。対ロ制裁で連携する米
欧各国に配慮したとみられる。
 国家元首の接遇には、ほかに国賓、公賓、公式実務訪問賓客があり、宮中晩さ
ん会の有無や、日本側が負担する経費などに差が出る。10〜11月に日本を訪
れたフィリピンのドゥテルテ大統領、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国
家顧問兼外相、インドのモディ首相は、いずれも公式実務訪問賓客だった。

 つまり宮中晩餐会は無しだというわけだ。

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  発行    2016年12月14日 号外
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